シルヴィアーナ 愛いっぱいの冒険者
【しるゔぃあーな あいいっぱいのりとるえんじぇる】
ジャンル
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アクションRPG
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対応機種
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ファミリーコンピュータディスクシステム
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開発・発売元
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パック・イン・ビデオ
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発売日 ()は書換開始日
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1988年8月10日(1988年10月4日)
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定価
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3,500円
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プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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ポイント
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サクサク軽快なリアルタイムRPG 時代を先取りした癒し系な戦う少女
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概要
1988年8月にファミリーコンピュータディスクシステム用ソフトとしてパック・イン・ビデオから発売されたアクションRPG。
『イース』のような体当り方式で戦闘を行うゲーム性。
「冒険者」と書いて「ぼうけんしゃ」ではなく「リトルエンジェル」と呼称する。
ストーリー
少女シルヴィアーナは、早くに父を亡くしたものの町はずれの丘の上の家で母親と助け合いながら幸せな二人暮らし。
ところがある日お母さんが原因不明の病にかかってしまい、シルヴィアーナ必死の看病もむなしく容態は悪くなるばかり。
そんな中、その病気を治すことができる人がいることを町の人から聞き、その人を探しお母さんを病から救うために冒険の旅に出るのだった。
内容
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シルヴィアーナを操作して、お母さんの病気を治すために冒険をする。
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実はお母さんの病気を治せる医者とは案外早く出会えることができるのだが、そこから紆余曲折を経て魔王まで倒してしまうことになる。
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言うまでもなく「お母さんただ一人のため」に違いなく、その確固たる意志でこれほどの驚異的な行動力。ある意味でシルヴィアーナはゲーム界でもトップクラスに親孝行な少女なのかもしれない。
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戦闘は『イース』同様のトップビューのスタイルでリアルタイムな半アクションの体当り方式。
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そのため、普通のRPGと違ってスタートボタンでポーズができる。
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また、上記作同様「半キャラずらし」の体当りや、移動不可な地形に追い込んでの体当り、サイドやバックからの体当りなどプレイヤーテクニックの有効性が高い。
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ただし上記作品とは異なり「半キャラずらし」はこちらもそこそこダメージを受ける。
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敵を倒すと、袋を落とすのでそれを取ることでお金やアイテムなどを得ることができる。空っぽの場合もある。
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倒した敵が落とした袋やダンジョン内の宝箱の中には「黄泉の花」、「落命の花」という罠アイテムが入っていることがある。
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「黄泉の花」毒状態になり移動速度が極端に遅くなる。併せて攻撃力も落ちてしまう。
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「落命の花」取ったその場でHPがゼロになり、アッと言う間に死んでしまう。
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毒状態になってしまったらアイテムの「毒消し」で解毒できる。また取る前に「眼魔の目」をセットしておくことで、中身がこれらだった場合に事なきを得られる。
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消耗品アイテムは主に町で買うことになるが、一部は敵の落とす宝袋からも入手できる。
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ただし売ることは一切できない。
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武器や防具も同様だが、新しいものを買うと元から持っていた物は処分する格好になる。
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町は大体買い物のみで、進行にまつわる情報はダンジョン内の一部キャラや、フィールドに点在する話せる木から得ることになる。
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会話ができるキャラに話しかけるのにはAボタン。
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1行しか表示できないが、入りきらない場合はもう一度Aボタンで続きを表示する。
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アイテムを売っている店は、画面が一旦真っ暗になってメニューが表示される。
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レベルや経験値制はない。
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攻撃力や防御力などはアイテムを入手して高めることができる。
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なお説明書の記載ではシルヴィアーナの武器は剣だけに見えるが、実は斧や槍もある。
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最大HPはアイテムの「ハート」を入手して高めることができる。
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HP回復はアイテムでは「パン」のみだが、時として袋や宝箱から「ウーリン茶」が手に入ると一気に全回復する。
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町での宿屋にあたるのが「お茶屋」で、そこで一休みすることでHPが全回復ができる。
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恐らく上記の「ウーリン茶」と思われる。
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他に家でお母さんに話しかけることでも「お母さんの顔を見たら元気が出ちゃった」とのことでHPが全回復する。
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メモリセーブ機能があり、やられた場合はよくある「セーブしたところからの再開」となるのだが、このポイントにもなる。
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当然メモリセーブなので、ディスクセーブと違って待ち時間はない。反面電源を切ったら無効。
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セーブして終わる場合にも一度、メモリセーブをした上で行う。
アイテム
1つのみ所持できるもの
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石化の像
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倒破の像
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剣での攻撃力を倍にする。有効なのは使用した画面内のみ。
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退魔の像
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雷神の花
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盾での攻撃力を倍にする。有効なのは使用した画面内のみ。
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婆羅門の花
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妖精の羽根
9個までストックできるもの
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パン
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HPが40回復する。装備欄に装備してAボタンで使う。
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毒消し
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黄泉の花による毒状態を治す。装備欄に装備してAボタンで使う。
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眼魔の目
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宝箱や袋で「黄泉の花」や「落命の花」が入っていた場合に事なきを得られる。装備していると罠に出くわした時に自動で使われる。
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銀の鍵
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ダンジョンで扉を開ける。扉に触れることで自動的に使われる。
評価点
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主人公シルヴィアーナの癒し系で可愛いキャラクター。
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今でいうロリ萌えなキャラクターがタイトルから全開で披露され、そのインパクトは抜群。まさに「リトルエンジェル」の雰囲気そのもの。
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パッケージデザインでもなかなかのものだが、それがドットで粗いはずのゲーム画面でも負けず劣らず。パッケージデザインとは少々違うものの、むしろこれが独自の魅力になっている。
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タイトル画面でも早速その愛らしい笑顔をたっぷり振りまいてくれる。ウインクしたりとサービス全開。
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ラストでも、地のかわいさに加えて剣と鎧で武装した凛々しい姿を見せてくれる。
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敵キャラクターも敵にしておくにはもったいないぐらいかわいい見た目をしている。
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実際チラシに出ている敵キャラのモンスターたちは敵とは思えないほどかわいい。
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ゲーム画面の粗いドットでも、他のRPG作品とは一味違った癒し系デザインになっている。
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体当り方式な中でも戦闘は非常にスピーディー。
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ノックバックが小さいので連続攻撃が決まりやすく、更に技術の介入次第でより効率化もできる。
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併せてゲーム進行そのものもサクサク進めやすい。
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上記に付随して、レベルアップや稼ぎが作業的になりにくい。
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強い武器や防具を持っていてもノーダメージな鉄壁にはならないのと、敵は画面内に一度に4体までしか出ない。またシルヴィアーナが強くなると、袋から入るお金の額も減るのでオートで放置稼ぎなどのインチキはできない。
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メモリセーブ(クイックセーブ)の導入。
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これにより、特定のポイントでの再スタートも難しくない。
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よくある難しいポイントに出くわしても、二度目以降は戻り幅を小さくできるので初心者に優しい。
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レベル制こそないものの技量不足で詰まっても、武器や盾の強化で補うことができる。
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この手のアクションRPGでは「技量が足りなくて進めなくなり、その上レベルアップの救済もないからどうにもならなくなる」という事態もままあるのだが、本作は大抵そのような壁にぶつかっても武器などを地道に強化していけば乗り切れるバランスになっている。
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上記の通り地道なお金稼ぎもだれにくいバランスなのも手伝って、初心者への救済もしっかりしている。
問題点
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使用文字がひらがなのみ。
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主人公のシルヴィアーナでさえ「しるびあーな」と間の抜けたような表記になってしまっている。
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BGM自体は良いもののバリエーションが少ない。
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フィールド、町(シルヴィアーナの家含む)、ダンジョン、ボスバトルしかなくラスダンやラスボスでさえ特別なBGMがないので1988年のゲームにしては時代遅れに感じられる。
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画面切り替わり直後に敵と出くわしてぶつかる可能性がある。
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特にそれによるノックバックで隣マップに押されたり、町に入ってしまったりが起きてしまうのは少々不親切。もしHPがギリギリならばそれで死んでしまうこともある。
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場合によっては今出たばかりのダンジョンに押し戻されてしまうこともあり、またロードが発生するのは少々鬱陶しい。
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ボスの動きはみな同じで単調。
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そのため、HPぐらいしかパッと見た目で変わらない。
総評
キャラクター面ではシルヴィアーナだけにとどまらず敵キャラクターも含めて総じて癒し系なほのぼのタッチで、この点に関しては後述の通りヒロイン系のゲームとして申し分ないクオリティ。
ゲーム性ではレベルアップこそないものの、お金を貯めることで装備を強化できることがその代替になっており、キャラの動きの速さも相まって戦闘もサクサク進められて難易度も過剰に高くない。
更にメモリセーブの搭載などもあって初心者に対する配慮もできておりゲームのバランスまで見た目通り癒し系。
シルヴィアーナのキャラクターにばかり注目が集まりやすい傾向にあるがゲームとしてもプレイヤーへの門戸が広く、またストレスを感じにくく全般的に好バランスでまとまっており決してキャラクターのみに頼ったゲームではない。
移植
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翌1989年9月15日にはMSX2にアレンジ移植されている。
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根本的なゲーム性は変わらないがビジュアルがグレードアップしておりストーリーデモが追加され、シルヴィアーナのキャラグラもより豊富になっておりリトルエンジェルなキャラがより際立っている。
余談
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ストーリーでは「その病気を治すことができる人」と言われるが、実際に会ってみると明らかにモンスターでどう見ても人間ではない。
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本作そのものは書換えを含めてやっとこ10万本程度しか売れていない。特にパッケージ版は2万本程度と少なく現在ではちょっとしたプレミア級ソフトになっている。
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本作発売当時はディスクソフトは限界を迎えており発売から2年以上ディスクソフトにほぼ徹底してきた任天堂さえロムカセットで『ファミコンウォーズ』(8月発売)『スーパーマリオブラザーズ3』(10月発売)と主力タイトルを発売したり、ディスクカードの特性を活かした『ディスクファクスイベント』も5月一杯で終了するなど、ファミコン市場の主役は再びロムカセットへの転換期でありコナミなど参入していた他メーカーでも話題作はカセットでの発売が中心となっていく。
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ただ本作自身の知名度がゼロ同然だったかといえば決してそうではなく当時のファミコン誌でも広告が何度も掲載されているのでそこそこは知られていた。
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プレミア化の要因としてゲーム自身の希少性だけでなくキャラクターでも後に確立された萌えブームの影響もあるだろう。
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1989年に徳間書店発行の『ファミリーコンピュータMagazine』誌上で行われた「ファミコン美少女キャラコンテスト」(13号発表)でシルヴィアーナは5位と大健闘した。
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順位だけを見ると地味なように思えるが得票数1921票は6位のエリーヌ(702票)に倍以上の大差をつけており、1位のカイ(2764票)から5位までが抜きんでており実質5強状態だったので、充分別格な支持を得たといえるほどの結果だった。
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当時ファミコンは再びロムカセットに再度転換していく時期だった不運もあって売上そのものは振るわなかったが、この通りシルヴィアーナのキャラクターが与えたインパクトは大きかったようで、その売り上げに反して現在でもゲームそのものの知名度はあり決してマイナーではない。もちろん知名度がありながらもソフト自身の現存数が少ないので前述の通り現在では高額化している(特にパッケージ版)。
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しかしながらレトロゲームブームを経て旧世代ゲームの地位が確立された後の移植配信などは一切されていない。ただこれは本作に限らず『未来戦史ライオス』(1989年12月発売)などパック・イン・ビデオ発売タイトル全般に言えることではあるが。
最終更新:2025年04月07日 08:12