「RPGツクールDante98」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
RPGツクールDante98 - (2015/12/28 (月) 13:48:25) の編集履歴(バックアップ)
「修正依頼」に修正依頼が出ています。加筆できる方は修正をお願いします。
本項目ではPC用ソフト『RPGツクールDANTE98』とその関連作品の紹介をしています。
RPGツクール(PC-98シリーズ)
【あーるぴーじーつくーる(ぴーしーきゅうはちしりーず)】
概要
-
二十年にわたり使い続けられ、様々な作品を生み出し続けるゲーム制作ソフト『RPGツクール』。PC-98版2作はその初期作である。
-
基本は「ウルティマ風の移動+ウィザードリィ風の戦闘」と言う「ドラクエ式」である。
-
PC98版以前のアスキー製コントラクションソフトは主にMSXで展開されていたが、DANTE98登場以後、当時もっとも普及率の高かったPCで動いたこと、そして何よりその柔軟かつ分かりやすい作成方法により徐々に知名度を上げていき、95年のSFC版の登場、それにあわせて開催された賞金1000万円の大規模なコンテスト「アスキー・エンターテイメントソフトウェアコンテスト(以下「Aコン」)」で一気に人口に膾炙するに至った。
-
PC98版、特に初代DANTE98は制限が非常に多かったものの、「マップチップを並べてマップを作り、そこに「イベント」と呼ばれるひと塊の命令群を設置する」という作りは現在に至るまで一切変更が無く、RPGツクールというソフトの独創性が伺われる。
-
なお、この項目では『RPGツクールDANTE98』、および続編の『RPGツクールDANTE98II』について言及する。『DANTE98』はMSXの『RPGコントラクションツールDANTE』の移植版だが、MSX版については極端に情報が不足しているため、便宜上DANTE98のシステムはすべてそれ独自の要素として記述する。MSX版をお持ちの方は情報の提供をお願いしたい。
RPGツクールDANTE98
【あーるぴーじーつくーる だんてきゅうはち】
ジャンル
|
RPG製作ソフト
|
|
対応機種
|
PC-9801
|
発売・開発元
|
アスキー
|
発売日
|
1992年12月19日
|
定価
|
5,340円
|
判定
|
なし
|
仕様と制限
-
スクロール機能はない。初代ゼルダの伝説のように、画面端に触れると次の画面に切り替わる方式。
-
イベントで作られたキャラクターはこちらから話しかけるか、歩かせる命令をしない限りずっと正面を向いたまま。「ランダムで移動する」を選んでもカニ歩きである。
-
変数はない。従ってランダムな結果を出力することは一切出来ない。
-
フラグに使うイベントスイッチは200個まで。
-
対話式の条件分岐は「はい/いいえ」のみ。
-
属性の概念がない。魔法は個別に効く・効かないの設定が出来るだけ。状態異常も同様で、耐性を細かく設定することはできない。
-
負け戦闘イベントを作ることが出来ない。逃げてもストーリーが進行するようにすることは出来るが、戦闘に負けると強制的にゲームオーバーである。
-
戦闘BGMを正規の仕様で切り替えることが出来ない。説明書には載っていないが、イベント戦闘の直前にBGMを鳴らす命令を実行することによって切り替えることは可能。
-
PC版ツクールとしては容量制限がきつく、フロッピーディスク2枚分までである。これは、当時のPC98シリーズがフロッピードライブを標準で2基搭載していたため。
反面、ハードディスクは普及はしていたが、必ずしも搭載されているとは限らなかった。
-
自作のグラフィックや音楽を使うこともできたが、自作素材は元のデータに「追加」するのではなく元のデータと「入れ替え」をすることによって行われる。
すなわち、2体敵キャラのグラフィックを追加しようとすると、デフォルトの敵グラフィックを2体消さなければならない。
-
マップチップの通行可能、不可能を設定することができない。通行可能な自作マップチップを使う場合には、デフォルトのマップチップの中の同じく通行可能なもの一つと入れ替える必要がある。
これをミスると、透明な壁が出来たり、歩いて渡れる海が出現することになる。
-
変わったシステムとして、イベントスイッチによる扉の開閉フラグとは別に、イベントとして「扉」が設定されている。鍵を四種類とそれに対応する扉をこれも四種類設定することが出来る。
対応する鍵を持っていれば扉が開くしかけ。ドラクエの「魔法の鍵」システムをワンタッチで再現したかったのだろうが、あまりにも汎用性に欠けていたためほぼ誰も使わなかった。
評価点
-
初期作にして既に完成されたインターフェイス
-
概要にも書いたが、これ以降のRPGツクールの歴史で機能の追加・変更・削除は多々あれど、基本的な作り方は現在に至るまで一切変わっていない。
他のジャンルのツクールはシリーズ化されたものであってもインターフェイスの大幅な刷新(それも使いづらい方向で)を繰り返して混乱を招いたりして、RPGツクールほど長期にわたって展開されるシリーズとして定着することはついになかった。
-
今作はメニュー画面から各項目を選択して設定する、作成に関するメニューは6つで構成する上で必要な物が分けられているのでとても解りやすい。
-
分かりやすさと自由度の両立
-
後述するが、これはユーザーの努力に寄るところも大きい。何の工夫もなければ、このソフトは「FC時代のドラクエのクローンゲームを作れるソフト」である。
しかし、実際には柔軟なイベントコマンドにより、制作者の意図をはるかに超えた様々な作品作りがなされるようになった。
-
他のツクールでは、自由度を重視しようとした結果「プログラム的な煩雑さ」や「抽象的な概念を理解する手間」といった点がユーザーの負担になり、「プログラミング知識が乏しくても比較的簡単にできる」というシリーズの長所を潰してしまっていたり、その割には各所にツクール的な制約があって制作上悩まされることが多かったりと、一兎も追えない結果になる例が跡を絶たない。
RPGツクールのシリーズ作でも、特に家庭用は分かりやすさと自由度の両立という点において迷走を繰り返しているが。
-
DANTE98のマニュアルは、少しでも抽象的な理解が必要な概念は噛んで含めるような説明をしており、説明書周りの丁寧さも敷居を下げている理由の一つ。
DANTE98製ゲームについて
-
発表の主な場所は、雑誌「ログイン」で開催されていたコンテストか、そこから分離独立した「ログイン ソフコン」という雑誌のコンテストコーナー「コンテストパーク」であった。
まだ家庭におけるインターネットなど影も形もない時代であり、パソコン通信の通信速度も今とは比べものにならないほど遅い時代である。2MBの容量は通信回線に乗せるにはあまりにも重かった。
-
上記の通り、初期作だけあって出来ないことの方が多いツールである。しかし、その制限の中で様々な工夫を凝らした作品が数多く作られた。例を挙げると……
-
会話が始まると、マップチップやキャラクターチップに顔グラフィックを描いた「会話専用マップ」に飛ばすことによって実現する「顔グラフィック付き会話シーン」
-
マップチップで絵を描き、透明な主人公を取り囲んだ透明なイベントで入力を判定し処理する「コマンド選択式アドベンチャーゲーム」
-
透明な主人公の周りを「攻撃」「防御」等のコマンドのイベントで取り囲んで再現した「サイドビュー戦闘」
-
壁の絵が描かれたイベントを操作することにより3Dダンジョンでの壁の有無の表示を再現した「3DダンジョンRPG」
-
イベントの4ページ目(つまり、最優先で実行)に「話しかけたとき→このイベントを消す」、3ページ目に「イベントに触れたとき→主人公にダメージ」という設定により作られた「アクションRPG」
-
大きさの違う主人公グラフィックを3種類用意し、歩く度にそれらを切り替える「奥行きのあるマップシステム」
-
フロッピー2枚分までという容量のほか、イベントスイッチの不足にも悩まされることが多い。そのため、大作を作ろうとする制作者は前編・後編に分けて作ることも多かった。
FDという安価な媒体のおかげでできた方法だが、前編が受賞し賞金を獲得したものの、後編が一向に投稿されないという事態が続出した。
「前編」と銘打たれていないにもかかわらずストーリーが未完で終わっているものは特に危険で、そのような作品の完結編が投稿されたことは一度もない。
-
結局、コンテストパークの主催者が、「分割して投稿する場合には前編後編をそろえて投稿すること。前編しか無い場合は未完成品しか作れなかった言い訳と見なす」と宣言し、ようやく解決した。
-
現在でこそ、創作活動のカジュアル化や、「中二病」「エタる」といった概念の普及により、ゲームを進んで作りたがる者など大半が創作活動の楽しい部分しか見ておらず、自己顕示欲と創作衝動の赴くまま無計画に突き進んで行き詰まってしまうケースばかりだということが知れ渡っているが、ゲームを作るということの敷居が遙かに高かった当時、主催者がそれを見抜けなかったのも無理のないことであった。
-
本作を用いた有名な作品としては、ソフコンで最優秀賞を受賞し、後に商業作品化も果たした『コープスパーティー』などが挙げられる。
総評
-
「道具はそれを使う人次第」という言葉を体現したソフトである。
用意された素材やイベントコマンドからして、このソフトは前述の通り「FC時代のドラクエのクローンゲームを作れるソフト」であり、また一部機能は初代ドラクエにも劣っている。
しかし、ツクラー達の創意工夫により、非常に多様な作品作りがなされるようになった。このソフトが使いやすさと応用が利かせやすい機能を有していた事と作品発表のためのコミュニティを、製作会社が積極的に提供したことも大きい。
-
現在でも探せば手に入る作品は多く、DANTE98作品を遊ぶための公認エミュレーターといったものも存在している。興味を持たれた方は、是非この不便極まるツールに挑んだ先人達の創意工夫を体感してほしい。
-
とは言え、その創意工夫は「ツクールで実現したのが凄い」というレベルに留まり、ゲーム性に関わる部分で独自性を発揮することは、この時点ではほとんど誰も出来なかった。
「ゲーム制作ごっこが出来るゲームソフト」から、簡単なゲームから本格的なゲームまで作れる、まさしく「制作ツール」としてRPGツクールが発展していくために、ツクールの歴史は次の『RPGツクールDANTE98II』というステップを踏むことになる。
-
一方、今作はコンシューマー版ツクールの雛形として用いられる事となり、「手軽に作れるコンシューマー版」と「本格的な物が作れるPC版」と言う住み分けがされるようになった。
RPGツクール DANTE98 II
【あーるぴーじーつくーる だんてきゅうはち つー】
発売日
|
1996年7月
|
|
定価
|
5,500円
|
判定
|
なし
|
仕様と制限
-
スクロール機能がついた。これにより、主人公キャラは常に画面の中心に置かれるようになった。
-
その代わり、画面を固定することが出来なくなっている。
-
NPCが進行方向を向くようになった。
-
容量制限の緩和。マップが1000枚まで作れるようになり、マップ1枚ごとに容量制限がある、という仕組みに変わった。普通に使っていて使い切ることはまず無い。
HDDインストールが前提のソフトになり、作ったゲームを配布する際には、作った容量分のFDを用意して分割コピーする必要がある。ゲームを遊ぶ際にもHDDコピー必須。
-
変数機能初登場。ツクール最大の革命的進化といっても過言ではない。
乱数を出力してじゃんけんやサイコロを作ることも、HPやお金の増減とは違った数字データとして管理することも、1ポイント単位のフラグスイッチとしてより複雑にイベントを分岐させることも、思いのまま。
-
変数に格納できる数字は99までである。
-
変数は99番までの通し番号で管理され、独自の名前をつけることは出来ず、検索機能もない。メモを確実に取っていかないと、あっという間にスパゲティコードの出来上がりである。
-
スイッチも999個まで拡張。
足りないから分割して投稿するが後編を制作するとは言っていないという戯れ言が完全に封じられるようになった。
-
対話式の条件分岐は、はい/いいえの他に、自由に文章を設定できる選択肢を4つまで作れるようになった。
-
複数のイベントを同時に動かせるようになった。これにより、巨大なキャラクターをアニメーションさせることが可能。
-
デフォルト素材とは別に作成したグラフィックを取り込むための枠が用意され、デフォルト素材を消さなくてもよくなった。
-
マップチップは個別に通行可能・不可能の設定が出来るようになった。ほかに、下に潜る、特定方向にだけ通行可能の設定も出来るようになっている。
-
負け戦闘イベントが作れるようになった。
-
ゲーム性に関わる細かい設定項目の追加
-
属性の概念の追加。
-
魔法や状態異常の耐性を四段階で設定できるようになった。
-
プレイヤーキャラのステータスを、初期値と成長数の二つに分けて設定できるようになった。
-
エンカウント率の設定を大まかにできるようになった。
-
戦闘やステータス画面のメッセージを変更できるようになった。
-
タイマー機能は無い。しかし、イベントの「特定の方向に移動」機能の性質を利用した疑似タイマーシステムが、ユーザーの手で開発されるようになった。カウントを取ることは出来ないが。
-
ピクチャー表示機能追加。
-
デフォルト戦闘の処理スピード低下や、キーボードのzキーで決定、xキーでキャンセルが出来なくなったなど、明らかに劣化した部分もある。
評価点
-
前作の不満点をほぼ完璧に解消したうえにさらに便利な機能を盛り込んだ
-
変数機能により、ゲーム性に関わる部分まで(工夫次第で)深く作り込むことが可能になり、本格的な独自戦闘を制作できるようになった。
本作リリース直後に派手な独自戦闘システムを持った作品がコンテストパークで受賞しており(後述)、「ここまで出来るのか!」と驚愕したツクラーは多かった。
-
大迷走を繰り返した家庭用と違って、PC版のRPGツクールが比較的にせよ安定してシリーズ展開しているのは、この作品がシリーズの方向性を明確にしたことによる部分が大きい。
作者(後述)が元々ツクールのコミュニティの出身であり、ユーザーが求めるものをよく理解していたためであろう。
DANTE98IIを取り巻く環境について
-
『DANTE98II』という名前のついたソフト自体は93年ごろから発表されていたが、開発は遅れに遅れ、最終的に96年6月まで発売はずれこんでしまう。
当初制作されていたものは一度完全に破棄されたようで、最終的に第一回Aコンのオリジナルプログラム部門受賞者である尾島陽児がソフコンに投稿したプログラムを製品化することになった。
-
MSXにも『DANTE2』というソフトは存在しているが、こちらは『イース』型アクションRPG制作ツールであり、本作とは無関係である。
-
「ソフコン」誌上にて、ほとんどリリース直後と言っていい時期にDANTE98II製ゲームが受賞していた。
使用可能なキャラクターチップ数の多さを生かしたド派手なアニメーションに、変数を駆使したサイドビュー独自戦闘と、DANTE98IIの性能を見せつける作品であった。
-
DANTE98II発売から一ヶ月後という、製作期間を考えると明らかにおかしい時期での受賞であり、編集部からの依頼によって作られたものと思われる。事実上のサンプルゲームの一つと考えてもいいだろう。
-
発売時期はすでにWindows 95ブームの後で、PC98が縮小を始めたころであり、さらに発売からわずか半年でRPGツクール95が登場、さらに「ソフコン」が休刊するなど、完成度とは裏腹にとりまく環境は逆風ばかりであった。
-
しかし、ツクール95はDANTE98IIの続編というわけではなく、どちらかというとDANTE98の移植版であり、演出系の機能は強化されているものの変数機能がない。
また、イベント一つにつきファイルを一つ生成する、ゲームを遊ぶ際のマウスオペレーションが蛇足、セーブ機能もWindowsのデフォルトのファイルシステムを利用するためわざわざ保管場所とファイル名を決めなければならないなどインターフェイスの練り込み不足が多く、遊びづらい面があった。
そのため、システムに凝りたいツクラーは好んでDANTE98IIを使用し、かなり後までDANTE98II製ゲームは作られ続けることになる。
-
ところが、やがてNECがPC98市場から撤退し、DANTE98IIを使用する環境を維持することが困難になってくる。
ツクラー達は「ツクール95では機能的に物足りないが、DANTE98IIでは遊ぶことが可能な人が年々減り続ける」というジレンマに悩まされることになった。
このことは、結局RPGツクール2000の登場により、期待を大きく上回る形で解消されることになるのだが。
-
RPGツクール2000は、DANTE98IIの路線を継承しつつ全ての機能を大幅に拡張させた作品であり、DANTE98IIに出来て2000に出来ないことはほぼ存在しない。
2000の登場によりDANTE98IIはその役割を終えることとなった。
総評
-
リリース時期には恵まれなかったものの、PC版ツクールの方向性を決定づけた歴史的作品。…だが、いかんせん発売タイミングが悪く、悲しいくらいに知名度がない。
-
機能面では、やはり「変数機能」という大発明が出色。プログラミングの世界では常識的な概念ではあるものの、それを中学校の数学を知っていれば理解できる範囲に落とし込んだセンスはただごとではない。
-
たとえば、97年にリリースされた『シューティングツクール95』は、変数機能を導入してはいたものの、ゲーム制作の初期の時点で「グローバル変数」「ローカル変数」というプログラミングのレベルでの抽象概念を理解することが要求され、購入したユーザーの大半が「そもそもなにをすればいいか分からない」という状態に陥ってしまった。
-
DANTE98IIにおいては、説明書では応用編に説明が配置され、機能的にも数学のxの概念が分かれば使いこなせるようになっている。
-
現在では、DANTE98と同じように、作成したゲームを遊べる公認エミュレーターが存在している。今となってはDANTE98IIはツクール2000の下位互換のような内容であり、おそらくDANTE98のような、ある意味での新鮮さは無いだろうが、面白いゲームはそれなりに揃っている。ツクールの歴史を体験する意味でも、是非とも触れてみてほしい。
-
現在でも現品を入手してハード環境が整えば作成する事も可能ではあるが規約上、公式のコンテストパーク等に投稿するしか配布方法が無い為にプレイしてもらう事も困難になってしまっている。
-
作者の尾島陽児は、この後ツクール2000、XP(公式には発表は無いが、恐らくVXも)を制作。間違いなくツクール界最大の功労者である。
2chのツクラー達には、一時期「尾島神」などと呼ばれていたが、その呼び名に異論のある人は少ないだろう。