本稿はソーシャルゲームが原作のゲームを扱っています。
本Wikiはソーシャルゲームの執筆が一切認められていないため、本作(パズドラストーリー)の詳細に関する記述に限定し
原作に関する情報は割愛しています。

本作は不定期なアップデートが行われます。
現在の本稿は、Ver1.5.3(2025年3月4日配信)に基づく内容です。


パズル&ドラゴンズ ストーリー

【ばずるあんどどらごんず すとーりー】

ジャンル パズルRPG
プラットフォーム iOS 13.5以降、macOS 11.0以降
メディア Apple Arcade配信タイトル
開発元 ガンホー・オンライン・エンターテイメント
配信日 2023年12月5日
定価 Apple Arcade 月額900円
※ゲーム内課金なし
プレイ人数 1人
対象年齢 4歳以上
判定 良作
ポイント Apple Arcadeにパズドラ参入
入門者向けの優秀なUI
定期追加コンテンツが自由に遊べる
副題の割にストーリーは微妙
パズル&ドラゴンズシリーズ


概要

2012年に配信されたソーシャルゲーム『パズル&ドラゴンズ』を原作として、iOSのゲームサブスクリプションサービス「Apple Arcade」向けに制作された作品。*1

本作は協力・対戦機能などを持たない完全な1人用ゲームであり、オリジナルのストーリーに沿って進むシンプルな面クリア制のパズルRPGである。パズドラシリーズの初心者向けにデザインされており、「チームを育てながら世界中のダンジョンを踏破し、ドラゴンを巡る大冒険に出かける」というパズドラの原点に沿った構成となっている。UIやゲームルールは前作となる『パズドラSwitch』から流用されつつ、チーム編成やキャラクター育成といったRPG要素が再び取り入れられている。

  • 公式での略称は『パズドラS』が用いられる。

ゲーム内容

基本ルールは前作『パズドラSwitch』の冒険モードを一人で遊ぶ場合とほとんど同じなので、そちらを参照して頂きたい。本項では前作からの変更点を中心に述べる。

  • 『Switch』では搭載されていなかった チーム編成とキャラ育成機能が復活した。
    • これまでのパズドラシリーズで「モンスター」と呼ばれていた各種のキャラクターたちは、本作では「クリーチャー」と呼称されている。自身で集めたクリーチャーをチームに編成し、それを用いてダンジョンを攻略していくこととなる。
    • クリーチャーを入手するためには、以下の手順からなる「クリエイト」という作業が必要となる。本作にはガチャのシステムは無く、全てのクリーチャーがクリエイトにより入手可能である。
      • 1.クリーチャーの「ルーツ解放」をする。原則、当該クリーチャーがダンジョン内の敵として出てきたのを見ればルーツ解放となる。
      • 2.クリーチャーのクリエイト条件を満たす。当該クリーチャーより下位の指定されたクリーチャーをクリエイトし、そのレベルを一定まで上げることが要求される。場合により、特定のダンジョンのクリアが条件に入ることもある。
      • 3.クリエイトに必要な「クリスタル」と「マナ」を支払う。ダンジョン内で敵クリーチャーを倒すとクリーチャーと同じ属性のマナを入手でき、確率でそのクリーチャーの顔が描かれたクリスタルがドロップする。クリエイトで用いるクリスタルは作りたいクリーチャー自身のものではなく、下位のクリーチャー1〜5種類のクリスタルを数個ずつ要求される。
    • クリエイトで入手したクリーチャーは、ダンジョンに連れて行ったりマナを与えることでレベルアップし、それに応じて種ごとに固定の覚醒スキルも開放される。育成要素はレベルのみ。
      • 最初はLv15が最大だが、ストーリーを終盤まで進めるとクリスタルを支払って限界突破ができるようになり、レベル上限が20に上がる。さらに上の超限界突破、Ver1.4.0以降で追加された超絶限界突破があり、真の最大Lvは50となっている。
      • Ver1.5.0以降、最大Lvを40→50に引き上げると、主属性と同じ属性の第3属性が与えられるようになった。*2
      • 過去シリーズと異なり、進化の概念はない。同名でレア度が異なるクリーチャーは多いが、レア度毎に個別にクリエイトすることになる。
    • チームは「コンボチーム」「つなげ消しチーム」「多色チーム」などが用意されており、それぞれに固有のチームスキルがある。条件を満たしたパズルをすることで攻撃や耐久を行うため、条件と噛み合ったクリーチャーを自分で選択し、編成していくこととなる。ダンジョンクリアによりチームが増えていき、後半に解禁されるものの方がより強力なチームスキルを持つ。
      • 自分で選べるクリーチャーは5体までで、ダンジョンに入る際は別枠で「助っ人」クリーチャーが1体追加され、全6体で攻略する。助っ人は手持ちクリーチャーではなく別途用意された助っ人リストから選ぶことになる。ダンジョンをクリアしていくと助っ人に選べるクリーチャーが増え、そのレベルも上がっていく。
  • 本作に登場するクリーチャーを集約した「ルーツツリー」という項目が存在する。これを選択すると5つの属性毎にクリーチャーが網羅された樹形図が表示される。
    • 上から下にかけてクリーチャーのレア度が上がる。ルーツの繋がりによりクリーチャーが強化と発展を遂げてゆく様子が表現されたレイアウトとなっており、作品のフレーバーとして機能している。
  • ダンジョンは大きく「ストーリー」「スペシャル」「コロシアム」に分けられる。
    • 「ストーリー」は本作のメインコンテンツ。一続きになった全16個のダンジョン(最初の2つはチュートリアル)から成り、それぞれに最大5個ずつのフロアが設けられている。全て踏破すればゲームクリア。
      • チュートリアル中と、各ダンジョンの最初のフロア開始時、最後のボス戦時では、テロップが流れ、キャラクターやナレーターによる語りが挿入される。これによりストーリーが進んでいく。
      • 一部のフロアでは、バトルの合間に分岐点があり、2つの選択肢のいずれかを選んで進むことになる。原則としては上の選択肢が正規ルートだが、下を選ぶと本来より強力な、その場所でしか会えない敵が現れる。
    • 「スペシャル」は本編に絡まない単発のダンジョンが集められており、多くはその場所限定のクリーチャーに出会える「降臨」ダンジョンである。その他、1日1回だけクリアできるボーナスダンジョンもここにある。
      • 降臨ダンジョンは毎週月曜日に1つずつ追加され、そのつど新しいクリーチャーが登場するようになっている。
    • 「コロシアム」はストーリーを全制覇すると出現する高難易度のダンジョンで、長丁場の戦いが楽しめる。
  • その他、プレイヤーランクやダンジョンクリア状況に応じたアチーブメントが用意されている。
    • パズル時のドロップの形状やダンジョンのBGMが変更可能。
    • クリーチャー入手数やプレイヤーランクの一定以上到達が、ルーツ解放の条件となるクリーチャーが何種類かいる。

評価点

  • 入門者でも楽しめる手頃な難易度
    • 前作『パズドラSwitch』と同様、難易度曲線はストーリーの終盤まで比較的緩やかである。冒険を続けるなかで気に入ったクリーチャーを作成し、自分ならではの好きなチームを作りながらプレイしていっても、余裕を持ってエンディングまで到達可能。
      • 一方で、序盤の育成が不十分な状態でもストーリーの分岐ルートに挑めたり、エンディング後に高難易度の降臨やコロシアムが現れたりと、シリーズ経験者を唸らせる手応えを持ったシーンもちゃんと用意されている。しかし、ストーリーを全部見るだけならこれらに挑まずとも問題はない。
    • ドロップ操作時間はチームごとに決まっているが、12秒がデフォルトのことが多い。*3Switch版と比べると短くなっているが、代わりに操作時間を延長できるスキルが充実しており、必要に応じて編成に組み込むことができる。
    • 一部の覚醒スキルが過去シリーズよりも強化されている。
      • 一例として「つなげ消し強化」覚醒は過去作の属性強化・列消し強化に相当するが、今作ではドロップが6個以上繋がってさえいれば横1列に並んでいなくても発動でき、「ダメージ無効貫通」覚醒(3×3の正方形を作って発動)との同時発動が可能になっている。
      • 「暗闇耐性」「毒耐性」などの耐性覚醒は、チーム内に1個あるだけで100%の確率で妨害を防げるようになった。また、所持者がバインド状態にされても効果は失われない。
    • 過去作と異なり、今作ではダンジョンの途中でゲームオーバーとなった際、それまでに入手していた報酬はそのまま持ち帰れるようになった。高難易度ダンジョンの序盤でドロップする素材を狙う場合は、序盤で全力を出し目的の素材入手後にわざと負けることで、簡便かつ迅速な素材集めが可能となっている。*4
  • 工夫が可能なチーム編成機能
    • 400種類以上の多様なクリーチャーが存在し、入手すれば自由にチームへ編成することができる。それぞれのクリーチャーは固有のスキルや覚醒を持っており、いずれにも強みを引き出せるシーンが存在する。
      • 基本的にはレア度が高いクリーチャーの方がパラメータが高く、覚醒スキルも多い。覚醒スキル枠3個を全て埋められるのは★6以上のクリーチャーに限られる。しかし、属性や覚醒スキルで特定の組み合わせが要求される場面もあるため、★4・★5のクリーチャーにも出番は頻繁に回ってくる。
    • また本作のクリーチャーには過去シリーズにおける「タイプ」の概念がなく、攻撃力エンハンスのスキルなどは必ずチーム全体に効果をもたらす。編成を縛る要素を減らし、自由度の高いチーム編成を可能としている。
    • Ver1.4.0以降に追加された超絶限界突破やシンクロ機能をフルに活用すると、最終的なクリーチャーのステータスは他のシリーズ作品と比較して非常に高くなる。
      • 無理に高レア度のクリーチャーで編成を固めずとも、コロシアムなどの高難易度ダンジョンの敵の攻撃も余裕を持って受けることができるため、手塩にかけて育てればお気に入りのクリーチャーを難しいダンジョンで活躍させられる。
  • クリーチャー収集のモチベーション維持に役立つUI
    • クリーチャーを集めていくことでルーツツリーの空きが次第に埋まっていく過程は、図鑑収集系の楽しみとしては十分な機能を有している。ルーツツリーは5属性に分けられるが、場合によっては別の属性のクリーチャーが混ざってくることもあり、クリーチャー同士の意外な関係性に気付かされることもある。
    • 前作『Switch』ではダンジョンクリア時の報酬がプレイヤーランク経験値しかなかったが、今作ではクリーチャーの入手や育成に使う多様な素材が手に入るようになったため、多くのダンジョンに何度も通う動機が生まれている。
    • クリエイト画面のUIが優秀。不足しているクリスタルをタップすると、「そのクリスタルがドロップする可能性のあるダンジョンの一覧」が表示され、そこからまっすぐダンジョンへの潜入が可能となっている。
      • さらに、「ダンジョン内でドロップするクリスタルの総覧と、それらの現在の所持数」も一緒に確認できるため、目的の他にも所持数の少ないクリスタルがあるのでそれを一緒に取りに行く、といった選択ができる。
  • クリーチャーの美麗なアニメーション
    • 登場クリーチャーは前作『Switch』と同様、全員が原作に準拠したアニメーションを有しており、スマートフォンに加えPCでも閲覧可能である。「イデアル」など、前作からアニメーションの改修が入り滑らかな動きを得たクリーチャーも一部存在する。
      • 『Switch』版の「デカホノりん」など、単純拡大されただけのキャラクターは居なくなった。
      • 原作ではアニメーションしないモンスターが、今作にクリーチャーとして登場するにあたり新規にアニメーションが起こされたものも存在し、Ver1.4.0以降のアップデート時にも多数追加されている。
      • また、本作の配信開始以降に原作で追加されたモンスターも、アップデートで一部が本作に登場している。
      • ごくわずかだが、本作で初登場したクリーチャーもいる。*5ただし本作オリジナルというよりは、原作で今後登場予定のモンスターが先行公開されたという意味合いが強い。*6
    • 本作のメインメニュー画面では、現在使用しているチームに編成される5体のクリーチャーの姿を見ることができる。自分のキャラクターを起動後すぐに観察できるのはシリーズでも珍しい特徴であり、お気に入りのキャラクターがいつでも見られるのはプレイのモチベーションにも結びつく。
  • 高頻度のコンテンツ追加
    • リリース以降、毎週月曜日に新しいスペシャルダンジョンが追加されている。追加ダンジョンで新たな敵に出会い、そのルーツを解放することで、新たなクリーチャーを手持ちに加えることができる。
      • クリスマスやお正月などの季節ダンジョンでは一度にまとまった数のクリーチャーが追加され、手持ちのクリーチャーを潤沢にすることができる。
    • アップデート自体も1〜数ヶ月ごとに頻回に行われており、新規クリーチャーの追加のほか、クリスタルのドロップ率の上昇、チームスキルの全体的な上方修正、Apple Pencilへの対応などが行われている。
      • ゲーム進行が不能になる不具合が生じたこともあったが、迅速なアップデートにより修正されている。
      • 例外として年末年始はAppleが長期間にわたり業務を停止する関係上、2024年末に発生した不具合の修正は2025年1月中旬(Ver1.5.2配信)までかかった。

賛否両論点

  • 横画面でしかプレイできない
    • 原作パズドラとは異なり、縦画面でのプレイに対応していない。通学・通勤中などの限られたスペースでプレイする時は煩わしさを感じる可能性がある。
    • 『Switch』と同じレイアウトなので、そちらに慣れていれば気にならないという声も。
  • スキル名の廃止は据え置き
    • 『Switch』で廃止された敵・味方のスキル名表示は、今作でも復活はしていない。
      • 原作パズドラのストーリーダンジョンでは敵スキル名にセリフを当てて物語を回しているシーンが多く、今作でも似たような試みが可能な余地はありそうだったのだが。
      • 「神魔王ルシファー」など一部の敵は先制攻撃でスキルを封印した上で、プレイヤーが特定のパズル条件を達成しないと即死級のダメージを与えてくるが、説明が全くないのでどう対応すればいいのかわかりにくい。封印耐性覚醒と強力なダメージ軽減スキルがあれば、条件を無視した攻略も可能ではあるのだが。
  • 育成要素そのものは比較的簡素
    • クリーチャーの強化可能な部分はレベルだけなので、クリエイトしてレベル最大まで上げ限界突破・超限界突破も済ませれば、そのクリーチャーに関しては「育成完了」という扱いになり、それ以上のものはない。手軽であることは評価点だが、やり込み要素としては少し味気ない。
      • クリーチャーのスキルや覚醒スキルは種ごとに固定であり、それらを強化することは不可能である。
      • Ver1.4.0では、各クリーチャー毎に指定された数種類の別のクリーチャーのLvを上げることで、元のクリーチャーのパラメータも上昇する「シンクロ機能」が追加されている。あくまで強化可能なのはレベルのみという要素を残しながらも、育成の幅を広げる調整となっている。
    • Ver1.5.0で最大Lvが50に引き上げられたことに伴い、最終強化に必要とされるマナの総量が飛躍的に増えており、クリスタル集めの手間と比べてマナ稼ぎの労力も無視できるものではなくなりつつある。
      • ★6以上のクリーチャーだと、Lv40→50に上げる際のマナ消費が10万を超えてくる。
      • これほどの量のマナを効率よく稼ぐとなるとコロシアムダンジョンを周回するしかないが、場所によっては出現する敵クリーチャーの属性が偏っており、結果として得られるマナの属性も偏ってしまうことが多い。*7
  • ダンジョンボーナス覚醒による編成の画一化
    • 一部のクリーチャーが持つ「ダンジョンボーナス」という覚醒は、敵を倒した際のマナとランク経験値の収量、およびクリスタルのドロップ率を上昇させる効果を持つ。そのため、効率の良い素材集めを目指す場合はダンジョンボーナスを持つクリーチャーを可能な限り多く編成することとなる。
      • マナとランク経験値は覚醒1個あたり獲得量が10%増える単純な効果だが、クリスタルドロップ率は「元の確率とは別で10%加算」とかなり強力。例えばドロップ率25%の敵をダンジョンボーナス覚醒5個(50%分)のチームで倒すと、クリスタルドロップ率は「25%の50%増しで37.5%」ではなく「25%+50%=75%」となり、元の1.5倍どころか3倍にまで上がっている。
    • ダンジョンボーナス覚醒を持つクリーチャーは当然ながら他の覚醒スキルが少なく、火力やギミック耐性に難があるものが多い。*8しかしながら、クリスタル集めで多く赴くことになるストーリーダンジョンや★5レベルの降臨程度であれば、6体全員をダンジョンボーナス持ちにしても十分攻略可能な難易度であるため、気がついたらダンジョンボーナス統一編成ばかり使っているということになりやすい。
      • もちろん高難易度ダンジョンでは流石にダンジョンボーナス以外のクリーチャーも使わないとクリアは困難だが、そのようなダンジョンでしか入手できないクリスタルはそもそも用途が乏しい場合が殆どである。
      • 一方で、ダンジョンボーナス数を多少犠牲にして、代わりにスキル使用と簡単なパズルのみで短時間で敵を倒すプレイ方法もある。ダンジョンボーナス覚醒持ちの「サレーネ」系はスキルで大量の光ドロップを生成できるため、ダンジョンボーナスがないが高い単体火力を発揮できるクリーチャー(「ゼウス」等)と組み合わせて使いやすい。手軽に素材を集めたいならこちらも検討に入れたい。
      • なお、Ver1.4.0以降ではシンクロ機能や超絶限界突破により味方クリーチャー全体のパラメータ上限が大幅に引き上げられたため、★6レベルの降臨や初期のコロシアムなどの高難易度ダンジョンが相手でも、ダンジョンボーナス統一編成での攻略が現実的になっている。Ver1.5.0以降は★5〜★7の高レア度にもダンジョンボーナス持ちが増加しており、編成のバリエーションが広がっている。
  • 落ちコンを無くせない
    • 原作や『パズドラGOLD』『パズドラSwitch』と異なり、今作にはVer1.5.0時点まで「落ちコンなし」状態が実装されていない。
      • クリスタルを多量に集めるために低難易度ダンジョンの周回プレイが中心となるゲームだが、不必要な落ちコンによるタイムロスの発生を構造上避けることができない。
      • 加えて今作は1コンボだけで最大火力を出す手段が乏しいため、難易度の低いダンジョンでもある程度のコンボ数が要求されがち。結果として落ちコンもさらに増える。
      • もちろん高難易度ダンジョンの攻略では基本的にコンボ数は増えた方が有利なため、そういった場所で落ちコンが邪魔に感じることはないだろうし、敵が落ちコンなしにしてくることもないという安心感はあるが。
  • Apple Arcadeというプラットフォーム上の問題
    • 原作や関連アプリと異なり、月額課金が必須のため基本無料でのプレイができないのは気になるところで、初心者・入門者向けの割に原作よりもプレイ開始のハードルが高い。Androidにも対応していない。
    • しかし、月額課金さえしてしまえばゲーム内には課金要素はない。ガチャ運などに左右されることなく、確実に全てのクリーチャーのクリエイト権を得ることができる。
    • また、Macに対応しているのは特色のひとつ。PCでプレイ可能なパズドラシリーズは史上初である。

問題点

  • 副題の「ストーリー」が大味
    • ある意味、最大の問題。『パズドラストーリー』というタイトルにもかかわらず、ストーリー面の内容が薄く、評判が良いとは言い難い。
    • まず、主要な登場人物と言える存在が非常に少ない。チュートリアルを担当する老人「エレメイ」と、冒険の舞台となる大陸リーブラを守護する女神として登場する「エスカマリ」の2名だけである。
      • これ以外のキャラクターは全て、各ダンジョンの大ボスを務めるドラゴン系のクリーチャー。いずれも過去にリーブラの様々な場所で暴れ、そこに暮らしていた人民の文明を滅ぼした存在とされている。固有セリフはラスボスを除くとほとんど無い。
    • 大まかにストーリーの流れを説明すると、大陸リーブラの過去の文明を調査する冒険の中でプレイヤーに語りかける声の正体が少しずつ明らかとなり、やがてその主であるエスカマリが現れる。彼女から得られる助言を元に、リーブラを滅亡させた元凶となる存在へと近づいていき、それを撃破すればエンディング、というもの。
      • ストーリーは完全に一本道であり、大きな起伏もなく完結を迎える。プレイヤーがやることは単純に旅先で出てくるクリーチャーを倒すだけである。
    • 本作のクリーチャーは非常に凶暴性が高く、リーブラのかつての住民や、大陸を探検する冒険者らを容易く殺傷してしまうとされる。無論テキスト上だけの設定であり実際にクリーチャーが人に危害を加える場面が描かれることはないが、『パズドラZ』『パズドラクロス』、アニメ『パズドラ』などの人とモンスターが共生している過去シリーズや、原作のストーリーダンジョンの喜劇的な雰囲気とは大きな乖離があり、シリーズ経験者だと違和感を抱きやすい。
      • また「クリスタルはクリーチャーの体内で作られる真珠のようなもの」とエレメイから説明がある。敵を倒すとクリスタルがドロップするのだが、その生成過程の説明が妙に具体的なため、あたかも倒した敵を解体して体内のクリスタルを得たのかのような想像をかき立ててしまう。
    • ダンジョン開始時には、その地がかつてどのように栄えていたかを示す文章が、ダンジョン大ボスの出現時にはそのクリーチャーが如何にしてその地を滅びに至らしめたかを示す文章が、それぞれ挿入される。
      • いずれも滅亡した文化の表現としてか、詩的で退廃した(悪く言えば厨二的な)表現で綴られており、これらもパズドラ過去作ではあまり見られなかった様式である。
    • 擁護すると、ストーリーそのものには目立った破綻はなく、きちんと一つの物語として成立している。ラスボスがなぜリーブラを滅ぼすに至ったかの動機や、女神エスカマリと過去のリーブラとの繋がりなどの世界観設定も、劇中で十分なフォローがされている。ただし、あまり特筆するような捻りはなく、無難という表現の域は出ないと思われる。
      • もともとパズドラの原作には「龍と魔の物語」という公式サイト上で不定期更新されている長編物語があり、*9そのレベルの濃密なストーリーを『パズドラストーリー』に期待していて、肩透かしを食らったように感じたプレイヤーが残念ながら多かったようである。
      • 上記の通り、パズルRPGを彩るストーリーとして致命的な不足があるわけでは決してない。問題だったのは、 仰々しく副題に『ストーリー』をつけて、いかにも物語が作品全体のアピールポイントであるかのように見せてしまったことの方 と言うべきかもしれない。
    • なお、エレメイとエスカマリは原作では普通のモンスター扱いだが、今作ではストーリー上での出番が多いこともあってか、クリーチャーとしての扱いは受けていない。そのため、クリエイトで入手したり、チームに編成してダンジョンに連れて行ったりすることはできない。
    • 2024/06/27配信のVer1.4.0では、既存のメインストーリーに加筆修正が行われた。話の大筋に変更はない一方、冒険者自身の視点からの文章が追加されたり、エスカマリの会話が増えて意思が理解しやすくなったり等、ポジティブな変化が見られる。
      • 一方で一部のボスクリーチャーには「(噴火音のような咆哮)」などシュールな文面も追加されている。
  • 同キャラ編成の禁止
    • 今作はパズドラシリーズとしては珍しく、同種のクリーチャーを複数体所持することができない。
      • 原作パズドラや過去の家庭用シリーズでは、同じモンスターを一つのチームに複数編成して、単一の強力なスキルを人数分連続で使用できるようにして攻略することが比較的オーソドックスに行われていた。今作ではそもそも同一クリーチャーを1体ずつしか入手できなくなっており、このような編成を組むことは不可能。
      • 固定位置のドロップ変換スキルなど、複数体同時に使用することで真価を発揮するスキルは少々扱いづらい。
      • 一応、助っ人で使えるクリーチャーであれば、自分も同じものを入れれば1チームに2体編成できる。
      • 同名でレア度が異なるクリーチャーは高レア側の性能が低レア側の単純強化版であることが多く、完全な上位・下位互換の関係になる。だが、低レア側のクリーチャーも「一つの編成で高レア側と2体同時に起用する」ことで活用できる場合がある。
  • 助っ人機能が不自由
    • 今作で使用できる助っ人クリーチャーはあらかじめ種類が決められており、自分で所持しチームに編成できるクリーチャーの総数と比べるとかなり少ない。加えて、特定のクリーチャーが助っ人に選択できるようになるかどうかは開示されず、「助っ人セット」が手に入るアチーブメントを全て達成した上で自分で確認するしかない。
      • ストーリー序盤で入手できる低レア度のクリーチャーを除くと、大まかな法則として「ストーリーの分岐ルートに出現するクリーチャー」や「★6降臨および★7降臨(正規ルート)のボスクリーチャー、ただし季節イベントは除く」は助っ人として使用できる場合が多い。一方、コロシアムのクリアで手に入る助っ人セットはダンジョンの中身を網羅しておらず、ごく一部のモンスターしか助っ人にできない。
      • また、助っ人クリーチャーにはシンクロ機能が適用されないため、同レベル帯の自前クリーチャーと比べてステータス面では見劣りする。
  • クリスタルの使用頻度とダンジョン需要の偏り
    • クリーチャーのクリエイトに使うクリスタルは自身より下位のものなので、最高レアに近いクリーチャーのクリスタルは入手しても使う場面が少ない。
      • それらのクリーチャーが出るダンジョンは概して高難易度だが、基本的にはクリーチャーのルーツ解放とクリエイト条件の達成とを目的として挑むことになり、1回のクリアのみで目的達成となることが多い。
      • 2024/06/27のVer1.4.0アップデートで、超絶限界突破の際にクリーチャー自身のクリスタルを消費するようになったため、クリエイトだけにとどまらず最大まで育成をするのであれば高レア度のクリスタルも集める必要ができた。ただし、レア度が高いほど必要数が少ない仕様になっているので、相対的に高レア度クリスタルの需要が低い状態は変わっていない。
      • 無論、高レアのクリスタルがさらに上位のクリーチャーのクリエイトに使われるために、高難易度ダンジョンを周回しないとならない状況もある。「アレス」「ゼウス」等が該当し、クリスタル入手には10バトルもあるコロシアムダンジョンに何度も挑む必要がある。
    • 逆に、高レア度のクリーチャーが多い系統の低レア度クリスタルは湯水のごとく消費される。
      • 意外と集めにくいのが★3のクリスタル。多くのストーリーダンジョンでは★3クリーチャーのランダム出現候補が多く、目当てのクリスタルをピンポイントで集めるのは少々手間取る。降臨ダンジョンの道中なら特定種の★3クリーチャーに出会えるのでそれを活用するのが推奨されるが、全員が登場するわけではない。
    • 顕著なのが「ガチャドラ」系。
      • ★7のガチャドラたちをクリエイトするためには下位(★3〜★5)の3種のガチャドラのクリスタルが各10個以上ずつも要求される。レベル限界突破にもそれと同数、超限界突破にはさらに3倍量のクリスタルが必要。
      • 加えて下位のガチャドラは確定出現するダンジョンが無く、各地のダンジョンでの低確率出現を狙って周回数を増やさないと集まらない。
      • ただ、当の★7ガチャドラたちのルーツ解放条件がプレイヤーランクに対するアチーブメントであり、上記のガチャドラ集めを完遂しても届かない莫大な量のランク経験値を稼がないとそもそも作成可能にならないため、やり込み要素の側面が強い。
      • なお、Ver1.4.0時点では★7ガチャドラ自身のクリスタルは入手手段が用意されていないため、彼らの超絶限界突破は不可能となっている。
  • スキル遅延攻撃への対策がない
    • 特にVer1.5以降では、「スキルが◯ターン減少」する攻撃を敵が使用する頻度が増え、先制で味方クリーチャー全員に使用するケースも増えている。
    • 本作には原作と異なりスキル遅延耐性やアシストスキルが存在しないため、スキル遅延を受けると必ずスキルが一切使えないターンが生じてしまい、それを防止することが不可能である。
      • スキルを使わずに敵のその後の行動を耐え、スキルを貯め直すかパズルのみで敵を撃破する必要がある。これ自体が極端に難しいバランスというわけではないものの、スキルを用いた即時撃破ができないという点はプレイしていて手間に感じやすい。
+ アップデートで改善された問題点
  • 一部で不便なユーティリティ
    • チーム編成はそれぞれのチームスキルごとに保存しておけるが、Ver1.2.0までは同一のチームで組んだ編成を複数保存することができなかった。特につなげ消し系のチームは基本的に単一の属性のみで組まれるため、同じチームスキルでも属性ごとに別々の編成を保持したくなるが、これができないのは痛い点であった。
      • Ver1.3.0(2024/3/11配信)で、各チームスキルごとに編成を5個ずつまで保存できるようになった。
  • 達成の非常に面倒な実績
    • 本作はApple ArcadeのGameCenter機能における実績システムに対応しており、クリアしたダンジョンのフロア数と最大コンボ数で実績を得ることができる。この実績の中には「30コンボ以上を達成」という非常に難易度の高いものが存在する。
      • 普通にパズルして発生する落ちコンのみで達成するのは天文学的な確率となり、ほぼ不可能。Ver1.2.0以前での達成には、パズル結果に10コンボも加算できるスキルを持つ「ダイヤガチャドラ」を編成するのが実質的に必須*10となるが、ダイヤガチャドラのルーツ解放条件はプレイヤーランク99の達成なので、これもかなりハードルが高いものだった。
      • Ver1.3.0(2024/03/11)でコンボドロップが実装され、コンボ数加算スキルとは別口で最大10コンボの加算が可能となったため、ダイヤガチャドラ無しでも実績の達成が可能になった。
  • 強力なチームの偏り
    • Ver1.3.0アップデート時に、コンボチーム+のみを対象としてチームスキルの効果に「一定確率でコンボドロップが降ってくる」が加えられた。
      • 最大火力を出すために盤面のみでは確定しない8コンボ以上を要求されるチームのため、消すだけで自動的にコンボが加算されるコンボドロップとの相性は非常に良い。
    • だがそれだけではなく、本来ならつなげ消しチームや多色チームなどの方がパズル条件上適切である編成であっても、敵のコンボ吸収を回避したり、コンボ数の増加で回復力を引き上げたりすることを狙ってコンボドロップを活用した方がかえって戦いやすい状態となってしまっており、攻略環境においては概ねコンボチーム+一択の状態となっていた。
      • 欠点がないわけではなく、敵の割合ダメージに弱かったり、コンボドロップの個数が不安定である等、ある程度扱いには慣れが必要ではある。
    • 後のVer1.4.2アップデートでは、コンボドロップが落ちてくる効果がつなげ消し&コンボチームなど他のチームにも付与され、加えてコンボチーム+以外のチームの攻撃・耐久倍率および操作時間などが全体的に引き上げられる修正が施された。
      • これによりコンボチーム+の一強ではなくなり、編成に合った適切なチームスキルで戦いやすくなった。

総評

Apple Arcade向けに調整が施されたパズドラシリーズの新たな意欲作。
『パズドラSwitch』のシステムをベースに、チーム編成および育成機能を復活させ、
多様なクリーチャーからチームを作りダンジョンを攻略していく、
原作パズドラにより近い体験が可能な作品となっている。

シリーズ入門者・初心者向けの優しめなゲームバランスと優秀なUIが光り、
毎週追加されるダンジョンで新たなクリーチャーに次々と出会える。
ゲーム内課金やガチャの要素はなく、全てのクリーチャーを入手できることもプレイ中の安心感に結びつく。

月額課金制のため、ユーザーフレンドリーな設計に反して導入ハードルが高いのが玉に瑕だが、
パズルRPGの源流で楽しめるゲーム体験は今作でもしっかりと実装されているため、
環境があれば是非ともプレイしていただきたい一作。

ただし、タイトルに冠されている割に『ストーリー』自体は簡素で読む人を選ぶ。
「パズドラの世界観で重厚な物語を楽しみたい」ことを動機としてプレイするのは、あまり推奨できない。


余談

  • 本作は全世界150ヶ国以上で配信されており、10ヶ国語に対応している。言語設定の変更はオプションからいつでも行える。
  • 本作のゲームシステムやUIを流用した後継作『パズル&ドラゴンズ ゼロ』が、2025年5月下旬にiOS/Android向けにガンホーからリリースされる。
    • 基本無料方式だがソーシャルゲームではなく、App内課金は広告削除などの買い切り要素のみとされる。
最終更新:2025年04月26日 07:13

*1 Apple ArcadeはAppleに対する月額課金制のサービスであり、加入期間中はApple Arcade内で配信されているゲームアプリを自由にダウンロードし、iPhoneやMac等のiOS機種でオンライン・オフライン環境いずれでもプレイできる。同じApple IDで登録している端末間でデータの共有も可能。また、Apple Arcade内で配信されているゲームには追加の課金や広告の要素が一切ないのが特徴。

*2 もともと副属性がないクリーチャーの場合は第3属性ではなく副属性がつく。

*3 リリース当初は10秒だったが、Ver1.1.0アップデートで延長された。

*4 その代わり、コンティニュー機能は無くなっている。

*5 「黒薔薇の邪影華」が該当する。

*6 しかし当の黒薔薇は、2025年に入っても原作における関連イベントが復刻しておらず、まだ原作に登場していないままである。

*7 コロシアム4は固定出現の敵に火属性が多く、逆に水と木属性はランダム出現のみであり、火のマナは1周で安定して40000程度手に入るのに対し水や木は運が悪いと0〜500しか貰えなかったりする。

*8 特に、ダンジョンボーナスと「追加攻撃」を両立できるクリーチャーは、Ver1.5.3が配信されるまで存在しなかった。

*9 ただし、原作ゲーム内ではごく断片的にしか語られていないが。

*10 Ver1.2.0時点では、他のクリーチャーのスキルでは多くても3コンボまでしか加算できなかった。