最終更新日時 2011年03月04日 (金) 23時50分19秒
代数的整数論 #003 (476-535)
元スレ: http://science4.2ch.net/test/read.cgi/math/1141019088/476-535
ログ元: http://2se.dyndns.org/test/readc.cgi/science4.2ch.net_math_1141019088/476-535
ログ元: http://2se.dyndns.org/test/readc.cgi/science4.2ch.net_math_1141019088/476-535
476 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 15:04:35
補題 環 R のイデアル I, J に対して I + J = R とする。 このとき、I ∩ J = IJ である。
証明 I ∩ J = (I + J)(I ∩ J) ⊂ IJ + IJ ⊂ IJ である。 IJ ⊂ I ∩ J は明らか。 証明終
477 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 15:06:05
補題 A, B を Z[ζ] の因子で互いに素とする。 I(AB) = I(A)I(B) である。
証明 I(AB) = I(A) ∩ I(B) は明らか。
>>468 より x ≡ 1 (mod A) x ≡ 0 (mod B) となる x がある。
1 = (1 - x) + x において、1 - x ∈ I(A), x ∈ I(B) だから、 I(A) + I(B) = Z[ζ] である。 よって、>>476 より I(A) ∩ I(B) = I(A)I(B) である。 証明終
478 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 15:09:58
補題 A, B を Z[ζ] の因子とする。 I(AB) = I(A)I(B) である。
証明 >>475 と >>477 より分かる。 証明終
479 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 15:13:55
定理 Z[ζ] の0でないイデアルは素イデアルの冪積として一意に分解される。
証明 素因子 P に対して I(P) が素イデアルであることは明らか。 よって、>>478 と >>474 より定理の主張が得られる。 証明終
480 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 15:16:21
訂正
>>479 >よって、>>478 と >>474 より定理の主張が得られる。
よって、>>478 と >>474, >>475 より定理の主張が得られる。
481 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 15:18:47
訂正の訂正
>>480 は不要だった。何故なら >>478 から >>475 が出るから。
482 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 15:27:07
>>479 より Kummer の因子論(理想数論)から円分体における Dedekind の イデアル論が出ることが分かった。 逆に 円分体における Dedekind のイデアル論から Kummer の因子論が 出るが、これは後で一般の代数体の整数論をやるときに示そう。
483 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/24(月) 17:25:09
P を Z[ζ] の素因子とする。
>>394 により P から Hom(Z[ζ], Ω) の元 Φ が定まる。 I(P) = Ker(Φ) である。
σを Z[ζ] の自己同型で σ(ζ) = ζ^i とする。 1 ≦ i ≦ λ - 1 である。
Φσ^(-1) も Hom(Z[ζ], Ω) の元だから、
I(P') = Ker(Φσ^(-1)) となる素因子 P' が定まる。 P' を σ(P) と書く。
α ≡ 0 (mod σ(P)) は σ^(-1)(α) ≡ 0 (mod P) と同値である。
よって I(σ(P)) = σ(I(P)) である。
484 :132人目の素数さん:2006/07/24(月) 21:29:16
マルチでお邪魔します
天才的なひらめき募集
0~4と+-*/根号、累乗、階乗、括弧を利用して1000まで作ろうぜ http://ex16.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1153548534/l50
485 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/25(火) 14:34:30
p を有理素数で p ≠ λとし、 f を mod λでの p の指数とする。 e = (λ- 1)/f とおく。 P を Z[ζ] の素因子で p を割るとする。
有限素体 Z/pZ の代数的閉包をΩとする。 Ωにおける X^λ - 1 の根で1以外の任意の1つをωとする。 X^λ - 1 の根の全体は 1, ω, ω^2, ..., ω^(λ-1) である。 Z/pZ とωで生成されるΩの部分体を K とおく。 K の Z/pZ 上の次数は f である。 このことは>>347で示したが、復習の意味でもう一度証明しよう。
K の Z/pZ 上の次数を n とする。K の元の個数は p^n である。 よって K の乗法群の位数は p^n - 1 である。 ωは K の乗法群の位数 λ の元だから、p^n - 1 は λ で割れる。 よって、n は f で割れる。 >>326 より p^f 個の元からなる K の部分体 L がある。 L の乗法群は位数 p^f - 1 の巡回群であり p^f ≡ 1 (mod λ) だから L の乗法群には位数λの元が存在する。よって、ωは L に含まれる。 よって、K = L である。よって、n = f である。
486 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/25(火) 15:34:53
>>485 の続き
u を u(x) = x^p で定義される K のそれ自身への写像とする。 >>322 より u は K/F の自己同型写像である。 ここで、 F = Z/pZ である。
K の乗法群の位数は p^f - 1 だから、K の乗法群の任意の元 x に対して x^(p^f - 1) = 1 となる。両辺に x を掛けると x^(p^f) = x である。この等式は x = 0 のときも成立つ。 これは u^f(x) = x を意味する。つまり u^f = 1 である。
u^r = 1 となる整数 r で 1 ≦ r < f となるものがあったとする。 すると x^(p^r) = x が K の任意の元で成立つ。 つまり p^r 次の多項式 X^(p^r) - X が p^f 個の根を持つ。 p^r < p^f だから、これは有り得ない。
よって 1, u, u^2, ..., u^(f-1) は K/F の相異なる自己同型である。 K/F の次数は f だから K/F の自己同型はこれ等で尽くされる。
487 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/26(水) 11:18:28
>>486 の続き
ωの Z/pZ 上のモニックな最小多項式を g_0(X) とする。 1 + X + ... + X^(λ-1) は g_0(X) で割れる。
u(ω) = ω^p, u^2(ω) = ω^(p^2), ..., u^(f-1)(ω) = ω^(p^(f-1)) は g_0(X) の根である。K は Z/pZ 上ωで生成されるから u は u(ω) で決まる。u の位数は f だから ω, ω^p, ..., ω^(p^(f-1)) は相異なる。よって、これ等は g_0(X) の根のすべてである。
ω, ω^p, ..., ω^(p^(f-1)) 以外の 1 + X + ... + X^(λ-1) の根の 任意の1つをω_1 とする。 ω_1 の Z/pZ 上のモニックな最小多項式を g_1(X) とする。 上と同様に ω_1, (ω_1)^p, ..., (ω_1)^(p^(f-1)) は g_1(X) の根の すべてである。これ等の根は g_0(X) の根では有り得ない。
以上の処理を繰り返すと、1 + X + ... + X^(λ-1) は e = (λ- 1)/f 個の既約多項式 g_0(X), g_1(X), ..., g_(e-1)(X) の積に分解する。各 g_i(X) の次数は f である。 各 g_i(X) の任意の二つの根は Z/pZ 上共役である。
488 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/26(水) 14:01:37
>>487 の続き
r を mod λ の原始根とする。 σ を Z[ζ] の環としての自己同型で σ(ζ) = ζ^r となる ものとする。 Z[ζ] の自己同型群は σ で生成される位数 λ- 1 の巡回群である。
p ≡ r^k (mod λ) となる有理整数 k で 1 ≦ k ≦ λ- 2 となるもの がある。σ^k(ζ) = ζ^p である。σ^k の位数は f である。
Φを Z[ζ] から Ω への準同型で Φ(ζ) = ω となるものとする。 Φ は素因子 P を定める。
Φ(f(ζ)) = f'(ω) = 0 とする。つまり、f(ζ) ≡ 0 (mod P) とする。 ここで f(X) は Z 係数の多項式で f'(X) は f(X) の係数を mod p で還元したもの。 f'(X) は g_0(X) で割れる。よって、f'(ω^p) = 0 である。
Φ(σ^k(ζ))) = Φ(f(ζ^p)) = f'(ω^p) = 0
つまり f(ζ) ≡ 0 (mod P) なら σ^k(f(ζ)) ≡ 0 (mod P)
逆に、Φ(σ^k(ζ))) = 0 なら、f'(ω^p) = 0 だから、 g_0(X) は、ω^p の最小多項式でもあるから、 f'(X) は g_0(X) で割れる。よって、Φ(f(ζ)) = f'(ω) = 0 である。
つまり σ^k(f(ζ)) ≡ 0 (mod P) と f(ζ) ≡ 0 (mod P) は 同値である。 よって σ^(-k)(P) = P である。 つまり、P = σ^k(P) である。
489 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/26(水) 17:18:17
>>488 の続き
Z[ζ] の自己同型τに対して τ(P) = P とする。 τ(ζ) = ζ^i とする。ここで i は有理整数で 1 ≦ i ≦ λ - 1 である。
G_0(X) を有理整数係数のモニックな多項式で、それを mod p で還元 したものが g_0(X) となるようなものとする。 Φ(G_0(ζ)) = g_0(ω) = 0 だから G_0(ζ) ≡ 0 (mod P) である。 よって、τ(G_0(ζ)) ≡ 0 (mod P) である。 よって Φ(τ(G_0(ζ))) = g_0(ω^i)) = 0 である。 ω^i = ω^(p^t) となる有理整数 t, 0 ≦ t ≦ f - 1 がある。 p^t ≡ i (mod λ) である。 p^(tf) ≡ i^f (mod λ) である。
p^f ≡ 1 (mod λ) だから p^(tf) ≡ 1 (mod λ) である。 よって i^f ≡ 1 (mod λ) である。 よって (τ^f)(ζ) = ζ^(i^f) = 1 よって τ^f = 1 である。
つまり P を不変にする Z[ζ] の自己同型の位数は f の約数である。 >>488 より P を不変にする Z[ζ] の自己同型で位数が f のものがある。
Z[ζ] の自己同型群を G とする。G は位数 λ - 1 の巡回群である。 以上から、P を不変にする Z[ζ] の自己同型のなす部分群は (ただ1つの)位数 f の巡回部分群である。
490 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/27(木) 11:47:48
>>489 の続き
Φ_1 を Z[ζ] から Ω への準同型とする。 Φ_1(ζ) = ω^t となる有理整数 t, 1 ≦ t ≦ λ - 1 がある。 τを Z[ζ] の自己同型で τ(ζ) = ζ^t となるものとする。
Φ_1(f(ζ)) = f'(ω^t) = 0 とする。 ここで f(X) は Z 係数の多項式で、f'(X) は f(X) の係数を mod p で 還元したものである。 つまり Φ_1 が定める素因子を P_1 とすると、 f(ζ) ≡ 0 (mod P_1) である。
一方 Φ(τ(f(ζ))) = Φ(f(ζ^t)) = f'(ω^t) = 0 である。 つまり τ(f(ζ)) ≡ 0 (mod P) である。
よって P_1 = τ^(-1)(P) である。
491 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/27(木) 13:39:31
>>490 の続き
p を割る素因子の集合を S = {P_0, ..., P_(e-1)}
とする。P_0 = P とする。
Z[ζ] の自己同型群を G とする。
>>488 より G は位数 λ- 1 の巡回群である。
>>483 により G は S に作用する。 さらに >>490 より G は S に推移的に作用する。 P の固定化部分群 H は >>489 より G の位数 f の部分群である。
G/H の代表元を τ_0, ..., τ_(e-1) とし、τ_0 = 1 とする。
τ_i(P) = τ_j(P) とすると
(τ_i)(τ_j)^(-1) ∈ H だから τ_i = τ_j である。
よって、τ_0(P), τ_1(P), ..., τ_(e-1)(P) は互いに異なる。
よって、集合 {τ_0(P), τ_1(P), ..., τ_(e-1)(P)} は S と一致
する。このことからも、G は S に推移的に作用することが分かる。
A = Πτ(P) とおく。ここでτは Z[ζ] の自己同型のすべてを動く ものとする。
A は τ_0(P)τ_1(P)...τ_(e-1)(P) を f 回掛けたものである。 一方、p が定める因子(>>421) div(p) はτ_0(P)τ_1(P)...τ_(e-1)(P) である。 よって A = div(p)^f = div(p^f) である。
492 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/27(木) 14:54:55
補題 Z[ζ] の因子 A に対して I(A) を A が定めるイデアル(>>474) とする。剰余環 Z[ζ]/I(A) は有限環である。
証明 I(A) ≠ 0 である。 α ≠ 0 を I の元とする。Nα ∈ I である。 n = Nα とおく。 Z[ζ] の加法群は階数 λ-1 の自由アーベル群 だから Z[ζ]/nZ[ζ] は n^(λ-1) 個の剰余類からなる。 nZ[ζ] ⊂ I(A) だから Z[ζ]/I(A) の剰余類の個数は有限である。 証明終
493 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/27(木) 14:55:29
定義 Z[ζ] の因子 A に対して剰余環 Z[ζ]/I(A) の元の個数を A の ノルムといい、N(A) と書く。
494 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/27(木) 15:10:03
補題 P を 円分整数環 Z[ζ] の素因子、π を円分整数で P できっかり1回 割れるものとする。n を有理整数 ≧ 0 とする。 Z[ζ]/I(P) の各剰余類から代表元を取り出して1つの代表系Γを作る。 任意の円分整数 α に対して α ≡ γ_0 + γ_1π + ... + γ_nπ^n (mod P^(n+1)) となる、Γの元の列γ_0, ..., γ_n が一意に存在する。
証明 n に関する帰納法を使う。 n = 0 のときは明らかである。 n ≧ 1 として n - 1 のときに補題は正しいと仮定する。 α - (γ_0 + γ_1π + ... + γ_(n-1)π^(n-1)) ≡ 0 (mod P^n) となるγ_0, ..., γ_(n-1) が一意に存在する。
α - (γ_0 + γ_1π + ... + γ_(n-1)π^(n-1)) をδとおく。
>>460 より δ ≡ (π^n)β (mod P^(n+1)) となる円分整数βが存在する β ≡ γ_n (mod P) となる γ_n ∈ Γ が存在する。 (π^n)β ≡ (π^n)γ_n (mod P^(n+1)) である。 よって δ ≡ (π^n)γ_n (mod P^(n+1)) これで γ_n の存在がいえた。
γとγ'をΓの元で (π^n)γ ≡ (π^n)γ' (mod P^(n+1)) とする。 (π^n)(γ - γ') ≡ 0 (mod P^(n+1)) π^n はきっかり P^n で割れるから γ ≡ γ' (mod P) である。 よって γ = γ' である。 これで γ_n の一意性がいえた。 証明終
495 :132人目の素数さん:2006/07/27(木) 16:04:31
なにこの絵文字スレ
(π^n)(γ - γ') (τ_i)(τ_j) ω^(p^t)
とか全部、超カワイイんだけど。
0(ω^i)) ←ブタさん冷や汗
(f(ζ^t)) ←こいつ鼻高い
{p^iψ^j; ←おじ様っぽい
(π^n)κ ←おーい、みんな~!
496 :132人目の素数さん:2006/07/27(木) 16:17:13
>なにこの絵文字スレ
そうだね
497 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/28(金) 10:06:53
補題 P を 円分整数環 Z[ζ] の素因子、n ≧ 1 を有理整数とする。 N(P^n) = N(P)^n である。
証明 >>494 より明らか。
498 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/28(金) 10:07:31
補題 A, B を円分整数環 Z[ζ] の因子で互いに素とする。 N(AB) = N(A)N(B) である。
証明 Z[ζ] の元 x にそれが属す Z[ζ]/I(A) の剰余類を対応させる 準同型写像を φ_1 とする。 同様に、[ζ] の元 x にそれが属す Z[ζ]/I(B) の剰余類を対応させる 準同型写像を φ_2 とする。
Z[ζ] から環の直積 Z[ζ]/I(A) × Z[ζ]/I(B) への写像 Φ を Φ(x) = (φ_1(x), φ_2(x)) で定義する。 これは環準同型写像である。 >>471(中国式剰余定理) よりΦは全射である。 Φの核は I(A) ∩ I(B) = I(AB) である。 よって、Z[ζ]/I(AB) は Z[ζ]/I(A) × Z[ζ]/I(B) と同型である。 よって、N(AB) = N(A)N(B) である。 証明終
499 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/28(金) 10:17:36
命題 A, B を円分整数環 Z[ζ] の(互いに素とは限らない)因子とする。 N(AB) = N(A)N(B) である。
証明 A = (P_1)^(n_1)...(P_r)^(n_r) B = (P_1)^(m_1)...(P_r)^(m_r) とする。ここで各 P_i は互いに異なる素因子であり、 n_i, m_i ≧ 0, である。
>>497 と >>498 より N(A) = N(P_1)^(n_1)...N(P_r)^(n_r) N(B) = N(P_1)^(m_1)...N(P_r)^(m_r) となる。 同様に N(AB) = N(P_1)^(n_1 + m_1)...N(P_r)^(n_r + m_r) となる。 従って N(AB) = N(A)N(B) である。 証明終
500 :132人目の素数さん:2006/07/28(金) 10:30:00
500x500/311=804.
501 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/28(金) 10:42:24
補題 P を 円分整数環 Z[ζ] の素因子とし、n ≧ 1 を有理整数とする。 N(P^n) が定める因子(>>421) div(N(P^n)) は Πτ(P^n) に等しい。 ここでτは Z[ζ] の自己同型のすべてを動くものとする。
証明 >>497 より n = 1 の場合を証明すればよい。
P がλを割らないときは、>>491 より div(N(P)) = Πτ(P) である。
P がλを割るときは、P = div(ζ - 1) であり、任意の自己同型τ に対して τ(P) = P である。 一方、P^(λ-1) = div(λ) である。 N(P) = λ だから div(N(P)) = Πτ(P) である。 証明終
502 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/28(金) 10:45:40
命題 A を 円分整数環 Z[ζ] の因子とする。 N(A) が定める因子(>>421) div(N(A)) は Πτ(A) に等しい。 ここでτは Z[ζ] の自己同型のすべてを動くものとする。
証明 >>501 と >>499 より明らか。
503 :132人目の素数さん:2006/07/31(月) 11:41:14
Kummer理論の特徴は構成的であること。因子(つまり理想数)が 具体的に計算できる。 例として λ = 5, p = 11 として p を割る素因子を求めてみよう。
11^2 ≡ 1 (mod 5) だから、まず 2 項周期を求める。
mod 5 の原始根は 2 だから
θ_0 = ζ + ζ^4, θ_1 = ζ^2 + ζ^3 が 2 項周期である。
θ_0 + θ_1 = -1 (θ_0)(θ_1) = -1 である。
よって H(X) = (X - θ_0)(X - θ_1) = X^2 + X - 1 とおけば H(θ_0) = H(θ_1) = 0 である。
X^2 + X - 1 ≡ 0 (mod 11) を解く。 3 (mod 11) と -4 (mod 11) がこの根である。
504 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/31(月) 11:58:54
>>503 は没。以下のように訂正する。
Kummer理論の特徴は構成的であること。因子(つまり理想数)が 具体的に計算できる。 例として λ = 5, p = 19 として p を割る素因子を求めてみよう。
19^2 ≡ 1 (mod 5) だから、まず 2 項周期を求める。
mod 5 の原始根は 2 だから
θ_0 = ζ + ζ^4, θ_1 = ζ^2 + ζ^3 が 2 項周期である。
θ_0 + θ_1 = -1 (θ_0)(θ_1) = -1 である。
よって H(X) = (X - θ_0)(X - θ_1) = X^2 + X - 1 とおけば H(θ_0) = H(θ_1) = 0 である。
X^2 + X - 1 ≡ 0 (mod 19) を解く。 4 (mod 19) と -5 (mod 19) がこの根である。
505 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/31(月) 12:56:34
>>504 の続き
Φを Z[ζ] からΩへの環準同型とする。 ここでΩは Z/19Z の代数的閉包である。 Φ(H(θ_0)) = H'(Φ(θ_0)) = 0 である。 ここで H'(X) は H(X) を mod 19 で還元したものである。 Φ(θ_0) ∈ Z/19Z だから(>>351, >>352) Φ(θ_0) = 4 (mod 19) または -5 (mod 19) である。
Φ(θ_0) = 4 (mod 19)とすれば、 Φ(θ_1) = -5 (mod 19) である。 このΦにより Z[ζ] の1つの素因子が得られる(>>394)。
もう1つの素因子は Φ_1(θ_0) = -5 (mod 19) Φ_1(θ_1) = 4 (mod 19) である(>>354)。 (X - ζ)(X - ζ^4) = X^2 - (θ_0)X + 1 であるが、 この両辺の係数にΦを作用させると、 (X - ω)(X - ω^4) = X^2 - 4X + 1 ただし、Φ(ζ) = ω とおいた。 同様に (X - ζ^2)(X - ζ^3) = X^2 - (θ_1)X + 1 より (X - ω^2)(X - ω^3) = X^2 + 5X + 1
よって X^4 + X^3 + X^2 + X + 1 ≡ (X^2 - 4X + 1)(X^2 + 5X + 1) (mod 19) となる。
つまり、左辺の多項式の mod 19 での既約分解が得られる。
506 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/07/31(月) 13:19:05
一般に奇素数λと素数 p ≠ λが与えられたとき、 p を割る Z[ζ] の素因子は以下のような方針で求めることが出来る。 p の mod λの指数を f とする。 η_0, ..., η_(e-1) を f 項周期とする。
H(X) = (X - η_0)(X - η_1)...(X - η_(e-1)) とおけば H(X) は有理整数係数であり Q[X] で既約である (演習問題とする)。
H(X) ≡ 0 (mod p) の根の1つを u_0 (mod p) とする。
一方
(η_0)^i = Σa_(i,j)η_j
0 ≦ i ≦ e-1 0 ≦ j ≦ e-1 a_(i,j) ∈ Z とする。
これから mod p の連立一次合同方程式が得られる。
(u_0)^i ≡ Σa_(i,j)u_j (mod p) 0 ≦ i ≦ e-1 0 ≦ j ≦ e-1
det(a_(i,j)) が mod p で 0 でなければ、 u_1, ..., u_(e-1) が mod p で求まる。
Φ(η_i) = u_i (mod p) と定義することにより、 1つの素因子が得られる。 他の素因子はこれから自動的に定まる(>>354)。
507 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/01(火) 13:00:32
>>506 の続き
Z[ζ] からΩへの環準同型Φで Φ(η_0) = u_0 (mod p) となるもの の存在を言わないと、>>506 の方法は成立たない。
以下にその証明を行う。 H(X) は有理整数係数であり Q[X] で既約であるから Z[η_0] から Z/pZ への環準同型φで φ(η_0) = u_0 (mod p) と なるものがある。ζ は Z 上整だから Z[η_0] 上整でもある。 前スレ1の520の定理(Cohen-Seidenberg) より、Z[ζ] の素イデアル P で Ker(φ) = Z[η_0] ∩ P となるものがある。 Z[ζ]/P は有限環だから P は極大イデアルである。 よって Z[ζ]/P は有限体である。よって上のようなΦが存在する。
Cohen-Seidenbergの定理を使わない以下のような証明もある。 Z[η_0]/Ker(φ) は Z/pZ と同型だから Ker(φ) は Z[η_0] の 極大イデアルである。 Z[ζ] = Z[η_0][ζ] は Z[η_0]-加群として有限生成である。 よって、中山の補題(前スレ1の242)より Ker(φ)Z[ζ] ≠ Z[ζ] である。 よって、Ker(φ)Z[ζ] を含む Z[ζ] の極大イデアル P がある。 Ker(φ) ⊂ P で Ker(φ) は Z[η_0] の極大イデアルだから、 Ker(φ) = Z[η_0] ∩ P である。
508 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/01(火) 13:38:52
>>506への補足
(u_0)^i ≡ Σa_(i,j)u_j (mod p) 0 ≦ i ≦ e-1 0 ≦ j ≦ e-1
これの i = 1 のときの u_0 ≡ u_0 (mod p) は当然省くことが出来る。
従って e-1 個の未知数 u_1, ..., u_(e-1) に関する e-1 個の 1次合同方程式が得られる。
det(a_(i,j)) が p で割れるときは、>>506の方法は使えない。 このときは 1 + X + ... + X^(λ-1) の mod λ での既約分解を 実行する(>>347)。 有限体上での既約多項式分解を行うアルゴリズムとしては 割と効率のいいものが知られている。
509 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/01(火) 14:33:59
>>505の補足
Ψ(θ) = θ_0 + 5 = 5 + ζ + ζ^4 とおけば、Φ(Ψ(θ)) = 4 + 5 ≠ 0 (mod p) Φ_1(Ψ(θ)) = 0 (mod p) である。
よって Ψ(θ) は >>402 の条件 1), 2) を満たす。 このΨ(θ)を使って>>403のように 円分整数に対して Φで定まる素因子で何回割れるかが判定できる。
510 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/01(火) 17:04:52
Kummerの理想数論は一般の代数体にもある程度適用出来る。
f(X)をモニックな有理整数係数の多項式で Q[X] したがって Z[X] で既約とする。 θを複素数で f(X) の根とする。 f(X) の判別式を d とする。p を d を割らない有理素数とする。
f(X) を mod p で既約多項式に分解して f(X) ≡ g_0(X)...g_(e-1)(X) (mod p) とする。f(X) は mod p で重根を持たないから、 各 g_i(X) はモニックで互いに異なるとしてよい。
Ωを Z/pZ の代数的閉包とする。 g_0(X) を mod p で考えて、そのΩにおける根の1つをω_0とする。 Φ_0(θ) = ω_0 により Z[θ] からΩへの環準同型が得られる。 同様に 1 ≦ i ≦ e - 1 のとき g_i(X) を mod p で考えて、そのΩにおける根の1つをω_iとする。 Φ_i(θ) = ω_i により Z[θ] からΩへの環準同型が得られる。
Φ_i の核を求める。 h(X) ∈ Z[X] で Φ_i(h(θ)) = 0 とする。 Φ_i(h(θ)) = h(ω_i) = 0 だから h(X) ≡ g_i(X)Q(X) (mod p) となる Q(X) ∈ Z[X] がある。 よって h(X) = g_i(X)Q(X) + pR(X) となる R(X) ∈ Z[X] がある。 よって、h(θ) = g_i(θ)Q(θ) + pR(θ) となる。 つまり、h(θ) は Z[θ] において p と g_i(θ) で生成されるイデアル (p, g_i(θ)) に含まれる。 つまり Ker(Φ_i) ⊂ (p, g_i(θ)) である。 逆の包含関係は明らかだから Ker(Φ_i) = (p, g_i(θ)) である。
511 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/01(火) 17:34:39
>>510 の続き
h(X) ∈ Z[X] とし、各 i = 0, ..., e-1 で Φ_i(h(θ)) = 0 とする。 h(X) は mod p で各 g_i(X) で割れる。よって mod p で f(X) で割れる。 従って、h(X) = f(X) H(X) + pR(X) となる H(X), R(X) ∈ Z[X] がある。よって、h(θ) ∈ pZ[θ] である。 つまり h(θ) は p で割れる。
512 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/01(火) 17:44:35
>>511 の続き h(X) ∈ Z[X] とし、Φ_i(h(θ)) = 0 のとき h(θ) は Φ_i で定まる素因子 P_i で割れるという。
Ψ(θ) = g_1(θ)...g_(e-1)(θ) とおく。 Φ_0(Ψ(θ)) ≠ 0 である。 よって h(X) ∈ Z[X] で Ψ(θ)h(θ) ≡ 0 (mod pZ[θ]) のとき Φ_0(Ψ(θ))Φ_0(h(θ)) = 0 だから Φ_0(h(θ)) = 0 である。
逆に Φ_0(h(θ)) = 0 とする。 当然 Φ_0(Ψ(θ)h(θ)) = 0 である。 i ≠ 0 のとき Φ_i(Ψ(θ)) = 0 であるから Φ_i(Ψ(θ)h(θ)) = 0 である。 したがってすべての i = 0, ..., e-1 で Φ_i(Ψ(θ)h(θ)) = 0 である。よって、>>511 よりΨ(θ)h(θ) ≡ 0 (mod pZ[θ]) となる。
つまり、h(θ) が Φ_0 で定まる素因子 P_0 で割れるためには Ψ(θ)h(θ) ≡ 0 (mod pZ[θ]) が必要十分である。
513 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/02(水) 09:47:02
>>512 の続き
n ≧ 1 を有理整数として、 h(X) ∈ Z[X] とし Ψ(θ)^n h(θ) ≡ 0 (mod p^n) のとき h(θ) は Φ_0 で定まる素因子 P_0 で n 回割れるという。 h(θ) が P_0 で n 回割れるが n + 1 回では割れないとき h(θ) は P_0 できっかり n 回割れるという。
このとき >>403 の 1) , 2), 3), 4) と同様なことが成立つ。 証明も同様であるが一応証明する。
514 :132人目の素数さん:2006/08/02(水) 09:48:17
クンマー大好き結婚して!
515 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/02(水) 09:53:29
>>513 の続き
補題 h(X) ∈ Z[X] とし、h(θ) が Φ_0 で定まる素因子で k 回割れるとする。 (Ψ(θ)^k) h(θ) ≡ 0 (mod p^k) だから、 (Ψ(θ)^k) h(θ) / p^k ∈ Z[θ] である。 これを R(θ) とする。 h(θ) が Φ_0 で定まる素因子できっかり k 回割れるためには、 R(θ) が Φ_0 で定まる素因子で割れないことが必要十分である。
証明 (Ψ(θ)^k) h(θ) = (p^k) R(θ) である。 >>512 より R(θ) が Φ_0 で定まる素因子で割れるためには Ψ(θ)R(θ) ≡ 0 (mod p) が必要十分である。 このことから命題の主張は明らかである。 証明終
516 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/02(水) 10:06:35
>>515 の続き
補題 g(θ) が Φ_0 で定まる素因子できっかり k 回割れ h(θ) が Φ_0 で定まる素因子できっかり l 回割れるとする。 このとき、g(θ)h(θ) は Φ_0 で定まる素因子できっかり k + l 回割れる。
証明 (Ψ(θ)^k) g(θ) ≡ 0 (mod p^k) だから、 (Ψ(θ)^k) g(θ) = (p^k) U(θ) となる U(θ) ∈ Z[θ] がある。 同様に、 (Ψ(θ)^l) h(θ) = (p^l) V(θ) となる V(θ) ∈ Z[θ] がある。 >>515 より U(ζ) と V(ζ) は Φ_0 で定まる素因子で割れない。
(Ψ(θ)^(k+l)) g(θ) h(θ) = p^(k+l) U(θ)V(θ) であるが、U(θ)V(θ) は Φ_0 で定まる素因子で割れない。 よって、>>515 より g(θ)h(θ) はきっかり k + l 回割れる。 証明終
517 :132人目の素数さん:2006/08/02(水) 10:17:40
クンマー愛してる結婚して!
518 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/02(水) 10:36:41
>>516 の続き
>>510 のモニックな既約多項式 f(X) の根の全体を θ = θ_0, θ_1, ..., θ_(n-1) とする。
h(θ) ∈ Z[θ] に対して h(θ_0)h(θ_1)...h(θ_(n-1)) を h(θ) のノルムといい N(h(θ)) と書く。
N(h(θ)) は θ_0, θ_1, ..., θ_(n-1) の対称式であるから、 これらの基本対称式、よって f(X) の係数の多項式で表される。 よって、N(h(θ)) は有理整数である。
519 :Kummer ◆O0M0z3OauI :2006/08/02(水) 10:37:45
>>517と結婚します。
520 :132人目の素数さん:2006/08/02(水) 10:47:09
クンマー大大大大大好き結婚して!
521 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/02(水) 10:58:06
>>518 の続き
命題 p はΦ_0で定まる素因子できっかり1回割れる。
証明 Ψ(θ)p ≡ 0 (mod p) は明らかである。
(Ψ(θ)^2) p ≡ 0 (mod p^2) とする。 Ψ(θ)^2 ≡ 0 (mod p) となる。 p は Φ_0 で定まる素因子で割れるから、Ψ(θ)^2 は Φ_0 で定まる 素因子で割れる。よって、Ψ(θ) も Φ_0 で定まる素因子で割れる。 これは Ψ(θ) の定義 Ψ(θ) = g_1(θ)...g_(e-1)(θ) に反する。 よって、p はΦ_0で定まる素因子できっかり1回割れる。 証明終
522 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/03(木) 11:00:17
>>521 の続き
命題 h(θ) が 0 でなく、かつ Φ_0 で定まる素因子で割れれば 有理整数 k ≧ 1 があり h(θ) は Φ_0 で定まる素因子で きっかり k 回割れる。
証明 h(θ) が任意の k ≧ 1 に対してΦ_0 で定まる素因子で k 回割れるとして矛盾を導く。
(Ψ(θ)^k) h(θ) = (p^k) h_k(θ) となる h_k(θ) ∈ Z[θ] がある。 これと、 (Ψ(θ)^(k+1)) h(θ) = (p^(k+1)) h_(k+1)(θ) から
h_k(θ) = t h_(k+1)(θ) となる。ここで t = p/Ψ(θ) である。
P = Ker(Φ_0) とおく。P は Z[θ] の素イデアルである。 Z[θ] の P における局所化(前スレ1の65 と 88) Z[θ]_P を考える。 Z[θ]_P はネーター環である。 t = p/Ψ(θ) は Z[θ]_P の極大イデアル PZ[θ]_P の元である。
h_k(θ) = t h_(k+1)(θ) だから h_k(θ) で生成される Z[θ]_P の イデアルを (h_k(θ)) とすれば、(h_k(θ)) ⊂ (h_(k+1)(θ)) である。Z[θ]_P はネーター環だから、ある有理整数 r があり、 (h_r(θ)) = (h_(r+1)(θ)) となる。 よって、h_(r+1)(θ) = u h_r(θ) となる u ∈ Z[θ]_P がある。 h_r(θ) = t h_(r+1)(θ) だから h_r(θ) = tu h_r(θ) となる。 よって (1 - tu) h_r(θ) = 0 である。1 - tu は PZ[θ]_P に 含まれないから Z[θ]_P の可逆元である。よって h_r(θ) = 0 である。 (Ψ(θ)^r) h(θ) = (p^r) h_r(θ) だから h(θ) = 0 となって矛盾。 証明終
523 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/03(木) 11:13:09
>>513 において >このとき >>403 の 1) , 2), 3), 4) と同様なことが成立つ。 >証明も同様であるが一応証明する。
と書いたが、>>403 の 1) に対応する >>522 の証明は大分違う。 >>403 の 1) は円分整数 f(ζ) のノルムを使ったが、今の場合、 その方法ではうまく行かなかった。何故なら Z[θ] は自己共役とは 限らないし、整閉とも限らないから。
出来れば >>522 のような可換代数の知識を使った証明は 避けたいんだが、今のところ構成的な証明が思い浮かばないので 仕方ない。
524 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/03(木) 17:20:00
>>522 の続き
h(θ) が Φ_0 で定まる素因子できっかり k 回割れるとき、 この k を ord(h(θ)) と書く。 h(θ) が Φ_0 で定まる素因子で割れないときは、ord(f(ζ)) = 0 と する。
このとき >>403 と同様に以下の命題が成立つ。
1) 円分整数 h(θ) が 0 でなければ ord(f(ζ)) は有限値として 必ず定まる。
これは >>522 の命題を言い換えただけである。
2) h(θ) ≠ 0, g(θ) ≠ 0 なら ord(h(θ)g(θ)) = ord(h(θ)) + ord(g(θ)) となる。
これは >>516 の補題を言い換えただけである。
3) h(θ) ≠ 0, g(θ) ≠ 0 で、h(θ) + g(θ) ≠ 0 なら ord(h(θ) + g(θ)) ≧ min(ord(h(θ), ord(g(θ)) である。
これは定義(>>513)から明らか。
4) ord(p) = 1 である。
これは >>521 の命題を言い換えただけである。
525 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/03(木) 18:06:35
>>524 により有理素数 p がθの最小多項式 f(X) の判別式 d を 割らない場合は、p を割る素因子つまり関数 ord が定義出来た (>>412 参照)。
しかし、p が f(X) の判別式 d を割る場合はどうだろうか? Bourbaki の可換代数の歴史覚え書きによると、Z[θ] が整閉の場合は それ程困難はないという。実際 Dedekind の同時代人の Zolotarev が それに関する論文を書いているという。これは Dedekind の イデアル論が出現する前の話である。 Zolotarev の方法がどんなものか興味があるが残念ながら今それを 見ることが出来ない。
Bourbakiが比較的簡単だというので、私もちょっと考えたが 可換代数でよく知られた命題(即ち1次元のネーター局所整閉整域 は離散付値環)を使うか高木の本の付録にあるDedekind の方法くらい しか思い当らない。勿論、これ等はイデアル論なわけで Zolotarevの方法とは違うと思われる。
526 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/03(木) 18:07:25
Dedekind の本
Sur la théorie des nombres entiers algébriques. Paris, Gauthier-Villars 1877
によると、彼は Kummer の理論を一般の代数体に拡張しようとして 彼が言うところの「高次合同の理論」を使って >>524 の結果は得た らしい。「高次合同の理論」というのは、>>510 で述べたように f(X) を mod p で既約多項式に分解して素因子を求める方法のことを さすと思われる。 しかし、それ以上進もうとすると越えることの出来ない困難に遭遇し 長い間停滞していたと書いている。
代数体の主整数環は Z[θ] の形になるとは限らないことがこの困難の 主な原因である。 この困難を Kummer 理論の延長として、つまり因子論の範囲で 越えようとすれば Hensel による p 進数の理論か、Krull に よる一般付値論が必要になるだろう。
527 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/04(金) 09:24:03
>>526 >しかし、それ以上進もうとすると越えることの出来ない困難に遭遇し >長い間停滞していたと書いている。
昨日、その本(Sur la théorie des nombres...)の英訳を読み直して みたら、長い間停滞していたとは書いてなかった。 Bourbakiによると別のところでそう書いている。
>この困難を Kummer 理論の延長として、つまり因子論の範囲で >越えようとすれば Hensel による p 進数の理論か、Krull に >よる一般付値論が必要になるだろう。
Bourbakiの歴史覚え書きによると この問題は >>525 で言及した Zorotarev(Zolotareff とも書く) が解決していたらしい。 Bourbaki は、この事実は重要視していない。 逸話としての興味以上のものはないと書いている。
昨日、Bourbakiの歴史覚え書きを読み直して、脚注にこのことが書いて あるにに初めて気付いた。かなり驚いた。
528 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/04(金) 10:11:27
Dedekind は >>526 の困難を越えようと努力して長らく停滞して いたが、問題を別の方向から捕らえることにより突破口を得た。 その鍵は >>474 の命題が示す事実にある。 Kummer の理想数にそれが割る円分整数の集合を対応させれば 理想数とZ[ζ] の 0 でないイデアルの間に1対1の対応が得られる。 従って理想数の替わりにイデアルを考えてもよいわけである。 イデアルなら一般の代数体でも容易に定義できる。
こうやってイデアル論の開発に着手したわけだが、この道にも 大きい困難が待ち受けていた。それは、代数体における イデアル論の基本定理の証明である。Dedekind はこれに対して数種類 の証明を得たがどれにも満足していない(高木)。
念のために言うとイデアルという概念は Dedekind により始めて 導入された。これが後に一般の環でも考えられるようになり、 抽象代数の勃興につながった。
その当時としてはイデアルはかなり受け入れ難い概念であった。 何故ならイデアルというのは構成的な概念ではないから。 イデアルの生成元 α_1, .., α_r を定めても、ある数が そのイデアルに属すかどうかの判定が構成的に行えるかどうかは 自明ではない。これが Kronecker がイデアル論に反対した理由 の1つだと思われる。 Kroneckerは、無限集合というものに懐疑的であった。
529 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/04(金) 10:23:00
訂正
>>524 >1) 円分整数 h(θ) が 0 でなければ ord(f(ζ)) は有限値として >必ず定まる。
h(θ) は当然 円分整数じゃなく Z[θ] の元である。 以下のように訂正する。
1) h(θ) が 0 でなければ ord(f(ζ)) は有限値として 必ず定まる。
530 :132人目の素数さん:2006/08/04(金) 11:33:52
>>Zolotarev の方法
http://www.jstor.org/view/00029890/di991124/99p1804f/0
http://www.jstor.org/view/00029947/di962891/96p0028z/0
531 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/04(金) 11:34:09
ここで、今後の進め方について考えて見たい。 私としては、まず古典的なイデアル論で代数体の整数論を述べたい と思う。その後で、局所体とかイデール、ガロワコホモロジーなどを 導入する。つまり基本的に歴史的順序に従って展開する。 それから、これ等に高次冪剰余の相互法則という縦糸を通したい。
こう考えると、前にも述べたGaussの整数論の主題である2次形式論に ついても述べるべきだろう。そこから代数的整数論が発生したのだから。 この2次形式論を知らないで代数的整数論をやるというのは、例えると 何になるだろう。ちょっといい例えが思い浮かばないが。
532 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/04(金) 11:39:17
>>530
有りがたいけど、それ見れない。権限が必要とある。
533 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/04(金) 17:08:52
補題 体でない局所整域 A の極大イデアル m が単項イデアルで 0 = ∩m^n とする。ここで n は 1 以上の有理整数をすべて動く。 このとき A は離散付値環(前スレ1の645)である。
証明 t を m の生成元とする。A は体でないから t ≠ 0 である。 x を m に含まれる 0 でない元とする。 ∩m^n = 0 だから x ⊂ m^n となる最大の n ≧ 1 がある。 x = (t^n)u とすれば u は m に含まれないので A の可逆元である。 n = ord(x) と書く。
I を m に含まれる 0 でないイデアルとする。
{ord(x); x ∈ I - {0} } の最小元を n として
y を n = ord(y) となる I の元とする。
x ∈ I - {0} なら ord(x) ≧ n だから x ∈ (t^n)A = yA である。
よって I = yA である。
m に含まれないイデアルは A のみだから、A は単項イデアル整域
である。よって A は離散付値環である。
証明終
534 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/04(金) 17:10:52
命題 体でないネーター局所整域の極大イデアルが単項イデアル であれば、それは離散付値環である。
証明 A を体でないネーター局所整域、 m をその極大イデアル、t をその 生成元とする。A は体でないから t ≠ 0 である。 I = ∩m^n とする。ここで n は 1 以上の有理整数をすべて動く。 >>533 より I = 0 を示せばよい。
x ∈ I なら 任意の n ≧ 1 にたいして x = (t^n)y_n となる y_n ∈ A がある。 x = (t^n)y_n = (t^(n+1))y_(n+1) だから y_n = t(y_(n+1)) となる。 よって (y_n) ⊂ (y_(n+1)) である。 n は任意であり A はネーター環だから (y_k) = (y_(k+1)) となる k がある。よって y_(k+1) = u(y_k) となる u ∈ A がある。 y_k = t(y_(k+1)) だから y_k = tu(y_k) となる。 (1 - tu)y_k = 0 である。1 - tu は m に含まれないから A の可逆元 である。よって y_k = 0、即ち x = 0 である。 結局 I = 0 である。 証明終
535 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/08/04(金) 17:13:20
>>534 の証明は >>522 の証明と本質的には同じである。
