最終更新日時 2011年03月05日 (土) 21時10分15秒
代数的整数論 004 (361-440)
元スレ: http://science6.2ch.net/test/read.cgi/math/1164286624/361-440
ログ元: http://yomi.mobi/read.cgi/science6/science6_math_1164286624/361-440
ログ元: http://yomi.mobi/read.cgi/science6/science6_math_1164286624/361-440
361 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 13:15:45 ]
>>358
有難うございます。
362 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 13:17:00 ]
>>161 の問題に戻る。
p を Q(√(-5)) で完全分解(>>106)する素数とする。 p ≠ 2, 5 である。
>>105 より (-5/p) = 1 である。
(-5/p) = (-1/p)(5/p) であり、 平方剰余の相互法則(前スレ3の751)より (5/p) = (p/5) である。
1^2 ≡ 1 (mod 5) 2^2 ≡ 4 (mod 5) 3^2 ≡ 4 (mod 5) 4^2 ≡ 1 (mod 5)
だから
p ≡ 1, 4 (mod 5) のとき (5/p) = 1 であり、 p ≡ 2, 3 (mod 5) のとき (5/p) = -1 である。
(-1/p) = (-1)^((p-1)/2) だから p ≡ 1 (mod 4) のとき (-1/p) = 1 であり、 p ≡ 3 (mod 4) のとき (-1/p) = -1 である。
よって p ≡ 1, 3, 7, 9 (mod 20) のとき (-5/p) = 1 p ≡ 11, 13, 17, 19 (mod 20) のとき (-5/p) = -1
よって p ≡ 1, 3, 7, 9 (mod 20) である。
363 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 13:31:13 ]
>>362 の続き
(p) = PP ' を素イデアル分解とする。
P が単項イデアルなら p = a^2 + 5b^2 となる有理整数 a, b が 存在する。 よって (p/5) = 1 だから p ≡ 1, 4 (mod 5) であり、 p ≡ 1, 9 (mod 20) である。
L = [2, 1 + √(-5)] とおく。 >>358 より Q(√(-5) の類数は 2 で L は主類(単位類)に含まれない。 よって P が単項イデアルでないなら PL は単項イデアルである。
N(PL) = 2p だから 2p = a^2 + 5b^2 となる有理整数 a, b が 存在する。
(2p/5) = (2/5)(p/5) = 1
(2/5) = -1 だから (p/5) = -1 である。 p ≡ 2, 3 (mod 5) である。 よって p ≡ 3, 7 (mod 20) である。
以上から p が Q(√(-5)) で完全分解するためには、 p ≡ 1, 9 (mod 20) が必要十分である。
よって 素数 p ≠ 5 が p = a^2 + 5b^2 となる有理整数 a, b を持つ ためには p ≡ 1, 9 (mod 20) が必要十分である。
これで >>168 の予想は証明された。
364 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 14:10:05 ]
ttp://arxiv.org/abs/math.NT/0606547
Representing primes as x^2 + 5y^2 : an inductive proof that Euler missed
によると、Cox の Primes of the forms x^2 + ny^2 という本に >>168 の予想に関連した歴史が書いてあるそうである。
上記の論文の前書きによると(それは Cox からの引用)、
Fermat は以下の予想をした (1) それぞれ ≡ 3, 7 mod 20 となる二つの素数の積は x^2 + 5y^2 と 書ける。
Euler は、以下の二つの予想をしたが証明は出来なかった。 (2) p ≡ 1, 9 mod 20 となる素数 p は p = x^2 + 5y^2 と書ける。
(3) p ≡ 3, 7 mod 20 となる素数 p に対して 2p = x^2 + 5y^2と書ける。
Lagrange と Legendre は上記の問題を解くため2次形式と種の理論を 展開して (2) と次の (4) を証明した
(4) p ≡ 3, 7 mod 20 となる素数は p = 2x^2 + 2xy + 3y^2 と書ける。
すると (1) と (3) は (2) と (4) と次の恒等式から得られる。
(2x^2 + 2xy + 3y^2)(2a^2 + 2ab + 3b^2) = (2ax + bx + ay + 3by)^2 + 5(bx − ay)^2
2(2x^2 + 2xy + 3y^2) = (2x + y)^2 + 5y^2
365 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 14:18:30 ]
>>364 の (4) の2次形式 2x^2 + 2xy + 3y^2 は >>358 に出て きている。
366 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 15:06:23 ]
問題 >>364 の (1) を証明せよ。
367 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 17:59:43 ]
定義 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を(有理整数係数の)2次形式とする。
k を有理整数とする。 不定方程式 k = ax^2 + bxy + cy^2 が有理整数解 (u, v) を 持つとする。
u と v が互いに素なとき (u, v) を k = f(x, y) の原始解と呼ぶ。
368 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 18:23:17 ]
命題(Gauss の 数論考究の art. 154) ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の2次形式とする。 k を有理整数で k = ax^2 + bxy + cy^2 が原始解(>>367)をもつなら D は mod 4k で平方剰余である。
証明 (p, q) を原始解とする。 k = ap^2 + bpr + cr^2 である。 p と q は互いに素だから ps - qr = 1 となる有理整数 s, r がある。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 に一次変換
x = pu + qv y = ru + sv
を施して f(pu + qv, ru + sv) = ku^2 + luv + mv^2 とする。
>>280 より k = ap^2 + bpr + cr^2 l = 2apq + b(ps + qr) + 2crs m = aq^2 + bqs + cs^2 である。
>>281 より D = l^2 - 4km だから
l^2 ≡ D (mod 4k) となり D は mod 4k で平方剰余である。 証明終
369 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 20:50:55 ]
訂正
>>368 >(p, q) を原始解とする。 >k = ap^2 + bpr + cr^2 である。 >p と q は互いに素だから ps - qr = 1 となる有理整数 s, r がある。
>(p, r) を原始解とする。 >k = ap^2 + bpr + cr^2 である。 >p と r は互いに素だから ps - qr = 1 となる有理整数 s, q がある。
370 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 21:26:30 ]
命題 2次形式 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 と g(u, v) = ku^2 + luv + mv^2 があり、
変換
x = pu + qv y = ru + sv
により
g(u, v) = f(pu + qv, ru + sv)
とする。
ここで p, q, r, s は ps - qr = 1 となる有理整数である。
有理整数 M に対して
M = ax^2 + bxy + cy^2 が有理整数解 (X, Y) をもつことと M = ku^2 + luv + mv^2 が有理整数解 (U, V) をもつことは同値である。
ここで
X = pU + qV Y = rU + sV
である。
証明 明らかである。
371 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/24(日) 21:33:44 ]
>>370 において、M = k とすると、
k = ku^2 + luv + mv^2 は自明な解 (1, 0) を持つ。 よって >>370 より
k = ax^2 + bxy + cy^2 は解 (p, r) を持つ。
これが >>368 の証明で使った原理である。
372 名前:132人目の素数さん [2006/12/25(月) 11:55:12 ]
http://science4.2ch.net/test/read.cgi/math/1162122603/916 です。 あちらのスレでは回答が部分的にも全く得られないままに終了してしまいました。 こちらでも同じ質問をして良いでしょうか?
373 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/25(月) 13:19:33 ]
>372無 は、ひょっとして無限次Gaolis群の話だろうか? あの手の群を定義から直接計算するのは不可能に近いんじゃなかろうか? TateとかSerreを見ると、「Golois Cohomologyを計算して その副産物として得られる」という論法が多いようだが?
374 名前:132人目の素数さん [2006/12/25(月) 13:40:25 ]
>>373 あちらでも紹介した参考書以外に Edited by Y, Ihara, K.Ribet, J-. P. Serre, Galois Groups over Q, Springer などを仮定した上でもダメでしょうか? ここには有名な Mazur のガロア表現の変形の論文も載っています。
375 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/25(月) 13:49:20 ]
>>373 typo多すぎだろww常識的に考えて
376 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/25(月) 13:52:30 ]
よくあること。
377 名前:132人目の素数さん [2006/12/25(月) 20:43:09 ]
>>375
イタイな 2chでどうでもいいtypo指摘とは
378 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/25(月) 21:28:09 ]
>>345
Scharlau の本も n 次2次形式について述べたもので2元2次形式に 特化したものではないようです。
2元2次形式に特化したものとしては Buell(1989) があります。 この本の前書きによると Mathews の Theory of numbers(1896) を参考にしたそうです。1896 というのはタイプミスではありません。 つまり約100年前の本です。
Flath の Introduction to Number Theory(1988) は2元2次形式に 関してよく書けているそうです。
379 名前:132人目の素数さん [2006/12/25(月) 21:32:10 ]
しかしKummerのおっちゃんよ、今の世の中Kummerのやった類体論とかはもう 完成されてるとみなされて岩澤理論が絶好調なんだよ。 Kummerのむかしの研究をフォローするのをやめてBSD予想とか解いたら?
380 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/26(火) 09:12:12 ]
>>379 >今の世の中Kummerのやった類体論とかはもう完成されてるとみなされて
類体論をやったのは Kummer ではないです。 それに、類体論を未完成だと言ってる人は、私の知る限りいないです。 このスレは、50年以上前に完成された古い理論についてのスレだと 前スレに断ってあります。
前スレ3: 780 :Kummer ◆g2BU0D6YN2 :2006/11/10(金) 09:36:08 勘違いしてる人がいるかもしれないので言っておくが、 このシリ-ズで扱う予定の題材は約50年前には完成されていたもの。 ほとんどは100年以上前に発見されていた。 この場で俺自身の研究なり独自の視点を発表しようなんて考えは まったくない。
独自性があるとしたらアプローチの仕方、題材の取捨選択など。 わずかだがオリジナルな証明もあるかもしれない(実際、既にある)。
なお、このシリ-ズを書く一番の理由は俺自身の勉強のため。 他の理由もあるが、それらは2次的なもの。
381 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/26(火) 14:35:10 ]
>380 > 類体論を未完成だと言ってる 揚げ足取りじゃなくて、Langlands Programに Non-Abelian Calss Field Theory ってのがなかったっけ?
382 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/26(火) 16:33:14 ]
>>381
通常、類体論といえば数体のアーベル拡大体論のことをさす。 そしてこの意味の類体論は完成しています。
非可換の場合への拡張を話題にするときは必ず「非可換」をつけます。
っていうか、そんなことより問題解いてよ。 なんか話がすぐ舞い上がるから困るんだけど。 地道に行きましょうよ。
383 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/26(火) 19:16:37 ]
訂正
>>382 >通常、類体論といえば数体のアーベル拡大体論のことをさす。
通常、類体論といえば大域体と局所体のアーベル拡大についての理論をさす。
384 名前:天ノ川 創 [2006/12/26(火) 19:18:52 ]
愛
385 名前:132人目の素数さん [2006/12/26(火) 20:43:52 ]
>>Kummerさん
うちの大学の教授も代数的数論をやってるみたいだけど、 論文はさっぱりわかりません。大体でいいので、こういう論文を読めるまでには どういった知識が必要か教えていただけませんか?
http://www.math.ucsb.edu/~agboola/papers/papers.html
特に一番最近の論文について知りたいのですが。
ちなみに私はMasterの学生で、初等数論の知識を少し知ってるくらい。
386 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/26(火) 21:16:18 ]
前にも書きましたが、基本的に質問はこのスレで私が書いたものに 対してのみとさせていただいてます。 ただし、書いたものといっても雑談に類するものは除きます。
387 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2006/12/27(水) 11:51:57 ]
>374 此処↓で待っていたら? Kさんが来るかもしれないよ。 h ttp://science4.2ch.net/test/read.cgi/math/1167112175/l50
388 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/28(木) 21:10:42 ]
ここで、今までにも何度か引用 (例えば >>199, >>214) した G-集合 (G-set) についての基本を整理しておく。
定義 G を群とし S を集合とする。 G から Aut(S) への準同型 f : G → Aut(S) が与えられたとき、 S を 左 G-集合と呼ぶ。 このとき G は S に左から作用するという。 ここで Aut(S) は S の自己全単射のなす群である。
------------------------------------------------------
g ∈ G と x ∈ S に対して gx = f(g)(x) と定義することにより 写像 G × S → S が得られる。 このとき、以下の (1) と (2) が成り立つ。
(1) ex = e が任意の x ∈ S に対して成り立つ。 ここで e は G の単位元である。
(2) g(hx) = (gh)x が任意の g, h ∈ G と x ∈ S に対して成り立つ。
逆に (1) と (2) を満たす写像 G × S → S が与えられれば、 S は、左 G-集合となる。
G から Aut(S)^op への準同型 f : G → Aut(S)^op が与えられたとき、 S を 右 G-集合と呼ぶ。 ここで Aut(S)^op は Aut(S) の乗法の順序を反対に定義して得られる 群である。
通常、G-集合という場合、特に断らなければ左 G-集合を意味する。
389 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/28(木) 21:42:43 ]
定義 G を群とし S を左 G-集合 (>>388) とする。
任意の x, y ∈ S に対して gx = y となる g ∈ G があるとき G は S に推移的に作用するという。
互いに相異なる n 個の S の元 x_1, ..., x_n と 互いに相異なる n 個の S の元 y_1, ..., y_n に対して
g(x_i) = y_i が各 i, 1 ≦ i ≦ n で成り立つような g ∈ G があるとき、
G は S に n-推移的に作用するという。
そのような g が唯一個だけ存在するとき G は、n - 強推移的に 作用するという。
標準射 (>>388) G → Aut(S) が単射のとき G は S に 忠実(または効果的)に作用するという。
x ∈ S に対して gx = x なら g = e となるとき G は S に自由に作用するという。
G が S に推移的かつ自由に作用するとき、G は正則に作用するという。 これは 任意の x, y ∈ S に対して gx = y となる g ∈ G が 唯一個だけ存在することと同値である。 このとき S は G の主等質空間とみなせる。
390 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/28(木) 21:53:45 ]
定義 G を群とし S を左 G-集合 (>>388) とする。
x, y ∈ S に対して gx = y となる g ∈ G があるとき x と y は同値と定義とすることにより S の同値関係が得られる。 この同値類を左 G-集合 S の軌道とよぶ。
x ∈ S に対して、x を含む軌道を x の軌道という。
x の軌道は { gx ; g ∈ G } である。
S の軌道全体の集合を S/G と書き、S の G の作用による商集合と呼ぶ。 S/G は、また軌道空間ともいう。
391 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/28(木) 21:59:28 ]
定義 G を群とし S を左 G-集合 (>>388) とする。
S の部分集合 T に対して GT = {gx ; g ∈ G, x ∈ T } と書く。
GT ⊂ T のとき T を G-不変な部分集合という。
392 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/28(木) 22:07:06 ]
定義 G を群とし S を左 G-集合 (>>388) とする。
x ∈ S に対して G_x = { g ; gx = g } と書き、x の安定化部分群
(または等方性部分群)と呼ぶ。
393 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/28(木) 22:20:17 ]
命題 G を群とし S を左 G-集合 (>>388) とする。 x ∈ S に対して H を x の安定化部分群 (>>392) とする。
gH に gx を対応させることにより G の H による左剰余類の 集合 G/H から x の軌道 Gx への全単射が得られる。
証明 簡単だし良く知られているので省略。 証明を知らない読者には演習問題とする。
394 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/28(木) 22:25:55 ]
命題 G を群とし S を左 G-集合 (>>388) とする。 x ∈ S に対して H を x の安定化部分群 (>>392) とする。
[G : H] が有限なら |Gx| = [G : H] である。
さらに |H| が有限なら |Gx| = |G|/|H| である。
証明 >>393 から明らか。
395 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 00:27:14 ]
補題
G を群とし X を左 G-集合 (>>388) とする。
g ∈ G に対して X_g = { x ∈ X ; gx = x } とおき、
x ∈ X に対して G_x を x の安定化部分群 (>>392) とする。
このとき、Σ |X_g| = Σ |G_x| である。
ここで、左辺の g は全ての G の元 g を動き、 右辺の x は全ての X の元 x を動く。
証明
W = { (g, x) ∈ G × X ; gx = x } とおく。
写像 λ : W → G を λ(g, x) = g で、 写像 μ : W → X を μ(g, x) = x で、それぞれ定義する。
W = ∪ λ^(-1)(g) である。ここで g は G の元全体を動く。 g と h を G の異なる2元とすれば λ^(-1)(g) と λ^(-1)(h) は 交わらない。 したがって、
|W| = Σ |λ^(-1)(g)| である。
同様にして
|W| = Σ |μ^(-1)(x)| である。
一方、|λ^(-1)(g)| = |X_g| であり、|μ^(-1)(x)| = |G_x| である。
よって |W| = Σ |X_g| = Σ |G_x| である。 証明終
396 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 00:31:27 ]
訂正
>>395 >G を群とし X を左 G-集合 (>>388) とする。
G を群とし X を左 G-集合 (>>388) とする。 さらに G と X は有限集合とする。
397 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 00:57:47 ]
命題(Burnside の補題) G を群とし X を左 G-集合 (>>388) とする。 さらに G と X は有限集合とする。 このとき
|X/G| = (1/|G|)Σ|X_g|
となる。
ここで、X/G は S の軌道空間 (>>390) であり、
右辺の和は G の元 g 全体を動き、
X_g = { x ∈ X ; gx = x } である。
証明 >>395 より。
Σ |X_g| = Σ |G_x|
一方、>>394 より |G_x| = |G|/|Gx| よって
Σ |X_g| = Σ |G|/|Gx|
(1/|G|)Σ |X_g| = Σ 1/|Gx|
一方、Σ 1/|Gx| = Σ (Σ (1/|α|))
ここで右辺の外側の和は G の軌道(>>390) α 全体を動き、 内側の和は α の元 x 全体を動く。 よって、
Σ (Σ (1/|α|)) = Σ |α|(1/|α|) = Σ 1 = |X/G| である。 証明終
398 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 01:00:34 ]
訂正
>>397 >ここで、X/G は S の軌道空間 (>>390) であり、
ここで、X/G は X の軌道空間 (>>390) であり、
399 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 01:18:21 ]
定義 X と Y を G-集合 (>>388) とする。
X から Y への写像 f : X → Y があり、 f(σx) = σ(f(x)) が任意の σ ∈ G と任意の x ∈ X に対して 成り立つとき f を G-集合としての射という。
さらに G-集合としての射 g : Y → X があり gf = 1 かつ fg = 1 となるとき f は同型射と呼ぶ。
このとき X と Y は G-集合として同型であるという。
400 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 01:19:03 ]
>>388 以降の G-集合に関する記述は 英語版 Wikipedia の記事 Group action を参考にした。
401 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 04:46:16 ]
判別式が平方数でない2次形式 (a, b, c) (この記法に関しては >>328 を参照) 全体の集合を Ω とする。
ここで平方数とは集合 { x^2 ; x ∈ Z } = { 0, 1, 4, 9, ... }
の元のことである。
したがって (a, b, c) ∈ Ω なら b^2 - 4ac ≠ 0 であり、
ac ≠ 0 である。
(a, b, c) ∈ Ω と σ = (p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) に対して、 (a, b, c)σ = (k, l, m) と定義する。
ここで、f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 とおいたとき、 ku^2 + luv + mv^2 = f(pu + qv, ru + sv) である。
即ち
k = ap^2 + bpr + cr^2 l = 2apq + b(ps + qr) + 2crs m = aq^2 + bqs + cs^2
である(>>280)。
402 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 05:03:40 ]
命題 >>401 の記法で f = (a, b, c) ∈ Ω、σ ∈ SL_2(Z)、τ ∈ SL_2(Z) に対して、 (fσ)τ = f(στ) である。
証明 2次形式 f = (a, b, c) に対称行列 M = (a, b/2)/(b/2, c) を 対応させる。
>>277 より fσ には (σ^t)Mσ が対応する。
よって (fσ)τ には (τ^t)(σ^t)Mστ が対応する。 (τ^t)(σ^t)Mστ = (στ)^tMστ だから fσ)τ = f(στ) である。
証明終
403 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 05:09:15 ]
>>401 の記法で f = (a, b, c) ∈ Ω と SL_2(Z) の単位元 e に対して、 fe= f だから >>402 より Ω は右 SL_2(Z)-集合(>>388) である。
404 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 01:32:39 ]
命題 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値 (>>293) かつ原始的 (>>279) な2次形式とする。 f に (-b + √D)/2a を対応させることにより、
判別式 D の正定値かつ原始的な2次形式と、複素上半平面にある 判別式 D の2次無理数(>>276)とは1対1に対応する。
証明 >>324 の証明と同様である。
405 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 02:12:00 ]
D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。
判別式 D の正定値かつ原始的な2次形式の集合を PF(D) と書く。 複素上半平面にある判別式 D の2次無理数の集合を HQ(D) と書く。
>>403, >>282, >>297 より PF(D) は、右 SL_2(Z)-集合(>>388) である。
>>286 より HQ(D) は、左 SL_2(Z)-集合(>>388)である。
写像 φ : PF(D) → HQ(D) を >>324 の証明と同様に定義する。
>>404 より φ は全単射である。
f ∈ PF(D) と σ = (p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) に対して
fσ = g、φ(f) = θ とおく。
>>325 と同様にして φ(g) = σ^(-1)θ
よって φ(fσ) = σ^(-1)φ(f) よって φ(fσ^(-1)) = σφ(f)
σf = fσ^(-1) と定義すれば PF(D) は、左 SL_2(Z)-集合になる。 上記から φ は 左 SL_2(Z)-集合としての同型射(>>399)である。
406 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 10:55:49 ]
判別式 D の正定値かつ原始的な2次形式の集合を PF(D) とする。 >>405 より PF(D) は 右 SL_2(Z)-集合(>>388) である。 軌道空間 (>>390) PF(D)/SL_2(Z) を F+(D) と書く。
複素上半平面にある判別式 D の2次無理数の集合を HQ(D) とする。 >>405 より HQ(D) は 左 SL_2(Z)-集合(>>388) である。 軌道空間 (>>390) HQ(D)/SL_2(Z) を H(D) と書く。
>>405 より PF(D) は左 SL_2(Z)-集合にもなる。 左 SL_2(Z)-集合としての PF(D) の軌道空間は、明らかに F+(D) と 一致する。
>>405 より φ : PF(D) → HQ(D) は、左 SL_2(Z)-集合としての 同型射である。
したがって、φ は全単射 F+(D) → H(D) を誘導する。
D が虚2次体の判別式と一致するとき、この写像は >>311 で定義した Ψ+ と一致する。
したがって、 D が虚2次体の判別式と一致しない場合も この写像を Ψ+ と書くことにする。
407 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:02:54 ]
>>320 と同様に次の定義をする。
定義 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値かつ原始的な 2次形式とする。
G を >>253 で定義した集合とする。 つまり
G = { z ∈ H ; -1/2 ≦ Re(z) < 1/2 かつ |z| ≧ 1 で
|z| = 1 のときは -1/2 ≦ Re(z) ≦ 0 }
(-b + √D)/2a が G に属すとき f(x, y) を簡約2次形式と呼ぶ。
408 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:06:32 ]
命題 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値かつ原始的な 2次形式とする。
f(x, y) が簡約2次形式 (>>407) であるためには
|b| ≦ a ≦ c であり、 |b| = a または a = c のときは b ≧ 0 となることが必要十分である。
409 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:15:30 ]
定義 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値かつ原始的な 2次形式とする。
[D] を >>253 で定義した集合とする。
つまり
[D] = { z ∈ H ; |Re(z)| ≦ 1/2 かつ |z| ≧ 1 } である。
(-b + √D)/2a が [D] に属すとき f(x, y) を広義の簡約2次形式と呼ぶ。
410 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:18:50 ]
>>334 と同様に次の命題が成り立つ。 証明もまったく同じである。
命題 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。
f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値かつ原始的な 2次形式とする。
f(x, y) が広義の簡約2次形式 (>>409) であるためには
|b| ≦ a ≦ c となることが必要十分である。
411 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:28:36 ]
明らかに、>>326, >>328, >>329, >>330, >>335, >>336, >>337 は、 D が負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) の場合もそのまま 成り立つ。
412 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:35:35 ]
>>339 と同様に次の命題が成り立つ。 証明もまったく同じである。
命題 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。
F+(D) (>>406) の元の個数は有限であり、判別式 D の簡約2次形式 (>>407) の個数と一致する。
413 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 23:16:51 ]
定義 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 h(D) = |F+(D)| と書く。
D が虚2次体 Q(√m) の判別式のときは、 >>314 より |F+(D)| は Q(√m) の類数と一致する。 したがって上の h(D) の定義は >>316 の定義の拡張になっている。
414 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 23:32:44 ]
D = -180 のとき h(D) を計算しよう。 >>413 より h(D) は判別式 D の簡約2次形式 (>>407) の個数と 一致する。
>>408 より (a, b. c) が簡約2次形式 (>>407) であるためには、
gcd(a, b, c) = 1 かつ、 |b| ≦ a ≦ c であり、 |b| = a または a = c のときは b ≧ 0 と なることが必要十分である。
>>341 と同様にして a ≦ √(|D|/3) である。
√(|D|/3) = √60 だから a ≦ 7 となる。 a > 0 だから 1 ≦ a ≦ 7 である。
4ac = b^2 + |D| = b^2 + 180
したがって、b は偶数でなければならない。
415 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 23:34:34 ]
>>414 の続き
0^2 + 180 = 4・3・3・5 2^2 + 180 = 184 = 4・46 = 4・2・23 4^2 + 180 = 196 = 4・49 = 4・7・7 6^2 + 216 = 4・54 = 4・2・3^3
より gcd(a, b, c) = 1 に注意して、
------------------------------------------------------------ a = 1 のとき |b| = 0、c = 45、(1, 0, 45) ------------------------------------------------------------ a = 2 のとき |b| = 2、c = 23、(2, 2, 23) ------------------------------------------------------------ a = 3 は無い ------------------------------------------------------------ a = 4 は無い ------------------------------------------------------------ a = 5 のとき |b| = 0、c = 9、(5, 0, 9) ------------------------------------------------------------ a = 6 は無い ------------------------------------------------------------ a = 7 のとき |b| = 4、c = 7、(7, 4, 7) ------------------------------------------------------------
よって h(D) = 4 である。
416 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 23:39:22 ]
訂正
>>415 >6^2 + 216 = 4・54 = 4・2・3^3
6^2 + 180 = 216 = 4・54 = 4・2・3^3
417 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 10:56:43 ]
補題 D を平方数でない有理整数とすると、D = (f^2)c と書ける。 ここで f は有理整数 f > 0 であり、 c は平方因子を持たない有理整数で、c ≠ 1 である。
証明 D の素因数分解を考えれば明らかである。
418 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 11:02:47 ]
命題 D を平方数でない有理整数で、D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 このとき、D = (f^2)d と書ける。 ここで f は有理整数 f > 0 であり d はある2次体 Q(√m) の 判別式である。
証明 D ≡ 0 (mod 4) なら、D/4 に >>417 を適用して D = 4(g^2)m となる。 ここで g は有理整数 g > 0 であり、 m ≠ 1 は平方因子を持たない有理整数である。
m ≡ 1, 2, 3 (mod 4) であるが m ≡ 1 (mod 4) なら m は2次体 Q(√m) の判別式である。 この場合、f = 2g, d = m とすればよい。
m ≡ 2, 3 (mod 4) なら、4m は2次体 Q(√m) の判別式である。 この場合、f = g, d = 4m とすればよい。
D ≡ 1 (mod 4) なら、D に >>417 を適用して D = (f^2)m となる。 f^2 ≡ 0 または 1 (mod 4) だが f^2 ≡ 0 (mod 4) なら D ≡ 0 (mod 4) となるから f^2 ≡ 1 (mod 4) である。 したがって D ≡ m (mod 4) となり、m ≡ 1 (mod 4) である。 よって m は 2次体 Q(√m) の判別式である。 証明終
419 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 11:28:44 ]
>>287 と同様のことを一般の2次の無理数の場合に考える。 θ を判別式 D の2次の無理数 (>>284) とする。
aθ^2 + bθ + c = 0 とする。 ここで a, b, c は有理整数で gcd(a, b, c) = 1 である。 さらに a > 0 とする。
D = b^2 - 4ac である。 D ≡ b^2 (mod 4) だから D ≡ 0 または 1 (mod 4) である。 D は勿論平方数ではない(平方数なら θ は有理数となる)。 よって >>418 より D = (f^2)d と書ける。 ここで f は有理整数 f > 0 であり d はある2次体 Q(√m) の 判別式である。
θ = (-b ± √D)/2a であるが θ = (-b + √D)/2a と仮定する。
a(aθ^2 + bθ + c) = a^2θ^2 + abθ + ac = 0 だから (aθ)^2 + b(aθ) + ac = 0
よって aθ は代数的整数である。 aθ = (-b + √D)/2 = (-b + f√d)/2 だから aθ ∈ Q(√m) である。
m ≡ 1 (mod 4) のとき (-b + √D)/2 = (-b - f + f(1 + √m))/2 = (-b - f)/2 + fω
m ≡ 2 (mod 4) または m ≡ 3 (mod 4) のとき (-b + √D)/2 = (-b + 2f√m)/2 = -b/2 + fω
いずれの場合でも aθ = r + fω の形である。 r = aθ - fω は有理数で代数的整数でもあるから、有理整数である (前スレ3の158より有理整数環は整閉である)。
420 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 11:33:45 ]
>>419 の続き
ここで R = [1, fω] を考える。 (fω)^2 = (f^2)ω^2 ⊂ (f^2)[1, ω] ⊂ [1, fω] よって (fω)R ⊂ R である。 よって RR ⊂ R である。 したがって R は Q(√m) の整数環 [1, ω] の部分環である。
421 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 11:38:32 ]
定義 2次体 Q(√m) の 部分環 R でその加法群が階数2の自由アーベル であるものを Q(√m) の整環 (order) と呼ぶ。
422 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 12:06:04 ]
命題 2次体 Q(√m) の整環 (>>421) は Q(√m) の整数環の部分環である。
証明 前スレ1の 505 から明らかだが、改めて証明する。
R を Q(√m) の整環とする。 R のアーベル群としての基底を α, β とする。 つまり R = [α, β] とする。 γ ∈ R なら
γα = aα + bβ γβ = cα + dβ
となる有理整数 a, b, c, d がある。
(γ - a)α - bβ = 0 -cα + (γ - d)β = 0
よって、係数の行列式は 0 である。 即ち (γ - a)(γ - d) - bc = 0
よって γ は代数的整数である。 よって γ は Q(√m) の整数環に含まれる。 証明終
423 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 12:34:13 ]
前スレ3の 988より R = [a, b + cω] と書ける。 ここで a > 0、c > 0 である。
1 ∈ R だから a = 1 である。 したがって、R = [1, b + cω] = [1, cω]
よって アーベル群としての剰余類群 [1, ω]/R の位数は c である。 c を R の導手 (conductor) という。
R の導手は、通常ドイツ語の fuhrer の頭文字をとって f で 表す場合が多い。
424 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 12:45:14 ]
定義 2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] に対して、 fω の判別式 (>>276) を R の判別式という。
425 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 12:50:01 ]
命題 2次体 Q(√m) の整環 R の判別式 (>>424) は (f^2)D である。 ここで f は R の導手 (>>423) であり、D は Q(√m) の判別式である。
証明 fω の判別式は (fω - fω ')^2 = (f^2)(ω - ω ')^2 = (f^2)D である。
証明終
426 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/03(水) 16:00:16 ]
2次体 Q(√m) の整環 (>>421) R = [1, fω] のイデアル論について述べる。 このスレの初めのほうで述べた整数環 Z[ω] のイデアル論と同様の部分が 多い。
補題 a, b, c, e, f を有理整数とし、a > 0, c > 0, f > 0 とする 2次体 Q(√m) において [a, b + cfω] = [a, e + cfω] であるためには b ≡ e (mod a) が必要十分である。
証明 >>34 の証明と同様。
427 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/03(水) 16:07:05 ]
命題 2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] の任意のイデアル I ≠ 0 は I = [a, b + cfω] と一意に書ける。 ここで a > 0, 0 ≦ b < a, c > 0 で a と b は c で割れる。
証明 I = [a, b + cfω], a > 0, 0 ≦ b < a, c > 0 と一意に書ける ことは >>14 の証明と同様である。
afω ∈ I だから a は c で割れる。
m ≡ 1 (mod 4) なら ω = (1 + √m)/2 であり、 ω^2 = ω - (1 - m)/4 である。
(b + cfω)fω = bfω + c(f^2)ω^2 = bfω + c(f^2)ω - c(f^2)(1 - m)/4 = (b + cf)fω - c(f^2)(1 - m)/4 ∈ I
よって b + cf ≡ 0 (mod c) となる。 よって b ≡ 0 (mod c) となる。
m ≡ 2 (mod 4) または m ≡ 3 (mod 4) なら、 ω = √m であり、 ω^2 = m である。 よって (b + cfω)fω = bfω + c(f^2)ω^2 = bfω + c(f^2)m ∈ I よって b ≡ 0 (mod c) となる。 証明終
428 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/03(水) 16:10:31 ]
定義 >>427 における a, b + cω をイデアル I の標準基底と呼ぶ。 ただし、必ずしも 0 ≦ b < a でなくてもよい。 この場合、>>426 より b は mod a で一意にきまる。
429 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/03(水) 16:14:57 ]
>>428 の訂正
定義 >>427 における a, b + cfω を R のイデアル I の標準基底と呼ぶ。 ただし、必ずしも 0 ≦ b < a でなくてもよい。 この場合、>>426 より b は mod a で一意にきまる。
430 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/03(水) 16:20:21 ]
定義 I = [a, b + cfω] を2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] の イデアル I の標準基底 (>>429) による表示とする。 c = 1 のとき I を原始イデアルという。
431 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/11(木) 16:48:33 ]
2次体 Q(√m) の整数環 Z[ω] は、Q(√m) のすべての整環を含む 最大の整環である。 したがって、Z[ω] を Q(√m) の主整環または極大整環とも言う。
432 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/11(木) 17:20:17 ]
2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] のイデアル論と主整環 Z[ω] の イデアル論との関連を述べる。
433 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/12(金) 12:50:20 ]
命題 A を整域とし、K をその商体とする。 A の K における整閉包を B とする。 S を A の積閉部分集合とする。
このとき、B_S は A_S の K における整閉包である。
証明 A_S の K における整閉包を C とする。
x ∈ C とし、 x^n + (a_1/s)x^(n-1) + ... + (a_(n-1)/s)x + a_n/s = 0 とする。 ここで、各 a_i ∈ A で, s ∈ S
この等式の両辺に s^n を掛けて、
(sx)^n + a_1(sx)^(n-1) + ... + a_(n-1)s^(n-2)(sx) + (a_n)s^(n-1) = 0
となる。よって、sx は A 上整である。 よって、sx ∈ B である。 よって、x ∈ B_S である。
以上から C ⊂ B_S である。
一方、前スレ1の 514 より B_S は A_S 上整である。 よって B_S ⊂ C である。 証明終
434 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/12(金) 12:58:53 ]
B を環、A をその部分環とする。
B を A-加群とみなし、(A : B) = {a ∈ A; aB ⊂ A} を考える
(前スレ3の 583)。
(A : B) は A のイデアルである。
S を A の積閉部分集合とする。 B が A-加群として有限生成なら 前スレ3の 586 より (A : B)_S = (A_S : B_S) である。
435 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/12(金) 16:04:40 ]
命題 A を整域とし、K をその商体とする。 A の K における整閉包を B とする。 I = (A : B) とおく(>>434)。
A の素イデアル P に対して A_P が整閉であるためには、 I ⊂ P とならないことが必要十分である。
証明 S = A - P とおく。S は A の積閉部分集合である。 B_S を B_P と書くことにする。
>>433 より B_P は A_P の K における整閉包である。 従って、A_P が整閉であるためには A_P = B_P が必要十分である。
一方、A_P = B_P であるためには (A_P : B_P) = A_P が 必要十分である。 >>434 より (A : B)_P = (A_P : B_P) であるから、 これは、IA_P = A_P と同値である。 証明終
436 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/12(金) 17:35:13 ]
>>435 の訂正
命題 A を整域とし、K をその商体とする。 A の K における整閉包を B とする。 B は A-加群として有限生成とする。
I = (A : B) とおく(>>434)。
A の素イデアル P に対して A_P が整閉であるためには、 I ⊂ P とならないことが必要十分である。
証明 S = A - P とおく。S は A の積閉部分集合である。 B_S を B_P と書くことにする。
>>433 より B_P は A_P の K における整閉包である。 従って、A_P が整閉であるためには A_P = B_P が必要十分である。
一方、A_P = B_P であるためには (A_P : B_P) = A_P が 必要十分である。 >>434 より (A : B)_P = (A_P : B_P) であるから、 これは、IA_P = A_P と同値である。 証明終
437 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/13(土) 15:33:51 ]
命題 2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] に対して (R : Z[ω]) = fZ[ω] である。
証明 α ∈ (R : Z[ω]) とすると、定義(>>434)から α ∈ R で αZ[ω] ⊂ R である。
α = a + bfω とする。ここで、a, b は有理整数である。 αω = aω + bfω^2 ∈ R である。
m ≡ 1 (mod 4) なら ω = (1 + √m)/2 であり、 ω^2 = ω - (1 - m)/4 である。
αω = aω + bfω^2 = (a + bf)ω - bf(1 - m)/4 よって a + bf ≡ 0 (mod f) a ≡ 0 (mod f) よって α ∈ fZ[ω]
m ≡ 2 (mod 4) または m ≡ 3 (mod 4) なら、 ω = √m であり、 ω^2 = m である。
αω = aω + bfω^2 = aω + bfm よって a ≡ 0 (mod f) よってα ∈ fZ[ω]
以上から (R : Z[ω]) ⊂ fZ[ω] である。
fZ[ω] ⊂ (R : Z[ω]) は明らかである。 証明終
438 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/13(土) 16:00:20 ]
定義 I ≠ 0 を2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] のイデアルとする。 I = [a, b + cfω] を I の標準基底 (>>429) による表示とすると、 |R/I| = ac である。 |R/I| を I のノルム(または絶対ノルム)と呼び、N(I) と書く。
439 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/13(土) 16:06:48 ]
命題 2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] の 0 でない素イデアルは 極大イデアルである。
証明 P を R の 0 でない素イデアルとする。P は標準基底を持つから R/P は有限整域である(>>438)。有限整域は体であるから P は極大イデアルである。 証明終
440 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/13(土) 16:17:00 ]
命題 R を2次体 Q(√m) の整環とし、P ≠ 0 を R の素イデアルとする。 R_P は Krull次元(前スレ1の379)が1のネーター局所整域である。
証明 R の任意の非零イデアルは標準基底をもつから R はネーター整域で ある。 よって >>439 より本命題の主張は明らかである。
