S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl

【すとーかー しゃどうおぶちぇるのぶいり】

ジャンル ファーストパーソン・シューティングゲーム
対応機種 Windows
発売元 原語版:THQ
日本語版:ズー
開発元 GSC Game World
発売日 2007年3月20日
定価 6,090円
備考 STEAM配信中。日本語版はないがパッケージ版より廉価
判定 良作
STALKERシリーズ
Shadow of Chernobyl / Clear Sky / Call Of Pripyat


概要

ウクライナのGSC Game Worldが開発したサバイバルホラーFPS。通称SOC。
1986年に発生したチェルノブイリ原発事故を若い世代にも知ってもらいたいという意図の下で開発されたゲームで、その通り、事故発生後のチェルノイブリ原発を舞台としている。

発売にいたるまでに独自のエンジンやシステムの開発に5年の歳月を要してしまい一時期は発売中止かと思われたが発売後は独特の世界観と意欲的な試みに魅了されるプレイヤーが続出。MODコミュニティの発展と共にじわじわと人気を伸ばした隠れた名作である。


ストーリー

2008年、原発事故以降無人の荒野と化していたチェルノブイリ発電所で再び謎の爆発が起きた。
それ以降チェルノブイリ周辺では常識を超えた奇怪な現象アノマリーや、変異した凶暴なミュータントが出現。
政府は周辺部をZONEと呼び危険地帯として封鎖した。そして何時頃からかZONEの中に危険を冒して進入し、ZONE内でしか産出しないアーティファクトを求めたり、危険な依頼をこなす事で一獲千金を狙うSTALKERと呼ばれる者たちが現れるようになった。

時は過ぎ2012年、雷鳴轟く荒野を死体を満載したトラックが進む。
偶然の落雷によりトラックから投げ出された遺体の中に息を吹き返した男がいた。
運よく通りがかりのSTALKERに拾われた男には記憶がなかった。その腕には『S.T.A.L.K.E.R』の刺青、持ち物は『Strelokを殺せ』のメッセージが残されたPDA。
拾い主につけられた男の名前はMarkedOne(印付き)。彼は僅かな手がかりを手に死の荒野へと真実を探す旅に出る。

北へ… 北へ行かねば…


特徴・評価点

探索要素
  • FPS作品は大抵ストーリーラインに沿った一本道のマップを進むことが多いがSTALKERにはRPG的な探索要素が取り入れられている。
    それに合わせて他のFPSに比べると1つのマップも広く一本道をあまり感じない広大なエリアが多い。
    野犬が徘徊する原野、荒れ果てたかつての集落、誰が根城にしているか分からない建造物、空調や光源以外は稼働を止めた不気味な沈黙が支配する工場内部など多種多様なシチュエーションは、好奇心を掻き立て、時には恐怖を煽りつつも、未開の地を行く楽しみがある。
    本筋を離れ、他のSTALKERの手助けをしたり、死体を漁る事で彼らの隠した物資の位置情報を得ることが出来、これらを探す事で補給物資や時には貴重な武器や装備を入手できるといった要素もある。
    慣れたSTALKERともなればマップの隅から隅までを探索をする事は請け合いだろう。
A-Life
  • 本作では大半のNPCが環境制御エンジンA-LIFEに制御されている。例えば自分以外のSTALKERはそれぞれに生活AIを持ち、フィールドの探索、焚き火を囲んでの食事と談笑、ギターを爪弾いての暇潰しなど、様々な行動を見せる。勢力ごとの敵対関係も設定されており、集団同士の小競り合いもしばしば見られる。
    敵生物であるミュータントも同様で、野犬であれば群れを成して他のミュータントや人間を襲撃したり、獲物の死体を安全な場所まで引きずって喰らったりと、生態に応じた行動が設定されている。荒野で見られる野犬の狩りは、ZONEでは日常的な光景である。
    A-LIFEはプレイヤーが別のエリアで活動していても機能しているため、野営地で出会ったNPCが、ゲームを進めて戻るとミュータントの襲撃で死亡しているようなこともある。会話やアイテムの売買で接触したNPCも容赦なく死んでゆく様は、ZONEの危険性を際立たせる演出にもなっている。
X-RAYエンジンで描かれる世界
  • 独自に開発されたX-RAYエンジンによる表現は、全体的に暗い色調であるもののダークな世界観に非常にマッチしている。
    チェルノブイリの薄暗く鬱々とした空気や荒涼としたフィールドはかつて人が生活していた痕跡を偲ばせる空気が良く出ており、打ち捨てられた車輌や塗装が剥げて不気味な空気を醸し出す建造物などまるで異世界に来た様な雰囲気を存分に描写している。
    廃墟内部を探索するシーンでは、真っ暗で荒れ果てた地下研究所内部の如何にも何か出そうな光景の恐ろしさに先に進むのを躊躇ってしまうほどである。
異常地帯に蔓延るNPC達
  • プレイヤー達を魅了してやまない要素にNPC達の情報量の多さが一つにあげられる。
    テキスト量が多く、NPC達に話しかけると噂話や愚痴そして彼らの出自などが語られる。劣悪な環境のZONEに態々やって来たSTALKER達には借金持ち、元軍人、悪徳警官、犯罪者…と言った後暗い背景を持ったものが多い。
    ZONEにおけるSTALKERの立場もまた雑多で、ZONEの統制を主張する組織、逆に解放を目指す組織あるいは単なる山賊集団に属する者などがいる。
    探索やタスク、会話(後、特徴的な彼らのボイス等を)通して魅了されるプレイヤーもいる。
    そして、敵であるミュータントも設定が凝っているためにただ狩るだけの存在で終わっていない。
    ZONEに存在するミュータントにはそれらが発生する原因が存在する。単なる変異生物に限らず、一部のミュータントにはかつて人であった事を留める嫌悪感を催すような容姿や、彼らの生息域に残された邪悪な痕跡から推測できる。
豊富なユーザーMOD
  • 本作はMODコミュニティの盛り上がりと共に評価を高めた経緯があり、クリーチャーや装備の追加といった小規模なものから、ストーリーラインを変更する大規模なものまで、多種多様なMODが開発されている。全編日本語化MODを始めとした和製MODや、海外MODの翻訳版も多数存在するため、導入の方法を理解すれば、何度も新たなSTALKER世界を楽しむことができる。後述の問題点を解決するMOD(修理が可能になるなど)も豊富。
    設定ファイルの内容を理解すれば、キャラクターや装備の性能変更、商人の取り扱い品目の変更といった程度のMODは比較的簡単に作成でき、自分なりのカスタマイズを施すのも楽しみ方の一つと言える。

賛否両論点

所持品のやりくりがシビア
  • 本作ではアイテムに重量の設定があり、所持品の総重量が50kgを超えるとダッシュ時のスタミナ消費が激化、60kgを超えると移動不能のペナルティを負う。60kgという上限値もよく計算されており、予備の装備などを持つと、敵からの戦利品を拾う余裕はあまりなくなる。戦利品を残さず回収したいのは人情で、長丁場のミッションに挑む場合などは万全の備えをしたいのも当然だが、この重量制限によって取捨選択に頭を悩ませることになる。
    反面、この制限は単純なパワーゲームでは味わえない戦略性をもたらすギミックにもなっている。予備の防具を持つために弾薬は敵からの調達をメインにして所持量を減らすなど、プレイヤーは自分なりの戦略で難関を乗り切ってゆくことになる。
癖のあるスタッシュ(道具箱)の挙動
  • アイテムが定期的にリスポーンするよう設定されているスタッシュがあるが、これは「定期的に中身をリセットする」と言うことでもあり、持ちきれない戦利品をこれに保管した場合、時間経過ですべて消えてしまう恐れがある。この仕様はNPCの忠告という形で*1明示されるため、プレイヤーはZONEの掟として心に留めておくしかない。
    また、フィールドを移動する際に周囲のスタッシュを読み込む作業が入るため、大量のアイテムを保管しているスタッシュのあるエリアに差し掛かると、アイテム量に応じた処理落ちが発生することがある。酷い場合には通る度に数分待たされる等と言う笑えない事態になることも。
    アイテムコレクターには特に不親切な仕様ではあるが、多くのSTALKERの創意工夫の結果、やがてNPCの死体をスタッシュ代わりに使う生活の知恵が編み出されるなど*2、殺伐としたゲームに一種ユーモラスな風景をもたらす一因となった。ベテランSTALKERが数百kgの戦利品を詰め込んだ死体を商人の元まで担いでいく姿も見られる。

問題点

X-RAYエンジンがかなり重くて不安定
  • 要求スペックを満たす程度のPCではクラッシュが少なくない。セーブ時にクラッシュするとセーブデータが壊れる事もあるため、クラッシュ頻度によってはセーブデータのバックアップも必要。ハイスペックPCでプレイするならある程度緩和はされる。
A-LIFEの不完全さ
  • 本来であればNPCもプレイヤーと同様にタスクを受けたりする等更に細かな挙動をするはずだったが、開発が難航したこととゲームバランスなどの兼ね合いから、デチューンした形での実装となっている。NPCが焚き火に突っ込んで死ぬ*3、クエストを受けた瞬間にターゲットが死亡して完了になる、など粗が多い。
    タスクを依頼してくるNPCが死ぬことも珍しくはなく、酷いものではメインシナリオ上の重要な人物が死亡し進行不可になったという報告もある*4
    ちなみに、本作には時間経過があり一定時間ごとに食糧アイテムを使う必要があるが、これも実装される予定だった休息や睡眠といった生活要素の名残りである。
リリース時期を考えるとやや粗いグラフィック
  • 当初の予定通り2003年~2004年に発売されていれば、HL2、DOOM 3、Farcry等の2004年発売の作品と共に業界のグラフィックエンジンの基準を大きく上げる最先端作品の一つになっていただろう。しかし、度重なる延期により、2007年にようやく発売にこぎつけた時点では一世代遅れになってしまった。具体的に言えば、2007年はそのFarcryの実質的な続編である『Crysis』が発売された年である。
    その一方で、X-RAYエンジンの描画表現は本作の世界観にマッチしているため、一概にマイナスとも言えない点ではある。
厳しい序盤のバランス
  • 最初のメインタスクが厳しい。この段階では粗悪な拳銃や、総弾数とリロードに問題のあるショットガンぐらいしか手に入らず、回復薬の手持ちも心もとない。さらに敵のAIも優れているため、難易度設定によっては味方NPCもろとも皆殺しにされることもある。初心者の心を折りかねないこの序盤のバランスには、レビューサイト等でもしばしば疑問が呈されている。
    また、デフォルトでは移動時の画面揺れが酷く、他のFPSとは比較にならない激しさで揺れる。ゲーム内の設定では変更できず、.iniファイルの記述を変更することで抑えられるが、この点も初心者のプレイ意欲に対してはかなりマイナスに働くだろう。
移動が面倒
  • 本作では、『Fallout3』や『Oblivion』におけるファストトラベルの様な瞬間移動方法がないので、どんな距離でも走っていくことになる。走るとスタミナを消費し、尽きるとしばらく立ち止まって回復を待つことになる。
    サブタスクを丁寧にプレイしようとすると複数のマップの往復を繰り返す事になるためとても面倒。アーティファクトにはスタミナ回復を向上させるものがあり、最上級のものを持てば走ってもスタミナが減らなくなるが、レアアイテムで入手には運が絡む。
    一応スタミナを回復させるアイテムであるエナジードリンクもあるにはあるのだが、そうそう何本も買ってられる程序盤は金が無いし中盤はアーティファクトでどうにか出来るし、そもそもショートカットキーで使えないので走りながら飲むのが難しいと、あまりいいところの無いアイテムである。
    開発当初は実際に乗れる乗用車を使って移動出来る予定だったが、製品版ではカットされている。そのためMODの中にはこれを使えるようにしたものも多い。
装備に劣化の要素があり、修理の手段がない
  • 装備は基本的に消耗品。銃は劣化が進むとジャムが発生しやすくなり、防具は防御力が落ちる。修理の手段はなく、どれほど高性能の装備であっても最終的にはガラクタになる*5。また、物価と収入のバランスがそれなりに厳しく、気軽に装備を買い換えることも難しい。
    銃は他のNPCを倒すことで(新品は滅多にないが)頻繁に拾えるものの、防具は固定アイテムを拾うかメインタスク報酬で受け取るかが主な調達手段。購入もできるが、性能に応じて価格が跳ね上がり、最高ランクの防具は意図的な稼ぎを行わない限り、予備を用意するのが難しいレベル。そのため、高性能のユニーク装備などは難関まで温存しておき、サブタスクは拾った銃や廉価な防具でこなすことも、重要なサバイバル術になる。
    なお、寄り道なしでメインタスクを進めていく分には、殆どの場合で劣化より早く上位の装備が入手出来る。

総評

FPS本来の良さを損なわず意欲的な試みで新境地を開いた荒削りながらも魅力溢れた作品。
ひたすら敵を打ち倒して前に進むFPS作品とは異なり、探索や物資の調達などの生活感漂う泥臭いサバイバル要素がファンの心を掴んだ。
身体に蓄積した放射線がウォッカを飲む事で除去される、NPCが焚火に踏み込んで焼身自殺する、「ドラムーチェ」*6による堂々たる暗殺といった突っ込み所の多さも、このゲームが愛される要因の一つだろう。
バニラ(初期状態)でのプレイに慣れたら、MOD導入でまた違った世界を体験できる拡張性の高さも大きな魅力の一つ。
リリース当時はエンジン等の動作問題も多発していたが、現今のハイスペックPCであればクラッシュなどに悩まされることも少ない。派手さはなくとも個性的なゲーム性は、色褪せることのない独自の魅力を持っている。

ВРЕМЯ ПРИШЛО… ИДИ КО МНЕ… Я ВИЖУ ТВОЕ ЖЕЛАНИЕ…

時は来た… 我が元へ来い… お前の欲望は分かっているぞ…


備考

  • 製作元のGSC Game Worldは2012年に解散してしまい、STALKER2の製作は中断してしまった。元製作チームは独立し、同作の要素を持つSurvariumというMMORPGを開発、2015年4月より稼働中。
    • GSCは解散してしまったが、その際にSoCのほぼ全てのリソースを置き土産として残して行った。これを使い本編では実装出来なかった物語の追加やグラフィックの強化を行ったGSC公認MOD、「Lost Alpha」がリリースされている。これは単独で動作する為、本編を持っていなくてもプレイ可能。
  • 本作は1979年にアンドレイ・タルコフスキーが制作したソビエト映画『ストーカー』の影響を強く受けている*7。「ゾーン」や「ストーカー」という用語、ボルトを投げて危険を回避しながら進む設定、最終目標である「願いを叶える場所」の存在などは、この映画から拝借されたもの。
    ただし映画自体はゲームとは全く趣が異なり、風景描写と抽象的な議論を中心とした思索的な内容。アクション要素は皆無で、ストーカーも封鎖地域であるゾーンの案内人という位置付けになっている。
    • なお、現実のチェルノブイリ原発周辺も「ゾーン」と呼ばれており、映画と小説は現実の呼称を踏まえている。これらのフィクションは旧ソビエト圏ではよく知られており、現在ではチェルノブイリ区域への案内人や旅行者が「ストーカー」と呼ばれるなど、作中の用語が現実に逆輸入される現象も起きている。
  • 本作シリーズの熱心なファンの中には、舞台となった原発跡地を訪れる、いわゆる聖地巡礼を行うものも多いといい、その中には無許可で敷地内への侵入を試みようとする困った人もいるとか。

*1 「そこら辺のBOXにアイテム入れると盗まれるからやめろよ」といったセリフがある。

*2 NPCの死体には重量制限なくアイテムを詰め込むことができ、死体そのものを持ち運ぶことが可能で、中身のリスポーンや読み込みも発生しない。リスポーンしないNPCの死体であれば、アイテム保管庫として充分な性能を持つ。

*3 NPCは焚き火を囲んで酒盛りしたり弾き語りをして談笑しながら休憩すると言うルーチンが組み込まれているのだが、リスポーン箇所が範囲でしか決められていないらしく時折「焚き火のど真ん中にNPCがスポーンしてしまう」と言う形でこのバグが頻繁に発生し、''NPC謎の投身自殺''として恐れられている。続編では対策されたのか起こらなくなった。

*4 パッチ修正につれて不死属性を付けたりプレイヤーが会いに行くまでスポーンさせないと言った対策は取られたが、意図的に起こすあるいは意図せずとも起きてしまう事は無くはないので、なってしまったら前のセーブデータからやり直しである。

*5 ちなみに防具には「100%以上の耐性を持つ属性のダメージで耐久力が回復する」という抜け穴のような仕様があり、これを利用した修理(?)が可能。電撃耐性アーティファクトを複数装備して、電撃ダメージを与えるアノーマリー「エレクトロ」に踏み込むなど。

*6 NPCを直接攻撃すると所属勢力全体と敵対してしまうが、可燃性ドラム缶を撃つと発生する爆発に巻き込めば「事故」と見なされる仕様を利用した小技。ドラム缶を転がしてきて大惨事を起こした下手人を平然とスルーするNPCの姿は一見の価値あり。

*7 映画はさらにストルガツキー兄弟による小説『Пикник на обочине』(路傍のピクニック。日本刊行名は『ストーカー』)を原作としている。