最終更新日時 2011年03月04日 (金) 23時24分34秒
代数的整数論 #003 (411-475)
元スレ: http://science4.2ch.net/test/read.cgi/math/1141019088/411-475
ログ元: http://2se.dyndns.org/test/readc.cgi/science4.2ch.net_math_1141019088/411-475
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411 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/12(水) 17:27:27
今度は λを割る円分素数 ζ - 1 について考える。
>>200 より λ = N(1 - ζ) = (1 - ζ)(1 - ζ^2)...(1 - ζ^(λ-1)) であり、λ = ε(1 - ζ)^(λ-1) となる。 ここでεは単数である。
>>202 より ζ - 1 は円分素数である。
円分整数 f(ζ) ≠ 0 に対して ある有理整数 k ≧ 1 があり f(ζ) が (ζ - 1)^k で割れるが (ζ - 1)^(k+1) で割れないとき この k を(一時的に) ord(f(ζ)) と書こう。
このとき以下の命題が成立つ。
1) 円分整数 f(ζ) が 0 でなければ ord(f(ζ)) は有限値として 必ず定まる。
2) f(ζ) ≠ 0, g(ζ) ≠ 0 なら ord(f(ζ)g(ζ)) = ord(f(ζ)) + ord(g(ζ)) となる。
3) f(ζ) ≠ 0, g(ζ) ≠ 0 で、f(ζ) + g(ζ) ≠ 0 なら ord(f(ζ) + g(ζ)) ≧ min(ord(f(ζ), ord(g(ζ)) である。
4) ord(λ) = λ- 1 である。
証明 1) は f(ζ) のノルム Nf(ζ) を考えることにより >>407 と同様にして証明される。詳細は読者にまかす。
2), 3), 4) は簡単である。これも詳細は読者にまかす。
412 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/12(水) 17:50:04
いよいよ円分整数環 Z[ζ] における素因子の定義を述べる。
Z[ζ] から 0 を除いた集合 Z[ζ] - {0} を Z[ζ]^* と書く。
非負の有理整数全体を Z+ と書く。つまり Z+ = {n ∈ Z; n ≧ 0}
Z[ζ] から Z ∪ {∞} への写像 ν で以下の条件を
満たすものをZ[ζ] における素因子という。
ただし、∞ は単なる記号で 任意の n ∈ Z に対して ∞ > n とする。
1) ν(Z[ζ]^*) = Z+ ν(0) = ∞
2) f(ζ) ≠ 0, g(ζ) ≠ 0 なら ν(f(ζ)g(ζ)) = ν(f(ζ)) + ν(g(ζ)) となる。
3) ν(f(ζ) + g(ζ)) ≧ min(ν(f(ζ), ν(g(ζ)) である。
413 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/12(水) 18:07:52
訂正:
>>412
>Z[ζ] から Z ∪ {∞} への写像 ν で以下の条件を
Z[ζ] から Z+ ∪ {∞} への写像 ν で以下の条件を
414 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/13(木) 09:05:48
νを円分整数環 Z[ζ] の素因子とする。
ν(1) = ν(1) + ν(1) だから ν(1) = 0 である。 εを単数とすると、1/εも単数である。 よって ν(ε) + ν(1/ε) = ν(1) = 0 だから ν(ε) = 0 である。
円分整数 f(ζ) に対して ν(f(ζ)) >= k のとき f(ζ) は ν で k 回割れるという。 ν(f(ζ)) = k, k ≠ ∞ のとき、f(ζ) は ν できっかり k 回割れる という。
f(ζ) が ν で 1 回割れるとき、単に ν で割れるという。
円分整数 f(ζ), g(ζ) に対して f(ζ) - g(ζ) が ν で割れる とき f(ζ) と g(ζ) は ν を法として合同といい、 f(ζ) ≡ g(ζ) (mod ν) と書く。
これは同値関係であり、加法及び乗法と両立する。 即ち、Z[ζ] の同値類は環となる。 さらに、この同値関係は素である。 つまり f(ζ)g(ζ) ≡ 0 (mod ν) なら f(ζ) ≡ 0 (mod ν) または g(ζ) ≡ 0 (mod ν) となる。 これは ν(f(ζ)g(ζ)) = ν(f(ζ)) + ν(g(ζ)) から明らか。
415 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/13(木) 09:58:30
>>412 の 1) から ν(f(ζ)) = 1 となる f(ζ) がある。 Nf(ζ)/f(ζ) = g(ζ) は円分整数だから ν(Nf(ζ)) = ν(f(ζ)) + ν(g(ζ)) ≧ 1 である。 Nf(ζ) ≠ 0 だから、ν で割れる有理整数で 0 でないものがある。 ν で割れる有理整数 n > 0 で最小のものを p とする。 ν(1) = 0 だから p > 1 である。p は素数である。 なぜなら p = ab, a > 1, b > 1 となる有理整数があるとすると、 ab ≡ 0 (mod ν) より a ≡ 0 (mod ν) または b ≡ 0 (mod ν) となり、p の最小性に反するから。
これと >>414 から Z[ζ] の mod ν の同値類は Z/pZ の拡大整域 となる。ζ を含む同値類を ξ とすれば、この環は Z/pZ 上 ξ で生成される。つまりこの環は (Z/pZ)[ξ] と書ける。 ω^λ = 1 だから、この環は Z/pZ 上の加群として 1, ω, ..., ω^(λ-1) で生成される。よってこれは有限環である。 有限整域は体であるからこの環は有限体である。 Z/pZ の代数的閉包を Ω とすると、(Z/pZ)[ξ] から Ω へ 体としての埋め込み(単射準同型)が存在する。 Z[ζ] から (Z/pZ)[ξ] への標準的な準同型と (Z/pZ)[ξ] から Ω への埋め込みの合成をΦとすれば Φは Z[ζ] から Ω への準同型である。 Φ(f(ζ)) = 0 であるためには f(ζ) が ν で割れることが 必要十分である。
416 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/13(木) 10:34:33
>>415 において p ≠ λ とする。 すると >>415 の Φ は >>401 のΦ_0 と同じものと考えてよい。 よって >>409 から >>402 の条件 1), 2) を満たす Ψ(η) が 存在する。
f(ζ) ≠ 0 を円分整数とし、>>403 の意味で f(ζ) が Φ_0 で定まる 素因子できっかり k 回割れるとする。 (Ψ(η)^k) f(ζ) ≡ 0 (mod p^k) だから、 (Ψ(η)^k) f(ζ) / p^k は 円分整数である。 これを h(ζ) とする。 よって (Ψ(η)^k) f(ζ) = (p^k)h(ζ) となる。
>>405 より h(ζ) は Φ_0 で定まる素因子で割れない。 つまり Φ_0(h(ζ)) ≠ 0 である。よって、ν(h(ζ)) = 0 である。 >>402 の条件 1) より Ψ(η) は Φ_0(Ψ(η)) ≠ 0 である。 よって、ν(Ψ(η)) = 0 である。
よって、 ν((Ψ(η)^k) f(ζ)) = ν(f(ζ)) ν((p^k)h(ζ)) = ν((p^k)) = kν(p)
よって ν(f(ζ)) = kν(p) である。
>>403 の 1) より 円分整数 f(ζ) が 0 でなければ、k は非負有理整数 として必ず定まる。 よって >>412 の 条件1) ν(Z[ζ]^*) = Z+ より ν(p) = 1 でなければならない。 よって、ν(f(ζ)) = k である。
417 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/13(木) 16:13:13
>>416 から λと異なる有理素数 p を割る素因子の集合は >>394 の 例えば 2) の集合 Hom(A, F) (>>398参照)の要素と1対1に 対応することがわかる。
418 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/13(木) 17:39:00
今度は、ν を λ を割る素因子とする。 >>411 より λ = ε(ζ - 1)^(λ-1) となる。 ここでεは単数である。 >>414 より ν(ε) = 0 だから ν(λ) = (λ-1)ν(ζ - 1) となる。 ν は λ を割るから (λ-1)ν(ζ - 1) > 0 である。 よって ζ - 1 は ν で割れる。
補題 ν を λ を割る素因子とする。 円分整数 g(ζ) が ν で割れるなら ζ - 1 でも割れる。
証明 g(ζ) ≠ 0 と仮定してよい。 g(ζ) が ν で割れるなら Ng(ζ) も ν で割れる。 よって Ng(ζ) は λ で割れる。 よって Ng(ζ) は ζ - 1 で割れる。 >>202 から ζ - 1 は円分素数だから、g(ζ) の共役 g(ζ^i) で ζ - 1 で割れるものがある。つまり g(ζ^i) = (ζ - 1)h(ζ) となる円分整数 h(ζ) がある。 ij ≡ 1 (mod λ) となる有理整数 j をとれば g(ζ) = g(ζ^ji) = (ζ^j - 1)h(ζ^j) となる。 よって、g(ζ) は ζ^j - 1 で割れる。 >>200 より (ζ^j - 1)/(ζ - 1) は単数だから g(ζ) は ζ - 1 で割れる。 証明終
419 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/13(木) 18:03:13
>>411 より 円分整数 f(ζ) ≠ 0 に対して ord(f(ζ)) が定まる。 ord(f(ζ)) = k なら f(ζ) = ((ζ - 1)^k) h(ζ) となる 円分整数 h(ζ) があり、h(ζ) は ζ - 1 で割れない。 >>418 の補題より h(ζ) は ν でも割れない。 よって ν(f(ζ)) = ν((ζ - 1)^k) = kν(ζ - 1) となる。 >>412 の 条件1) ν(Z[ζ]^*) = Z+ より ν(ζ - 1) = 1 で なければならない。 よって、ν(f(ζ)) = k である。
420 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 10:51:28
円分整数環Z[ζ] の素因子は ν, μ などの代わりに P, Q など とも書く。
素因子の重複を許した形式的な積を因子と呼ぶ。 つまり、因子は (P_1)^(n_1)...(P_r)^(n_r) と書ける。 ここで、P_1, ..., P_r は相異なる素因子であり、 n_1, ..., n_r は有理整数 ≧ 0 である。
因子の積の定義は自明であろう。 素因子の空集合の積を単位因子と呼び (1) で表す。
因子の集合はこの積により可換モノイド(単位半群)となる。 これは、素因子の集合から生成される自由可換モノイドである。
421 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 11:59:13
因子 A, B に対して A = BC となる因子 C があるとき A は B で 割れるという。因子 A, B の最小公倍因子、最大公約因子の定義 は明らかだろう。さらに 因子の無限個の集合に対しても 最大公約因子は定義出来て常に一意に存在する(何故か?)。
円分整数 f(ζ) と 因子 A = (P_1)^(n_1)...(P_r)^(n_r) において 各 i で f(ζ) が P_i で n_i 回割れるとき、 f(ζ) は A で割れると言う。 f(ζ) ≠ 0 のとき f(ζ) を割る因子全体の最大公約因子を f(ζ) が 定める因子といい、(f(ζ)) と書く。f(ζ) が生成する単項イデアル も (f(ζ)) と書く場合があるが、この場合と紛らわしいときは div(f(ζ)) と書く。
f(ζ) が 各 i で P_i できっかり k_i 回割れるとすると、 (f(ζ)) = (P_1)^(k_1)...(P_r)^(k_r) である。
422 :132人目の素数さん:2006/07/14(金) 13:46:11
命題 円分整数 f(ζ) ≠ 0, g(ζ) ≠ 0 に対して、 div(f(ζ)g(ζ)) = div(f(ζ)) div(g(ζ)) である。
証明 >>412 の 2) より明らか。
423 :132人目の素数さん:2006/07/14(金) 14:18:37
次の定理およびそれから直に得られる系は Kummer の理想数の理論の 基本定理というべきものである。
定理 円分整数 f(ζ) ≠ 0, g(ζ) ≠ 0 に対して、 div(f(ζ)) が div(g(ζ)) で割れるなら f(ζ) は g(ζ) で割れる。
系 div(f(ζ)) = div(g(ζ)) なら f(ζ)/g(ζ) は円分単数である。
この系の証明は明らかだろう。
この定理の証明のためいくつかの補題を証明する。
424 :132人目の素数さん:2006/07/14(金) 14:19:41
ダイバージェンス
425 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 14:21:15
>>422, >>423 にIDを入れるのを忘れた。
426 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 14:22:31
円分整数 g(ζ) ≠ 0 が次の条件を満たすとき g(ζ) は条件(*) を 満たすということにする。
(*) 任意の円分整数 f(ζ) ≠ 0 に対して、div(f(ζ)) が div(g(ζ)) で割れるなら f(ζ) は g(ζ) で割れる。
補題 円分整数 g(ζ) ≠ 0, h(ζ) ≠ 0 がそれぞれ上の条件(*) を満たすなら、 g(ζ)h(ζ) も条件(*) を満たす。
証明 div(f(ζ)) が div(g(ζ)h(ζ)) で割れるとする。 >>422 より div(g(ζ)h(ζ)) = div(g(ζ)) div(h(ζ)) だから div(f(ζ)) は div(g(ζ)) で割れる。よって f(ζ) は g(ζ) で 割れる。よって f(ζ) = g(ζ)R(ζ) となる円分整数 R(ζ) がある。 div(f(ζ)) = div(g(ζ)) div(R(ζ)) だから div(R(ζ)) は div(h(ζ)) で割れる。 よって R(ζ) は h(ζ) で割れる。 よって f(ζ) = g(ζ)h(ζ) で割れる。 証明終
427 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 14:50:47
補題 有理整数 n > 1 は >>426 の条件(*) を満たす。
証明 >>426 より n が素数 のときに証明すればよい。 n が λ と異なる素数 p のときは div(p) = (P_0)...(P_(e-1)) である。ここで 各 P_i は p を割る素因子である。 これは >403 の命題 4) より 各 P_i は p をきっかり1回割ること から分かる。 div(f(ζ)) が div(p) で割れれば、>>401 の最後より f(ζ) は p で割れる。よって p は >>426 の条件(*) を満たす。
n = λ のときは div(λ) = L^(λ-1) である。 ここで、L は 円分素数 ζ - 1 で定まる素因子(>>411, >>419)である。 div(f(ζ)) が L^(λ-1) で割れれば、f(ζ) は (ζ- 1)^(λ-1) で割れる(>>411)。λ/(1 - ζ)^(λ-1) は単数だから(>>200)、 f(ζ) は λ で割れる。 よって λ も >>426 の条件(*) を満たす。 証明終
428 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 15:23:29
ここで記号を導入する。 因子 A が B で割れるとき B | A と書く。
>423の定理 円分整数 f(ζ) ≠ 0, g(ζ) ≠ 0 に対して、 div(f(ζ)) が div(g(ζ)) で割れるなら f(ζ) は g(ζ) で割れる。
証明 g(ζ) が単数のときは明らかだから、g(ζ) は単数でないとする。 よって Ng(ζ) > 1 である(>>176)。
Ng(ζ)/g(ζ) は円分整数だから、これを R(ζ) と書く。 Ng(ζ) = g(ζ)R(ζ) である。
div(g(ζ)) | div(f(ζ)) だから div(g(ζ))div(R(ζ)) | div(f(ζ))div(R(ζ)) である。
div(g(ζ))div(R(ζ)) = div(Ng(ζ)) だから div(Ng(ζ)) | div(f(ζ)R(ζ)) である。
Ng(ζ) は有理整数で、Ng(ζ) > 1 だから >>427 より f(ζ)R(ζ) は Ng(ζ) = g(ζ)R(ζ) で割れる。 よって、f(ζ) は g(ζ) で割れる。 証明終
429 :132人目の素数さん:2006/07/14(金) 15:24:54
これってなんかの本を順番にやってるんですか?
430 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 15:39:23
>>429
>>124 に書いたが Edwards の Fermat's Last Theorem を参考に している。それをこちらなりに解釈してあり、素因子の扱いは 違うところもある。こちらの方がその点に関してはより分かりやすいと 思っている。 しかし、Edwards の本も Kummwer の論文を元にしており、 基本的アイデアは Kummer のもの。
431 :132人目の素数さん:2006/07/14(金) 15:46:18
>>430 ということはそのうち全ての正則素数でFLT(n)が成り立つとかでてきたりするんですか
432 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 15:53:11
>>431
多分やるだろう。確言は出来ないが。
433 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 16:18:18
>>423の定理は、円分整数 f(ζ) ≠ 0 にそれが定める因子 div(f(ζ)) を対応させる写像が整除関係を保ち、単数の違いを除いて単射である ことを意味している。
つまり、円分整数を単数の違いを除いて因子の世界へ埋め込むことが 出来て、その世界で一意的に素因子に分解されるということである。 これによって、円分体において円分素数による一意分解が必ずしも 成立たないという事実(>>294)が、ある意味で救われることになる。 これが kummerの大発見であり、彼の理想数(つまり我々の因子)の理論の 骨子である。
434 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 16:45:29
Kummer の理想素数(つまり我々の素因子) というのは >>403, >>411, >>416, >>419 などから現代の正規離散付置 と呼ばれるもの(を整域 Z[ζ] に制限したもの)のことである。 これを素因子として、その形式的積を因子とするのは 現代の代数的整数論や1変数代数関数論でお馴染みのものである。 だから Kummer の理想数論 は Dedekind のイデアル論より ある意味で現代的とも言える。
代数的整数論の歴史的流れは以下の2通りある。
Kummer の理想数論 ⇒ Dedekind のイデアル論
1変数代数関数論 --> Hensel の p-進数論 ⇒ 付置論 ⇒ 因子論( ⊃ Kummer の理想数論)
こうして歴史はある意味で循環したことになる。
因みに Kummer も p-進数論的なことを考えていたということを何かで 読んだ覚えがある。それが Hensel の p-進数論に影響を与えたことも 考えられるが、はっきりしたことは知らない。
435 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 17:35:05
Kummer の理想数の理論が難解だと思われて来たのは確かだろう。 何故なら Kummer の理想数について満足に解説されたものが 殆どないから。我々が参考にしてる Edwards の本(1970年代)くらいか。
Kummer の理想数の理論が難解だと思われて来たのは kummer が有限素体以外の有限体(いわゆるGaloisの虚数体)の理論を 使わなかったことも一因だと思われる。Bourbakiも可換代数の 歴史覚え書で書いてるが当時Galoisの虚数体の理論は知られていたので Kummer が何故これを使わなかったのか不思議である。 我々はこの点で Kummer と異なり有限体は自由に使っている (例えば >>347など)。因みにEdwards の本は Kummer に比較的忠実で あり有限体はあまり表だって使ってない。
436 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/14(金) 17:58:27
Kummer理論の特徴の1つはそれが構成的であるということである。 計算的と言ってもいい。彼が計算の達人だったから当然といえるが。 このことは Dedekind のイデアル論の非構成的方法と対照的である。
>>347で示したように 1 + X + ... + X^(λ-1) をmod p で既約多項式に 分解することが p を割る素因子の決定につながるが、これは有限回の 手続きで実行できるから構成的である。
Kummerは、この既約多項式への分解を間接的な方法で行っている。 これを後で説明する。
437 :132人目の素数さん:2006/07/14(金) 18:01:58
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438 :KingOfUniverse ◆667la1PjK2 :2006/07/14(金) 18:32:41
talk:>>437 書くな。
439 :132人目の素数さん:2006/07/14(金) 23:58:25
クムマーさんの仕事は労作と思うが、エドワードの本を 元にして祖述するのはあまりよくないのではあるまいか。
ここは断然、クムマーの論文を直接解読するべきだと思う。
440 :132人目の素数さん:2006/07/15(土) 13:30:58
Washingtonの本は、Kummerの理論を解説しているのだろうか? (読めば分かるのだろうけど、整数論に深入りする余裕がないので)
441 :132人目の素数さん:2006/07/16(日) 15:35:30
>>440 正則な素数に対するフェルマーの定理の証明は載っていたと思うけど。
442 :132人目の素数さん:2006/07/16(日) 21:53:05
>441 :132人目の素数さん :2006/07/16(日) 15:35:30 > >>440 > 正則な素数に対するフェルマーの定理の証明は載っていたと思うけど。
つまらない質問にお答え戴き恐縮。
443 :132人目の素数さん:2006/07/16(日) 22:02:33
>>439 >エドワードの本を元にして祖述するのはあまりよくないのではあるまいか。
一部ならいいだろうが本全体を参考にするのはまずいだろうね。 そこで、理想数の理論はもうすぐ終わるので、そしたら 話題を変えようと思う。
444 :132人目の素数さん:2006/07/17(月) 01:22:14
>>理想数の理論
hokani reference nai??
445 :132人目の素数さん:2006/07/17(月) 02:56:47
遠い南の島に、日本の歌を歌う老人がいた。 「あそこでみんな死んでいったんだ……」 沖に浮かぶ島を指差しながら、老人はつぶやいた。
太平洋戦争のとき、その島には日本軍が進駐し陣地が作られた。 老人は村の若者達と共にその作業に参加した。 日本兵とは仲良くなって、日本の歌を一緒に歌ったりしたという。
やがて戦況は日本に不利となり、 いつ米軍が上陸してもおかしくない 状況になった。 仲間達と話し合った彼は代表数人と共に日本の守備隊長の もとを訪れた。自分達も一緒に戦わせて欲しい、と。 それを聞くなり隊長 は激高し叫んだという 「帝国軍人が、貴様ら土人と一緒に戦えるか!」 日本人は仲間だと思っていたのに……みせかけだったのか。 裏切られた想 いで、みな悔し涙を流した。船に乗って島を去る日 日本兵は誰一人見送り に来ない。村の若者達は、悄然と船に乗り込んだ。しかし船が島を離れた 瞬間、日本兵全員が浜に走り出てきた。 そして一緒に歌った日本の歌を 歌いながら、手を振って彼らを見送った。先頭には笑顔で手を振るあの 隊長が。 その瞬間、彼は悟ったという。 あの言葉は、自分達を救うための ものだったのだと……。
446 :132人目の素数さん:2006/07/17(月) 10:42:08
>>442 答え方がまずかったかな? このスレでやっているような理想数を扱ったりはしていない。 ゼータ値と円分体の類数に関するクンマー理論(および岩澤理論)が ワシントン本のテーマ。
447 :132人目の素数さん:2006/07/17(月) 15:46:22
>446 :132人目の素数さん :2006/07/17(月) 10:42:08 > >>442 > 答え方がまずかったかな?
そんな事はない。本当に参考になったよ。
448 :132人目の素数さん:2006/07/18(火) 09:06:19
このスレに関係あるレスは有りがたいけど、中身に関するレスがないと ちょっと不安になる。本当に理解してるのかなと。 今まで、かなり書いてきた(前スレ1,2を含めて)けど、中身に関する レスというのは殆どない。あるのは荒しを除くと、数学史的なこととか、 概念的なこととか、文献に関することとか。 それはそれで有りがたいんだけど、いや、何も非難してるわけでなく。 言ってる意味わかるよね?
449 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/18(火) 09:39:19
P を Z[ζ] の素因子(>>412)とする。n ≧ 1 を有理整数とする。 以下が成立つことは、素因子の定義から明らかだろう。
1) 円分整数 f(ζ) と g(ζ) が P^n で割れるなら f(ζ) - g(ζ) も P^n で割れる。
2) 円分整数 f(ζ) が P^n で割れるなら、任意の円分整数 h(ζ) に対して h(ζ)f(ζ) も P^n で割れる。
つまり、P^n で割れる円分整数の集合は Z[ζ] のイデアルとなる。 これから、因子 A で割れる円分整数の集合はZ[ζ] のイデアルとなる ことが分かる。
因子 A に A で割れる円分整数の集合であるイデアルを対応させる ことにより、因子の集合と0でないイデアルの集合の間に1対1の 対応があることを示そう。
450 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/18(火) 10:01:13
ここで記法を導入する。 因子 A と B の最大公約因子(>>421) を (A, B) または GCD(A, B) と書く。このとき A = B でも良いとする。当然 A = (A, A) である。 因子 A と B の最小公倍因子は LCM(A, B)と書く。 因子の数が3個以上の場合も同様である。
円分整数 f(ζ) と g(ζ) に対して (div(f(ζ)), div(g(ζ))) は (f(ζ), g(ζ)) または GCD(f(ζ), g(ζ)) とも書く。 LCM(div(f(ζ)), div(g(ζ)) は LCM(f(ζ), g(ζ)) とも書く。 円分整数の数が3個以上の場合も同様である。
451 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/18(火) 10:21:55
補題 P を Z[ζ] の素因子で 有理素数 p ≠ λ を割るとする。 f を p の mod λ の指数とする。 p を割る P 以外の素因子を P_1, ..., P_(e-1) とする。
このとき f 項周期から構成される円分整数 Φ(η) で P で割れるが P_i, i = 1, ..., e-1 では割れないものが存在する。
証明 P_0 = P とおく。
>>409 より各 i, i = 0, ..., e-1 に対して 以下の条件 1), 2) を満たす f 項周期から構成される 円分整数 Ψ_i(η) が存在する。
1) Ψ_i(η) は P_iで割れない。 2) j ≠ i のとき、Ψ_i(η) は P_j で割れる。
Φ(η) = Ψ_1(η) + ... + Ψ_(e-1)(η) とおく。 Φ(η) が求めるものであることは容易にわかる。 証明終
452 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/18(火) 10:33:20
補題 P を Z[ζ] の素因子で 有理素数 p ≠ λ を割るとする。 >>451 の Φ(η) に対して P = (p, Φ(η)) となる。 つまり P は p と Φ(η) の最大公約因子である。
証明 素因子 Q が p と Φ(η) を割るとする。 Φ(η) は P で割れるが p を割る他の素因子では割れない。 よって Q = P でなければならない。
逆に、P は p と Φ(η) を割る。
以上から P = (p, Φ(η)) である。 証明終。
453 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/18(火) 11:23:38
>>452 の補題の主張と証明は間違いだった。 これを訂正する前に補題を述べる。
補題 P を Z[ζ] の素因子で 有理素数 p ≠ λ を割るとする。 f を p の mod λ の指数とする。 p を割る P 以外の素因子を P_1, ..., P_(e-1) とする。
このとき f 項周期から構成される円分整数 ψ(η) で P できっかり一回割れ、P_i, i = 1, ..., e-1 では割れないものが 存在する。
証明 >>451 の Φ(η) が P^2 で割れないときは ψ(η) = Φ(η) とする。 Φ(η) が P^2 で割れるときは、ψ(η) = p + Φ(η) とすればよい。 証明終
454 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/18(火) 11:29:08
>>452 の訂正
補題 P を Z[ζ] の素因子で 有理素数 p ≠ λ を割るとする。 >>453 の ψ(η) に対して P = (p, ψ(η) ) となる。 つまり P は p と ψ(η) の最大公約因子である。
証明 素因子の冪 Q^n, n ≧ 1 が p と ψ(η) を割るとする。 ψ(η) は P で割れるが p を割る他の素因子では割れない。 よって Q = P でなければならない。 さらにψ(η) は P できっかり一回割れから n = 1 でなければ ならない。
逆に、P は p と ψ(η) を割る。
以上から P = (p, ψ(η)) である。 証明終。
455 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/18(火) 11:48:12
補題 P, Q を Z[ζ] の素因子で n, m ≧ 1 を有理整数とする。 P^n で割れる円分整数はかならず Q^m で割れるとする。 このとき P^n は Q^m で割れる。つまり P = Q で n ≧ m である。
証明 二つの場合に分ける。
1) P はλを割る。 P = (ζ - 1) である(>>411, >>419)。 よって、円分整数 (ζ - 1)^n は P^n で割れる。 仮定より (ζ - 1)^n は Q^m でも割れる Q^m は Q で割れるから (ζ - 1)^n は Q で割れる。 Q は素因子だから ζ - 1 は Q で割れる。 よって λ = N(ζ - 1) (>>200) は Q で割れる。 λ を割る素因子は (ζ - 1) のみだから P = Q である。 (ζ - 1)^n は きっかり P^m で割れるから n ≧ m である。
2) P は 有理素数 p ≠ λを割る。 >>453 の ψ(η) を使う。p^n は P^n で割れるから Q^m でも割れる。 よって p は Q で割れる。ψ(η)^n は P^n で割れるから Q^m でも 割れる。よって ψ(η) は Q で割れる。よって P = Q である。 ψ(η)^n はきっかり P^n で割れるから n ≧ m である。 証明終
456 :132人目の素数さん:2006/07/20(木) 05:43:48
1) 次の証明考えてくれ。
X:quasi compact scheme F:coherent sheaf このとき、 G:有限ランクの局所free scheafが存在して G->>F(全射) とできる。
2) X:quasi compact scheme UはXのopen subscheme このとき、U上のfreesheafはX上のfreesheaf に拡張できますか?
457 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/20(木) 09:10:28
補題 p を有理素数とする。 A, B を Z[ζ] の因子で、それぞれ p を割る素因子のみで割れる とする。 さらに A で割れる円分整数はかならず B で割れるとする。 このとき A は B で割れる。
証明 p = λ のときは明らかなので p ≠ λ とする。 p の mod λ の指数を f とする。
p を割る相異なる素因子を P_0, P_1, ..., P_(e-1) とする。 >>453 を各 P_i に適用すると、各 i, i = 0, 1, ..., e-1 に対して f 項周期から構成される円分整数 ψ_i(η) で 以下の条件を満たすものが存在する。
1) ψ_i(η) は P_i できっかり一回割れる。 2) i ≠ j のとき ψ_i(η) は P_j で割れない。
A = (P_0)^(n_0)...(P_(e-1))^(n_(e-1)) とする。 ψ_i(η)^n_i, i = 0, 1, ..., e-1 の積を P(η) とおく。 P(η) は 各 i できっかり (P_i)^(n_i) で割れる。
P(η) は A で割れるから B でも割れる。
各 i に対して B がきっかり (P_i)^m で割れるとする。 P(η) は (P_i)^m で割れる。 よって n_i ≧ m である。 よって、 A は B で割れる。 証明終
458 : ◆BhMath2chk :2006/07/20(木) 12:00:00
>>176-178 f(X)=Σ(a(k)X^k)。 f(X)f(X^(-1))≡b+cΣ(X^k)(mod.X^n-1)。
b+c=Σ(a(k)^2)。 b+nc=(Σ(a(k)))^2。 (n-1)b=nΣ(a(k)^2)-(Σ(a(k)))^2≧0。
459 :132人目の素数さん:2006/07/20(木) 12:59:34
>>458
正しいかどうか分からないものを解読するのは面倒だから 詳しく説明してくれ。
460 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/20(木) 13:33:26
補題 P を 円分整数環 Z[ζ] の素因子、π を円分整数で P できっかり1回 割れるものとする。n を有理整数 ≧ 1 とする。 円分整数 α が P^n で割れれば α ≡ (π^n)β (mod P^(n+1)) となる円分整数βが存在する。
証明 P がλを割るときは、 P = (ζ- 1) である。 よって α = ((ζ- 1)^n)β となる円分整数βが存在する。 このとき、当然 α ≡ (π^n)β (mod P^(n+1)) である。
よって P を割る有理素数 p はλと異なるとする。 >>409 より f 項周期から構成される円分整数 Ψ(η) で次の 条件 1), 2) を満たすものが存在する。 1) Ψ(η) は P で割れない。 2) Ψ(η) は p を割る他の素因子で割れない。
α は P^n で割れるから (Ψ(η))^n α = (p^n)γ となる円分整数γが 存在する(>>403)。
同様に (Ψ(η))^n (π^n) = (p^n)δ となる円分整数δが存在する。 π^n はきっかり P^n で割れるから δ は P で割れない。 円分整数環 Z[ζ] の mod P の剰余類は体をなすから δβ ≡ γ (mod P) となる円分整数βが存在する。
(Ψ(η))^n (α - (π^n)β) = (p^n)(γ - δβ) の右辺、よって左辺は P^(n+1) で割れる。 (Ψ(η))^n は P で割れないから α - (π^n)β は P^(n+1) で割れる。 証明終
461 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/20(木) 13:49:49
訂正
>>460 >2) Ψ(η) は p を割る他の素因子で割れない。
2) Ψ(η) は p を割る他の素因子で割れる。
462 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/20(木) 17:28:33
補題 P を 円分整数環 Z[ζ] の素因子とする。 円分整数 α が P で割れなければ、任意の有理整数 n ≧ 1 で αβ ≡ 1 (mod P^n) となる円分整数βが存在する。
証明 n に関する帰納法を使う。 円分整数環 Z[ζ] の mod P の剰余類全体は体をなすから n = 1 のときは明らか。 n ≧ 1 とし、αγ ≡ 1 (mod P^n) となる円分整数γが存在すると 仮定する。
π を円分整数で P できっかり1回割れるものとする。 このようなπとしては、P がλを割るときは、π = ζ- 1 とし、P がλと異なる有理素数 p を割るときは >>404 から π = p とすればよい。
>>460 より αγ - 1 ≡ (π^n)δ (mod P^(n+1)) となる円分整数δが 存在する。 α は P で割れないから、ακ ≡ δ (mod P) となるる円分整数κが 存在する。
α(γ - (π^n)κ) - 1 ≡ (π^n)(δ - ακ) ≡ 0 (mod P^(n+1)) よって β = γ - (π^n)κ とおけば αβ ≡ 1 (mod P^(n+1)) となる。 証明終
463 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/20(木) 18:12:08
補題 P, Q を 円分整数環 Z[ζ] の異なる素因子とする。 有理整数 n, m ≧ 1 に対して α ≡ 0 (mod P^n), α ≡ 1 (mod Q^m) となる円分整数αとβが存在する。
証明 >>455 より P^n で割れる円分整数γで Q で割れないものがある。 >>462 よりγδ ≡ 1 (mod Q^m) となる円分整数δが存在する。 α = γδ とおけばよい。 証明終
464 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/20(木) 18:13:54
訂正
>>463 >となる円分整数αとβが存在する。
となる円分整数αが存在する。
465 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/21(金) 12:27:45
命題 A, B を Z[ζ] の因子とする。 A で割れる円分整数はかならず B で割れるとする。 このとき A は B で割れる。
証明
A を割る素因子で割れる有理素数の集合を {p_1, ..., p_r} とする。
各 i に対して p_i を割る A の素因子の重複度を考慮した積を A_i
とする。 A = (A_1)...(A_r) である。
p_i の十分高い冪は A_i で割れる。 よって (p_1)...(p_r) の十分高い冪は A で割れ、従って B でも 割れる。よって B の素因子は、ある p_i を割る。 各 i に対して p_i を割る B の素因子の重複度を考慮した積を B_i とする。ただし、p_i を割る B の素因子が存在しないときは B_i は 単位因子とする。以上から B = (B_1)...(B_r) である。
円分整数 α が A_1 で割れるとする。(p_2)...(p_r) の十分高い冪は (A_2)...(A_r) で割れるから、有理整数 n ≧ 1 を十分大きくとれば α((p_2)...(p_r))^n は A で割れ、従って B でも割れる。 p_1 を割る B の素因子は ((p_2)...(p_r))^n を割らない。、 よって α は B_1 で割れる。 よって >>457 から A_1 は B_1 で割れる。 同様にして他の A_i も B_i で割れる。 よって A は B で割れる。 証明終
466 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 09:17:36
補題 A, B, C を Z[ζ] の因子で、 B と C は互いに素とする。 以下の合同式を満たす Z[ζ] の元 x, y があるとする。 x ≡ 0 (mod A) x ≡ 1 (mod B)
y ≡ 0 (mod A) y ≡ 1 (mod C) このとき、 z ≡ 0 (mod A) z ≡ 1 (mod BC) となる Z[ζ] の元 z がある。
証明 t = 1 - x s = 1 - y とおけば、 x + t = 1 y + s = 1 となる。 (x + t)(y + s) = 1 の左辺を展開して xy + xs + yt + ts = 1
z = xy + xs + yt とおけば z ≡ 0 (mod A) で z - 1 = -st となる。 -st は B と C で割れ、B と C は互いに素だから BC で割れる。よって z ≡ 1 (mod BC) 証明終
467 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 09:32:32
>>466 の変形として、
補題 A, B, C を Z[ζ] の因子で、 B と C は互いに素とする。 以下の合同式を満たす Z[ζ] の元 x, y があるとする。
x ≡ 1 (mod A) x ≡ 0 (mod B)
y ≡ 1 (mod A) y ≡ 0 (mod C) このとき、 z ≡ 1 (mod A) z ≡ 0 (mod BC) となる Z[ζ] の元 z がある。
証明 1 - x ≡ 0 (mod A) 1 - x ≡ 1 (mod B)
1 - y ≡ 0 (mod A) 1 - y ≡ 1 (mod C)
だから >>466 より s ≡ 0 (mod A) s ≡ 1 (mod BC) となる s がある。
z = 1 - s とおけばよい。 証明終
468 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 09:38:54
補題 A, B を Z[ζ] の因子で互いに素とする。 このとき以下の合同式を満たす Z[ζ] の元 x, y がある。
x ≡ 1 (mod A) x ≡ 0 (mod B)
証明 A, B を互いに異なる素因子の冪の積として表し、 >>463, >>466, >> 467 を繰り返して使えばよい。 証明終
469 :132人目の素数さん:2006/07/24(月) 09:43:14
大好物メコスジ論 #003
470 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 09:56:51
補題 A_1, ..., A_r を Z[ζ] の因子で、どの二つも互いに素とする。 このとき以下の合同式を満たす Z[ζ] の元 x_1, ..., x_r がある。
x_i ≡ 1 (mod A_i), i = 1, ..., r x_i ≡ 0 (mod A_j), j ≠ i のとき。
証明 各 i に対して B_i = ΠA_j とする。ここで 積は j ≠ i となる j 全体を動く。 A_i と B_i は素だから >>468 より x_i ≡ 1 (mod A_i) x_i ≡ 0 (mod B_i) となる x_i がある。 x_i は j ≠ i のとき A_j で割れるからこれが求めるものである。 証明終
471 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 10:04:21
命題(中国式剰余定理) A_1, ..., A_r を Z[ζ] の因子で、どの二つも互いに素とする。 y_1, ..., y_r を Z[ζ] の元の列とする (y_1, ..., y_r には同じものがあってもよい)。
このとき z ≡ y_i (mod A_i), i = 1, ..., r となる Z[ζ] の元 z が存在する。
証明 >>470 より、以下の合同式を満たす Z[ζ] の元 x_1, ..., x_r がある。
x_i ≡ 1 (mod A_i), i = 1, ..., r x_i ≡ 0 (mod A_j), j ≠ i のとき。
z = (x_1)(y_1) + ... + (x_r)(y_r) とすればよい。 証明終
472 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 12:05:48
命題 A, B を Z[ζ] の因子とし、C を A と B の最大公約因子とする。 Z[ζ] の元 c が C で割れれば A で割れる元 a と B で割れる元 b があり、c = a + b となる。
証明 A = CA' B = CB' となる因子 A', B' がある。 A' と B' は素である。 よって、>>468 より b' ≡ 1 (mod A') b' ≡ 0 (mod B') となる b' がある。
a' = 1 - b' とおけば、 a' ≡ 0 (mod A') で a' + b' = 1
この両辺に c を掛けて
c = ca' + cb'
ca' は CA' = A で割れ、cb' は CB' = B で割れる。 よって a = ca', b = cb' が求めるものである。 証明終
473 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 13:01:38
補題 Z[ζ] のイデアルは有限生成である。
証明 Z[ζ] がネーター環であることは周知だし、有限生成アーベル群の 部分群は有限生成であることからも分かるが、ここでは別証明を述べる。
I を Z[ζ] のイデアルとする。I ≠ 0 と仮定してよい。 α ≠ 0 を I の元とする。Nα ∈ I である。 n = Nα とおく。 Z[ζ] の加法群は階数 λ-1 の自由アーベル群 だから Z[ζ]/nZ[ζ] は n^(λ-1) 個の剰余類からなる。 よって I/nZ[ζ] の剰余類の個数は有限である。 β_1, ..., β_r を I/nZ[ζ] の各剰余類の代表元とする。 γ ∈ I なら γ ≡ β_i (mod nZ[ζ]) となる β_i がある。 つまり γ は β_iZ[ζ] + nZ[ζ] に含まれる。 よって I は β_1, ..., β_r と n で生成される。 証明終
474 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 13:25:59
命題 Z[ζ] の因子 A に対して A で割れる円分整数全体は Z[ζ] の イデアルとなる。このイデアルを I(A) と書く。 A に I(A) を対応させることにより Z[ζ] の因子と Z[ζ] の 0 でないイデアルの間に1対1の対応が得られる。
証明 I(A) がイデアルになることは明らか。I(A) ≠ 0 も明らかだろう。 I(A) = I(B) とすると、>>465 より A は B で割れ、B は A で割れる。 よって A = B である。よって、写像 I は単射である。
J を Z[ζ] の0でないイデアルとする。 >>473 より J は有限生成である。α_1, ..., α_r を J の生成元で 0でないものとする。 A を div(α_1), ..., div(α_r) の最大公約因子とする。 >>472 より I(A) ⊂ J である。 J ⊂ I(A) は明らかだからJ = I(A) である。 よって、写像 I は全射である。 証明終
475 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 14:35:02
補題 Z[ζ] の素因子 P と有理整数 n ≧ 1 に対して P^n で割れる 円分整数全体 I(P^n) は I(P)^n に等しい。
証明 P = div(ζ - 1) のときは明らかだから、P ≠ div(ζ - 1) とする。 P を割る有理素数を p とする。 p を割る P 以外の素因子を P_1, ..., P_(e-1) とする。
>>453 より 円分整数 ψで P できっかり一回割れ、 P_i, i = 1, ..., e-1 では割れないものが存在する。
>>454 より P は p と ψ の最大公約因子である。
>>472 より I(P) は p と ψ で生成される。
よって I(P)^n は {p^iψ^j; i + j = n} で生成される。
素因子 Q が集合 {p^iψ^j; i + j = n} の任意の元を割るとする。
Q は p^n を割るから p を割る。よって Q は P または
P_1, ..., P_(e-1) のどれかである。
ψ^n は Q で割れるから ψ は Q で割れる。よって Q = P である。
P^k が集合 {p^iψ^j; i + j = n} の任意の元を割るとする。
ψ^n は P^k で割れるから n ≧ k である。
集合 {p^iψ^j; i + j = n} の各元が P^n で割れることは明らか。
よって {p^iψ^j; i + j = n} の最大公約因子は P^n である。
>>472 より I(P^n) = I(P)^n である。
証明終
