最終更新日時 2011年03月05日 (土) 21時01分33秒
代数的整数論 004 (196-295)
元スレ: http://science6.2ch.net/test/read.cgi/math/1164286624/196-295
ログ元: http://yomi.mobi/read.cgi/science6/science6_math_1164286624/196-295
ログ元: http://yomi.mobi/read.cgi/science6/science6_math_1164286624/196-295
196 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 01:55:54 ]
(a, b)/(c, d) は第一行が a, b で第2行が c, d である 2次の正方行列を表すことにする。
C を複素数体とし、GL_2(C) を C 上の2次の正則行列のなす群とする。 つまり C の元を成分とする行列 (a, b)/(c, d) で ad - bc ≠ 0 となるもの全体のなす群である。
GL_2(C) は C ∪ {∞} に一次分数変換として作用する。
g = (a, b)/(c, d) で z ∈ C ∪ {∞} のとき
g(z) = (az + b)/(cz + d) である。
ただし、c ≠ 0 のとき
g(∞) = lim [z → ∞] (az + b)/(cz + d) = a/c とする。
c = 0 のとき g(∞) = lim [z → ∞] (az + b)/d = ∞ とする。
SL_2(R) を実数体の元を成分とする行列 (a, b)/(c, d) で ad - bc = 1 となるもの全体のなす群とする。
同様に SL_2(Z) を有理整数を成分とする行列 (a, b)/(c, d) で ad - bc = 1 となるもの全体のなす群とする。
197 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/10(日) 02:00:58 ]
モジュラー
198 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 02:07:27 ]
問題 SL_2(R) の元 g = (a, b)/(c, d) と z ∈ C に対して g(z) = (az + b)/(cz + d) とおく。 ただし、cz + d ≠ 0 とする。 このとき Im(g(z)) = Im(z)/|cz + d|^2 である。
199 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 02:40:49 ]
H を複素上半平面とする。
即ち H = {z ∈ C ; Im(z) > 0 } である。
>>198 より SL_2(R) は H に作用する。
問題 g ∈ SL_2(R) で g(z) = z となる z ∈ H が3個以上あれば、 g = ±1 である。
200 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 02:51:55 ]
>>199 より PSL_2(R) = SL_2(R)/{±1} は H に忠実に作用する。
SL_2(Z)/{±1} をモジュラー群と呼ぶ。
201 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/10(日) 08:37:25 ]
ガイシュツかも知れんが…
pが奇素数のとき 次の不等式を示せ.
Σ[r=1,p-1] { (r^2)/p - [r^2/p] } = (p-1)/2, (p≡1 (mod 4))
Σ[r=1,p-1] { (r^2)/p - [r^2/p] } < (p-1)/2, (p≡3 (mod 4))
( [x] は Gaussの記号 )
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1835554&tid=bdpbja1jiteybc0a1k&sid=1835554&mid=603 出題(不等式)
202 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 12:11:48 ]
問題 SL_2(R) の任意の元の固有方程式は以下の3種類である。
1) (X - 1)^2 = X^2 -2x + 1
2) (X + 1)^2 = X^2 +2x + 1
3) (X - λ)(X - 1/λ) ここで λ ≠ ±1
203 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 12:24:46 ]
問題 >>202 の 3) のタイプの行列 g は、さらに二つのタイプに分けられる。
a) λ は実数
この場合 |Tr(g)| > 2 である。
b) λ は実数でない この場合 |λ| = 1 であり、|Tr(g)| < 2 である。
204 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 12:30:47 ]
定義 SL_2(R) の元 g は
|Tr(g)| = 2 のとき放物型という。 |Tr(g)| < 2 のとき楕円型という。 |Tr(g)| > 2 のとき双曲型という。
205 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 12:39:49 ]
ここで、線形代数の復習をしよう。
問題 K を代数的閉体とする。 K の元を成分とする n 次の正方行列 A は三角行列に相似である。 つまり、n 次の正則行列 P があり PAP^(-1) が三角行列になる。
206 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/10(日) 12:44:08 ]
>>kummerさん もしかして保形関数(保形型式)の話しをやるのですか?
207 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 12:47:30 ]
問題 K を代数的閉体とする。 A を K の元を成分とする n 次の正方行列とする。 A の固有多項式を (X - λ_1)... (X - λ_n) とする。 ここで, λ_1, ... λ_n の中に同じものがあってもよい。
f(X) を K の元を係数とする次数1以上の多項式とする。 このとき f(A) の固有多項式は (X - f(λ_1))... (X - f(λ_n)) である。
208 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 12:51:44 ]
>>206
今はしないです。後でするかもしれないですが。 ここではモジュラー群の基本事項をやるだけです。
209 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 13:12:05 ]
問題 K を代数的閉体とする。 A を K の元を成分とする n 次の正方行列とする。 A がべき零、つまり A^m = 0 となる有理整数 m ≧ 1 があるためには A の固有値がすべて0であることが必要十分である。 さらに、このとき A^n = 0 となる。
210 名前:132人目の素数さん [2006/12/10(日) 14:40:15 ]
訂正
>>204 >定義 >SL_2(R) の元 g は > >|Tr(g)| = 2 のとき放物型という。 >|Tr(g)| < 2 のとき楕円型という。 >|Tr(g)| > 2 のとき双曲型という。
定義 SL_2(R) の元 g, g ≠ ±1 は
|Tr(g)| = 2 のとき放物型という。 |Tr(g)| < 2 のとき楕円型という。 |Tr(g)| > 2 のとき双曲型という。
211 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 15:37:08 ]
問題 g ≠ ±1 を SL_2(R) の元とする。 g^m = 1 となる有理整数 m > 1 があるためには g の固有値 λ がすべて λ^m = 1 かつ λ ≠ ±1 を満たすことが 必要十分である。
212 名前:132人目の素数さん [2006/12/10(日) 15:40:57 ]
万一、命題の証明や問題が間違っていた場合は、それを指摘することも 演習とするw
こちらも間違えることは当然ある。
213 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 18:16:11 ]
問題 >>198 より SL_2(R) は複素上半平面 H に作用するが、この作用は 推移的である。つまり、H の任意の2点 z, w に対して w = g(z) となる g ∈ SL_2(R) がある。
214 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 18:25:38 ]
問題
SL_2(R) の複素上半平面 H への作用(>>198)において、虚数単位 i の
安定化部分群 { g ∈ SL_2(R) ; g(i) = i } は
特殊回転群 SO(2) = { g ∈ SL_2(R) ; g(g^t) = 1 } である。
ここで g^t は g の転置行列である。
215 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 18:29:31 ]
問題 g ∈ SL_2(R) で g(z) = z となる z ∈ H が1個以上あれば、 g = ±1 か g は楕円型(>>210)である。
216 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 18:35:55 ]
問題 SL_2(R) の位数有限の元は ±1 か楕円型(>>210)である。
217 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 18:37:30 ]
問題 g を SL_2(Z) の元で楕円型(>>210)とする。 g の特性多項式は
X^2 + 1 X^2 + X + 1 X^2 - X + 1
のどれかである。
218 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 18:40:47 ]
問題 g を SL_2(Z) の元で楕円型(>>210)とする。 g の位数は 3, 4, 6 のどれかである。
219 名前:132人目の素数さん [2006/12/10(日) 18:48:51 ]
きゃは!おもしろい。
220 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 19:07:38 ]
定義 2次体 Q(√m) において、αを任意の整数、β を 0 でない任意の整数 とする。 このとき、α = βγ + δ、 |N(δ)| < |N(β)| となる整数 γ、δ が 常に存在するとき Q(√m) は、ノルム Euclid 的であるという。
221 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 19:11:26 ]
問題 2次体 Q(√(-1)) はノルム Euclid 的である。
222 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 19:28:38 ]
>>196 以降は志村の Introduction to the arithmetic theory of automorphic functions を参考にしている。
223 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 19:38:09 ]
定義 複素上半平面 H の点 z に対して g(z) = z となる楕円型(>>210)の元 g ∈ SL_2(Z) が存在するとき、z を楕円点という。
224 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 21:15:43 ]
問題 g を SL_2(Z) の位数4の元とする。
Z[g] は2次の全行列環 M_2(Z) の部分環として 2次体 Q(√(-1)) の整数環 Z[√(-1)] に同型である。
225 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 21:19:09 ]
問題 g を SL_2(Z) の位数4の元とする。 Z[g] の元を Z^2 に左から作用させて Z^2 を Z[g]-加群とみなす。
このとき Z^2 は階数1の Z[g]-自由加群である。
226 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 21:26:08 ]
問題 g を SL_2(Z) の位数4の元とする。
g は (0, -1)/(1, 0) または (0, 1)/(-1, 0) に SL_2(Z) 内で 共役である。
なお、記法 (a, b)/(c, d) については >>196 を参照。
227 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 21:38:31 ]
問題 g を SL_2(Z) の位数3の元とする。
Z[g] は2次の全行列環 M_2(Z) の部分環として 2次体 Q(√(-3)) の整数環 Z[ρ] に同型である。 ここで、ρ = (-1 + √(-3))/2 = exp(2π√(-1)/3) である。
228 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 21:44:33 ]
問題 g を SL_2(Z) の位数3の元とする。 Z[g] の元を Z^2 に左から作用させて Z^2 を Z[g]-加群とみなす。
このとき Z^2 は階数1の Z[g]-自由加群である。
ヒント: 2次体 Q(√(-3)) の整数環 Z[ρ] は前スレ3の233から ノルム Euclid 的(>>220)である。
229 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 21:46:53 ]
>>225 >>228
Z^2 の元は列ベクトルとみなす。
230 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 21:49:42 ]
問題 g を SL_2(Z) の位数3の元とする。
g は h = (0, -1)/(1, -1) または h^2 = (-1, 1)/(-1, 0) に SL_2(Z) 内で共役である。
なお、記法 (a, b)/(c, d) については >>196 を参照。
231 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 21:59:55 ]
問題 g を SL_2(Z) の位数6の元とする。
g は -h = (0, 1)/(-1, 1) または -h^2 = (1, -1)/(1, 0) に SL_2(Z) 内で共役である。
ここで h = (0, -1)/(1, -1) である。
232 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/10(日) 22:07:22 ]
>>201
・p≡1 (mod 4) のとき
x^2 ≡ -1 (mod p) を満たすxがある。(-1 は平方剰余)
よって、{k,p-k}の対は 共に平方剰余 または共に非剰余。
x^2 ≡k, y^2≡p-k (mod p) なる x,y をとると、
r=x,p-x ⇒ (r^2)/p - [(r^2)/p] = k/p,
r=y,p-y ⇒ (r^2)/p - [(r^2)/p] = (p-k)/p,
辺々たせば =1.
平方剰余は (p-1)/2 個, すなわち (p-1)/4 対あるから、
これは与式左辺のp-1項を尽くしている。
233 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 22:14:02 ]
定義
複素上半平面 H の楕円点 z の安定化部分群
{ g ∈ SL_2(R) ; g(z) = z } は有限巡回群である(>>218)。
この部分群の標準射 SL_2(Z) → SL_2(Z)/{±1} による像の位数を
この楕円点の位数という。
234 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 22:24:58 ]
問題 複素上半平面 H の楕円点 z の位数(>>233) は2または3である。
位数2の楕円点は √(-1) に SL_2(Z) の元の作用で移る。
位数3の楕円点は (-1 + √(-3))/2 = exp(2π√(-1)/3) に SL_2(Z) の元の作用で移る。
235 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 22:52:20 ]
定義 複素上半平面 H の部分集合 D が以下の条件を満たすとき SL_2(Z) の 基本領域と呼ぶ。
1) D は H の連結開部分集合である。
2) D の任意の異なる2点は SL_2(Z) の作用で同値ではない。
3) H の任意の点は D の閉包のある点とSL_2(Z) の作用で同値である。
236 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 23:01:33 ]
D = { z ∈ H ; |Re(z)| < 1/2 かつ |z| > 1 } とおく。
D が SL_2(Z) の基本領域であることを示すのが次の目標である。
237 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 23:24:23 ]
SL_2(Z) の元 S, T を
S = (1, 1)/(0, 1) T = (0, -1)/(1, 0)
で定義する。
S(z) = z + 1 T(z) = -1/z
である。
238 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 23:35:48 ]
問題 S = (1, 1)/(0, 1) と T = (0, -1)/(1, 0) で生成される SL_2(Z) の 部分群を G' とする。
複素上半平面 H の任意の点 z に対して { Im(g(z)) ; g ∈ G' } は
最大値をもつ。
239 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/10(日) 23:50:28 ]
補題 z を複素上半平面 H の点で |z| < 1 とする。 このとき |T(z)| > 1 である。 ここで、T = (0, -1)/(1, 0) である。
証明 自明である。
240 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 00:03:58 ]
問題 S = (1, 1)/(0, 1) と T = (0, -1)/(1, 0) で生成される SL_2(Z) の 部分群を G' とする。
>>238 より 複素上半平面 H の任意の点 z に対してある g ∈ G' があり Im(g(z)) が最大値となる。
w = S^n(g(z)) とおく。つまり w = g(z) + n である。 |Re(w)| ≦ 1/2 となるように整数 n をとる。 このとき |Im(w)| ≧ 1 である。
つまり、w は
D~ = { z ∈ H ; |Re(z)| ≦ 1/2 かつ |z| ≧ 1 } の点である。
241 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 00:45:26 ]
訂正
>>239 を次の問題に置き換える。
問題 z を複素上半平面 H の点で |z| < 1 とする。 w = -1/z とおく。 このとき Im(w) > Im(z) である。
242 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 07:33:58 ]
>>205, >>207, >>209 は、ここでの話題とあまり関係ないかも しれない。
他にもそのような問題があるかもしれないので、問題を解くのは 必要性がはっきりした時点にしたほうがよいかも知れない。
もちろん、解くのはなんら問題ない。
243 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 10:25:47 ]
訂正
>>214
>特殊回転群 SO(2) = { g ∈ SL_2(R) ; g(g^t) = 1 } である。
特殊直行群 SO(2) = { g ∈ SL_2(R) ; g(g^t) = 1 } である。
244 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 10:26:43 ]
もといw
特殊直交群 SO(2) = { g ∈ SL_2(R) ; g(g^t) = 1 } である。
245 名前:132人目の素数さん [2006/12/11(月) 18:51:32 ]
クンマー、ディリクレ
246 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 19:45:09 ]
問題
H を複素上半平面とする。
即ち H = {z ∈ C ; Im(z) > 0 } である。
D = { z ∈ H ; |Re(z)| < 1/2 かつ |z| > 1 } とおく。
z ∈ D なら Im(z) > (√3)/2 である。
247 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 20:16:43 ]
問題 z を |z| > 1 である任意の複素数とする。
|z + 1|^2 > 2(Re(z) + 1) である。
248 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 20:34:48 ]
問題
H を複素上半平面とする。
即ち H = {z ∈ C ; Im(z) > 0 } である。
D = { z ∈ H ; |Re(z)| < 1/2 かつ |z| > 1 } とおく。
z ∈ D なら |z + d| > 1 である。 ここで d は |d| ≧ 1 である任意の実数である。
249 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 21:13:22 ]
補題
H を複素上半平面とする。
即ち H = {z ∈ C ; Im(z) > 0 } である。
D = { z ∈ H ; |Re(z)| < 1/2 かつ |z| > 1 } とおく。
g を SL_2(Z) の元、z を D の点とし w = g(z) とおく。 g = (a, b)/(c, d) とする。 この記法 (a, b)/(c, d) については >>196 を参照。 即ち w = (az + b)/(cz + d) である。
Im(w) ≧ Im(z) なら c = 0 または ±1 である。
証明
>>198 より Im(w) = Im(z)/|cz + d|^2 である。
Im(w) ≧ Im(z) より Im(z)/|cz + d|^2 ≧ Im(z) となる。 よって Im(z) ≧ Im(z)|cz + d|^2 となる。 Im(z) > 0 だから |cz + d| ≦ 1 となる。
y = Im(z) とおくと、cz + d の虚部は cy である。 よって |cz + d| ≦ 1 より |cy| ≦ 1 となる。 よって |c| ≦ 1/y となる。 一方、>>246 より y > (√3)/2 である。 よって |c| ≦ 2/√3 < 2 である。 よって c = 0 または ±1 である。 証明終
250 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 21:16:16 ]
問題
H を複素上半平面とする。
即ち H = {z ∈ C ; Im(z) > 0 } である。
D = { z ∈ H ; |Re(z)| < 1/2 かつ |z| > 1 } とおく。
D の任意の異なる2点は SL_2(Z) の作用で同値ではない。
251 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 21:22:18 ]
>>240 と >>250 より
D = { z ∈ H ; |Re(z)| < 1/2 かつ |z| > 1 } は
SL_2(Z) の基本領域(>>235)である。
252 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/11(月) 22:29:32 ]
訂正
>>233
>定義
>複素上半平面 H の楕円点 z の安定化部分群
>{ g ∈ SL_2(R) ; g(z) = z } は有限巡回群である(>>218)。
>この部分群の標準射 SL_2(Z) → SL_2(Z)/{±1} による像の位数を
>この楕円点の位数という。
定義
複素上半平面 H の楕円点 z の安定化部分群
{ g ∈ SL_2(Z) ; g(z) = z } は有限巡回群である(>>218)。
この部分群の標準射 SL_2(Z) → SL_2(Z)/{±1} による像の位数を
この楕円点の位数という。
253 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/16(土) 11:09:44 ]
D = { z ∈ H ; |Re(z)| < 1/2 かつ |z| > 1 } とおく。
D の閉包を [D] と書く。
[D] = { z ∈ H ; |Re(z)| ≦ 1/2 かつ |z| ≧ 1 } である。
E = { z ∈ [D] ; |z| = 1 }
= { z ∈ H ; |Re(z)| ≦ 1/2 かつ |z| = 1 }
L = { z ∈ [D] ; Re(z) = -1/2 }
= { z ∈ H ; Re(z) = -1/2 かつ |z| ≧ 1 }
R = { z ∈ [D] ; Re(z) = 1/2 }
= { z ∈ H ; Re(z) = 1/2 かつ |z| ≧ 1 }
とおく(それぞれの図を描かくとよい)。
[D] の境界は [D] - D であるが、 [D] - D = E ∪ L ∪ R である。
F = { z ∈ E ; Re(z) ≦ 0 }
= { z ∈ H ; -1/2 ≦ Re(z) ≦ 0 かつ |z| = 1 }
G = D ∪ L ∪ F
とおく。
G = { z ∈ H ; -1/2 ≦ Re(z) < 1/2 かつ |z| ≧ 1 で
|z| = 1 のときは -1/2 ≦ Re(z) ≦ 0 }
である。
254 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/16(土) 11:30:14 ]
[D] の図は例えば
ttp://en.wikipedia.org/wiki/Modular_group
にある。
255 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/16(土) 12:22:19 ]
簡単のために H の2点が SL_2(Z) の作用で同値なことを単に同値と いうことにする。
z = x + y√(-1) で |z| = 1 のとき -1/z = (-x + y√(-1))/|z|^2 = -x + y√(-1)
よって変換 T(z) = -1/z は E = { z ∈ [D] ; |z| = 1 } の点を
虚軸に関して対称な点に写す。
よって、 E の点は F = { z ∈ E ; Re(z) ≦ 0 } の点と同値である。
変換 S^(-1)(z) = z - 1 は R = { z ∈ [D] ; Re(z) = 1/2 }
の点を L = { z ∈ [D] ; Re(z) = -1/2 } の点に写す。
よって [D] の任意の点は G = D ∪ L ∪ F の点に同値である。 >>240 より H の任意の点は [D] の点に同値だから、 結局 G の点に同値となる。
256 名前:132人目の素数さん [2006/12/16(土) 12:43:11 ]
定理の証明は見ずに自分で証明すること。
遅くとも学部四年になるまでには、こういう読み方を身に付けないと いけない。
257 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/16(土) 14:44:50 ]
補題 G を >>253 の通りとする。 z ∈ G なら Im(z) ≧ (√3)/2 である。
証明 >>246 と同様である。
258 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/16(土) 14:46:47 ]
補題 z を |z| ≧ 1 である任意の複素数とする。 d を実数とし、|z + d| ≦ 1 とする。
このとき d = 0 なら |z| = 1
d > 0 なら x ≦ -d/2 d < 0 なら x ≧ -d/2
証明 >>247 と同様の単純計算である。
259 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/16(土) 14:49:13 ]
補題 G を >>253 の通りとする。 z ∈ G とし d を有理整数とする。 さらに |z + d| ≦ 1 とする。
このとき d = 0 または d = 1 である。
d = 0 なら |z| = 1
d = 1 なら z = (-1 + √(-3))/2
証明 >>258 より明らかである。
260 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 01:01:35 ]
補題 G を >>253 の通りとする。
g = (a, b)/(c, d) を SL_2(Z) の元とする。 なお、記法 (a, b)/(c, d) については >>196 を参照。
z, w ∈ G で w = g(z) = (az + b)/(cz + d) とする。
Im(w) ≧ Im(z)
なら c = 0 または c = ±1 である。
証明 >>249 の証明とほとんど同じである。 >>246 の代わりに >>257 を使う。
261 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 01:14:21 ]
>>260 において c = 0 なら g = ±1 であり、w = z である。
証明 ad - bc = 1 だから c = 0 より a = d = ±1 である。 よって w = z ± d となる。 z と w は G に属するから d = 0 である。 証明終
262 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 01:27:17 ]
>>260 において c = 1 なら d = 0 または d = 1 である。
d = 0 なら |z| = 1
d = 1 なら z = (-1 + √(-3))/2
である。
証明 Im(w) = Im(z)/|z + d|^2 ≧ Im(z) より、|z + d| ≦ 1 となる。 よって >>259 より主張がでる。
263 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 02:12:19 ]
>>262 において
d = 0 なら
w = z = √(-1) で g = (0, -1)/(1, 0)
または
w = z = (-1 + √(-3))/2 で g = (-1, -1)/(1, 0)
証明 ad - bc = 1 で c = 1 だから d = 0 なら b = -1 である。 よって w = a - 1/z である。
|z| = 1 で z ∈ G だから z ∈ F である。 ここで F は >>253 で定義された集合である。 |z| = 1 だから -1/z は虚軸に対して z と対称の位置にある。 w ∈ G だから a = 0 または a = -1 である。
a = 0 なら z = √(-1) で g = (0, -1)/(1, 0) よって w = -1/z = z
a = -1 なら z = (-1 + √(-3))/2 で g = (-1, -1)/(1, 0) よって w = -1 - 1/z = (-z - 1)/z = z^2/z = z
ここで z は 1 の原始3乗根だから z^2 + z + 1 = 0 となることを 使った。 証明終
264 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 02:42:15 ]
>>262 において
d = 1 なら w = z = (-1 + √(-3))/2 で g = (0, -1)/(1, 1)
証明 ad - bc = 1 で c = 1 だから d = 1 なら a - b = 1 である。 よって a = b + 1 である。
w = ((b + 1)z + b)/(z + 1) = b + z/(z + 1) = b - z/z^2 = b - 1/z
w ∈ G だから b = -1 である。 よって w = (-z - 1)/z - z^2/z = z 証明終
265 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 02:44:44 ]
訂正
>>264 >w = (-z - 1)/z - z^2/z = z
w = (-z - 1)/z = z^2/z = z
266 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 03:02:42 ]
>>260 において c = -1 のときは -g = (-a, -b)/(-c, -d) で w = -g(z) であるから c = 1 の場合の結果を適用できる。
つまり以下のようになる。
c = -1 なら d = 0 または d = -1 である。
d = 0 なら w = z = √(-1) で g = (0, 1)/(-1, 0) または w = z = (-1 + √(-3))/2 で g = (1, 1)/(-1, 0)
d = 1 なら w = z = (-1 + √(-3))/2 で g = (0, 1)/(-1, -1)
267 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 03:53:47 ]
定理 G を >>253 の通りとする。
(1) 任意の z ∈ H に対して g(z) ∈ G となる g ∈ SL_2(Z) が 存在する。
(2) G の異なる2元は SL_2(Z) に関して同値ではない。
(3) z ∈ G に対して I(z) = { g ∈ SL_2(Z) ; g(z) = z } を
z の安定化部分群とする。
S = (1, 1)/(0, 1) T = (0, -1)/(1, 0) ρ = (-1 + √(-3))/2 = exp(2π√(-1)/3) とおく。
z が √(-1) でも ρ でもないとき I(z) = {±1}
z = √(-1) のとき I(z) = {±1, ±g}
ここで g = T
z = (-1 + √(-3))/2 = exp(2πi/3) のとき I(z) = {±1, ±g, ±g^2}
ここで g = TS = (0, -1)/(1, 1)
証明 (1) >>255 で証明されている。
(2) と (3) >>261 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 からわかる。 証明終
268 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 04:10:06 ]
>>267 から >>234 の別証が得られたことになる。
269 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 04:32:25 ]
定理 SL_2(Z) は S = (1, 1)/(0, 1) と T = (0, -1)/(1, 0) で生成される。
証明 S と T で生成される SL_2(Z) の部分群を K とおく。
D = { z ∈ H ; |Re(z)| < 1/2 かつ |z| > 1 } とおく。
D から任意の元 z を取る。 g を SL_2(Z) の任意の元とする。
>>240 と >>255 より hg(z) ∈ G となる h ∈ K が存在する。
>>267 の (2) より hg(z) = z である。 >>267 の (3) より hg = ±1 である。 よって g ∈ K となる。
証明終
270 名前:132人目の素数さん [2006/12/17(日) 06:41:46 ]
kummer さんの数式の書き方、きれいですね! TeX いらないのでは!
271 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 10:52:37 ]
>>270
有難うございます。 これだけ書いてるとさすがに上達しますw
272 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 12:11:49 ]
定義 2次体 Q(√m) において m > 0 のとき Q(√m) を実2次体と呼ぶ。 m < のとき Q(√m) を虚2次体と呼ぶ。
273 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 12:20:51 ]
定義 2次体 Q(√m) において m > 0 のとき Q(√m) を実2次体と呼ぶ。 m < のとき Q(√m) を虚2次体と呼ぶ。
Q(√m) が虚2次体のとき、√m = √(|m|) √(-1) と決めておく。 ここで √(|m|) は |m| の正の平方根である。
したがって、√m および ω (>>11) は複素上半平面にある。
274 名前:132人目の素数さん [2006/12/17(日) 12:42:07 ]
問題 z を複素数、a, b, c, d を実数とする。 ただし、cz + d ≠ 0 とする。
w = (az + b)/(cz + d) とおく。
このとき
Im(w) = (ad - bc)Im(z)/|cz + d|^2
である。
275 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 12:49:19 ]
補題
虚2次体 Q(√m) の原始イデアル I = [a, b + ω] と J = [k, l + ω] が同じイデアル類に属すとする。 すなわち I = ρJ となる ρ ∈ Q(√m) があるとする。 このとき θ = (b + ω)/a、ψ = (l + ω)/k とおくと、 θ = (pψ + q)/(rψ + s) となる。 ここで p, q, r, s は有理整数で ps - qr = 1 である。
証明 >>194 より θ = (pψ + q)/(rψ + s) となる。 ここで p, q, r, s は有理整数で ps - qr = ±1 である。
>>273 の規約より θ と ψ は複素上半平面にある。
よって >>274 より ps - qr = 1 である。
証明終
276 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 15:35:27 ]
定義 代数的数(前スレ3の156) θ に対して Q(θ) が Q の n 次拡大で あるとき θ を n 次の代数的数という。
θ は有理数係数の多項式 f(X) = a_0X^n + a_1X^(n-1) ... + a_n の 根となる。ここで a_0, ..., a_n の最大公約数は 1 であり、 a_0 > 0 である。
f(X) は θ により一意に決まる。
f(X) の判別式を θ の判別式という。
ここで f(X) の判別式について復習しよう。
f(X) の根を θ_0, ..., θ_(n-1) とする。
f(X) の根の差積をΔとする。つまり Δ = Π(θ_i - θ_j) である。 ここで積は i < j となる対 (i, j) 全体を動く。
D = Δ^2 は θ_0, ..., θ_(n-1) の対称式だから f(X) の係数の 多項式で表せる。よって D は有理整数である。
D を f(X) の判別式という。
277 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 20:10:58 ]
A を環とする。
x と y を A の元を成分とする n 次の列ベクトルとしたとき (x, y) は (x^t)y を表すとする。ここで x^t は x の転置であり、 x^t は行ベクトルになる。
S を A の元を成分とする n 次の対称行列とする。
2次形式 (x, Sx) = (x^t)Sx = (Sx, x) を考える。これを S[x] と書く。
P を A の元を成分とする n 次の可逆正方行列とする。
x = Py と変数変換すると、
S[x] = (Py, SPy) = (Py)^t(SPy) = y^t(P^t)SPy =(y, (P^t)SPy) = (P^t)SP[y]
det((P^t)SP) = det(P)^2 det(S) である。
278 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 21:01:58 ]
>>276 >ここで a_0, ..., a_n の最大公約数は 1 であり、 >a_0 > 0 である。
a_0 > 0 の条件をつけない場合もある。 この場合 f(X) の係数は符号を除いて決まる。 さらに f(X) の判別式は根の差積 Δ の平方だから θ により一意に決まる。
279 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 22:12:29 ]
定義 有理整数係数の2元2次同次多項式
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2
を2元2次形式、略して、2次形式という。
gcd(a, b, c) = 1 のとき f を原始的という。
D = b^2 - 4ac を f の判別式という。
280 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 22:40:30 ]
2次形式
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2
に一次変換
x = pu + qv y = ru + sv
を施して
f(pu + qv, ru + sv) = ku^2 + luv + mv^2
とする。 ここで p, q, r, s は有理整数で ps - qr = ±1 である。
k = ap^2 + bpr + cr^2 l = 2apq + b(ps + qr) + 2crs m = aq^2 + bqs + cs^2
である。
281 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 23:09:27 ]
>>280 のつづき
f(x, y) の判別式を D とする。
A を2次の正方行列 (a, b/2)/(b/2, c) とする。 行列の記法 (a, b)/(c, d) については >>196 を参照。
B = (k, l/2)/(l/2, m) とおく。
P = (p, q)/(r, s) とおく。
P の転置行列 P^t は (p, r)/(q, s) である。
>>277 より
B = (P^t)AP である。
よって det(B) = det(P)^2 det(A) である。
det(P) = ps - qr = ±1
だから det(B) = det(A) である。
よって km - l^2/4 = ac - b^2/4 よって l^2 - 4km = b^2 - 4ac = D
282 名前:132人目の素数さん [2006/12/17(日) 23:26:42 ]
命題
>>280 において
gcd(a, b, c) = gcd(k, l, m) である。
証明 a, b, c で生成される有理整数環のイデアルを I とする。 k, l, m で生成される有理整数環のイデアルを J とする。
k = ap^2 + bpr + cr^2 l = 2apq + b(ps + qr) + 2crs m = aq^2 + bqs + cs^2
より J ⊂ I である。
一次変換
x = pu + qv y = ru + sv
は可逆だから
2次形式 g(u, v) = ku^2 + luv + mv^2 にこの逆一次変換を作用させて f(x, y) を得ることが出来て、 a, b, c を k, l, m の式で表せる。
よって I ⊂ J である。 証明終
283 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/17(日) 23:29:43 ]
>>282 に名前を入れるのを忘れた。 将来の検索の便宜のために注意しておく。
284 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/18(月) 19:44:58 ]
2次の代数的数(>>276)のことを2次の無理数ともいう。
285 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/18(月) 19:46:12 ]
GL_n(Z) で有理整数を成分とする n 次の正方行列で可逆なものの なす群を表す。
g ∈ GL_n(Z) であるためには det(g) = ±1 が必要十分である。
GL_2(Z) の元は C ∪ {∞} に一次分数変換として作用する(>>196)。
286 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/18(月) 19:49:21 ]
命題 θ を2次の無理数(>>284)とする。 τ = g(θ) とする。ここで g は GL_2(Z) (>>285) の元である。 このとき τ も2次の無理数であり、θ と同じ判別式(>>276)をもつ。
証明 aθ^2 + bθ + c = 0 とする。 ここで a, b, c は有理整数で gcd(a, b, c) = 1 である。
D = b^2 - 4ac は θ の判別式である。 θ は2次の無理数だから D は平方数ではない。
2次形式 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を考える。
g の逆行列を h = (p, q)/(r, s) とする。 θ = h(τ) = (pτ + q)/(rτ + s) である。
g(u, v) = f(pu + qv, ru + sv) = kx^2 + lxy + my^2 とすると、>>281 より D = l^2 - 4km である。
μ = pτ + q ν = rτ + s とおく。
θ = μ/ν だから a(μ/ν)^2 + b(μ/ν) + c = 0 aμ^2 + bμν + cν^2 = 0 よって f(μ, ν) = g(τ, 1) = 0
よって g(τ, 1) = lτ^2 + mτ + n = 0 D = l^2 - 4km は平方数ではないから τ は2次の無理数である。 証明終
287 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/18(月) 19:56:08 ]
2次体 Q(√m) の判別式を D とする。 θ を判別式 D の2次の無理数とする。
aθ^2 + bθ + c = 0 とする。 ここで a, b, c は有理整数で gcd(a, b, c) = 1 である。 さらに a > 0 とする。
D = b^2 - 4ac である。 θ = (-b ± √D)/2a であるが θ = (-b + √D)/2a と仮定する。
a(aθ^2 + bθ + c) = a^2θ^2 + abθ + ac = 0 だから (aθ)^2 + b(aθ) + ac = 0
よって aθ は代数的整数である。 aθ = (-b + √D)/2 だから aθ ∈ Q(√m) である。
m ≡ 1 (mod 4) のとき (-b + √D)/2 = (-b - 1 + 1 + √m)/2 = (-b - 1)/2 + ω
m ≡ 2 (mod 4) または m ≡ 3 (mod 4) のとき (-b + √D)/2 = (-b + 2√m)/2 = -b/2 + ω
いずれの場合でも aθ = r + ω の形である。 r = aθ - ω は有理数で代数的整数でもあるから、有理整数である (前スレ3の158より有理整数環は整閉である)。
(aθ)^2 + b(aθ) + ac = 0 だから N(aθ) = ac である。
よって [a, aθ] = [a, r + ω] は Q(√m) の原始イデアルである。
288 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/18(月) 19:59:48 ]
>>285
A を環としたとき GL_n(A) も同様に定義される。
g ∈ GL_n(A) であるためには det(g) が A の可逆元であることが 必要十分である。
289 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/18(月) 22:55:11 ]
補題 2次形式 f = a^x^2 + bxy + cy^2 の判別式が、ある2次体 Q(√m) の 判別式に等しいなら f は原始的(>>279)である。
証明 2次体 Q(√m) の判別式を D とする。 仮定より、D = b^2 - 4ac である。
f が原始的でないとするとある有理整数 t > 1 があり、 a, b, c はそれぞれ t で割れる。よって D は t^2 で割れる。 D = (t^2)d とする。
m ≡ 1 (mod 4) のときは D = m であるから D は平方因子を含まない。 これは D = (t^2)d に反する。
よって m ≡ 2 (mod 4) または m ≡ 3 (mod 4) である。 この場合 D = 4m である。 m は平方因子を含まないから 2 で割れるとしても 4 では割れない。 よって t = 2 である。
b = 2e とする。 D = b^2 - 4ac = 4(e^2 - ac) よって e2 - ac = m である。
ac ≡ 0 (mod 4) だから m ≡ e^2 (mod 4) よって m ≡ 0 (mod 4) または m ≡ 1 (mod 4) である。これは矛盾である。 証明終
290 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/18(月) 23:04:49 ]
>>289 >m は平方因子を含まないから 2 で割れるとしても 4 では割れない。
m ≡ 0 (mod 4) でないことは m ≡ 2 (mod 4) または m ≡ 3 (mod 4) からもわかる。
291 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/18(月) 23:17:34 ]
補題 有理整数係数の2次多項式 f(X) = aX^2 + bX + c の判別式が、 ある2次体 Q(√m) の判別式に等しいなら gcd(a, b, c) = 1 である。
証明 >>289 と同様である。
292 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/18(月) 23:26:20 ]
命題 I = [a, r + ω] を2次体 Q(√m) の原始イデアルの標準基底による 表示とする。
θ = (r + ω)/a とおく。 θ は2次無理数であり、その判別式は Q(√m) の判別式と一致する。
証明 Q(√m) の判別式を D とする。
θ が有理数なら ω = aθ - r が有理数になり矛盾である。 θ ∈ Q(√m) だから θ は2次無理数である。
β = r + ω とおく。仮定より N(r + ω) = ββ ' は a で割れる。
f(X) = a(X - θ)(X - θ ') とおく。
f(X) = a(X - β/a)(X - β '/a) = aX^2 -(β + β ')X + ββ '/a
b = -(β + β ') c = ββ '/a とおくと b と c は有理整数」であり、f(X) = aX^2 + bX + c である。
f(X) の判別式は (β + β ')^2 - 4ββ ' = (β - β ')^2 = (ω - ω ')^2 = D である。
>>290 より gcd(a, b, c) = 1 である。 よって θ の判別式は D である。 証明終
293 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/19(火) 22:18:56 ]
定義 2次形式(>>279) f(x, y) = a^x^2 + bxy + cy^2 の判別式 D が 平方数でなく D < 0 とする。
a > 0 のとき f は正定値であるという。 a < 0 のとき f は負定値であるという。
D は平方数でないから a ≠ 0 であることに注意する。
294 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/19(火) 22:28:43 ]
>>293 >a^x^2 + bxy + cy^2
ax^2 + bxy + cy^2
295 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/19(火) 22:42:50 ]
補題 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を正定値(>>293)の2次形式とする。
(u, v) を 直積 Z × Z の元とすれば f(u, v) ≧ 0 であり、 f(u, v) = 0 となるのは (u, v) = (0, 0) のときに限る。
証明 f(x, y) の判別式を D とする。 f(x, y) は正定値だから D < 0 かつ a > 0 である(>>293)。
af(x, y) = a^2x^2 + abxy + acy^2
= (ax + by/2)^2 + acy^2 - (b^2/4)y^2
= (ax + by/2)^2 + (4ac - b^2)y^2/4
= (ax + by/2)^2 + |D|y^2/4
これから補題の主張は直に出る。
証明終
