三国志ツクール

【さんごくしつくーる】

ジャンル ツクールシミュレーション
対応機種 Windows Vista~10 (Steam)
メディア Steam ダウンロード専売
発売元 コーエーテクモゲームス
発売日 2015年12月10日
定価 900円(税別)*1
レーティング CERO:A(全年齢対象)
プレイ人数 1人~41人
判定 修正前 クソゲー
シリーズファンから不評
修正後 改善
シリーズファンから不評
ポイント 三国志「ツクール」ならぬ「イジール」
バグてんこ盛り、重い動作(現在は修正済み)
三國志II With パワーアップキット』と割り切るなら安価
三國志シリーズ
ツクールシリーズ


概要

『三國志』シリーズ30周年企画の一環として、東京ゲームショウ2015にて発表された。この発表と同時にブース内ではPC-9801版の試遊台が用意され、「10分ずつ交代でプレイし皆で中国統一を目指そう」という企画が行われていた。

名前通りKADOKAWAのツクールシリーズとのタイアップであり、エディット要素に特化された三国志になっている。
ちなみにSteamにリリースされたツクールシリーズで最初に日本語版が存在したソフトである。Steam以外でも購入はできるが、その場合でもSteamへの接続と会員登録は必須。

サンプルシナリオ、および配布されたシナリオの読み込み・プレイのみが可能な無料版と、自分でシナリオを編集できる有料版が存在する。
在野の自作シナリオは三国時代を始め、春秋・戦国から国共内戦まで、また中国以外のシナリオも作られ、配布されている。

特徴

  • システム
    • 基本的にコンシューマー版『三國志II』準拠だが一部の仕様が変更・削除されている。
    • 貂蝉イベントや司馬徽などの旅人が存在せず、初期設定ではアイテムに美女は存在しない。
    • 仮想モードや厄介な婚姻*2は実装されていないが、コンシューマー版では削除された放浪・旗揚げと砦建設は実装されている。
    • ゲーム開始時に、新君主を作れなくなった。あらかじめシナリオに用意された君主を選ぶのみとなる。
    • CERO Aで使えない表現が変更された(「斬首」→「処断」など)。
    • 「君主である」がただの「君主」になる、夏侯惇のルビが「かこうじゅん」でなく「かこうとん」になるなど、一部の独特の表現が変更された。
  • サンプル・DLCシナリオ
    • 初期設定で用意されているのはシナリオ1(189年)のみ。シナリオ2~6は、顔グラフィックとセットの有料DLC。
      • シナリオ2~6は自作で再現したシナリオも出回っているので、『三國志II』として遊ぶ分には無料版で不自由しない。
    • 武将の表記・読み仮名が後の作品に基づいて変更された(「夏侯惇」は「かこうじゅん」ではなく「かこうとん」になってるなど)。
    • 武将の間引きがなくなった。これにより、シナリオ1でも全ての武将が登場するようになった。原作で間引きされていた武将は、おおむね後のシリーズでの設定を元に所在が設定されている。
    • 原作ではNPC専用だった君主を、プレイヤーが選べるようになった。
    • 寿命も後の作品に基づいて変更。オリジナルでは、早死にするのは孫堅など一部の武将に限られていたが、多くの武将が史実通りの年代に寿命を迎えるようになった。
      • これにより、後半シナリオの難易度がオリジナルより上がっている。たとえば曹丕(享年40)は『三國志II』では65歳前後まで生きるので250年代でもまだ生きているが、変更により史実通りの227年過ぎに凶兆が出る。ただでさえ武将が少ないのに、加速度的に武将が死ぬのである。
+ サンプル・DLCシナリオ一覧
シナリオ名 該当シナリオが収録されているDLC 発売日 価格(いずれも税別)
184年 『三國志13』シナリオ「黄巾の乱」 顔登録素材『三國志13』セット+シナリオ 2016年1月28日 無料
189年 董卓洛陽を騒がし群星起つ 本作同梱のサンプルシナリオ 2015年12月10日 無料
194年 群雄割拠し盛んに覇を競う 顔登録素材「コーエーSLG」セット+シナリオ 2015年12月24日 500円
201年 劉備荊州に潜み脾肉を嘆ず 顔登録素材『太閤立志伝V』セット+シナリオ 2015年12月24日 300円
208年 曹操華北を制し天下を望む 顔登録素材「歴史ファンタジー」セット+シナリオ 2016年1月8日 300円
215年 天下三分し関羽荊州を守る 顔登録素材「無双」セット+シナリオ 2015年12月24日 300円
220年 魏・呉・蜀鼎立し三國成る 顔登録素材『のぶニャがの野望』セット+シナリオ 2015年12月24日 500円

有料版で編集可能な項目

  • シナリオ
    • シナリオ名、開始・終了年代、概要、オープニング、重要国(占領で戦利品が必ず出る国)、戦利品登場頻度を設定できる。
    • 開始年代は1年から9999年まで可能。紀元前の設定はできない。
      • 終了年代は9999年カンストまでか、特定年代で強制終了かのいずれかを設定。
    • オープニングは1枚絵と、物語(メッセージ)を設定できる。サンプルシナリオでは実装されていない。
    • エンディングの設定はできない。あらかじめ用意されたエンディングで固定される。
    • 歴史イベントはじめ、イベント作成は一切できない。また既存イベントの編集もほぼ不可(洪水の有無だけは、都市データで設定可能)。
  • 君主
    • 初期設定で41勢力まで登録可能に。さらに、ゲーム中は放浪君主を含めると少なくとも60勢力は同時存在可能になった*3
    • 設定できるのは「勢力色」「君主」「軍師」「信用度」「金収入増」「強化勢力」「敵対勢力」。
    • 「金収入増」はNPC担当時、金収入が+補正される。同様に、「強化勢力」はNPC担当時、ゲーム開始時の所持金、兵糧、内政パラメータ(民忠誠、土地、治水)、訓練度が+補正される。
    • 同盟・婚姻関係の設定はできない。「敵対勢力」に指定すると、NPC担当時に指定先と同盟・婚姻を結びにくく、なおかつ裏切りやすくなるが、絶対ではないので同盟を結ぶことそのものは可能。
  • 武将
    • 1シナリオに付き999人まで登場可能。同時に999人登場させることができる。武将登録そのものは9999人まで可能で、シナリオ作成時に999人まで登録する形になる。
    • 顔グラフィックは三國志1~12までの物が用意されている。信長の野望・創造PKより大部分を収録。かなりの数だが全部ではなく、三國志IIにいなかった三國志武将のグラフィックはない*4。その他、比較的最近の作品の新武将や、春秋戦国時代の武将グラフィックもある。
      • DLCとしてコーエーテクモの他ゲームシリーズからのプリセット画像が配信されている。『三國志13』DLCは無料で、『三國志II』にいない武将の画像もセットになっている。
    • もちろん、自分で顔を登録することもできる。登録できる画像は9999種類まで。JPEG形式の画像ファイルなら内容は問わないため、カオスな世界観を再現することも可能*5
    • 全てのパラメータを編集できるが、年齢制限は99までで、100歳以上にはできない。
      • ちなみに、ゲーム中に100歳を超えても、年齢の数字は99でカンストする。
      • 武将の能力値は、ランダム作成ができる。しかし「顔から作成」以外の機能は、武将名も勝手に設定されてしまう。
      • 「顔から作成」機能では、画像ファイルから能力がランダム生成されるので、画像に全然ふさわしくない能力の武将も多々できる。
      • 配下の忠誠度が下がりにくい「大徳」フラグ、絶対に降伏しない「不屈」フラグ、戦争時に上昇補正がかかる「豪傑」フラグの設定も可能。
    • シナリオでは、その武将の身分を設定する。既に死亡した武将を登録だけすることも可能。
      • アップデートで、身分を設定すると兵士数・忠誠度も身分に応じて設定されるようになった(たとえば君主は兵士数1万、一般武将は1千)。
  • 地図・都市
    • 都市データ編集の他、都市名の設定が可能に(最大6文字)。
    • 物資についてはこちらで設定する。君主設定画面で直接できるわけではない。
    • 最初から用意された『三國志II』の地図以外の地図を作成したり、読み込むことはできない。
    • 戦場マップは自由に編集可能。
  • BGM
    • 『三國志II』『三國志12』のBGMが用意されている。BGMの追加はできない。
  • 戦利品(アイテム)
    • 名前と性能を設定できる。名前は全角6文字以内、読み仮名は半角18文字以内。
    • あらかじめ用意された画像しか使えないため、自分で美女画像を登録することはできない。
  • その他
    • 編集画面やゲーム画面付きでTwitterでつぶやく機能がある。肝心のシナリオアップロード機能はないのだが。

問題点

  • 現在は概ね修正されているが、発売当初はバグが多かった上に動作も重かった。
+ アップデートで修正された問題点
  • 日本語以外の環境で購入すると表示がおかしくなる*6
  • 編集時のバグ
    • 武将の血縁を設定する時、以前に設定した血縁が消えることがある
    • 「新武将登録」の「生年一括編集」で生年を変更したあとでゲームを再起動すると、変更内容が保存されていない
    • シナリオ編集で君主の存在しないシナリオを作成できてしまう(ただしプレイしようとすると強制終了する)
    • シナリオ編集で複数勢力を統合しようとしても、反映されないことがある
  • ゲームプレイ時のバグ
    • 兵士の再編成をすると訓練度が0になる
    • 長期戦で増援を派遣できないことがある
    • 守備側の味方武将が戦争中に寝返ると、武将情報の一覧に登場しなくなる
    • 戦争中、敵の武将情報を見ると強制終了することがある(未修正)
    • 埋伏武将を確認しても、撤退ができないことがある
    • 君主が17勢力以上存在する状態で、外交で結んだ同盟が反映されないことがある*7
    • 君主死亡時の後継者選択で、同一勢力で2回目以降強制終了することがある
    • オープニング画面を右クリックすると、メッセージがそこで止まってしまう(左クリックでオープニングを飛ばしてゲーム開始できる)
    • 特に訓練度0と同盟キャンセルバグは、君主によっては致命的で、普通にプレイするにしても支障が出るレベル。
  • 戦場での演出が緩慢で、戦闘終了まで無駄に時間がかかる。
    • アップデートにより演出の早送りが実装された。
  • 26年前の作品をベースにしたとは思えないほど動作が重い(翌年発売の『三國志13』よりメモリを食うこともあるほど)。
  • とにかく「ツクール」を名乗っていながら編集できる箇所が少なすぎる
    • 「ツクール」を名乗っていながら全体地図、単語、メッセージ、イベント、エンディング、システムのバランスなどの変更ができない。
      • 特に全体地図、単語、メッセージの変更が不可な点は編集の自由度を大きく制約しており、「オリジナルSLGをツクろう!」と謳っているソフトとして致命的。
      • 当然ながら、システムを魔改造して別のゲームに仕立てるといった遊び方はできない。
    • BGMは設定できるものの『三國志II』『三國志12』以外の作品のBGMは使えない。(容量や著作権の関係で難しかったのかもしれないが…)
    • 寿命なしの設定にすることができない。寿命なしに近い仕様にしたい場合は、ツクールのシナリオキャラ全員を1歳スタートで99歳を寿命にする必要がある。
    • おかげで「(ツクールではなく)イジールだろ?」と言われてしまう始末。
  • 全体的にエディタが使い辛い
    • 武将・シナリオ編集のUIが使い辛い上に、CSVなど外部ファイルへの書き出し・読み込みにも対応していない。
    • 勢力エディタから武将エディタに行くといった切り替えができず、いちいちエディタを閉じては別のエディタを開いて編集する必要がある。
    • 名前の登録の時にテキストの貼り付けができない。そのためキーボードでいちいち入力しなければならない。
    • 武将設定では武将の能力値をランダム生成できるが、「顔から作成」以外を選ぶと武将名まで変わってしまう。
    • 画像を取り込む際、画像の拡大・縮小機能があるものの、拡大した部分だけしかカーソルが移動しないため画像のトリミングがしにくい。
  • 武将名に使える外字が少ない
    • 一応『三國志』シリーズ始め、コーエーテクモ作品に登場する名前は網羅されている。しかし、三国時代でもマイナーな人物になると外字が使えず、他の文字で代用せざるを得ない。
  • 作成したシナリオ配布の方法がわかりにくい
    • シナリオアップロード機能は存在せず、公式のアップロードサイトも用意されていない。
      • そのためシナリオデータ保存フォルダから作成したシナリオのファイルを自力で探して、自分で適当なサイトにアップロードする必要がある。
  • 使者の馬が赤から青に変わる演出を削除。他君主に発見されると「!」マークが付くようになった。
    • 戦略画面の馬は無表示にもできるが、他国の使者の動静が一部伏せられることになるため難易度が上がる*8
  • 内政時、武将の一括選択ができない。
  • 戦略画面の国指定で地図から選べず国リストから選択しなければならない。
  • アップデートにより演出の早送りが実装されたものの、演出の早送りは実は2種類あり、0人プレイ時専用の「高速表示」の方がより速い(両方設定することはできる)。そのため、プレイヤー君主としてはまだ不満が残る。

ベースとなった『三國志II』に起因する問題点

  • 設定できる武将の能力値は元々マスクデータだった部分*9を除けば知力・武力・魅力のみしかない上、特技や列伝などもないため武将の個性に乏しい。
    • さらに新武将の性別も設定できない。
  • 相性値は0~100で表されるが後期の『三國志シリーズ』と違い、0と100はつながっていないため、100段階の中間にあたる50前後の君主の勢力が有利。
  • 忠誠度が90程度の武将でも裏切る時は裏切るほど、武将が裏切る頻度が高い。
    • 義理の高い関羽や張飛ですら、捕虜になると確実に敵に降る。ただし捕虜の登用は確実に成功するものの、元々相性値が離れている武将は忠誠度は基本的に低いため、実用に持っていくにはかなりの時間と金を要する。
  • COM任せだと超がつくほど有利な状況でないと統一できない。
    • 戦争時、攻撃側が出兵が最大5万までなのに防御側は最大10万まで出せてしまうため。
    • しかも、後半で国が少なくなると他国からの攻撃用の増援も求めにくくなる。さらに、追加で援軍を自前の軍勢で送ろうにも次ターン(来月)にならないと送れないという始末。
    • 「他国の戦争」を「見る」にすると、「見ない」よりCOMが統一を達成しやすくなる。

評価点

  • コンセプトそのものは非常によい。
    • 新たなシナリオ作成や作成済みのシナリオの編集はなかなか面白い。
      • 前述した通り編集できる項目は限られているものの、西暦1年以降の中国史シナリオ(正史三国志ベースのシナリオなど)なら比較的違和感なく仕上げる事ができる。
    • 指定した画像から武将のパラメータを自動生成する機能も画期的。
  • 三国志シミュレーションとしての体裁は保たれており、三国志要素が殆どない・全く遊べないほどの出来というわけではない。
    • もっとも本作のベースとなったのは『三國志II』であるため、物足りなさは感じる。
  • 『三國志II With パワーアップキット』として割り切るなら、値段相応の出来ではある。
    • 前述した通り初期設定で用意されているのはシナリオ1(189年)のみだが、シナリオ2~6も有料DLC購入orシナリオ自作で補える。
      • ゲーム本体とシナリオが収録されている有料DLCを全て買っても約3000円と安価。
      • ベースとなった『三國志II』では選べなかった君主でプレイすることもできる。
    • 無料の『三國志13』DLCをダウンロードすると『三國志II』のシステムで黄巾の乱シナリオが遊ぶことができる。

総評

『三國志II With パワーアップキット』として割り切るなら、多くのバグが修正された今はお得な内容と言える。
既存シナリオで遊ぶだけなら無料版で十分であり、編集項目の少なさも、値段を考えたら許容範囲ではある。

しかし、歴史シミュレーションゲームの創作・エディットは、シェアウェア『戦国史』が有名であり、『三國志』シリーズでもパワーアップキットや非公式の改造ツールで、大幅な改造が可能な作品がある。
他ならぬ『三国志ツクール』自体が、『三國志Ⅱ』の非公式改造ツールの機能をベースにした節がある*10
『ツクール』を銘打つならば、フルプライスにしてでもこうした既存のツールを上回る機能を実装すべきではなかったか。

また、初期のバグの多さとアップロード機能の不親切さが初動の足を引っ張ったことは否定できない。
安い作りが色々と惜しまれる作品である。

余談

  • プロモーションムービーでは日本列島を背景に「自由なシナリオで思う存分こだわりの三国志を楽しもう」という演出がなされるが、前述の通り実際に日本列島を舞台にする事はできない。
    + 参考動画
最終更新:2024年08月22日 00:28

*1 サンプルシナリオ、及び在野作成シナリオの読み込み・プレイのみなら無料

*2 敵対度を10分の1に下げる代わりに、娘を嫁がせた国に攻め込むと婚姻関係が切れると同時に信用度が10下がってしまう。その上同盟と違い相手から攻めてこない限り破棄も出来ないという罠に近いシステムだった。

*3 君主の色が60色用意されている。それ以上も可能だが透明になる模様

*4 『三國志II』でも、貂蝉と新君主・新武将グラフィックは用意されていない。旅人グラフィックはある

*5 PVのサンプルゲームでは、『和・洋・中 グルメ三国志』と題して料理を武将に登録していた

*6 Steamでは全世界から購入可能。ただし本作は日本語のみ対応

*7 オリジナルでは同時存在可能な君主は16が上限だった。

*8 引き抜き成功・捕縛・処断が起こらない限り何も表示されなくなるため。

*9 人徳・義理・野望・相性

*10 https://web.archive.org/web/20170628150627/http://pony.na.coocan.jp/san2/san2bineditor.html - 『三国志ツクール』発売により公開終了