Half-Life 2: Episode One
【はーふらいふつー えぴそーどわん】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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Windows プレイステーション3 Xbox 360 |
発売元
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Valve Software(Steam版) サイバーフロント(国内版)
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開発元
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Valve Software
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発売日
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2006年6月1日
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定価
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820円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:Z(18才以上のみ対象)
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判定
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なし
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ポイント
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実験的にエピソード形式採用 新技術「HDR」登場 ボリューム不足が不評に
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Half-Lifeシリーズ
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概要
「Source engine」によるリアルな情景と物理演算を駆使した演出、独特な世界観が評価されたFPS『Half-Life 2』の更なる続編。
『Lost Coast』で採用された「HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)」を本編に適用し、より美しい光源で再びCity 17が描かれる。
またネット上でゲーム配信が可能なプラットフォーム「Steam」の登場と共に、3部構成の短編を連続してオンライン配信する「エピソード方式」を試験的に採用。
本作はその第1弾として配信され、1年後の2007に続く『Episode Two』も配信された。
しかし、2007年のクリスマスに配信が予定されていた『Episode Three』は延期の末に有耶無耶となり、本作を発端とする3部作は今もなお未完結状態となっている。
ストーリー
City 17のタワー頂上へと向かい、コンバインの表向きの最高権力者であるブリーン博士を転送装置ごと抹殺したゴードン・フリーマン。彼は転送装置の爆発に巻き込まれかけるが、その瞬間に時間が停止し彼の目の前に謎の「政府関係者」であるGマンが現れる。
Gマンは「ブラックメサ事件」の時と同じように、役目を終えたフリーマンを次の事件まで再び幽閉しようとする。しかし、レジスタンスの超能力種族ボーティガンツの干渉によってGマンによるフリーマンの回収は失敗、彼はCity 17のタワー外縁部に転移される。
生き残っていたアリックス・ヴァンスと共にメルトダウン直前のコアを安定させ時間稼ぎを図った後、タワーからの脱出を図るゴードン。しかしタワーからの脱出に使用した列車は脱線し、2人は徒歩によるCity 17からの脱出を余儀なくされる。
指揮系統が崩壊し、原生生物の闊歩する無法地帯となったCity 17。果たして2人は脱出することができるのか。
特徴
チャプター構造
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前作の全14チャプターから僅か5チャプターに減っている。エピソード形式故の構成ということにはなっているものの、前作のボリュームに慣れたプレイヤーからは戸惑いと批判の声が挙がった。
シームレスな展開
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前作同様にマップ間のロードこそあれどチャプター同士の明確な区切りは存在せず、マップ全体が繋がっている。これにより、場所によってはチャプター進行後も前のチャプターのエリアに侵入できる。
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もっとも、「街からの脱出」が目的となる本作においてはあまり生かされないポイントではあるが。
コンパニオン「アリックス・ヴァンス」
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前作でもイベントシーンなどでゴードンと行動を共にしたアリックス・ヴァンスが、本作では戦闘もこなすコンパニオンキャラクターとして再登場。2人で協力し、パズルや敵の襲来といった障害を乗り越えていく。
世界観の演出
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コンバインに支配されたディストピア世界という前作の設定を受け継ぎつつも、司令部を失ったことによるXen原生生物の暴走やコンバインによって作業員として改造された人間などの新しい要素によって世界観を補強している。
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前作ではオープニングのブリーンとの会話シーンにしか登場しなかった黒幕「アドバイザー」も本作では全身像が登場し、ブリーン亡き後のさらなる闘いを演出するのに成功している。
評価点
美しいグラフィック
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「Source engine」本来の描画処理に加え、前作『Lost Coast』で登場した新技術「HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)」を導入。陰影や光源が更に強化された。
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特にメルトダウン寸前のコア描写は驚異的。光り輝くコアを最新技術を駆使して美しく描画している。
優秀なAI
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コンパニオンであるアリックス・ヴァンスのAIはよく作り込まれており、プレイヤーを邪魔することがない。
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また仕草や挙動に至るまでよく作り込まれており、前作におけるレジスタンス兵士のような単なるNPCに留まらない個性的な存在へと昇華している。
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前作では非戦闘地帯でしか会えなかったため共闘は不可能だったが、本作では協力して戦闘に当たることが可能となった。連射の効く大型拳銃を所持しており火力も比較的高め、プレイヤーを適切に援護するかなり頼れる存在となっている。
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また、コンバイン兵士も積極的にカバーアクションを行うようにAIが改良。これにより前作よりも遮蔽物越しの撃ち合いが増えた。
新しい敵
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タワー内部のコンバイン作業員とヘッドクラブに寄生されたコンバイン兵、通称「ゾンバイン」が登場。前者はストーリー補完とパズル要因、後者は強敵であり、同時に『Opposing Force』経験者へのファンサービスとしての側面もある。
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ゾンバインはその耐久力も十分な脅威だが、海兵隊ゾンビやポイズンヘッドと異なりグレネードで自爆を試みる。ゾンビでありながら下手をすれば一撃即死の強敵へと変化しており、狭いゾンビ区画での緊張感が増した。
賛否両論点
エピソード制の採用による内容不足
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前作の1/3の僅か5チャプターという少なすぎるボリュームは、前作や初代『HL』をプレイしていたプレイヤーの批判の対象となった。当時はまだSteamもさほど浸透しておらずエピソード配信型のゲームも無かったため、エピソード形式という方式自体を疑問視する声も存在した。
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現在では『バイオハザード リベレーションズ2』などもありとりわけ革新的な要素ではない。しかし2006年当時は他にない構想だったため、『SiN』シリーズなど模倣を試みるフランチャイズも存在した。
随伴NPCの追加による攻略ペースの強制化
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アリックスと協力して進むという内容である以上、彼女を無視して自分のペースで進んでいくということは不可能。孤独ではあったが技能次第で軽快に動けた初代と比較すると、ゲーム進行が露骨に制御されており自由度に欠ける。
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もともと『HL2』の時点で会話イベントによる強制的な足止めが多かったため、それと比較すればマシな部類ではある。また、演出の都合上拘束されるのが大半であり、初見であればそこまで気にはならない。
問題点
ロケーションの乏しさ
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本作の舞台は「タワー内部」と「City 17」のみ。どちらも前作で既に通った場所であり、視覚的な新鮮味があまり感じられない。
演出の臨場感がさらに減った
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本作ではそもそも舞台が「指揮系統が崩壊してコンバインが撤退を始め、レジスタンスもいなくなった後」である。街は閑散としており、前作の蜂起時のような派手な演出は見られない。
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ストーリーもひたすらパズルを解きつつ街から逃げるだけであり、ドラマチックな演出はほとんど存在しない。
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舞台を街の外へ移した次作ではこの欠点は見直され、物理演算を駆使したダイナミックなスクリプト演出が再び多用されるようになった。
会話シーンが長い
バールがない
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主力近接武器は前作に登場した「重力銃」のみとなっており、伝統の「バール」は前作終盤で分解されたまま再取得が不可能に。
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バールがシリーズを代表する武器だとする意見のほか、重力銃は発射できる物体が手元になければ無力という欠陥が存在するため使い辛いというゲーム上の都合もある。
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重力銃と爆発火器のみで進む「1発も弾を撃たずにクリア」というSteam実績の登場も、便利なバールが未登場であることへの不満に拍車を掛けた。
展開の単調さ
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全体的にゾンビだらけであり、前作におけるアントライオン生息地域のような面白い展開には遭遇しない。
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ゾンビ戦部分の出来が悪いわけではないものの、そもそも『Half-Life』シリーズはゾンビFPSではない。
総評
HDRの導入による美しいグラフィックと優秀な味方AIとの協力プレイが評価された作品。
批評家からのレビューは概して好評であり、IGNは2006年の「ベストFPS」賞を本作に授与した。
しかし、プレイヤー側からは内容の薄さ、そして「エピソード制」という販売方式自体への不満が寄せられることとなった。全体的にストーリーが進んでいるわけでもなく、3部作の1作目と考えてもややインパクトに欠けると言わざるを得ない。
本作で見受けられたこれらの欠点は、『HL2』での欠点と共に開発チームによって検証、続く『Half-Life 2: Episode Two』で大幅に改善が図られることとなった。
余談
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本作は開発中にゲームのリークなどの騒動があり、発売の延期が相次いでいた。名作の続編ということで期待する声も非常に多く、インタビューで開発者が発言した「忍耐」という言葉は、今なお『3』への期待と相まってネタにされている。
最終更新:2023年11月25日 15:00