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S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl - (2014/01/09 (木) 16:42:15) の編集履歴(バックアップ)


S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl

【すとーかー しゃどうおぶちぇるのぶいり】

ジャンル ファーストパーソン・シューティングゲーム
対応機種 Windows
発売元 原語版:THQ
日本語版:ズー
開発元 GSC Game World
発売日 2007年3月20日
定価 6,090円
備考 STEAM配信中。パッケージ版より廉価
分類 良作
STALKERシリーズ Shadow of Chernobyl
Clear Sky
Call Of Pripyat


概要

  • ウクライナのGSC Game Worldが開発したサバイバルホラーFPS。
  • 発売にいたるまでに独自のエンジンやシステムの開発に5年の歳月を要してしまい一時期は発売中止かと思われたが発売後は独特の世界観と意欲的な試みに魅了されるプレイヤーが続出。
  • MODコミュニティの発展と共にじわじわと人気を伸ばした隠れた名作。
  • 通称SOC。

ストーリー

2008年、原発事故以降無人の荒野と化していたチェルノブイリ発電所で再び謎の爆発が起きた。
それ以降チェルノブイリ周辺では常識を超えた奇怪な現象アノマリーや、変異した凶暴なミュータントが出現。
政府は周辺部をZONEと呼び危険地帯として封鎖した。そして何時頃からかZONEの中に危険を冒して進入し、
ZONE内でしか産出しないお宝アーティファクトを求めたり、危険な依頼をこなす事で一獲千金を狙うSTALKERと呼ばれる者たちが現れるようになった。

時は過ぎ2012年、雷鳴轟く荒野を死体を満載したトラックが進む。
偶然の落雷によりトラックから投げ出された遺体の中に息を吹き返した男がいた。
運よく拾われた男には記憶がなかった。その腕には『S.T.A.L.K.E.R』の刺青、持ち物は『Strelokを殺せ』と書かれたPDA。
拾い主につけられた男の名前はMarkedOne。彼は僅かな手がかりを手に死の荒野へと真実を探す旅に出る。

北へ… 北へ行かねば…


特徴・評価点

A-Life
  • FPSと言えばNPCは特定の地点にいてイベント以外では動かないのが殆どだが、A-LIFEによりSTALKERは世界に存在する殆どのNPCが制御を受けている。例えば自分以外のSTALKERーはフィールドで探索を行っていたり、休憩時は焚き火を囲んでパンを食ったりギターを引いていたりそれぞれの生活を送っている。
    ミュータントなら野犬であれば群れを率いて餌となる他の生き物や人間を求めて徘徊し、集団でそれらを追い詰めたり、
    死体を引きずって安全な場所で獲物を喰らう等、そこにZONE特有の生態系が息づいている事が認識できる。
    A-LIFEはプレイヤーが別のエリアで活動していても機能している。例えば偶然野営地点で会ったSTALKERの一人がゲームを進めてしばらく経った後にミュータントの集団によって襲撃を受けて屍となり、通りかかったプレイヤーが死体を漁る時にインタフェース表示される名前を見て気づくと言うZONE特有の無法地帯ぶりやカオス感を表現する事に成功している。
X-RAYエンジンで描かれる世界
  • 独自に開発されたX-RAYエンジンによる表現は、全体的に暗い色調であるもののダークな世界観に非常にマッチしている。
    チェルノブイリの薄暗く鬱々とした空気や荒涼としたフィールドはかつて人が生活していた痕跡を偲ばせる空気が良く出ており、
    打ち捨てられた車輌や塗装が剥げて不気味な空気を醸し出す建造物などまるで異世界に来た様な雰囲気を存分に描写している。
    廃墟内部を探索するシーンでは、真っ暗で荒れ果てた地下研究所内部の如何にも何か出そうな光景の恐ろしさに先に進むのを躊躇ってしまうほどである。
異常地帯に蔓延るNPC達
  • プレイヤー達を魅了してやまない要素にNPC達の情報量の多さが一つにあげられる。
    FPSにしてはテキスト量が多く、NPC達に話しかけると噂話や愚痴そして彼らの出自などが語られる。劣悪な環境のZONEに態々やって来たSTALKER達には借金持ち、元軍人、悪徳警官、犯罪者…と言った後暗い背景を持ったものが多い。
    ZONEにおけるSTALKERの立場もまた雑多で、ZONEの統制を主張する組織、逆に解放を目指す組織あるいは単なる山賊集団に属する者などがいる。
    探索やタスク、会話(後、特徴的な彼らのボイス等を)通して魅了されるプレイヤーもいる。
    そして、敵であるミュータントも設定が凝っているためにただ狩るだけの存在で終わっていない。
    ZONEに存在するミュータントにはそれらが発生する原因が存在する。単なる変異生物に限らず、一部のミュータントにはかつて
    人であった事を留める嫌悪感を催すような容姿や、彼らの生息域に残された邪悪な痕跡から推測できる。
自由度の高さ
  • FPSは大抵引かれたストーリーラインの上で行動を制限されるが、STALKERは一部の場面を除けば殆どのフィールドを自由に探索可能である。メインストーリーとは別にサブタスクもあり、突然他のSTALKERに救援を求められたり、特定のアイテムを捜索する様に求められる事もある。
    それらを遂行するために敢えてフィールドの出入りに制限が設けられていない。サブタスクによっては一部メインにも関わるのも存在しており、近年の自由度の高いRPG的な要素も持っている。
ユーザーMODの多さ
  • 全体的な調整をするもの、一面を雪景色にして雪を降らすもの、新たなクリーチャーを増やす、武器を増やす、大規模なMODとなればストーリーラインそのものを変更した元とは別物の展開を繰り広げる、そういった様々なMODも本作の人気の理由の一つである。 一度クリアしてもMODを使うことによって新たなプレイをできる。
    日本のユーザーによる本編やMODの和訳や開発が精力的に行われているので、ある程度PCの知識があればかなり快適なプレイ環境を構築可能である。
    海外FPSの例に漏れず、コンフィグをちょっといじるだけで主人公の性能を変化させたり、商人が普通取り扱わない商品を入荷させたりと言ったフォローが自分なりに可能。
    コンフィグファイルをいじれるようにするまでの敷居が初心者にはやや高いが、そこまで行ければ下記の問題点のいくつかは解決する。

問題点

グラフィックが開発期間の事もあり同年代と比べて綺麗とはいえない。
  • 当初の予定通り2003年~2004年に発売されていれば、HL2、DOOM 3、Farcry等の2004年発売の作品と共に業界のグラフィックエンジンの基準を大きく上げる最先端作品の一つになっていただろう。しかし延期を繰り返す事で2007年には一回り世代遅れになってしまった。具体的に言えば、2007年はそのFarcryの実質的な続編であるCrysisが発売された年である。一方で、STALKERの世界の空気を表現するのにX-RAYエンジンの描画表現は一役買っているので強ち欠点とも言い切れない点でもある。決して低品質では無く、味がある。
X-RAYエンジンがかなり重くて不安定。
  • 世代の割にはリソースを食うのでエンジンが不安定な事でクラッシュする事も少なくない。セーブ時にクラッシュするとセーブデータが壊れる事もあるため、まめなセーブが必要。
A-LIFE
  • 上記にある本作の特徴の一つで、AIを生きているかのように管理しているシステムだが、NPCが焚き火に突っ込んで死ぬ*1、クエストを受けた瞬間にターゲットが死亡して完了になる、など粗が多い。タスクを依頼してくるNPCが死ぬことも珍しくはなく、酷いものではメインシナリオ上の重要な人物が死亡し進行不可になったという報告もある*2
    完全に作動しているとは言えず、本来であればNPCもプレイヤーと同様にタスクを受けたりする等更に細かな挙動をするはずだったが、開発が難航したこととゲームバランスなどの兼ね合いから、デチューンした形での実装となっている。時間経過があり一定時間ごとに食糧アイテムを使う必要があるが、これも本来あった休息や睡眠といった生活要素の名残りである。
初心者お断りな難易度
  • 本作の難易度を上げている要因は重量制限の厳しさ、敵のAIが優れている等があるが、一番の理由は銃の命中が非常に悪いことが挙げられる。特に序盤は拳銃やソードオフショットガン(2発しか打てずリロードが遅い)くらいしか無いので序盤をいかに乗り切るかが勝負になる。
    先に進めば高精度高威力な銃を入手出来るようになるため、それを乗り切るまでの過程が本作の魅力の一つという意見もあり、物資が乏しくブラックマーケット経由で粗悪な品が流通してるZONEらしいという意見もある。
    初期設定では主人公が歩く時の画面の揺れが酷い。他のFPSをやり込んで完全に3D酔いを克服している人間でも最初は戸惑う勢いで揺れる。これがFPS初心者なら5分と続けていられないだろう。一応プログラム内部の設定ファイルの数値をいじる事で揺れを解除する事は可能だが、MOD導入に慣れたベテランならまだしもPCゲー初心者にプログラムフォルダをいじれと言うのも酷な話である。そんな事ではゲームを始める手前に日本語化MODを導入する時点で躓くかも知れないが。
移動が面倒
  • 本作では、『Fallout3』や『Oblivion』におけるファストトラベルの様な瞬間移動する方法がないので、どんな距離でも走っていくことになる。走るとスタミナを消費し、尽きるとしばらく立ち止まって回復を待つことになる。
    サブタスクを丁寧にプレイしようとすると複数のマップの往復を繰り返す事になるためとても面倒。アーティファクトにはスタミナ回復を向上させるものがあり、最上級のものを持てば走ってもスタミナが減らなくなるが、レアアイテム。
装備に劣化の要素があり、修理の手段がない。
  • 装備は基本的に消耗品。銃は劣化が進むとジャムが発生しやすくなり、防具は防御力が落ちる。修理の手段はなく、どれほど高性能の装備であっても最終的にはガラクタになる。また、物価と収入のバランスがそれなりに厳しく、気軽に装備を買い換えることも難しい。
    銃は他のNPCを倒すことで(新品は滅多にないが)頻繁に拾えるものの、防具は固定アイテムを拾うかメインミッション報酬で受け取るかが主な調達手段。購入もできるが、性能に応じて価格が跳ね上がり、最高ランクの防具は意図的な稼ぎを行わない限り、予備を用意するのが難しいレベル。
    その為、高性能のユニーク装備などは難関まで温存しておき、サブタスクは拾った銃や廉価な防具でこなすことも、重要なサバイバル術になる。
    なお、寄り道なしでストーリー(メインタスク)を進めていく分には、殆どの場合で劣化より早く上位の装備が入手出来る。
    また、ユーザーMODを入れる事で修理が可能になる。前述の欠点の大半はMODで解決できる物も多い。
道具のやりくりが面倒
  • 本作では、「アイテムを多く持つ程スタミナを多く消費し、50kgを超えると走るのが難しい程スタミナを急激に消費するようになり、60kgを超えるとその場から一歩も動けなくなる」と言うシステムを採用している。
    ある意味現実をリアルに再現していると言えるが、これでは収集癖のあるプレイヤーにとっては敵の落とした武器弾薬を数人分拾ったら拠点に戻ると言う非常に手間の掛かる作業を繰り返す羽目になってしまう。しかもNPCは定期的にリスポーンする。
    その為「武器弾薬は最低限必要な分だけ持って行く」「必要なら敵の武器や弾薬を奪って使い、戦利品を捨てる勇気も必要」「長旅になりそうなら食料は多めに」等の現実同様厳しいサバイバル計画を立てる事が求められる。
    またスタッシュ(道具箱)にも一癖あり、「アイテムが定期的にリスポーンする」よう設定されているスタッシュがあるのだが、ただこれだけ見れば定期的に覗けばアイテムが湧くおいしい宝箱だと思うだろうが
    これは「定期的に中身をリセットする」と言う意味でもあり、例えばダンジョンに潜入して持ちきれない戦利品を後で取りに来ようとしまっておいて後で引き揚げに来た時に
    入れておいたアイテムが全部消えてしまう可能性があると言う事を意味する。ただこれは予めゲーム内で「そこら辺のBOXにアイテム入れると盗まれるからやめろよ」と宣言されているのである種これもZONEの厳しい掟だと言えなくもないのだが。
    また、フィールドを歩いて移動する際に周囲のスタッシュを読み込む作業が入るのだが、拠点に武器弾薬をワンサカ詰め込んでいるとそこに差し掛かる度に入れたアイテムの量に応じた処理落ちが発生する。
    酷い場合には通る度に数分待たされる等と言う笑えない事態になるのだが、ベテランストーカーはスタッシュには頼らず
    「死体は引き摺って移動出来る」「死体は生前のアイテムを持っている事があり、逆に死体にアイテムを持たせる事も出来る」「死体のアイテムは移動時読み込まれない為処理落ちも起きない」事を利用し
    死体を文字通り死体袋として拠点の道具入れに使ったり*3、死体には積載量の制限が無い事を利用し軍事拠点を襲撃した後戦利品を何百kgも詰め込んで商人の所まで担いでいくと言った生活の知恵を編み出した。
    この死体活用術の他にも、身体に蓄積した放射能がウォッカを飲む事で除去されたり、NPCが焼身自殺したり、ドラムーチェ*4等の裏技があったり等の突っ込み所の多さもこのゲームが愛される要因の一つだろう。

備考

  • 製作元のGSC Game Worldは2012年に解散してしまい、STALKER2の製作は中断してしまった。元製作チームは独立し、同作の要素を持つSurvariumというゲームを作っている。
  • 今作は1979年にストルガツキー兄弟によって作られた小説『Пикник на обочине 』(日本語訳:路傍のピクニック、日本刊行名:ストーカー)を元にアンドレイ・タルコフスキーが制作した『ストーカー 』と言う同名のソビエト映画の影響を強く受けている。

総評

FPS本来の良さを損なわず意欲的な試みで新境地を開いた荒削りながらも魅力溢れた作品。
発売から数年たった今でも、そのダークで独特な世界観に魅了され、ZONEに足を運ぶ新規プレイヤーが後を絶たない。
だがSTALKER単体で遊ぶと物足りなさも感じてくるので慣れてきたらユーザー作成MODを導入してみると、また違った世界を体験できる。
是非慣れてきたら導入を推奨したい。
古いからと色眼鏡で見るよりもプレイしてみればSTALKERの魅力がわかるだろう。FPSに興味があるならハマるはずだ。

ВРЕМЯ ПРИШЛО… ИДИ КО МНЕ… Я ВИЖУ ТВОЕ ЖЕЛАНИЕ…

時は来た… 我が元へ来い… お前の欲望は分かっているぞ…