Half-Life: Opposing Force
【はーふらいふ おぽーじんぐふぉーす】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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Windows
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メディア
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CD-ROM
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発売元
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SierraStudio(海外版) Valve Software(Steam版)
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開発元
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Gearbox Software
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発売日
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1999年11月1日
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定価
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$4.99 USD /¥520 JPY(Steam)
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配信
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Steamにてオンライン販売中
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判定
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良作
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ポイント
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Half-Lifeの世界観を掘り下げる外伝 敵側から描くブラックメサ事件 本編との直接の関わりは薄い
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Half-Lifeシリーズ
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ストーリー
ニューメキシコ州ブラック・メサ ブラック・メサ研究施設
対象:エイドリアン・シェパード 男(22歳)
軍暦:アメリカ海兵隊 特殊作戦部隊
階級:伍長
所属:対危険環境戦闘部隊 アリゾナ州サンテゴ軍事基地
任務:機密
ブラック・メサの研究所でポータル事故が発生し、異次元空間「Xen」からエイリアンの群れが出現してから数時間後。対危険環境戦闘部隊HECUに所属する伍長エイドリアン・シェパードは、任務内容を教えられないまま仲間と共にオスプレイ「グース7」に搭乗してブラックメサへと急行していた。
赤暗い機内で雑談を交わす兵士たちを嗜め、機上で任務内容の説明を始めようとする上官。その瞬間、突如謎の飛行物体が飛来して僚機が撃墜されてしまう。混乱もつかの間、シェパードたちの乗るグース7も攻撃を受け飛行不能に陥り、ブラックメサの地上通路付近に不時着する。
任務内容も知らされぬままブラックメサで孤立無援となったシェパードたちは、飛来したエイリアンの攻撃を受け必死で応戦する。しかしシェパードは爆発に巻き込まれ、建物内に運ばれるも意識を失ってしまう。
次に目覚めたとき、彼はブラックメサの医療セクターに運ばれていた。そこでは研究所から逃げ遅れた科学者たちが、自分の身も顧みず必死に負傷した兵士の救助に当たっていたのだった。
無くした装備を集め、仲間の海兵隊や命の恩人である所員たちと共に脱出方法を必死に模索するシェパード。しかし機内から墜落直前に飛び降りて生きのびていた上官は再会したシェパードに隠していた任務内容を告げる。
『警備員や科学者を含むすべての事故目撃者、そして侵入しているエイリアンを始末せよ。』
任務内容とそれを無慈悲に遂行する上官に対する不信感を募らせながらも彼らと行動を共にするシェパード。任務は失敗と判断され、無事なオスプレイをかき集めた撤退作戦が決行されるが、シェパードはヘリポートへの出口ゲートの目の前でスーツケースを持った謎の男に遭遇。男は謎の力で重いはずのゲートを一瞬で閉じ、シェパードの脱出を阻止してしまう。果たしてシェパードは孤立無援の研究所から生き延びることが出来るのか。そして彼をブラックメサに閉じ込めた、スーツケースを持った謎の男は何者なのか……?
概要
黎明期のFPSでありながら激しい銃撃戦とストーリーやマップの重厚感・臨場感を両立し、『革命的』と称されたFPSであるHalf-Lifeの外伝。開発はvalveではなく、後に『Brothers In Arms』や『Borderlands』などを開発したことで有名になったGearbox softwareが担当している。
当初はHalf-Lifeの拡張コンテンツ扱いだったが、後にスタンドアローン化されOpposing force単独でもプレイが可能になった。
基本システム
同一エンジンを使用しているため大まかな操作・システムはHalf-Lifeと同様。
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オーソドックスなライフ+ダメージ軽減のアーマー式。それぞれの上限は100ポイント。シェパードの利用しているボディアーマーは軍用のものだが、HEVスーツと互換性があるため施設の備品を利用した充電も可能である。
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本編通りの回復方法の他、海兵隊が持ち込んだ「アーマー充電用コンテナ」を使用することでも装甲の回復が可能。
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武器は大幅に追加・変更されバールはレンチ・ナイフに、コルト・パイソンはデザートイーグルに変更、ライフルは新たにスナイパーライフルが追加され、重火器としてミニミ軽機関銃が登場、小型エイリアンを用いた(というか勝手に寄生してきた)弾数無限のショックライフルなど、本編よりさらにバリエーション豊かになっている。
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全体的に火力は高いが、前作中盤~終盤にかけて活躍していたレーザー兵器は軒並み廃止。もっともレーザー兵器は両方ともゴードンが試作段階のテスト品を使用していたため、ストーリー的には仕方ないのだが。
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本編同様に、ストーリーは全てシェパード(プレイヤー)の主観視点を通して進行する。
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シェパードはゴードン同様に一言も喋らず、プレイヤーの操作によって周囲の人々の反応も変化する。本編同様にシェパードになりきってプレイすることが可能であり、没入感を高めてくれる。
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イベントムービーも一切なく、全てがリアルタイムデモとして進行する。アドベンチャーゲーム的な感覚が没入感を高める。
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いつでもどこでも任意にセーブ・ロードが可能。クイックセーブ・ロード機能も実装しているのでトライ&エラーがやりやすい。オートセーブ機能も実装されている。
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シェパードは海兵隊所属のため、HEVスーツの機能であったライトは使用不能。代わりにFキーには暗視スコープが割り当てられ、暗い空間では基本的にこれを使用することになる。
評価点
Half-Lifeらしい出来栄え
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ムービーを介することなく、全てプレイヤーの視点を通して認識させるというHalf-Life本編の良さをよく捉えている。gearboxによる外注作品ながら再現度は非常に高い。
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本編の冒頭はゴードンが地下トラムで職場へ出勤するところから始まるが、シェパードの場合も同様にオスプレイ機上からゲームスタート。プレイヤーの任意で視点を見回して、傍で雑談している同僚やドアの前に立つ上官、外の景色などを自分で目撃しながら過ごす。本編同様のリアルタイムオープニングイベントは初っ端から否が応にもゲーム世界へ引き込み没入させるHalf-Lifeの象徴であり、Valveの後作にも受け継がれている。
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全てをリアルタイム・主観視点で描くことで、予期せぬ爆発・崩落する通路・吹き出す水・遠くから聞こえる叫び声や発砲音といった何気ない演出が迫真のものとなるHalf-Life本編の大原則は踏襲されており、本編同様の驚きの展開がプレイヤーを飽きさせない。
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新たなアクションとして「ロープの上り下り」が追加。使用する場面は少ないものの、より説得力のある地形パズルとして機能している。
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なぜ本編でフリーマンが出来なかったのかという当然の疑問にも、後述するチュートリアルを介して「シェパードはブートキャンプで上り方を身につけたから」としているなど、あらゆるゲーム的な要素に現実的な答えを用意するという姿勢もHalf-Lifeを踏襲している。
そこそこのボリューム
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本編「Half-Life」の拡張パックという形でありながら描かれる内容は濃く、ほぼ全てブラックメサ内で話が完結するため中弛みもない。本編の半額である520円で購入可能というのを考えると、非常にコストパフォーマンスが良い。
ストーリーの掘り下げ
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Half-Lifeは1科学者の視点のみで全てを描いていたため、「ストーリーを深く語る余地があまりない」という弊害を抱えていた。
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裏を返せば「明かされていない裏設定が豊富に存在する」ということでもあり、そんな「名作の明かされなかった裏設定」を本作は豊富に取り込んでいる。
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本編に登場しなかったより高度な知能を持つエイリアン種族、持ち込まれた核弾頭、大統領直属部隊はなんのために暗躍していたのか、海兵隊は本当に悪だったのか?ブラックメサ事件を巡る陰謀が随所に仕込まれた要素によって徐々に明かされていく展開はまさにストーリーを補完する外伝にふさわしい出来となっており、より深くHalf-Lifeの世界を知ることが可能となっている。
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本編では『上層部からの通達』という形になっていた説明書は『軍事基地でのシェパードの日記』という形に変更された。事件発生の3ヵ月前から始まっているものの、「ブリーフケースを持った男がトレーニング中の自分を観察しているのに気付いた」「BlackMesa施設での任務のために訓練を開始」「明日起こる場合に備えて準備するように命令を受けた」などと、本編の「事故」をプレイ済みのプレイヤーを誘うかのような巧妙な内容となっている。
より重要になった味方NPC
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本編に登場した科学者と警備員のほか、新たに戦闘と回復を同時にこなす「メディック」、重火器を所持し戦闘に貢献する「ソルジャー」、特定のドアを焼き切ってくれる「エンジニア」が登場。彼らは指揮官を失った孤立状態で施設の随所に登場し、プレイヤーは上官として彼らを率いて進むことになる。
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本編においても「科学者の注射で回復」「ドアロック解除の権限を持つ科学者を連れて行く」という要素が存在したが、視点が海兵隊側に移ったことで戦闘がソルジャー・回復がメディック・開錠がエンジニアと各NPCごとの役割がより現実的かつ分かりやすくなった。
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本編の科学者は「HPが一定以下の際、プレイヤーに注射してHPを微量回復」といういてもいなくてもあまり関係ない程度のサポートだったが、海兵隊のメディックはEキーを長押しすることで各所のメディカルステーションと同レベルの回復が可能。随伴可能なメディカルステーション持ちとして活躍してくれる。
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それぞれの兵士も重火器とガスマスク、サングラスと咥えタバコ、赤十字に眼鏡と同一部隊ながら一目で分かる個性を持っている。単なる敵部隊でしかなかった前作の海兵隊に比べ、より人間味が増している。
ブートキャンプ
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本編の「ハザードコース」同様に、独立したストーリー・マップとして「ブートキャンプ」が用意されている。
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時系列的には本編より3ヵ月ほど前、訓練生時代のシェパードとなっており、鬼教官Tボーンによる指導のもと訓練(チュートリアル)に励むというリアルな内容。「フルメタルジャケット」などの戦争映画のパロディとしての側面もある。
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そのチュートリアルも本編同様現実的な構成を意識した結果なんと朝の起床ラッパが鳴り上官がやってくる瞬間から始まる。目の前で上官が大声で怒鳴り散らすなか後ろ手で立ち続けるなど気分は先鋭海兵隊そのもの。
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ダッシュやジャンプ、ハシゴやロープなどの基本的な運動に始まり各種武器、兵士の特性など本編に登場する要素は一通り学ぶことが可能。流石にエイリアン兵器は試射できないが、狙撃銃などは事前にいくらでも発砲できる。
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訓練施設や各種訓練内容は現実的な範囲でありながら、チュートリアルとしての役目を見事に果たしている。作品の一部として上手く組み込まれており、その徹底した姿勢が本編同様に評価された。
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訓練開始前の中庭でふと窓を見上げると、こちらを観察しているあの男の姿が。
火力向上
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主人公が海兵隊員に変更された結果、武器もより取り回しがよく火力も高いものに変更。NPC兵士も基本的に全員戦闘に参加するため、派手な撃ち合いを楽しめる。
敵バリエーションの増加
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エイリアン側も登場エネミーがさらに増加しており、倒し甲斐がある。
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本編に登場したものとは性質が被っておらず、それぞれが独自の個性・攻撃方法を持っている。共生状態にあり、倒せば寄生虫を奪って使用できる「ショックトルーパー」、それぞれの形態が用意された「ヴォルティゴア」と「ヴォルティゴア幼体」、宿主が優秀だったためより凶暴になった「海兵隊ゾンビ」など、本編をプレイ済みでも飽きない個性的な面子がプレイヤーを出迎えてくれる。
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残念ながらこれらのモンスターの出番は『Black Mesa』で海兵隊ゾンビが復活するに留まり、それ以外は本作限りとなり、15年後を描いたHalf-Life 2へのリークされたベータ版でさえ再登場は果たせずに終わった。
ストーリーを語るマップ
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再序盤の医療エリアではシェパードと共に「助かると信じて持ち込まれた、ヘッドクラブに寄生されたての兵士」の遺体が安置されている。通路を進んでいくと科学者が防護服を着用してゾンビ化の進行した遺体を検査している病室を横切るが、見ていると突然ゾンビが起き上がり、科学者は襲われて死んでしまう。
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このように「プレイヤーの進行と共にマップでストーリーを語る」という手法を徹底しており、任務内容が明かされ上官と共に行動するマップでは「個室に逃げ込んで椅子や机で篭城を図ったものの、あっけなく海兵隊に射殺された科学者の死体」に遭遇するなどテキストでストーリーを語らない臨場感溢れる構成を実現している。
難点
政府直属部隊との戦闘
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中盤からブラックメサ爆破を目論む政府直属部隊との戦闘になるが、火力が高くなったものの本編同様に移動が異常に速いため戦闘がかなり難しい。
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幸いセーブ&ロードによるごり押しは通用するため、さほど難点と言える難点にはなっていない。大抵はオートセーブ後に遭遇するため、先読みも可能。
一部無限湧きする敵
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特定ステージにて、一部通路から小型モンスター「ピットドローン」が無限に沸いてくる。
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「シャッターを閉めれば無限湧きが止まる」という一種のパズルとなっているのだが、気付かないで倒していると厄介なことに。
頻繁に挟まるロード
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シームレスデザインの弊害として、道を進んでいくと突然「ロード中」の表示が出てフリーズし、数秒後に操作再開、という形式がとられている。うまく区切りとなる部分で仕切られてはいるのだが、せっかく盛り上がった気分に水を差された気持ちになることもしばしば。
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これは初登場時の本編にも存在した要素でもある。幸い、現在の一般的なスペックのパソコンでは一瞬でロードが終わるためさほど気にはならない。
暴力・グロ描写
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SFホラー映画・戦争映画的な本作はグロ要素が結構高めで、過激な暴力表現や不気味なクリーチャーのビジュアルが存在する。特にクリーチャーのデザインは気持ち悪いものが多く、人によっては嫌悪感を抱くレベルのものも存在する。1999年の3Dゲームなのでさすがに現在ほどのリアルさはないが、苦手な方は一応注意。
一部ストーリー・謎解きが分かりにくい
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基本的に「見て察せ」を大前提としたストーリーテーリング・パズルで構成されているため、初見「これは何を意味してるんだ?」と困惑してしまう場面もそこそこある。そのおかげで日本語化がなくても一通り遊べるという利点にも繋がっているのだが。
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基本的な要素は全てHalf-Lifeに準じているため、先にそちらをプレイして「Half-Lifeのお約束」に慣れておけばさほど迷わずに進める。あくまで番外編であって本編のクリアは前提となっている。
唐突なエンディング
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「Blue Shift」以外の後のシリーズ同様に、本作も唐突に終わってしまう。ラスボスを倒すと余韻なく即座にエンディングが始まってしまうため、初見では困惑してしまう。
総評
gearbox softwareによる外注でありながら、傑作FPS「Half-Life」の持つエッセンスを見事に継承した外伝作品。粗もないわけではないが、遊んでいて楽しいと素直に思える「FPSとしての楽しさ」と、Half-Lifeファンを唸らせる「外伝シナリオとしての優秀さ」を兼ね備えた、十分に良作と呼べるタイトルであると言える。
余談
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ゲーム自体の問題点ではないが、このソフトに日本語版は存在しない。本編とは異なり日本語化MODもなく、本レビューも英語版でのプレイを前提としている。
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ある程度の読解力があれば後はマップで大体のストーリーや謎解きを察することが可能。会話は主にプレイヤー置かれている状況の解説であるため、会話を理解できなければ詰むという場面は存在しない。しかしTボーン教官の訓練説明や上官の任務伝達など本編より長台詞は多いため、英語の理解力が乏しいとプレイに支障が出る場所もなくはない。
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良くも悪くも洋ゲーである。繰り返すようだが、Half-Life本編をクリアできるレベルで、且つある程度は海外FPSに慣れた人向けであるのは事実。
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隠し武器として手榴弾を背負ったペンギンが存在し、コンソールコマンドを利用して取得することが可能。
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外見こそかわいらしいペンギンだが、効果音や武器特性、待機モーションなどは前作の持ち運びできる小型エイリアン・スナークのものを流用しているため鳴き声がキモい。使用すると遠くへと放り投げ、落下したペンギンは自動的に敵を追尾して攻撃を加えた後に自爆する。
最終更新:2021年10月27日 22:11