最終更新日時 2011年03月05日 (土) 21時06分52秒
代数的整数論 004 (296-360)
元スレ: http://science6.2ch.net/test/read.cgi/math/1164286624/296-360
ログ元: http://yomi.mobi/read.cgi/science6/science6_math_1164286624/296-360
ログ元: http://yomi.mobi/read.cgi/science6/science6_math_1164286624/296-360
296 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 12:51:50 ]
補題 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を負定値(>>293)の2次形式とする。
(u, v) を 直積 Z × Z の元とすれば f(u, v) ≦ 0 であり、 f(u, v) = 0 となるのは (u, v) = (0, 0) のときに限る。
証明 >>295 の証明より
af(x, y) = (ax + by/2)^2 + |D|y^2/4
これより補題の主張は明らか。
証明終
297 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 12:54:09 ]
命題 2次形式 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 に一次変換
x = pu + qv y = ru + sv
を施して
g(u, v) = f(pu + qv, ru + sv) = ku^2 + luv + mv^2
とする。
ここで p, q, r, s は有理整数で ps - qr = ±1 である。
f(x, y) が正定値(>>293)であるためには g(u, v) が正定値であること が必要十分である。
証明 >>281 より f と g の判別式は同じである。
一次変換 x = pu + qv y = ru + sv は可逆だから (u, v) に (x, y) を対応させることにより 集合としての直積 Z × Z の自己同型写像が得られる。
これと >>295 と >>296 からわかる。 証明終
298 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 15:34:52 ]
命題 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を正定値(>>293)の2次形式とする。 さらに f = f(x, y) の判別式が、ある2次体 Q(√m) の判別式 D に 等しいとする。
f に一次変換 x = pu + qv y = ru + sv を施して
g(u, v) = f(pu + qv, ru + sv) = ku^2 + luv + mv^2
とする。 ここで p, q, r, s は有理整数で ps - qr = 1 である。
このとき [a, (-b + √D)/2] と [k, (-l + √D)/2] は Q(√m) の 原始イデアルであり、同じイデアル類に属す。
299 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 15:37:57 ]
>>298 の証明
D < 0 だから Q(√m) は虚2次体である。 θ = (-b + √D)/2a とおく。θ は ax^2 + bx + c = 0 の根である。
ここで、>>273 と同様に √D = √|D| √(-1) とする。 a > 0 だから θ は複素上半平面にある。
>>287 より [a, (-b + √D)/2] は Q(√m) の原始イデアルである。
行列 (p, q)/(r, s) の逆行列は (s, -q)/(-r, p) である。 τ = (sθ - q)/(-rθ + p) とおく。 θ = (pτ + q)/(rτ + s) である。
>>198 より Im(τ) = Im(θ)/|-rθ + p|^2 だから τ も複素上半平面にある。
aθ^2 + bθ + c = 0 より
a(pτ + q)^2 + b(pτ + q)(rτ + s) + c(rτ + s)^2 = 0
この左辺は f(pτ + q, rτ + s) = g(τ, 1) = kτ^2 + lτ + m である。
>>297 より g(u, v) は正定値だから、k > 0 である。 よって τ が複素上半平面にあることから τ = (-l + √D)/2k で でなければならない。
>>287 より [k, (-l + √D)/2] は Q(√m) の原始イデアルである。 >>195 より [a, (-b + √D)/2] と [k, (-l + √D)/2] は、 Q(√m) の同じイデアル類に属す。 証明終
300 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 15:54:09 ]
>>194 において Q(√m) が虚2次体のとき、>>273 より θ と ψ は複素上半平面にある。
>>274 より Im(θ) = (ps - qr)Im(ψ )/|rψ + s|^2
よって ps - qr = 1 である。
301 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 16:05:53 ]
I = [a, b + cω] を2次体 Q(√m) のイデアルの標準基底による 表示とする(>>16)。
a と b は c で割れるから a = ce、b = cr とすると、
I = c[e, r + ω] となる。[e, r + ω] は原始イデアルである。
(b + cω)/a = (r + ω)/e である。
302 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 16:17:06 ]
定義 2次形式 f と g は ps - qr = 1 となる有理整数 p, q, r, s があり、
g(x, y) = f(px + qy, rx + sy)
となるとき、同値であるという。
303 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 16:36:36 ]
定義 Q(√m) を虚2次体とする。その判別式を D とする。 Q(√m) のイデアル類群(>>193)を Cl(D) と書く。
判別式 D の正定値2次形式を >>302 の同値関係で類別した同値類の 集合を F+(D) と書く。
F+ の元からその任意の代表 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 をとる。
>>287 より [a, (-b + √D)/2] は Q(√m) の原始イデアルである。
>>298 より、このイデアルの属すイデアル類は f(x, y) の取り方に よらない。
よって F+(D) から Cl(D) への写像が定まる。 この写像を Φ+ と書く。
304 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 17:08:22 ]
命題 >>303 の写像 Φ+ は単射である。
証明 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 と g(x, y) = kx^2 + lxy + my^2 を 判別式 D の正定値2次形式とする。 さらに [a, (-b + √D)/2] と [k, (-l + √D)/2] が同じイデアル類に 属すとする。
θ = (-b + √D)/2a τ = (-l + √D)/2k とおく。
>>300 より ps - qr = 1 となる有理整数 p, q, r, s があり、 θ = (pτ + q)/(rτ + s) となる。 aθ^2 + bθ + c = 0 だから a(pτ + q)^2 + b(pτ + q)(rτ + s) + c(rτ + s)^2 = 0 この左辺は f(pτ + q, rτ + s) である。
f(px + qy, rx + sy) を x, y の2次形式とみたものを h(x, y) とする。 >>297 より h(x, y) は正定値である。 >>281 より h(x, y) の判別式は D だから >>289 より h(x, y) は 原始的である。
h(τ, 1) = 0 だから h(x, 1) は τ を根とする2次式で、その係数 の最大公約数が 1 かつ最高次の係数が正であり τ により 一意に決まる(>>276)。
一方 τ = (-l + √D)/2k は kx^2 + lx + m の根でもあるから g(x, y) = h(x, y) である。 証明終
305 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 17:33:53 ]
命題 >>303 の写像 Φ+ は全射である。
証明 I = [a, b + cω] を2次体 Q(√m) のイデアルの標準基底による 表示とする(>>16)。
>>301 より I = c[e, r + ω] となり、 (b + cω)/a = (r + ω)/e である。
θ = (r + ω)/e とおく。
>>292 よりθ は2次無理数であり、 その判別式は D である。
よって aθ^2 + bθ + c = 0 となる。 ここで a, b, c は有理整数で gcd(a, b, c) = 1、a > 0、 b^2 - 4ac = D である。
θ は複素上半平面にあるから θ = (-b + √D)/2a である。 よって >>287 より [a, (-b + √D)/2] は Q(√m) の原始イデアル である。
>>195 より [a, (-b + √D)/2] と [e, r + ω] は Q(√m) の同じイデアル類に属す。
よって、写像 Φ+ により f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 の 属す F+ の類が I の属すイデアル類に対応する。 証明終
306 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/20(水) 18:38:43 ]
これって何の本を参考にされてるんですか?
307 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 19:12:31 ]
>>306
主に高木の初等整数論講義です。 しかし、この本のこのあたりはあまり整理されていない。 2次形式もあまり表だっては使われていない。
2次形式まわりの定義(特に正定値2次形式)については Zagier の 数論入門(岩波) を参考にしました。 しかし、この本はこのあたりの証明はほとんど書いてないので 定義以外はあまり参考にならない。
写像 Φ+ の定義については Zagier と前に言及した Cohen の A course in computational algebraic number thery を参考にしました。
しかし、この本にも証明はほとんど書いてないです。
308 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/20(水) 19:30:04 ]
>>307 ありがと。 Zagierはちょうど図書館から借りてるところだったので、暇なときに読んでみる
309 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/20(水) 22:58:18 ]
正定値というのは positive definite の訳ですが誤解を与える かもしれない。 正値のほうがいいかもしれない。
310 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/21(木) 09:34:58 ]
命題 Q(√m) を虚2次体とする。その判別式を D とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値(>>293)の 2次形式とする。
f に一次変換 x = pu + qv y = ru + sv を施して g(u, v) = f(pu + qv, ru + sv) = ku^2 + luv + mv^2 とする。 ここで p, q, r, s は有理整数で ps - qr = 1 である。
θ = (b + √D)/2a τ = (-l + √D)/2k とおくと θ = (pτ + q)/(rτ + s) である。
証明 kτ^2 + lτ + m = 0 だから g(τ, 1) = f(pτ + q, rτ + s) = 0 よって a(pτ + q)^2 + b(pτ + q)(rτ + s) + c(rτ + s)^2 = 0
この式の両辺を (rτ + s)^2 で割ると
aμ^2 + bμ + c = 0 となる。ここで μ = (pτ + q)/(rτ + s) とおいた。
a > 0 であり、μ は複素上半平面にあるから μ = (b + √D)/2a である。 よって θ = μ である。 証明終
311 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/21(木) 09:56:24 ]
定義 Q(√m) を虚2次体とする。その判別式を D とする。
複素上半平面にある判別式 D の2次の無理数(>>276) の SL_2(Z) の 作用での同値類の集合を H(D) と書く。
F+(D) (>>303) の元からその任意の代表 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 をとる。 (-b + √D)/2a は複素上半平面にある判別式 D の2次の 無理数である。
>>310 より (-b + √D)/2a の属す H(D) の同値類は f(x, y) の属す F+(D) の同値類のみで決まる。
よって F+(D) から H(D) への写像が定まる。 この写像を Ψ+ と書く。
312 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/21(木) 09:58:46 ]
命題 >>311 の写像 Ψ+ は単射である。
証明 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 と g(x, y) = kx^2 + lxy + my^2 を 判別式 D の正定値2次形式とする。 さらに θ = (-b + √D)/2a τ = (-l + √D)/2k とおいたとき
θ = (pτ + q)/(rτ + s) とする。ここで p, q, r, s は有理整数で ps - qr = 1 である。
aθ^2 + bθ + c = 0 だから a(pτ + q)^2 + b(pτ + q)(rτ + s) + c(rτ + s)^2 = 0
この左辺は f(pτ + q, rτ + s) である。
f(px + qy, rx + sy) を x, y の2次形式とみたものを h(x, y) とする。 >>297 より h(x, y) は正定値である。 >>281 より h(x, y) の判別式は D だから >>289 より h(x, y) は 原始的である。
h(τ, 1) = 0 だから h(x, 1) は τ を根とする2次式で、その係数 の最大公約数が 1 かつ最高次の係数が正であり τ により 一意に決まる(>>276)。
一方 τ = (-l + √D)/2k は kx^2 + lx + m の根でもあるから g(x, y) = h(x, y) である。 証明終
313 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/21(木) 10:09:09 ]
命題 >>311 の写像 Ψ+ は全射である。
証明 H(D) の任意の類からその代表 θ を取る。 θ は複素上半平面にある判別式 D の2次の無理数である。
aθ^2 + bθ + c = 0 とする。 ここで a, b, c は有理整数で gcd(a, b, c) = 1、a > 0、 b^2 - 4ac = D である。
f = ax^2 + bxy + cy^2 は判別式 D の正定値2次形式である。 f の属す F+(D) の類に θ の属す H(D) の類が対応する。 証明終
314 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/21(木) 11:22:09 ]
>>304 と >>305 より 集合 F+(D) と Cl(D) の間に全単射が存在し、
>>312 と >>313 より F+(D) と H(D) の間に全単射が存在することが分かった。
315 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/21(木) 11:28:33 ]
Q(√m) を虚2次体とする。その判別式を D とする。 θ を複素上半平面にある判別式 D の2次の無理数とする。
>>267 の (1) より θ は >>253 の G の点と SL_2(Z) の作用で 同値である。
θ ∈ G となる条件を求めよう。
aθ^2 + bθ + c = 0 とする。 ここで a, b, c は有理整数で gcd(a, b, c) = 1、a > 0、 b^2 - 4ac = D である。
θ = (-b + √D)/2a である。
>>257 より (√|D|)/2a ≧ (√3)/2 よって (√|D|) ≧ a√3 よって a ≦ √(|D|/3)
よって a の取りうる値は有限である。
他方 |b/2a| ≦ 1/2 だから |b| ≦ a である。 よって b の取りうる値も有限である。
b^2 -4ac = D だから a と b が決まれば c も決まる。
以上から H(D) は有限集合であることが分かった。 >>314 よりイデアル類群 Cl (D) の位数も有限である。
316 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/21(木) 12:01:51 ]
定義 Q(√m) を虚2次体とする。その判別式を D とする。 >>315 より Q(√m) のイデアル類群 Cl (D) の位数は有限である。 これを Q(√m) の類数と呼び、h(D) と書く。
317 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/21(木) 12:05:57 ]
問題 Q(√(-5) の類数 h(-20) を >>315 を使って求めよ。 さらにイデアル類群 Cl (-20) の各類の代表となる原始イデアルを 求めよ。
318 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/21(木) 13:09:45 ]
問題 m が -1, -2, -3, -7, -11, -19, -43, -67, -163 のとき Q(√(−m)) の類数は1であることを証明せよ。
m の値が異なる毎に答えのレスを変えること。
319 名前:132人目の素数さん [2006/12/22(金) 14:56:54 ]
与えられた類数を持つ虚二次体って有限個なの?
320 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/22(金) 15:31:19 ]
定義 Q(√m) を虚2次体とし、その判別式を D とする。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D で正定値(>>293)の 2次形式とする。
G を >>253 で定義した集合とする。 つまり
G = { z ∈ H ; -1/2 ≦ Re(z) < 1/2 かつ |z| ≧ 1 で
|z| = 1 のときは -1/2 ≦ Re(z) ≦ 0 }
(-b + √D)/2a が G に属すとき f(x, y) を簡約2次形式と呼ぶ。
321 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/22(金) 16:26:24 ]
命題 Q(√m) を虚2次体とし、その判別式を D とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値(>>293)の 2次形式とする。
f(x, y) が簡約2次形式(>>320)であるためには
|b| ≦ a ≦ c であり、 |b| = a または a = c のときは b ≧ 0 となることが必要十分である。
証明 θ = (-b + √D)/2a が >>253 で定義した集合 G に属すとする。
G = { z ∈ H ; -1/2 ≦ Re(z) < 1/2 かつ |z| ≧ 1 で
|z| = 1 のときは -1/2 ≦ Re(z) ≦ 0 }
である。
Re(θ) = -b/(2a) だから -1/2 ≦ -b/(2a) < 1/2 である。 したがって -a ≦ -b < a よって |b| ≦ a |b| = a のときは a = b である。
他方、 D = b^2 - 4ac に注意して、 |θ|^2 = (b^2 + |D|)/4a^2 = (b^2 + |D|)/4a^2 = 4ac/4a^2 = c/a
|θ| ≧ 1 であるためには a ≦ c が必要十分である。
|θ| = 1 つまり a = c のときは -1/2 ≦ -b/(2a) ≦ 0 よって -a ≦ -b ≦ 0 つまり a ≧ b ≧ 0 証明終
322 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/22(金) 20:01:00 ]
>>319
そうです。
もっと一般に与えられた次数と類数を持つ有理数体の虚アーベル拡大体 も有限個です。
この証明は、例えば Narkiewicz の Elementary and analytic theory of algebraic numbers に載っています。
323 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/22(金) 20:42:34 ]
Lecture Notes on Algebraic Number Theory
ttp://www.fen.bilkent.edu.tr/~franz/LN/LN-ant.html
324 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/22(金) 21:11:15 ]
命題 Q(√m) を虚2次体とし、その判別式を D とする。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値(>>293)の 2次形式とする。
f に (-b + √D)/2a を対応させることにより、
判別式 D の正定値(>>293)の2次形式と、複素上半平面にある 判別式 D の2次無理数(>>276)とは1対1に対応する。
証明 判別式 D の正定値(>>293)の2次形式の集合を PF(D) と書く。 複素上半平面にある判別式 D の2次無理数の集合を HQ(D) と書く。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 が判別式 D の正定値2次形式なら
θ = (-b + √D)/2a は複素上半平面にある判別式 D の2次無理数 である。
従って φ(f) = θ により写像 φ : PF(D) → HQ(D) が定まる。
逆に、θ が複素上半平面にある判別式 D の2次無理数なら、 >>276 より aθ^2 + bθ + c = 0 となる。 ここで a, b, c は有理整数で gcd(a, b, c) = 1 かつ a > 0 である。
>>276 より a, b, c は θ により一意に決まる。
θ に ax^2 + bxy + cy^2 を対応させれば、これが φ の逆写像である。 証明終
325 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/22(金) 21:53:50 ]
Q(√m) を虚2次体とし、その判別式を D とする。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値(>>293)の 2次形式とする。
θ = (-b + √D)/2a とおく。 θ は複素上半平面にある判別式 D の2次無理数である。
(p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) のとき τ = (sθ - q)/(-rθ + p) とおくと、>>286 より τ は判別式 D の 2次無理数である。
>>198 より Im(τ) = Im(θ)/|-rθ + p|^2 だから τ は 複素上半平面にある
θ = (pτ + q)/(rτ + s) である。
g(u, v) = f(pu + qv, ru + sv) = ku^2 + luv + mv^2 とする。
aθ^2 + bθ + c = 0 より
a(pτ + q)^2 + b(pτ + q)/(rτ + s) + c(rτ + s)^2 = 0 となる。
この左辺は f(pτ + q, rτ + s) = kτ^2 + lτ + m である。
>>281 より g(u, v) = ku^2 + luv + mv^2 の判別式は D であり、 >>297 より g は正定値2次形式である。よって k > 0 である。
よって τ = (-l + √D)/2k である。
以上を簡潔にまとめると f に θ が対応するなら g には τ が対応する。
326 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/22(金) 22:43:34 ]
G を >>253 で定義した集合とする。
複素上半平面にある判別式 D の2次無理数 θ が与えられたとき それと SL_2(Z) の作用に関して同値な2次無理数で G の点となるもの を有限回の手続きで求める方法を述べる。
>>269 より SL_2(Z) は S = (1, 1)/(0, 1) と T = (0, -1)/(1, 0) で 生成される。
以下のアルゴリズムを考える。
(1) -1/2 ≦ Re(θ) < 1/2 なら (2) にいく。 -1/2 ≦ Re(θ) < 1/2 でなければ θ に一次分数変換 S^(n)(θ) = θ + n を施すことにより τ = θ + n を -1/2 ≦ Re(τ) < 1/2 と出来る。 θ = τ とおく。
(2) |θ| < 1 なら τ = T(θ) = -1/θ とすると |τ| > 1 となる。 θ = τ とおいて、(1) にいく。
|θ| > 1 なら終了。
|θ| = 1 なら (3) にいく。
(3) -1/2 ≦ Re(θ) ≦ 0 なら終了。
0 < Re(θ) < 1/2 なら τ = T(θ) = -1/θ とすると |τ| = 1 で -1/2 < Re(τ) < 0 となるので θ = τ と おいて終了。
327 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/22(金) 23:36:32 ]
補題 a と b を有理整数として a > 0 とする。
-a ≦ 2ak + b < a となる有理整数 k が一意に存在する。
証明 有理整数の割り算の剰余定理の一種だが、改めて証明しよう。
集合 { n ∈ Z ; 2an ≦ b } の最大値を m とする。
2am ≦ b < 2a(m + 1) = 2am + 2a だから区間 [2am, 2am + 2a) を 2等分して 2am ≦ b < 2am + a または 2am + a ≦ b < 2am + 2a である。
前者の場合 0 ≦ b - 2am < a 後者の場合 -a ≦ b - 2a(m + 1) < a よって k = -m または k = -(m + 1) とおけばよい。
一意性の証明が残っている。 -a ≦ 2ak + b < a かつ -a ≦ 2al + b < a とする。
-a < -2al - b ≦ a だから -2a < 2a(k - l) < 2a となる。 対称的に -2a < 2a(l - k) < 2a となる。
よって 2a|k - l| < 2a だから |k - l| < 1 となる。 k と l は有理整数だから k = l である。 証明終
328 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/22(金) 23:46:51 ]
>>326 のアルゴリズムが有限回で終わることを証明しよう。
そのため >>326 のアルゴリズムを正定値2次形式の簡約アルゴリズムに 翻訳する。
Gauss に倣って簡単のために、2次形式 ax^2 + bxy + cy^2 を (a, b, c) と書くことにする。
いつものように Q(√m) を虚2次体とし、その判別式を D とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値(>>293)の 2次形式とする。
n を有理整数として f に S^n = (1, n)/(0, 1) を作用させと、
x = u + nv y = v とおいて、
f(u + nv, v) = a(u + nv)^2 + b(u + nv)v + cv^2 = au^2 + (2an + b)uv + (an^2 + bn + c)v^2 = (a, 2an + b, an^2 + bn + c)
f に T = (0, -1)/(1, 0) を作用させると、
x = -v y = u とおいて
f(-v, u) = av^2 - buv + cu^2 = (c, -b, a)
329 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 00:14:09 ]
以下のアルゴリズムを考える。
(1) -a ≦ -b < a なら (2) にいく。 -a ≦ -b < a でなければ
(a, b, c) に S^(n) を施すことにより (a, 2an + b, an^2 + bn + c) となる(>>328)。
ここで -a ≦ -2an - b < a となるように n をとっておく(>>327) 。
(a, 2an + b, an^2 + bn + c) を改めて (a, b, c) とおく。
(2) a < c なら終了。
a = c なら (3) にいく。
a > c なら (a, b, c) に T を施すことにより (c, -b, a) となる(>>328)。
(c, -b, a) を改めて (a, b, c) とおき、(1) にいく。
(3) b ≧ 0 なら終了。
b < 0 なら (a, b, c) に T を施すことにより (c, -b, a) となる。
(c, -b, a) を改めて (a, b, c) とおき、終了。
330 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 00:40:24 ]
>>329 の (1) において |b| > a のとき、 (a, b, c) に S^(n) を施して (a ', b ', c ') = (a, 2an + b, an^2 + bn + c) となり、 -a ≦ b ' < a となる。よって |b '| ≦ a である。 つまり |b| は、少なくとも 1 減少する。
-b = a のときも (a, b, c) に S^(n) を施すが、 このときも -a ≦ -b ' < a となり |b| は、少なくとも 1 減少する。
(2) と (3) において |b| は変化しない。
以上から >>329 のアルゴリズムは有限回で終わる。 したがって、それと同値な >>326 のそれも有限回で終わる。
331 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 00:57:37 ]
訂正
>>330 >-b = a のときも (a, b, c) に S^(n) を施すが、 >このときも -a ≦ -b ' < a となり |b| は、少なくとも 1 減少する。
-b = a のときも (a, b, c) に S^(n) を施すが、 このときは -a = -b ' となり |b| は変化しない。
332 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 01:08:43 ]
>>327 >対称的に -2a < 2a(l - k) < 2a となる。
この行は不要なので削除。
333 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 01:33:37 ]
>>329 の簡約アルゴリズムは |b| = a または a = c の場合を 考慮するのでやや面倒である。 これを軽減するため以下の定義をする。
定義 Q(√m) を虚2次体とし、その判別式を D とする。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D で正定値(>>293)の 2次形式とする。
[D] を >>253 で定義した集合とする。
つまり
[D] = { z ∈ H ; |Re(z)| ≦ 1/2 かつ |z| ≧ 1 } である。
(-b + √D)/2a が [D] に属すとき f(x, y) を広義の簡約2次形式と呼ぶ。
334 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 01:47:23 ]
命題 Q(√m) を虚2次体とし、その判別式を D とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値(>>293)の 2次形式とする。
f(x, y) が広義の簡約2次形式(>>333)であるためには
|b| ≦ a ≦ c となることが必要十分である。
証明 >>321 の証明から明らか。
335 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 01:48:39 ]
Q(√m) を虚2次体とし、その判別式を D とする。
以下のアルゴリズムは判別式 D の任意の正定値2次形式 (a, b, c) を広義の簡約2次形式(>>333)に変形する。
(1) |b| ≦ a なら (2) にいく。
|b| > a なら (a, b, c) に S^(n) を施すことにより (a, 2an + b, an^2 + bn + c) となる(>>328)。
ここで -a ≦ -2an - b < a となるように n をとっておく(>>327) 。
(a, 2an + b, an^2 + bn + c) を改めて (a, b, c) とおく。
|b| ≦ a となっている。
(2) a ≦ c なら終了。
a > c なら (a, b, c) に T を施すことにより (c, -b, a) となる(>>328)。
(c, -b, a) を改めて (a, b, c) とおき、(1) にいく。
336 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 01:54:06 ]
>>335 の (1) において |b| > a なら、(a, b, c) に S^(n) を施して |b| ≦ a と出来る。 つまり |b| は、少なくとも 1 減少する。
(2) において |b| は変化しない。
以上から >>335 のアルゴリズムは有限回で終わる。
337 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 02:20:08 ]
広義の簡約2次形式を狭義つまり >>320 で定義した簡約2次形式に 変形するのは簡単である。
(a, b, c) を広義の簡約2次形式とする。
|b| = a で b < 0 なら -b = a である。
(a, b, c) に 変換 S = (1, 1)/(0, 1) を施すことにより (a, 2a + b, a + b + c) となる(>>328)。
ここで 2a + b = a である。 a + b + c = c である。
よって (a, 2a + b, a + b + c) = (a, a, c) は狭義の簡約2次形式 である。
今度は a = c で b < 0 とする。 (a, b, a) に T = (0, -1)/(1, 0) を施すことにより (a, -b, a) となる(>>328)。
これは狭義の簡約2次形式である。
338 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 02:36:15 ]
ここで一息いれて雑談。
有理整係数の2元2次形式について書いてある本は非常に少ない。 これは何故なんだろうね。
2元2次形式の理論は2次体の整数論に吸収されるからというのも あるだろうが、これはちょっといただけない。
339 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 11:30:10 ]
命題 Q(√m) を虚2次体とする。その判別式を D とする。
判別式 D の正定値2次形式を >>302 の同値関係で類別した同値類の 集合を F+(D) と書いた(>>303)。
|F+(D)| は、判別式 D の簡約2次形式(>>320)の個数と一致する。
証明 >>324 と >>325 および >>267 より明らかである。
340 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 11:35:08 ]
命題 Q(√m) を虚2次体とする。その判別式を D とする。
Q(√m) の類数は、判別式 D の簡約2次形式(>>320)の個数と一致する。
証明 >>314 より Q(√m) の類数は |F+(D)| に等しい。 これと >>339 から出る。
341 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 11:51:03 ]
Q(√m) を虚2次体とし、その判別式を D とする。
判別式 D の簡約2次形式(>>320)を求める方法を考える。
>>321 より (a, b. c) (この記法に関しては >>328 を参照) が簡約2次形式(>>320) であるためには、
|b| ≦ a ≦ c であり、 |b| = a または a = c のときは b ≧ 0 となることが必要十分である。
b^2 - 4ac = D だから 4ac = b^2 + |D| c = (b^2 + |D|)/4a
a ≦ c より
a ≦ (b^2 + |D|)/4a
4a^2 ≦ b^2 + |D| ≦ a^2 + |D|
3a^2 ≦ |D|
a^2 ≦ |D|/3
a ≦ √(|D|/3)
よって a の取り得る値は有限個である。
|b| ≦ a だから b の取り得る値も有限個である。
c は c = (b^2 + |D|)/4a より a と b が決まれば一意に決まる。
342 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 12:01:07 ]
>>340 と >>341 の威力をみるため、 m = -146 = -2・73 として Q(√m) の類数を計算してみよう。
m ≡ 2 (mod 4) だから Q(√m) の判別式 D は 4m = -584 = -2^3・73 である。
(a, b. c) を判別式 D の簡約2次形式とする。
a ≦ √(|D|/3) = √(584/3) = √194.666 = 13.95... したがって、1 ≦ a ≦ 13
4ac = b^2 + |D| = b^2 + 584
ac = (b^2 + 584)/4
b^2 + 584 を 0 ≦ b ≦ 13 の範囲で計算すると
0^2 + 584 = 584 = 4・146 = 4・2・73 1^2 + 584 = 585 2^2 + 584 = 588 = 4・147 = 4・3・7^2 3^2 + 584 = 593 4^2 + 584 = 600 = 4・150 = 4・2・3・5^2 5^2 + 584 = 609 6^2 + 584 = 620 = 4・155 = 4・5・31 7^2 + 584 = 633 8^2 + 584 = 648 = 4・162 = 4・2・3^4 9^2 + 584 = 665 10^2 + 584 = 684 = 4・171 = 4・3^2・19 11^2 + 584 = 705 12^2 + 584 = 728 = 4・182 = 4・2・7・13 13^2 + 584 = 753
343 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 12:11:52 ]
>>342 の続き
a = 1 のとき |b| = 0、c = 2・73 = 146、(a, b. c) = (1, 0, 146) である。以下同様。 ------------------------------------------------------------ a = 2 のとき |b| = 0、c = 73、(2, 0, 73) ------------------------------------------------------------ a = 3 のとき |b| = 2、c = 7^2 = 49、(3, ±2, 49) ------------------------------------------------------------ a = 4 は無い ------------------------------------------------------------ a = 5 のとき |b| = 4、c = 2・3・5 = 30、(5, ±4, 30) ------------------------------------------------------------ a = 6 のとき |b| = 4、c = 5^2 = 25、(6, ±4, 25) ------------------------------------------------------------ a = 7 のとき |b| = 2、c = 3・7 = 21、(7, ±2, 21) ------------------------------------------------------------ a = 8 は無い ------------------------------------------------------------ a = 9 のとき |b| = 8、c = 2・3^2 = 18、(9, ±8, 18) ------------------------------------------------------------ a = 10 のとき |b| = 4、c = 3・5 = 15、(10, ±4, 15) ------------------------------------------------------------ a = 11は無い ------------------------------------------------------------ a = 12は無い ------------------------------------------------------------ a = 13 のとき |b| = 12、c = 2・7 = 14、(13, ±12, 14) ------------------------------------------------------------
以上から h(D) = 16 である。
344 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 12:21:28 ]
>>342 と >>343 の計算は電卓を使って30分程度かかりました。 以外に簡単というのが私の感想です。
345 名前:132人目の素数さん [2006/12/23(土) 21:16:14 ]
>338 > 有理整係数の2元2次形式について書いてある本は非常に少ない。 > これは何故なんだろうね。 読んだ事ないが、Scharlau が良いと Cohn に載っていた。 Milnor-Husemoller (絶版か?)てのは如何なんだろうか。 昔はトポロジーの分野で有理整係数の2元2次形式がよく出てたが・・・
346 名前:132人目の素数さん [2006/12/23(土) 22:42:31 ]
>>345
有難うございます。 Scharlau は知らなかったです。
Milnor-Husemollerの本は有理整係数の多元2次形式について書いて あるんじゃないんですかね。
一般の n 元2次形式論の本はいくらかあるんです(Eichlerとか)。 それでも少ないとは思いますが。
私の言ってるのは、このスレで扱ってる2元2次形式のことです。 これは2次体の整数論と密接に関係しているので特殊な扱いが 出来るわけです。
347 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 22:44:49 ]
>>346 に名前を入れるのを忘れました。
348 名前:king様の弟子 ◆/LAmYLH4jg [2006/12/23(土) 22:47:15 ]
:Kummer ◆g2BU0D6YN2 さんがんばってください!がんばって読んでます。
349 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/23(土) 22:53:13 ]
>>348
有難うございます。
350 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 00:06:29 ]
>>343 の表の各簡約2次形式に対応する原始イデアルを求める。 >>303 より 簡約2次形式 (a, b, c) には Q(√m) の原始イデアル [a, (-b + √D)/2] の類が対応する。 D = 4m だから √D = 2ω である。 ここで、いつものように ω = √m = √(-146) である。
------------------------------------------------------------ (1, 0, 146) ~ [1, ω] ------------------------------------------------------------ (2, 0, 73) ~ [2, ω] ------------------------------------------------------------ (3, -2, 49) ~ [3, 1 + ω] (3, 2, 49) ~ [3, -1 + ω] ------------------------------------------------------------ (5, -4, 30) ~ [5, 2 + ω] (5, 4, 30) ~ [5, -2 + ω] ------------------------------------------------------------ (6, -4, 25) ~ [6, 2 + ω] (6, 4, 25) ~ [6, -2 + ω] ------------------------------------------------------------ (7, -2, 21) ~ [7, 1 + ω] (7, 2, 21) ~ [7, -1 + ω] ------------------------------------------------------------ (9, -8, 18) ~ [9, 4 + ω] (9, 8, 18) ~ [9, -4 + ω] ------------------------------------------------------------ (10, -4, 15) ~ [10, 2 + ω] (10, 4, 15) ~ [10, -2 + ω] ------------------------------------------------------------ (13, -12, 14) ~ [13, 6 + ω] (13, 12, 14) ~ [13, -6 + ω] ------------------------------------------------------------
351 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 00:21:19 ]
>>350 を使って Q(√(-146)) のイデアル類群の構造を決定しよう。
単位類、つまり [1, ω] の属す類を E とおく。
[2, ω] の属す類を B とおく。
[2, ω]^2 = < 4, 2ω, -146 > = < 4, 2ω, -2 > = < 2ω, 2 > = 2[1, ω]
だから B^2 = E である。
上の < 4, 2ω, -146 > などは、4, 2ω, -146 で生成される Z[ω] の部分アーベル群を表す(>>9 参照)。
352 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 00:39:31 ]
[5, 2 + ω] の属す類を C とおく。
[5, 2 + ω]^2 = < 25, 10 + 5ω, 4 + 4ω -146 > = < 25, 10 + 5ω, 4ω -142 > = < 25, 10 + 5ω, 4ω -17 > = < 25, 27 + ω, 4ω -17 > = < 25, 2 + ω, 4ω -17 > = < 25, 2 + ω, -25 > = [25, 2 + ω]
N(2 + ω) = 4 + 146 = 150 = 25・6
(2 + ω)/25 に一次変換 T = (0, -1)/(1, 0) (>>237) を施すと -25/(2 + ω) になる。
-25/(2 + ω) = -25(2 - ω)/N(2 + ω) = -25(2 - ω)/(4 + 146) = -25(2 - ω)/150 = -25(2 - ω)/(25・6) = (-2 + ω)/6
よって >>195 より [25, 2 + ω] ~ [6, -2 + ω] ここで ~ は両辺のイデアルが同じイデアル類に属すことを示す。
353 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 00:52:11 ]
>>352 より C^2 ~ [6, -2 + ω] = [6, 4 + ω]
よって
[5, 2 + ω]^3 ~ [5, 2 + ω][6, 4 + ω] = < 30, 20 + 5ω, 12 + 6ω, 8 + 6ω - 146 > = < 30, 20 + 5ω, 12 + 6ω, 6ω - 138 > = < 30, 20 + 5ω, -8 + ω, 6ω - 138 > = < 30, 20 + 5ω, -8 + ω, 6ω - 138 > = < 30, 20 + 5ω, -8 + ω, 6ω - 18 > = < 30, 20 + 5ω, -8 + ω, 30 > = < 30, 20 + 5ω, -8 + ω > = < 30, 60, -8 + ω > = [30, -8 + ω] ~ [7, 1 + ω]
以下、同様にして
[5, 2 + ω]^4 ~ [9, 4 + ω] [5, 2 + ω]^5 ~ [13, -6 + ω] [5, 2 + ω]^6 ~ [3, -1 + ω] [5, 2 + ω]^7 ~ [10, -2 + ω] [5, 2 + ω]^8 ~ [2, ω]
よって C^8 = B である。
>>351 より B^2 = E だから C の位数は 16 である。
よって Q(√(-146)) のイデアル類群は C で生成される位数 16 の 巡群である。
354 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 01:03:23 ]
>>350 の表の各原始イデアルが属すイデアル類を C のべきで表す。
例えば、[3, 1 + ω] と [3, -1 + ω] は共役なので互いに 逆イデアルである。よって [3, 1 + ω] が C^6 に属すことから [3, -1 + ω] が C^10 に属すことが分かる。
------------------------------------------------------------ (1, 0, 146) ~ [1, ω] E ------------------------------------------------------------ (2, 0, 73) ~ [2, ω] B = C^8 ------------------------------------------------------------ (3, -2, 49) ~ [3, 1 + ω] C^10 (3, 2, 49) ~ [3, -1 + ω] C^6 ------------------------------------------------------------ (5, -4, 30) ~ [5, 2 + ω] C (5, 4, 30) ~ [5, -2 + ω] C^15 ------------------------------------------------------------ (6, -4, 25) ~ [6, 2 + ω] C^14 (6, 4, 25) ~ [6, -2 + ω] C^2 ------------------------------------------------------------ (7, -2, 21) ~ [7, 1 + ω] C^3 (7, 2, 21) ~ [7, -1 + ω] C^13 ------------------------------------------------------------ (9, -8, 18) ~ [9, 4 + ω] C^4 (9, 8, 18) ~ [9, -4 + ω] C^12 ------------------------------------------------------------ (10, -4, 15) ~ [10, 2 + ω] C^9 (10, 4, 15) ~ [10, -2 + ω] C^7 ------------------------------------------------------------ (13, -12, 14) ~ [13, 6 + ω] C^11 (13, 12, 14) ~ [13, -6 + ω] C^5 ------------------------------------------------------------
355 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 01:07:09 ]
訂正
>>354 >例えば、[3, 1 + ω] と [3, -1 + ω] は共役なので互いに >逆イデアルである。よって [3, 1 + ω] が C^6 に属すことから >[3, -1 + ω] が C^10 に属すことが分かる。
例えば、[3, 1 + ω] と [3, -1 + ω] は共役なので互いに 逆イデアルである。よって [3, -1 + ω] が C^6 に属すことから [3, 1 + ω] が C^10 に属すことが分かる。
356 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 01:10:56 ]
>>354 の表の計算にはかなり時間がかかった。 ほとんど一日がかり。
357 名前:132人目の素数さん [2006/12/24(日) 03:08:03 ]
>>317 と >>318 の問題、誰か解いて
358 名前:聴講生 mailto:sage [2006/12/24(日) 08:11:23 ]
>>317 |D| = 20 より a ≦ √(20/3) なので、a = 1,2 b^2 - 4ac = -20 より b は偶数。よって、 |b| ≦ a より a = 2,b = ±2,c = 3 2x^2 ±2xy + 3y^2 に対応するイデアルは[2,±1 + √(-5)] [2,1 + √(-5)] = [2,-1 + √(-5)] [2,1 + √(-5)]^2 = <4,2 + 2√(-5),-4 + 2√(-5)> = (2) よって、h(-20) = 2 で、代表となる原始イデアルは [1,√(-5)] と [2,1 + √(-5)]
359 名前:聴講生 mailto:sage [2006/12/24(日) 08:14:46 ]
a = 1,b = 0,c = 5 が抜けました。
360 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 11:36:21 ]
訂正
>>354 >例えば、[3, 1 + ω] と [3, -1 + ω] は共役なので互いに >逆イデアルである。よって [3, 1 + ω] が C^6 に属すことから >[3, -1 + ω] が C^10 に属すことが分かる。
例えば、[3, 1 + ω] と [3, -1 + ω] は共役なので互いに 逆のイデアル類に属す。よって [3, 1 + ω] が C^6 に属すことから [3, -1 + ω] が C^10 に属すことが分かる。
