究極ハリキリスタジアム平成元年版
【きゅうきょくはりきりすたじあむ へいせいがんねんばん】
ジャンル
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スポーツ(野球)
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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タイトー
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開発元
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ウィンキーソフト
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発売日
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1989年7月21日
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プレイ人数
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1人~2人
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定価
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6,800円(税別)
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判定
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クソゲー
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ポイント
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何かにつけてパスワード地獄 ズームアップ導入で試合はグレードアップ 作業化した育成とポンコツなパスワード対戦モード 本格的2リーグ制も中途半端ですぐワープorサイレントワープ
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究極ハリキリスタジアムシリーズ
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概要
前年発売された『究極ハリキリスタジアム』の続編。
タイトーから発行される「新人パスワード」「新チームパスワード」を入れることでデータの書き換えが可能で翌年度などの新しい選手やチームを登録できるようになった。
前作で好評の試合を通じて得たポイントでチーム選手を強化できるシステムも引き継がれている。ただそれによる対戦に関してはバグか仕様か定かではないが後述の通り。
そのためかタイトー自身も本作を完成形として考えていたようで2作目ながら「シリーズ最終作」と謳っていた。
セ・パ12球団モデルのチームと'80年代当時のアイドルの集まり「アイドール(I)」の13球団に加えて、新たに男性芸能人の集まり「エンターズ(E)」が追加され14球団構成。
実在プロ野球モデルの選手とエンターズ(E)の名前は改変されている。
本項目では前作からの変更点を主体に記述する。
変更点
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選手データ書換え用の「新チームパスワード」、「新人パスワード」の導入。
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これにより新しい選手や、新しいチームデータを登録できる。
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他に名前を登録して、任意に選手の名前を変更できるようになった。
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オープン戦が導入。
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育成はこのオープン戦で行い、勝敗やその結果に応じてポイントが獲得でき、前作同様選手ごとに振り分けてチームを育成できる。
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試合後に、それぞれのパスワードが表示される。これを入れることで「SINGLE GAME」で対戦ができる。
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パスワードを入れていないと「SINGLE GAME」を選んでも何も起きず、元の画面に戻される。
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新チーム「エンターズ(E)」の加入によって14球団、2リーグ制になった。
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セ・リーグモデル6球団+「アイドール」の7球団で「タ・リーグ」、パ・リーグモデル6球団+「エンターズ」の7球団で「ハ・リーグ」。
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それぞれの対戦はこの中で行われるため、リーグを越えての対戦は日本シリーズのみ。上記のオープン戦もリーグ内対戦に限られる。
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ペナントレースが導入され、試合数は12・18・30・60試合から選択できる。
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自分がプレーするかCPUにプレーさせるかはEDITのモードの一覧で「COM」か「MAN」を選択する。
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「MAN」が選択されている場合のみ試合開始時に、「WATCH」「AUTO(守備のみのオート)」「PLAY」を選択できる。
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その日その日毎の試合が組まれており、その中から1試合を選んでプレーできる。
全試合1つもプレーする気がない場合「PASS GAME」という選択肢があり、これを選ぶとその日の試合が全部自動消化される。
自分でプレーした場合そのほかの試合は自動で「PASS GAME」と同等の方式でCPUにより消化される。
その結果は、試合終了時又は「PASS GAME」選択時にプロ野球ニュースのような形で告知される。この時順位だけでなく野手とピッチャーの個人成績(防御率、打率、本塁打数など)ランキングも発表される。
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規定試合数を消化した後、それぞれの優勝チーム同士で日本シリーズが行われる。
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前作では解説者はナラチマ(長嶋茂雄モデル)固定だったが本作では、ヘロオカ(広岡達朗モデル)、オフ(王貞治モデル)、タフチ(田淵幸一モデル)、カケッフ(掛布雅之モデル)、カネタ(金田正一モデル)、エカワ(江川卓モデル)の7人とバリエーションが増えた。
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選手のデータの中で表示される「打率」「打点」「防御率」が固定データではなく変動制になった。
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ファインプレーがオート化した。
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きわどいポイントでは、何もしなくても出るので初心者には優しい。
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ズームアップが導入。
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ホームのクロスプレーやファーストでのきわどい瞬間やファインプレーで発動し、盛り上がる効果を雰囲気をより高めている。
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他に前作から引き継がれた乱闘や、酔っぱらい乱入、キャッチャーが励ます「ドンマイ」時も、このズームアップで行われるようになった。
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タイトル画面でも、このズームアップ数々がデモプレー的に流される。
問題点
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何かにつけてパスワード地獄。
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本作を語る上で欠かせないのがこれで新チームパスワードに関してはなんと圧巻の100字!、新人パスワード、育成したチームのパスワードは、いずれも40字と前作の60字より短くなったとはいえ前作は「『を』を除くひらがな+数字で60種類」だったが、本作はそれに「を」に加わっただけでは飽き足らず「アルファベット大文字26+小文字「a」「u」2つの28文字」だけでなく「゛(濁点)」「゜(半濁点)」「-(ハイフン)」「.(小数点)」「'(アポロストロフィー)」までも加わっている。
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これでは恒例の「0(ゼロ)」と「O(オー)」、「1(いち)」と「I(アイ)」は勿論のことヘタすれば「U(ユー)」と「し」など、書き写しミスが出やすい。
一応「O(オー)」は「0(ゼロ)」と区別するために上に棒を入れてはあるが、子供にありがちなのが「これはオーだったと後で覚えてる。太いからオー、細いからゼロ」と思い込んで普通に○だけのオーを書いて、後日になると忘れているのはお約束。
新人パスワード、新チームパスワードはしかるべき所が発行してくれるため活字になってはいるからそのミスの心配はないとはいえ、当初の予定通りそれをフルに使ってこの先、年が変わるごとに楽しもうと考えたらその手間はとんでもなく膨大で小中学生あたりはもちろんのこと、大人でもうんざりして投げ出してしまうこと間違いなし。
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年が変わるごとに新年度版を買わなくていいようお財布に配慮したつもりかもしれないが、精神に対する配慮がまるでできていない。
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育成したチームの対戦も、パスワードを取っていちいち入れないと自分のカセットでも任意の対戦ができない。つまり同じカセット共有する兄弟等で対戦するにも手間をかけたくないなら限られたリーグ内対戦でガマンせざるを得ない。
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せめて自分のカセット内にあるデータぐらいなら手間なくリーグ無関係で2P対戦ぐらいできなかったものだろうか…
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育成がやり込みでも何でもないでもない「ただの作業」になった。
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上記の通りオープン戦をすることで、その結果に応じてポイントが貰えるのだが、単純に両チームともプレイヤー操作にして、目的のチームをコールド勝ちさせるだけで簡単にポイントがモリモリ稼げる。勿論ポイントには上限がある。
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前作のような「やり込むほど強くなる」という育成の醍醐味がなくなってしまった。
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初心者に優しくなったという解釈もできるが、そんなことなら特定のポイントを振り分けるエディットモードにでもすれば充分(実際続編ではそうなった)。
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しかも、この育成したチームは後述のワープした時はもちろん、ペナントでシーズンが終わると初期化されてしまうので、残しておくにはやっぱりパスワードである。
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ゲームバランスは一切育成していない状態が最もまともで、CPUは走力を一切強化しないこともあり育成が進むにつれてどんどん崩壊していく。
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前作もライトゴロが多いのが特徴だったが今作はレフトフェン直が1塁で楽々アウトになる、キャッチャーの送球が二塁手のベースカバーより速く必ず悪送球になる、走力を上げればピッチャー前のバントでホームに還って来られる等々・・・
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評価点と被るが本格的なペナントレースができるようになったものの中途半端。
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2年も前の『燃えろ!!プロ野球』でさえ普通に130試合制の現実に即したペナントレースができていたのに、それが最大60試合というのは中途半端。
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本作のペナントは「PASS GAME」という選択肢があり、これを選ぶとオートで試合が消化される機能があるので「気が向いた時だけ自分で試合すればいい」ため130試合級でもだれにくいシステムになっているので、現実と同じ130試合級のペナントは搭載するべきだっただろう。ただその「PASS GAME」も残念ながらバッチリなシステムではない。
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「PASS GAME」の仕様にも問題があり、特に選手の実力なども考慮せず単にランダム的に適当な結果を宛がうだけ。なので、とことん強化したチームが初期状態のチームに0-10で大敗なんてこともザラ。
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上記の通り、「MAN」を複数設定して兄弟等でそれぞれのチームでペナントを進めようにもプレイできるのは6試合中の1試合のみで、残りの試合は勝手に「PASS GAME」に則って適当消化されてしまう。
例えば2人兄弟ならお互いの直接対決以外はどちらかの試合はその適当なコンピュータ消化に委ねるしかない。
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「SINGLE GAME」は育成したチーム同士カセットを超えて友達と対戦できるモード、或いはリーグ無関係でフリー対戦できるモードかと思いきや、とんでもないポンコツなモード。
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パスワードを入れるとできるようになるこの試合方法がバグなのか仕様なのか定かではないが、とにかく謎だらけでもはや存在の必要性自体疑うレベル。
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オープン戦終了後パスワードを入れるとその育成したチームで対戦できるかと思いきや、いきなり出てくるは14球団選択画面で、チームを選ぶと相手はEチーム固定(一応、相手の方もプレイヤーかCPUを選択可能)。自分がEチームを選んだ場合も同じでEチーム同士の試合になる。
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「なんのこっちゃ?」と思うだろうが実はこの勝手に選ばれるEチームは、パスワードで入力した能力を持ったEチームなので、育成したチームで対戦できるシステムは引き継がれていることに間違いない。つまり友達の持ち込みが2PのEチームということになるのだが、元々Eチームで育成したならまだしも、他のチームなら名前が全然違う選手に能力だけ無理矢理当て込んだところで、自分が育成したチームという実感など湧くはずがない。
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挙句の果てには電源を切らなくてもリセットを押しただけでもうできなくなり、またパスワードを入れなければできなくなる。もちろん続けてもう1試合やりたいかと問われたらまず「ノー」なので気にならないだろうが…
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また、その内容も貧弱で1試合した後は前作のような実況と解説が総評を述べるようなこともなく、そのままメニューに戻るだけ。
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結局カセットの中でも同リーグでしか対戦できない。一応、Eチームはハ・リーグに属しているので、タ・リーグ7球団がEチーム対戦したいなら使えなくもないという程度。
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すぐワープする(消えやすいバックアップ)。
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本作に限ったことではないがこの当時のバッテリーバックアップは接触不良などですぐ消えるものだったが本作はかなり消えやすい。
そうなるとこんしーす゛んはわーふ゜しましたと出て初期状態に戻される。パスワードでデータ書き換えを行っていたなら当然再び書き換えパスワード連続入力地獄。
そればかりか、このメッセージなしでしれっと消えていることまで多々ある。
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このせいもあって、データをパスワードで書き換えて新しいデータで楽しめるという機能を利用する気は尚更なくなる。
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必殺技の使える選手と使えない選手の差がより顕著になった。またチームの中でもその数にバラツキがある。
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速球派投手の「投力」が最大で「火の玉ボール」、変化球派投手の「変化」最大で「分裂魔球」が使えるのだが、その対象の投手がたくさんいるチームと1人もいないチームがある。
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その1人もいないチームが「ドラポンズ(D)」と「ババロアーズ(Ba)」であり、そのモデル「中日ドラゴンズ」は前年のセ・リーグ優勝チームであり、「近鉄バファローズ」は前年パ・リーグの優勝の「西武ライオンズ」にゲーム差0.0の2位(しかも優勝した西武相手に13勝12敗1分と勝ち越している)というのにこの扱いはあんまり。
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打率は実質、出塁率になっている。
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当時では恒例の「フィールダースチョイスもヒット扱い」になるのは目をつぶるにしても、フォアボールやデッドボールで出塁してもヒットとして打率を上げてしまう。
評価点
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前作の良い部分を引き継ぎつつ、ズームアップ導入により一層盛り上がる試合になった。
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また、前作では外野に飛球が上がると、ほぼホームランで、よくある外野フライからタッチアップのようなプレーはほとんどできなかったが、それも解消された。
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フォアボールやデッドボールからの流れもスピーディーになった(そのため乱闘をしたければAB連打を始めるタイミングが早くなった)。
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個人成績まで見られる本格的ペナントレースの導入。
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前作ではファミスタ方式の自分が選んだチームと他全球団の総当りを1度ずつ行う方式だったが、自身の球団を含めてその日その日毎の試合が組まれており、他の試合も同時に並行して後で前作同様ニュースのようなもので結果が知らされるのもよくできている。
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上記の通り60試合は中途半端だが12試合、18試合ならお手軽なものとして楽しめる。
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まるでブルペンのようなリリーフ選択画面。
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選手の状態が投げるボールのスピードで表示される。
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好調な選手はボールが速い。
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ズームアップにより、ファインプレーや際どいプレーがフィーチャーしやすくなった。
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しかも普通のプレイ用キャラでは見られないダイナミックなアクションをしてくれる。
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前年までの野球ゲームでは見られなかった趣向で、これが出るだけでも「おっ!」という気持ちになるので盛り上げてくれる。
総評
試合のシステムは前作を踏襲しているためとっつきやすく、それにズームアップが加わったりと確実に進化している。
新チーム「エンターズ(E)」やそれに伴う2リーグ制、試合数的には中途半端ながら個人成績まで反映した本格的ペナントレースを導入したり、その結果のスポーツニュース風な全試合の結果告知や、個人成績ランキングもなど基本的には順当な進化版と言える。
ただ当初メーカー自身が「シリーズ最終作」と謳い「以降パスワードでデータを作成して新年度などに対応したチームや選手を登録できるようにした趣向」に関しては、選手にしろチームにしろ何かにつけてパスワードを入力するという非常に面倒極まりない作業を強られるのは避けられない「パスワード地獄」にしかならず到底受け入れられるものではなかった。それもすぐ消えてしまうようでは尚更。
そのバックアップ問題や膨大な手間を抜きにしても、やはり翌年、翌々年ともなれば他の野球ゲームに比べると見劣りし「これが完成形の最終作として何年も楽しめるゲームになる」とは言い難いので、その目論見はものの見事にはずれてしまったと言わざるを得ない。
おまけに最大のウリだった育成対戦は育成の作業化と対戦システムのポンコツ仕様で、まるで盛り上がりのないものになり利用価値は限りなくゼロに近いものに成り下がった。
結局のところ大多数のユーザーにとってはデフォルト以外使う気にもなれず、贔屓目に見ても他の野球ゲーム同様単に「平成元年の野球ゲーム(しかも対戦範囲の限られたもの)」にしかならなかったようだ。
その後の展開
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本作は結局最終作にはならず1991年3月1日に続編『究極ハリキリスタジアムIII』を発売している。
1992年3月19日には高校野球の『究極ハリキリ甲子園』を発売。
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因みにこの両方とも育成要素はなくなりエディットモードを採用している。
またこの両作ともバックアップが消えると「とつぜんのアクシデントにより こんシーズンはワープしました」「とつぜんのアクシデントにより こんたいかいはワープしました」とワープと言われる。
ただ本作ほどひどくはないし、パスワード自体完全に廃止されているので影響も小さい。
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その後も続編をスーパーファミコンで発売しているが、他シリーズのような年次発売という形は最後まで取らなかった。
余談
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日本シリーズで優勝すると胴上げシーンで『奇々怪界シリーズ』の「小夜ちゃん」が登場する。
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前作のアイドールでは80年代のアイドルに混じって「まとんな(マドンナ)」「ひばり(美空ひばり)」といったイロモノはあったが、2人とも姿を消している。
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なお、その美空ひばりは本作発売の1ヶ月前に52歳で死去している。
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代わりに年長系アイドル?として「あつこ(「アッコ」こと和田アキ子)」が入っている。
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本作のようなスタイルで、データを入れ替えて先々まで楽しませようとした趣向の野球ゲームは翌1990年10月26日発売の『なんてったってベースボール(サンソフト)』がある。
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こちらはパスワードではなく、「親ガメ子ガメカセット」という方式で、メインのカセットが非常に大きく作られており、入替用のデータのみのサブカセットの射し込み口を搭載し、後々新年度データのサブカセットを発売するという方式だった。
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実はこのソフトは元々1989年内に発売される予定だった。もし同時期に発売されたら本作の立場がなくなっていたことだろう…と思いきやこれはこれで価格面でのコスパが悪いので五十歩百歩か。
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とは言え2021年現在はオンライン環境の整備もあり『パワプロシリーズ』を始めとした野球ゲーム・スポーツゲームではデータの追加配信による選手データのアップデートは当たり前のように行われており、そういう意味では本作や『なんてったってベースボール』も着眼点自体は間違っていなかったと言えるだろう。
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この年は長かった昭和が終わり「平成」という新しい時代になった歴史的な年だったがタイトルで冠する年度は西暦表記('89)ばかりだったため「平成元年」という表記を冠した唯一のゲームとなった。
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他を見ても少なくボードゲームの「人生ゲーム平成版」や、「TM NETWORK」の新曲「Get Wild平成元年版」ぐらいしかない。
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本作の宣伝広告は、観客席で観戦する観客たちを描いたものであるが、その中で際どい行為(彼氏が彼女にキスを迫りながら服の中に手を入れて胸を揉む)をしてるカップルが確認できる。
最終更新:2024年03月11日 09:50