怨霊戦記

【おんりょうせんき】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 PC-8801mkIISR以降、FM-7、MSX2、PC-9801VM/UV以降
メディア フロッピーディスク
発売・開発元 ソフトスタジオWING
発売日 1988年9月
定価 9,800円(税別)
プレイ人数 1人
配信 プロジェクトEGG
【PC98】2002年04月24日/440円
【PC88】2006年04月18日/770円
判定 良作



この世に怨みの無い方はございません…



概要

超能力やオカルトを題材にした作品を精力的に出していたソフトスタジオWINGの作品。
その完成度の高さから、ソフトスタジオWINGの最高傑作として挙げられることも多い。


ストーリー

地方都市である「宮台市」に住む帝都バンクのプログラマーの主人公・北原弘行は、1年がかりで完成させたプログラムの仕事を終えて一息つくために夜風にあたっていると、突然鋭い頭痛に襲われた。

ほどなくして頭痛は収まり、奇妙に思いながらもしびれた体を引きずりながら帰路に就くと、黒マントの人影と遭遇する。

その人影とすれ違おうとした際、その人影から出てきた化け物に突然噛みつかれ気絶してしまう。

そのまま病院に運ばれて診断を受けた結果、医師は「野犬にかまれたショックと疲労からの幻覚症状」と診断されたが、診断結果に納得できなかった北原は友人の精神科医である田島に相談に行く。

そして診断を受けた結果自分の体験が現実にあったことだと知った北原は、この不可解な事件を解決するため調査に乗り出すこととなった…

システム

一般的なコマンド入力式ADVだが、特徴としては以下の通り。

  • 基本的なコマンドは「見る」「聞く」「考える」「行く」の4つのみのシンプルなコマンド構成。各コマンド選択後のサブコマンドもさほど多くはない。
  • 自宅に戻った場合はコンピュータを操作してこれまでの情報を確認したり、セーブを行うことが可能。また休息をとることで時間を半日単位で進めることができる。
    • 当日に得た情報はコンピュータを操作すると自動的に登録される。
  • 制限日数があり、8/1~8/31の間に解決しないとゲームオーバーとなる。

評価点

  • 非現実的存在や超常現象を題材にしながらも非常にリアリティのあるシナリオ
    • 怨霊というオカルトを扱っていながら、作中でそれが現実に存在するものとわかってからの人々の価値観の変化の描写が非常に秀逸。壊れていく日常と逃げ出す人々やそれに何とか順応しようとする人々の描写が非常にリアル。
      • そしてその怨霊に対しただ恐れるだけではなく、その機に乗じて金儲けの算段を企てる人々や無責任に人々を扇動するデマやマスコミの描写があるのも非常に生々しい。
    • また怨霊がもたらす災禍は、立場に関係なく容赦なく人々を襲っていく。ある意味現実の災害のシビアさにも通じるものがありその点でもリアリティが高い。
    • ある意味後の『真・女神転生』のような日常が浸食されていくシナリオの先駆けともいえよう。
  • より恐怖感を強調したグラフィック演出
    • わずか4色という色数で描かれた独特のグラフィックは本作の不気味な雰囲気をより強調している。
      • 過去作の『魔界復活』でとられた手法である実写取り込みの背景を単一色の濃淡で描写し、そこに人物を当て込むようにすることで強烈なインパクトを醸し出している。
    • また夜間の探索中に時折背景に溶け込むようにして怨霊の姿が一瞬出てくる演出も非常に秀逸。
      • 後にシナリオの進行で怨霊の力が強まってくると出現しっぱなしになったりしてくるので、否応なしに恐怖感をあおってくる。
    • さらにシステム系のコマンド選択時に突然恐怖をあおる演出も。システムとのリンクも相まって没入感は絶大。
  • 完成度の高いBGM
    • 音楽にこだわりのあるソフトスタジオWING作品だけあって、FM音源で奏でられる完成度の高い怨霊サウンドも恐怖感をより強力なものにしている。
      • PC88版はサウンドボードIIに対応しており、BGMに時折混ざってADPCMで流れてくる音声がより恐怖感をあおってくる。

問題点

  • 移動に手間がかかる。
    • 本作の移動に用いる「行く」コマンドは隣接した場所にしか行けないため、現在地から遠くに離れた場所に行く必要がある場合は非常に面倒。
    • 町のつながりも複雑で、移動時に地図の表示もないため、マニュアルにある地図がないと移動も困難。
      • とはいえ、ある意味これが一種のマニュアルプロテクトとしても機能している側面もあるのだが。

総評

超能力やオカルトなどのともすれば現実的ではなく浮きそうな題材ながら、完成度の高いシナリオで魅せてくれるソフトスタジオWINGの傑作。
システム周りで若干不便な点もあり題材的に人を選ぶ側面はあるが、刺さる人には非常に刺さる作品でもある。

余談

  • 本作には「怨霊退散護符」が付属しており、手元においてプレイしないと 呪われる という触れ込みがあった。*1
    • なお、本作は後にSOFBOXで再販されたりプロジェクトEGGで配信が行われているがそれらには当然護符は付属していないため、ツッコミを受けたのは言うまでもない*2
  • 本作は制作中に様々な怪現象が頻発したことでも有名。
    • 開発中に電源を入れていないはずのプリンタが突然稼働して意味のない文字を書き出していたり、インタビューで録音したはずの音声が録音されていなかったりなど。
    • また、作曲中にイントロ内に女性のスキャットらしき悲しそうな歌声がなぜか混入していたことがあったのだが、実はその前に開発元が入居しているビルで女性の投身自殺が発生していたことがあり、そのことが原因ではないかと言われていたとか。

移植

  • 後に本作はフジコムから『真・怨霊戦記』に改題されてPCエンジンCD-ROM2とWindows95にてリメイク移植されている。
    • PCエンジン版(1995年9月22日発売)はハードの末期に発売。ハードにふさわしく演出面が強化され、声優によるボイスも追加された。システム面でも移動時に地図が表示され、セーブ個所も複数設けられたことでPC版よりもプレイしやすくなっている。
      グラフィックの色数が増えたことで美麗になったが、そのために雰囲気が大きく変わっていることについては賛否両論。
    • Windows版はシステムが大きく変更。ほぼ紙芝居的なビジュアルノベルの形式になった。目の不自由な人向けに選択肢を音声でしゃべることで対応するSound eyeシステムを搭載。
      システムが大きく変わったことが災いしてか、あまり良い評価は得られていない。
  • また、携帯アプリ版として『怨霊戦記mobile』がFOMAで2009年に配信されていた。

その後の展開

  • 後にWindowsにて続編として『怨霊戦記外伝 庭川村伝説』が制作された。主人公は本編と同じく北原弘行であるが、こちらでは霊能力を持つ探偵という設定になっている。
    • 前後編の2部作で構成される予定であり、前編はVectorにて無料で公開されているが、残念ながら後編が出る前にソフトスタジオWINGが解散してしまい、後編が日の目を見ることはなかった。

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ADV PC88 1988年
最終更新:2024年03月13日 21:24

*1 実際のところは不正コピー対策として正規版を買わせるための方便である。

*2 一応、EGG配信版についてはマニュアルのPDF内に護符が掲載されている。もちろんそんなのでいいのかというツッコミを受けることになったが。