D1 GRAND PRIX SERIES PROFESSIONAL DRIFT

【でぃーわん ぐらん ぷり しりーず ぷろふぇっしょなる どりふと】

ジャンル ドリフトゲーム
対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売・開発元 YUKE'S
発売日 2005年2月17日
定価 6,800円(税別)
プレイ人数 1人~2人
レーティング CERO:全年齢対象
判定 スルメゲー
ゲームバランスが不安定
ポイント 人気絶頂期のD1グランプリをゲーム化
特徴的で難しすぎる挙動


概要

2000年から始まった同名*1のモータースポーツを、当時スポンサーだったYUKE'Sがゲーム化した作品。
速さを競う一般的なモータースポーツとは異なり、ドリフトと呼ばれる横滑りさせながら車を走らせる技術を用いて迫力や芸術性を点数として競う独創的なモータースポーツである。

特徴

D1GP
本作の要となるモード。全7戦をトーナメントで戦い、チャンピオンとなるのが最終目標。
D1ドライバーがライバルとなり戦う。

  • それぞれのコースに計測区間があり、ドリフトを行って勝敗を決める。

土屋トライアル
土屋トライアルというHOW TO PLAYを兼ねた全5ステージのチャレンジモード。

  • 4ステージ目のFINALSTEPまでクリアするとD1GPモードと5ステージ目のX-TREMEが開放される。

タイムアタック
他のモードとは違って1周のタイムを出すモード。
規定がなく実質フリーラン。

サバイバル
全D1ドライバーと勝ち抜き方式で戦うモード。
このモードでしか出ない隠しドライバーも存在する。

ドリフト
D1グランプリで最も重要視されるドリフト。
このゲームでも採点基準があり、総合得点で勝敗を競う。

  • 主な採点基準はスピード、角度、相手との走行具合、土屋ポイントの4つ。
    • 相手との走行具合は、相手との近づき具合やドリフトの合わせ具合、ぶつかったかどうかなどを点数にする。
    • 土屋ポイントは上記3つの採点基準を元に、さらに意外性や面白さなどを採点した 贔屓 ポイントである。

収録ドライバー&車種
2003年度の参戦ドライバーおよび車をすべて収録し、さらにサドンデス専用の隠しドライバーもいる。
プロドライバーマシンとガレージマシンの2つの選択ができ、それぞれに特長を持っている。

  • 同じ車種でもプロドライバーマシンとガレージマシンとではかなり違っていたりするのでそれぞれ使い比べてみるのも良いだろう。
    車種は全て参戦ドライバーが使っていたものであり、プレイヤーのみが使える車はない。
+ 収録車種

ゲーム内では全て型番で記されており、型番の最後に「改」と書かれている。括弧内は車名。

  • AE86(スプリンタートレノ、カローラレビンの3ドア、2ドアそれぞれ収録)
  • JZZ30(ソアラ)
  • SXE10(アルテッツァ)
  • JZX81(マークII)*2
  • JZX100(チェイサー)
  • MZ12(ソアラ)
  • PS13(シルビア)
  • S14(シルビア)
  • S15(シルビア)
  • RPS13(180SX)
  • S180(シルエイティ)*3*4
  • W13(ワンビア)*5*6
  • A31(セフィーロ)
  • C35(ローレル)*7
  • ER34(スカイライン)
  • FC3S(RX-7)
  • FD3S(RX-7)
+ 参戦ドライバー
  • 今村 陽一
  • 熊久保 信重
  • 植尾 勝浩
  • 谷口 信輝
  • 寺崎 源
  • 吉岡 稔記
  • 野村 謙
  • 田中 一弘
  • 浅本 昌俊
  • 福田 浩司
  • 神本 寿
  • 風間 靖幸
  • 三木 竜二
  • 末永 正雄
  • 高橋 邦明
  • 内海 彰乃
  • 戸谷 教嗣
  • 丸田 敏正
  • 春口 満
  • 手塚 強
  • 田所 義文
  • 上野 高広
  • 高取 道博
  • 斉藤 哲也
  • 古口 美範
  • 時田 雅義
  • 富久田 俊一
  • 村尾 真吾
  • 瀬崎 誠
  • 大久保 征宣
  • 林 渡
+ 隠しドライバー

サバイバルで倒すとプレイヤーも使えるようになる。括弧内は本名と使用車種。

  • ZAKU(小作 隆泰、B310型サニー)*8
  • マナP(鈴木 学、RB1型オデッセイ)*9*10
  • オリド(織戸 学、JZA80型スープラ)*11
  • Dai(稲田大二郎、Z33型フェアレディZ)*12*13
  • ドリキン(土屋 圭一、AE86型スプリンタートレノの3ドア)*14
  • ラーマン山田(山田 英二、バイパー)*15
  • ドリ天編集長(川崎隆介、JZX90型チェイサー)*16
  • POLICE(不明、ER34型スカイライン)*17参考

審査員
画面左下に表示されるオリド(織戸 学)、ドリキン(土屋 圭市)、マナP(鈴木 学)の3人*18によって構成される審査員。リアルタイムで反応して実況を行ってくれる。

+ サバイバルでは

サバイバルモードでこの3人のどれかが相手だった場合、代わりにラーマン山田(山田 英二)が審査員に入る。 セリフ的にはほとんど審査に関わるような事を言ってないが。

評価点

ドリフトの採点をゲームにうまく落とし込んだこと
元々かなり独創性の高い大会で、なおかつ点数をつけるのも全て審査員。*19そのため現実の大会では評価がブレやすかった。*20*21

  • しかしゲームでは4つの採点基準にわけて可視化し、点数とすることでわかりやすく仕上げている。

PS2のレースゲーム内でトップレベルの再現度
収録漏れなど一切なく、モデリングもPS2の中でもかなり良いほうにある。

  • どの車種もほぼ完璧に再現しており*22、プロドライバーマシンも細かいステッカーまできっちり描いている。
  • さらにこの時代どうしてものっぺりとなりがちなホイールも力を入れて造形しており、車のモデリングに負けることなく迫力とカッコ良さを出している。
  • ドリフトメインのゲームということもあり、収録車種はFRマシンがメインではあるものの、ハチロクやシルビア、RX-7といった人気車種は抑えており、他にもワンビア*23といった非常にマニアックな車種や、チェイサー、マークII、ローレル、セフィーロなど、他のレースゲームでは見ない4ドアセダンも収録されている。

慣れればドリフトは自由自在
挙動については後述の問題点で触れるものの、慣れてしまえば角度のついた大きなドリフトや十字ドリフト、直ドリなど色々魅せられて、かつ点数にもなるドリフトができる様になる。

ゲームを楽しませてくれる審査員の存在
ボイス自体はやや少ないながらも場面に合ったボイスと反応を提供してくれるためプレイヤーをかなり盛り上げてくれる。

色々な映像を観れるD1シアター
観るにはD1GPを優勝したりサバイバルで勝ち進んだりしなければならないものの、内容はかなり豊富で現実の試合の切り抜きや出走前のインタビュー、おバカなシーンまで観ることが出来る。

賛否両論点

D1GPおよびサバイバルモードで走るのは一部区間のみ
本来のD1GPもそうなので再現といえばそうなのだが、やはりコース全体を収録しているのに走るのは一部、というのは少々物足りない。

  • 全体を走れるのはアーウィンデールというマップのみ。

ボイス関連
審査員達のボイスや反応は気分を盛り上げてくれるものの、ミスでぶつけたりスピンしたとき凍った反応をし、厳しめに罵倒される。

  • 現実でもこのような口調であったためわかる人は許せる人が多いとは思うが、少々フラストレーションが溜まる。
  • 土屋トライアルでミスした時は「大馬鹿者」とドリキンが放ち青文字で画面に大きく出る。
    • 後述の問題点によって始めはミスをしてしまうのに逐一このボイスを聞かされるのでフラストレーションが溜まりやすい。

土屋トライアルをクリアしないとD1GPに参戦できない
HOW TIO PLAY要素なのに後述の挙動に慣れないとクリアするのにかなり時間がかかる上に、前述のこともある為ここで投げてしまう人も少なくない。

  • ただし操作に慣れさせるモードとしてはまあまあ優秀。何度もやり直して操作を身につけることが大事。

問題点

挙動

このゲームの評価を落としている大きな要因の1つ。
簡単に言うと滑る
本当にそれだけなのだがこの滑り具合が異常で、まっすぐ走っている状態から少し方向キーを押しただけでスキール音と共に車が横を向いて滑っていく。

  • アシストモードOFFではスピンしやすく、特にヘアピンコーナーでは細心の注意を払って操作しなければスピン一直線。
  • コーナーを脱出したあとも大変で、脱出後に少しでも逆にハンドルを切ったままにしていると逆の方向へと向いてしまい、それを直すためにまた逆にハンドルを切って...という連鎖が起こりやすい。
    • そうしているとフラフラなまま次のコーナーに向かうことになり、ミスにつながりやすくなってしまう。
    • 雨も存在し、前述の問題がより酷くなる。しかもどっちの天候かは走るまでわからない。
  • そこでアシストモードの出番となるのだが……

微妙なアシスト
アシストモード*24だが、アシストしてくれるのはスピンの抑制のみ。立ち上がりのフラフラやコースアウトなどは抑制してくれない。

  • 肝心の制御も酷く、なるべく車が90度以上向かないように、もし超えてしまったら180度以上向かないように制御する、というだけ。
  • そのため不自然にドリフトを制限されてしまい、アンダーステアが出やすくなる。特にヘアピンコーナーで角度がつかずうまくドリフトできなくなる。
  • さらにアシストモードによってクリアが難しくなるステージがあり、よりにもよって土屋トライアルの1-1、1-2
    • 一定ポイントに達するまで定常円旋回をするステージなのだが、スピン抑制の制御が入ってしまい、うまく回ることができなくなる。
    • 幸い1-1、1-2は失格判定が無いため、ただ時間がかかるようになるだけではあるが、これではアシストとして厳しい。
  • しかしOFFにすると前述の挙動になるので、どちらを選んでも慣れるまでまともに操ることはできない。

車種性能の差
このゲームのガレージマシンはジャンル分けができ、ローパワー軽量級(AE86)、中量級(シルビアやRX-7など)、ハイパワー重量級(主に4ドアセダン)の3つに分かれる。 しかし、

  • 軽量級はフラフラしやすく、またローパワーなため高速コーナーで不利になりやすい。
  • 中量級はどっちつかずな印象を持ち、なんともいえない代物。さらにRX-7限定だが、高速ギアのままコーナーに向かうと他の車より回転数が落ち込みやすく上手くドリフトできない。
  • 重量級はドリフト最中の制御がしにくく、アンダーステアを誘発しやすい。なのにアシストOFFではドリフト中にアクセルを抜いた後もう一度踏むと高確率でスピンするほど回転しやすい。

と、それぞれ大きな欠点がある。
一応位置づけとしてはSUGOなどのテクニカルコースは軽量級有利、富士スピードウェイなどの高速コースは重量級有利、誰でも操りやすい中量級という位置づけなのだろうが、どれを選んでも難しいだけである。

  • 一応作成主のオススメとしてはJZX100。重量級の中でも扱い易いマシンなのでどのステージでもある程度活躍する。

プロドライバーマシンも全体的に扱いづらく、なんなら重量級以上に滑りやすい車もあったりする。*25

少々粗い画面
他のゲームと比べると画面が全体的にボヤっとしている。
モデリングが良いだけに残念。

ホイール以外のカスタマイズ性のなさ
ガレージマシンはプロドライバーマシンと違って色々なカスタマイズができる。
しかしホイールには力が入っていたものの、

  • ウィングはON、OFFのみ。そのウィングのほとんどは純正リアスポイラーであり、GTウィングは数える程しかない。
  • タイヤが変更できない。*26
  • サスペンションの調整ができるのだが、スプリングレート、ダンパー、スタビライザーの3つのみ。
    車高やキャンバー角は変えられない。
  • ギア比が変えられない。
  • エアロパーツは一切ない。

と、ここまでのモデリングの良さを見せておきながらガレージマシンは少々味気ない仕上がり。
プロドライバーマシンにのみついているウィングやエアロもあるため、せめてそこから流用するなりしてバリエーションを追加してほしかった。

総評

人気絶頂期を迎えていたD1グランプリを見事に再現してくれた作品。
大手メーカーと遜色ないほどモデリングも上質で、反応の良い審査員もいて楽しめる要素はかなり多い。
しかし挙動による難が多く、たとえレースゲームが得意な人でも満足に動かすことが難しいようなゲームとなってしまった。
挙動さえ万人向けなら、と思える惜しい1作である。

余談

寺崎 源を使うと土屋ポイントの量が増加するという AE86贔屓 小ネタがある。

本作の8ヶ月後の10月20日にD1 GRAND PRIX SERIES PROFESSIONAL DRIFT 2005が発売された。
2005年の参戦ドライバーおよび車両に変更され、コースや車種、ホイールなどを多数追加したマイナーチェンジ版。
D1GP参戦に土屋トライアルが不要となるなどシステム的な改善も行っている。
しかしロード時間が長くなったうえに、滑る挙動は据え置きという問題点がある。 社内でも批判が無かったのだろうか……

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PS2 2005年 RCG
最終更新:2024年08月19日 17:37

*1 2000年のみ全日本プロドリフト選手権という名前だった。

*2 本来4速ATなのだがこのゲームでは5速MTに変わっている。現実でも1JZ-GTE搭載車に搭載されたR154ミッションを移植するケースがあった。

*3 この型番は存在せず、おそらくシルビアのSと180SXの180を掛け合わせた造番だろう。

*4 PS13のフロント部分を180SXに移植したフェイススワップ仕様。大半はユーザー改造だが日産からの依頼で有限会社きっずはあとが500台限定で制作した純正のシルエイティも存在する。

*5 この型番は存在せず、おそらくワンエイティのWとPS13の13を掛け合わせた造番だろう。WではなくOな気がするが。

*6 180SXのフロント部分をPS13に移植したフェイススワップ仕様。こちらは全てユーザー改造だが北米の240SXの2ドア仕様がほぼ同じなので純正ワンビアがあると言えなくもない。

*7 こちらも本来4速ATなのだがこのゲームでは5速MTに変わっている。現実でもR33、34スカイラインの5速ミッションを移植するケースが多かった。

*8 D1ほぼ専属のカメラマン。なお当時はコースの「中」にまで入り危険を犯してでも迫力のある映像を狙っていたことで有名。選手間でも「ZAKUを撥ねたら高得点だな」とネタにされていたほど。

*9 現在でもD1の実況に関わるアナウンサー。なお本職はグラフィックデザイナー。

*10 ちなみにこのオデッセイだが、このゲーム唯一のFF車。90度向くほど滑ってもアクセルを踏めばセンターに戻っていく挙動が再現されている。あまりにもドリフトしづらいが。

*11 当時は審査員、後に選手に転向したプロドライバー。

*12 雑誌「Option」顧問。一時期D1の下位クラスである「D1SL」(現D1Lights)に参戦していた。

*13 このZ33だが、なんと03年にアメリカの公道レース大会で使われたストリームZの初号機。2号機こそグランツーリスモ4に収録されているが、当の初号機はその大会で13回転して完膚なきまでに大破しモデリングがほぼ不可能に。そのため初号機を収録しているゲームはかなり珍しい。

*14 元プロドライバーにてD1初代審査員。

*15 VideoOptionの名物企画「ラーマン山田の人体実験」の犠牲者…もといプロドライバー。VideoOptionの撮影時のみ凶暴なキャラを演じているが、普段は「煽られるからスポーツカーには乗りたくないし洗車もしない」という超小心者である。車両は当時JGTCでバイパーに乗っていたためと思われる。

*16 当時ドリ天のデモカーとして90型チェイサーが使われていた。

*17 おそらく元ネタは、当時のDVDにも登場した実物のパトカー(沖縄県警察)

*18 2010年までこの3人が実況と審査を行っていた。

*19 2011年以降はDOSSと呼ばれる機械を用いて採点している。

*20 ドリキンのAE86贔屓が2002〜04年頃に少々目立っていた。確かにローパワーでドリフトしづらい車ではあるものの、それを加味しても疑問に残るほど。

*21 もう1つ問題となっていたのがブリヂストンタイヤと、圭オフィスで販売していたDG-5の車高調を入れた車両の贔屓問題。さらに圭オフィス関連では風間靖幸とのゴタゴタがあり、本人も苦言を呈するほど採点が甘かったり厳しくなったりしていたようだ。

*22 メーカーロゴや車名などのステッカーも丁寧に書いている。

*23 ワンビアの逆であるシルエイティは頭文字D等の作品に登場したこともあり知名度は高いが、ワンビアはリトラクタブルヘッドライトへの交換が手間取ることもありシルエイティ程認知はされなかった

*24 オプションで変更可能。初期状態ではONになっている。

*25 数値を見るとほとんどの車がガレージマシンよりも馬力が高い。高馬力によるパワースライドを表現したかったのだろう。

*26 FINEとWETがあるのにもかかわらずこの仕様なためどちらかの天気を難とするプレイヤーも多い。