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パンチライン - (2021/03/30 (火) 17:24:45) の編集履歴(バックアップ)


パンチライン

【ぱんちらいん】

ジャンル 幽体イタズラアドベンチャー

対応機種 プレイステーション4
プレイステーション・ヴィータ
Windows(Steam)
メディア BL-ディスク
PSVカード
ダウンロード
発売元 MAGES.
5pb.
【Win】PQube
開発元 セブンスコード
発売日 2016年4月28日
【Win】2019年5月23日
定価 7,350円
【Win】5,150円
プレイ人数 1人
セーブデータ 30箇所
レーティング CERO:D (17才以上対象)
判定 なし
ポイント ノベルゲーのような何か
SF、タイムリープ、ギャグのごったがえし
アニメ版とは違う未来へ


概要

  • infinityシリーズで有名な打越鋼太郎が脚本を手掛けた同名アニメのゲーム化作品。シナリオの打越氏に加え、監督に中澤工、プロデューサーに市川和弘と、infinityシリーズを生み出したスタッフが集結している。
  • 『パンチライン』は主人公がある事件以来、幽体離脱してしまい、元の身体に戻る為に奔走する事になるが、何故か女の子のパンツを見ると人類が滅亡してしまう。という奇妙奇天烈な世界観で展開するシチュエーションコメディである。本作は基本的にアニメ版のストーリーをなぞり、細部を変更して新規の描写を挟みつつ展開する。
    • 『パンチライン』自体もともとゲーム用の企画ではあったが、先に2015年春季にノイタミナでアニメ化を経験するという少し変わった経歴を持つ。そのため、本作にはアニメで使われたシーンが随所に再利用されている。
      • 打越氏は新作ゲームとして企画を持ち込んだが、市川氏から「これはアニメ化した方がいい」と勧められ、市川氏がフジテレビに売り込んだ事でアニメ化&ゲーム化が決定。その後、本作用のシナリオを原案としてアニメ版が製作され、それをフィードバックする事で本作が完成した。従って、本作は「アニメ版のキャラゲー」とも言えるし、「アニメ版の原作」とも言える不思議な立ち位置の作品であり、アニメ未視聴者でも問題なくプレイ出来るようになっている。
      • 上記の理由により、本作のキャラ・シナリオ面の評価はアニメ版と直結する為、本頁の一部項目ではアニメ版を含めて本作の評価として解説している。
  • アニメ版では音楽はかのTKこと小室哲哉が手掛けており、ゲーム版の本作も引き続いて担当している*1
  • 各階3部屋ずつ。2階建の合計6部屋のボロアパート「 古来館 (こらいかん)」がゲームの舞台。
    • 主人公・遊太は姉から譲り受ける形で古来館に居住していたのだが、何者かに肉体を奪われて幽体化してしまう。更にその肉体を奪った何者かは遊太の自室にこもり、幽霊を寄せ付けない結界を張ってしまう。
    • 古来館の同居人として、仮面のヒーロー(ヒロインではない)をやっている「 成木野 (なるぎの) みかたん*2」、大家で発明家の「 台初 明香 (だいはつ めいか)」、恋愛依存気味のエセ霊媒師「 秩父 (ちちぶ) ラブラ」(30歳)、引きこもってネトゲ廃人になっている「 曳尾谷 愛 (ひきおたに いと) 」が登場。
    • 何故か遊太は幽体の状態で女の子のパンツを見ると地球に小惑星が激突して人類が滅亡してしまう。幽体は時間の物理法則が適用されない為、やり直しは何度でも出来るとは言え、古来館の住人達は年頃(?)の女子ばかりなので…。
    • 乗っ取られた自分の肉体を取り戻すためには、古代インドの聖典「ナンダーラガンダーラ」が必要という触れ込みで、遊太はそれらしき本を探し回るが…。

あらすじ

偶然バスジャック事件に巻き込まれ、それを切り抜けたのもつかの間、空から飛来した謎の魂に自らの肉体を乗っ取られてしまった少年「 伊里達 遊太 (いりだつ ゆうた)」は怪しい猫の幽霊「チラ之助」の指示するまま自らの肉体を取り返さんと奮闘する。しかしこの事件は序章に過ぎず、数日後に迫る人類滅亡、そして自分に秘められた秘密が入り乱れた数奇な戦いへと巻き込まれることになる。果たして遊太はチラ之助の言う「最高にハッピーでピースフルな未来」に辿り着く事が出来るのだろうか。


ゲームの流れ

  • 概要・特徴
    • ジャンルはアドベンチャーだが、本作は3Dアニメーションが織りなすシナリオを読む。アニメのような「各話構成」を意識しており、節目節目にオリジナルのOPテーマ、EDテーマも挿入される。
      • OPはムービー、主題歌共にオリジナル。EDは主題歌はオリジナルだが、ムービーはアニメ版の使い回し。
        新規OPのボーカルはヒロインのみかたん役の雨宮天が成木野みかたん名義で担当している。歌詞も曲もムービーも、『パンチライン』のテーマと言うより寧ろみかたんのキャラソンのような…。
      • 各話の中間にはアニメのCM時のようなアイキャッチが入る。アニメ版で使用されていた妙にエロティックなイラストも流用されている。
    • 前半はややアクション要素もあるが自由度はあまりない。後半は文章を読みながら選択肢を選ぶ頻度が高くなり、実際にエンディングへの分岐にも影響してくる。
  • イタズラ・イタゴラ
    • 遊太は幽霊であり現実世界にあまり干渉できない。自室以外の部屋は自在に行き来できるが、隣人に話しかけることはできない。
    • 物理的に何かをわずかに動かすことで、隣人をそそのかして行動させる。こういった流れをふんでようやく満足に現実に干渉できる。
    • また古来館の隣人を心霊現象で脅かして幽霊としての力を磨くパートも存在。
      • 監視カメラのように同居人の部屋を見回しながら、どの物体に霊力を行使するのか選ぶ。視点はスティックで微調整でき、L/Rで見ている範囲を切り替える。
    • 視点の中央にとらえた物体に○ボタンを押せば、なにかしらのアクションができる場合がある。アクションできる物体はシンボルで表記される。
    • 脅かして力を得るだけのパートを作中では「イタズラ」、古来館全体の住人を巻き込みながらイタズラを展開し、連鎖を起こしながら住人のだれかに何かをさせる「イタゴラ(『ピタゴラスイッチ』のパロディ)」と呼称している。
    • いつどんな霊力を行使するかはシナリオ準拠であり、プレイヤーが好きな時に幽霊としての力をレベルアップさせたり、隣人に何かしてもらうことはできない。
    • 「パンツを見ると人類滅亡」という設定通り、イタゴラパート中に住人のパンツ(「おパンツ様」と呼ばれる)を見ると「ぼっ発ゲージ」が上昇し、これが臨界点に達すると人類滅亡でミッション失敗となる。
      • 少しでも視界におパンツ様を入れてしまうと不可抗力にさいなまれて、おパンツ様に視界がズームインしていく。また視野に入れてから1秒ほどスティック操作が不能に(L/Rは使用可)。
      • また、霊力を行使できる回数にも制限がある。シナリオで定められた目標(一定量脅かす、特定の人物にとある行動をさせるなど)を達成できずに、これを使い切るとなぜか遊太が誰かのおパンツ様を見てしまい自滅。
      • 尚、人類を滅亡させてしまったおパンツ様はギャラリーに登録される。「こんなけしからんものをコンプリートするかはあなた次第」と説明書には書かれているが…トロフィーに関わるのでやっぱり集める事に
    • 「イタズラ」パートでは住人を驚かせて魂の一部「ぶっ魂」を集めて霊力のレベルアップを行う。
      • 動かすと住人が驚いてぶっ魂を得られる「正解ズラ」と、驚かせられない「外れズラ」が存在する。また、「!」の付いたオブジェクトを動かすと住人はパニックを起こすほど驚き、大量のぶっ魂を得られる代わりにおパンツ様を直視する羽目になってしまう。L/Rも使用できないが、すぐに視線を逸らせば回避できる。
    • 「イタゴラ」パートでは各部屋を移動しつつ、イタズラの連鎖を起こして目的を達成する。
      • 各部屋にはイタゴラを繋げる為のオブジェクトが存在し、これを予め動かしておく事で連鎖を起こす。「始」と書かれた「起動ズラ」を動かすとイタゴラが始まり、それまでに動かしたオブジェクトに応じて連鎖が起こる。
      • このパートにも外れズラは存在し、動かす事に失敗したり、或いは動いている事に気付いた住人が即座に戻してしまう為、連鎖には使えない。
      • 「イラズラ」パートでぶっ魂集めに使ったオブジェクトも混じっているが、ここでこれを動かしても霊力の無駄にしかならない。一応、イタゴラパートで驚かせる事でしか見られないおパンツ様も存在するので全く無意味ではないが、基本は必要ない。
    • 基本的に時間無制限だが、最後の方(と言ってもストーリー的には後半に差し掛かる頃)のイタズラ、イタゴラパートには制限時間が設けられ、時間内にクリア出来なければやり直しとなる。

その他機能

  • セーブ
    • シナリオの区切りに入ると、セーブするかどうかをたずねられる。それ以外でも能動的にセーブ、クイックセーブは可能だが、イタズラ・イタゴラパート中は不可。
  • バックログ
    • セーブ・リロードしない限り、バックログはプレイ中に見た文章を載せ続ける。
  • スキップ
    • テキスト表示中にL/Rボタンを長押しすると早送りできる。また既読の文章であればスキップできる。キーコンフィグでどちらのボタンを早送り対応か、スキップ対応かに割り振り可能。
    • 2Dアニメーションや、OPテーマ、EDテーマ中に○ボタン長押しでスキップできる。

評価点

  • 題材の独自性
    • 幽霊になって現実世界にいたずらを仕掛ける、という趣旨のゲーム自体もあまり多いわけではないので、ゲームの中で異彩を放つことには十分成功している。
    • アニメのタイトルコールのような演出、黒板を使った解説コーナーなど、若干癖のある見せ方も特徴的。
    • 後述の難解さにも影響するのだが、シュールギャグものに、タイムリープもの、オカルトもの、SFもの、異能バトルものを組み合わせようとした一種の無謀さは評価できる。
      • 「主にボロアパートの中」という狭い舞台設定にも関わらず様々なジャンルをごった煮にしており、且つ大きな破綻もなく成り立たせている為、作風の面でも他に類を見ない独自性を持っている。
      • 限られた空間の中で展開される、様々な要素を織り交ぜた奇妙で複雑なSFストーリー。という意味では打越氏が手掛けてきたinfinityシリーズや極限脱出シリーズと共通していると言えなくもない…かもしれない。幽体化した遊太は古来館から離れられない為、一応今作も閉鎖空間が舞台という事にはなる。
    • おバカなノリの中で謎めいた演出を随所にちりばめ、ミステリアスな雰囲気を醸し出す事にも成功している。序盤から張られる多数の伏線、中盤のどんでん返し、後半の伏線回収に怒涛の終盤戦と、二転三転するストーリーは打越氏の持ち味がしっかり活かされている。
      • 萌え・お色気を含んだゆるいハーレム系コメディかと思いきや、小惑星激突による人類滅亡、終末思想を説くカルト教団、殺害予告動画、古来館を襲う謎の男…などなど、シリアスな緊張感を与える要素も徐々に登場し、第一印象からは想像もつかないような重く激しい展開へと進んでいく。
      • 「正義のスーパーお助けマン」を名乗る変人、愛が他の住人に秘密で飼っている小熊、明香の珍妙な発明品と言った、古来館をコミカルに賑わす(騒がす)要素もしっかり重要な意味が与えられている。
      • アニメ版の時点で、一話放送する毎に公式サイトにてその回の謎や伏線を検証する解説ページが追加されていたほどである。過去の打越作品同様、初めて物語に触れる人はネタバレ回避が強く推奨される。
    • 時空関連のSF部分はinfinityシリーズや極限脱出シリーズ、幽体離脱の部分は『Close to ~祈りの丘~』*3を彷彿させ、ある意味では打越作品のミックスとも言える。
      • 三者の人格交換という『Remember11 -the age of infinity-』のような展開もあり、ヒロインやラスボスの過去、敵組織の設定に関してはどことなく『12RIVEN -the Ψcliminal of integral-*4を想起させる。また、バトル・アクション要素は後に打越氏が原案を務めたアニメ『あかねさす少女』の先駆けとも言える。あと、変なヒーローが出る辺りは打越氏のデビュー作に通じる。
    • 上述した設定の為、タイトルの「パンチライン」もやはりそっち方面の意味で捉えられがちだが、本来「Punchline」とはコメディやジョークの「落ち」を意味する単語であり、シナリオ上においてもその意味が込められている。勿論、聞いたまんまの意味も込みだが…。
  • 登場人物の性格
    • 古来館の住人は奇抜な人物ばかりだが、基本的にはみな善人。
    • 主人公の遊太は、不条理な出来事に関しては的確に疑問を投げかけてくれる。少なくとも序盤に関しては、複雑怪奇な設定に混乱しがちなプレイヤーにとっては良心的な存在。
      • 単に怪奇現象に巻き込まれただけの普通の少年という訳ではなく、物語の根幹に位置する最重要キーパーソンでもある。幽体として人知れず行動するしかない彼が如何にして人類の存亡を担う存在になっていくのかも見所である。
    • その他登場人物も出落ちということではなく、きちんとシナリオに役割を果たしている。
      • ヒロインのみかたんは「正義の味方」として活動しつつも何か様子がおかしく、その過去は物語に深く関わってくる。明香はチートも過ぎるハッキングスキル、開発技術の持ち主だがそれにもしっかり理由があり、物語を良くも悪くも大きく動かしていく。ラブラは霊媒体質故に遊太の憑依先としてお世話になり、愛もその立場から中盤にキーパーソンとなり、終盤には思い掛けない形で活躍する。
    • 古来館の住人以外もそれぞれストーリー上の重要な役割を担っている。
  • アニメ化の遺産がふんだんに取り入れられている
    • アニメの使い回しと言ってしまえばそれまでかもしれないが、ここまでアニメーションを取り込んでいるものも少ない。アニメ化したものを、きちんと生かしたとは言える。
    • 声優もアニメと同様の布陣。アニメにはなかった文章もフルボイスであり、変なテキストも怪演しきってくれる。
    • 本題の複雑さやシナリオの構造上、アニメをひととおり見ただけでは話の全貌を理解しきれないだろう。本作はゲーム化したことで各種説明が詳細になっており、バックログ機能も駆使してシナリオをゆっくり理解できるようになった。
      • テキスト化によって伏線もアニメより分かり易くなっており、主人公の心情も事細かに描写されるのでストーリーに付いて行き易くなった。
    • アニメで残った謎を解き明かす!というほど大それたものではないが、アニメが12話だったのに対して本作は22話に拡充され(勿論、一話一話の長さは一定ではないが)、アニメでは尺の都合で描き切れなかったエピソードも収録されている。アニメの補間的役割も担っており、本作で初めて明らかになる事実や要素も存在する。
      • キャラの掘り下げも行われており、住人達の日常、古来館で暮らしている理由など、アニメでは詳しくは語られなかった部分も補間されている。みかたんが亀を嫌っていた理由も実は結構壮絶(ギャグ的な意味で)。
        住民側だけではなく、悪役側についても描写が増えて掘り下げられている。
      • 特にチラ之助はアニメでは最後まで正体不明だった上にラストシーンで更に謎を増やしてしまっていたのだが、本作ではその謎の意味が語られ、正体に関してもうっすらとだが明かされる。
      • アニメでは回想で僅かに出ただけの遊太の姉についても幾らか語られ、ごく一部のシーンでは本人が直接登場する。一方、アニメでは姿を見せたラブラの弟が電話にしか登場しなくなったと言った変更点もある。
      • 明香とムヒが急に仲良くなっていた事、敵役の寺岡は終盤まで出番がほぼ皆無で印象が薄くなりがちだった事、遊太の本体がわざわざニコ生配信を行っていた理由など、アニメでは描写不足だった点が改善されている部分もある。
      • また、「アニメ第9話でチラ之助の忠告に従っていた場合はどうなったのか?*5」というゲームならではのif展開も小規模ながら見る事も出来る。
    • エンディングもアニメ最終回とは大きく異なったものとなっており、アニメ版よりも「最高にハッピーでピースフルな未来」に近い結末で終わる。
      + アニメ版のネタバレ含む
      • アニメ版は主人公の死という後味が良いとは言えない結末で、「最高にハッピーでピースフル」とは程遠かった*6。遊太が命を賭した事やその結果についてもあまりフォローが無く、エンドロールでも遊太を除く住人達が楽しそうに日々を送る様子が映るなど、人によっては消化不良感の残る「Punchline(オチ)」だった。
      • 対して本作のエンディングでは遊太はしっかり生存し、その後の古来館の面々についてもアニメ版より細かく語られる。ある人物は命を落とすが、それでもアニメ版より明るく希望を感じさせる結末となっている。短い内容だが、後日談のおまけアニメが収録されているのも○。
      • 元々打越氏が想定していた結末はこちらの方であり、アニメ版のラストは監督の意向で変更されたという経緯がある。その為、アニメ版よりもこちらの展開の方が流れとしては自然。

賛否両論点

  • パロディネタ、下ネタが多い
    • そもそも笑わすつもりなのかも疑わしいパロディが、本編のシステム解説やら日常会話に無遠慮にねじ込まれる。多方面に手を出す傾向があるので回数や密度で言うなら、下手すると『銀魂』よりもひどいかもしれない。
      • 遊太の幽霊ランクを上げるとたどり着く称号に「超高校級霊術師*7」「霊騎士07」、「霊・安室」だの「霊・綾波」だのがあったり、ラブラの愛玩人形の名前が「ゴン様*8」、イタゴラパートを成功した直後に作れるセーブデータの画像が元ネタそのまんま、アイテムを出すときの音がまんま○ラえもんだったり*9、「トゥットゥルー♪チラしぃだよー」「おら、ちんのすけ。ピーマンたべれる?」という台詞*10など…。
      • 本作はMAGES.からの発売且つ、打越氏が当時所属していたスパイク・チュンソフトも関わっているので、シュタゲネタやダンロンネタは内輪ネタに含められるかもしれないが、それ以外もかなり無節操なので好みが分かれる。尤も、シュタゲもダンロンも笑わすつもりなのか疑わしいパロディが多いが。
      • かの有名朝ドラ『あまちゃん』のネタで「じぇじぇじぇ」も出てくるのだが、なまじ流行語になった所為か、遊太にいちいち「古ぃっての!」と突っ込まれる不憫な扱いに。寧ろ本作にねじ込まれたネタの中では割と新しいのだが。
    • 「パンツを見たら人類滅亡」などという設定を臆面もなく掲げる以上、当然作中ではパンチラ、パンモロは何度も飛び出す。また、直接的ではなくとも台詞に下ネタを連想させる表現を仕込んだりなども日常茶飯事である。
      • アプリケーションを起動すると早速ヒロインのパンチラのご登場である。外出先でPS Vita版をやるのはなかなか勇気が要る。
    • メインキャラの名前もダジャレである。しかも『逆転裁判』顔負けのストレートなものばかり。
      • 古来館の住人は一目見れば分かる通り、成木野みかたん=正義の味方、台初明香=大発明家、曳尾谷愛=ヒキオタニート、秩父ラブラ=乳ブラブラ。主人公の伊里達遊太も苗字と名前を入れ替えると「幽体離脱」になる。
      • このうち半数以上は「そう名乗っている」のであって本名は別にある*11のだが、よりによって曳尾谷愛は本名である。元ネタの酷さも然る事ながら、愛が引きこもっているのはギャグを挟む余地など無い重い理由があっての事なので、このような形でネタにする事を不快に思う人も居るだろう。
      • それ以外のキャラはさすがにここまで直球のものは無いが、さり気なくアナグラムや微妙にネタを仕込んだ名前が出てきたりする。
  • ギャグと伏線が混在する
    • タイトルやパッケージの説明「パンツを見たら人類滅亡!?」から、いかにもバカゲーの類と見てしまいがちだが、少なくとも本筋のシナリオは単なるバカではない。打越作品らしく、そこかしこに伏線が張られている。本編の前半に登場する要素はギャグ、シリアス問わず殆どが伏線だと思って良い程。
    • ギャグシーンと思しきシーンにすら伏線が張られていることもある。特に遊太がパンツを見ると隕石が落ちてくる理由が本編の重要なカギになる。
    • チラ之助は随所にお笑い芸人のネタや下ネタを挟み込んで会話をはぐらかすことが多いのだが、事の真相を小出しに話しても来る。
    • プレイヤーを驚かせる仕掛けとして機能しているのだが、ただのギャグかと思って軽く流したら実は重要な伏線で混乱させられるなどと、ストーリーの把握を必要以上に困難にもしている。
      • ただ、これでもアニメ版よりは「ひょっとして何か意味があるのかも」と気になり易い作りにはなっている。
  • 総じて難易度が高くない
    • 中盤まで登場するイタズラパート、イタゴラパートにて、結局プレイヤーができる操作は、隣人の部屋に散らばっている総計10程度の物体から、的確になにか出来事を引き起こせそうなものを選択するのみ。誤った選択をしてもやり直ししていればいつかはクリアできてしまう。
      • ヒントモードがONになっているときに、受けられるヒントが分かりやすいどころかほぼ答えを教えてしまっている。
      • 更にはヒントモードがONになった状態で何度も失敗すると、正解のオブジェクトのみが表示されるイージーモードに入る
    • 同じ「幽霊が主人公で、何度も時間を遡りながらオブジェクトを動かして攻略するADV」である『ゴーストトリック?』に比べるとギミックも極めて簡素である。
    • 「パンツを見てはいけない」というのもたいして障害ではない。L/Rの視点切り替えをしていればパンツをたやすく視界から振り切れる。チラ見どころか、わざと5秒程度ガン見しないことにはゲームオーバーにならない。
      • 見渡せる範囲が狭く、どんなに画面の隅に視界を逃がしてもパンツが映りこんでしまう場合もあり、視界から切る手段が事実上L/Rしかないことも。
    • ノベルゲーだと思えば、妥当な難易度とも言えなくもないかもしれない。あまりにもギミックの主張が激しいと本編が頭に入ってこなかっただろう。
      • ただ、それでも「幽体イタズラアドベンチャー」と銘打って前面に押し出していた割にはゲーム性が薄いため、この点を期待すると肩透かしを喰らうだろう*12

問題点

  • イタゴラパートとゲーム性のつじつまがあわない
    • 登場人物の行動に脈絡が無いことが大半なので、部屋の状況からどのアイテムにイタズラすればよいかを推理しにくい。
    • 啓発ジャンルの本を電子レンジに置き忘れるなど、普通ならまずありえないようなシチュエーションも。電子レンジの中にある理由自体は後に語られるのだが、何故放置されているのかは謎のまま。
  • バックログのシステムは少々融通がきかない
    • 登場したテキストやシステムによる解説を逐一乗せてくれるのはよいが、アニメから流用した2Dムービーの内容は解説してくれない。
      • 2Dムービー中でもシナリオが展開することがあるので、場合によってはムービーがあったところだけバックログを読み返すと話が飛んでしまうことになる。2Dムービー自体は再視聴することもできるが、本編を1度クリアする必要がある。
    • イベントの節目で区切ってくれず、ゲームをリロードせずに続けていると、文章量の蓄積がすごいことになる。そして見たい会話を見返すのが困難に。
    • 人類が滅亡して時間を巻き戻すと、以前聞いた会話も聞くことになるのだがこのときのセリフも重複して載せてくる。
    • ログをジャンプで巻き戻す機能もない。Vitaの場合タッチで巻き戻すといったこともできない。
      • スティックで送るしかない(スティックを2本同時に上方向に倒し、かつRボタンを押すことでそれなりの速さで巻き戻しできるが若干焼け石に水)。
  • 3Dモーションがバグを疑うほど拙い
    • ○ボタンで会話を送ることになるのだが、その節目節目をまたぐ際のキャラモーションがなめらかにつながっておらず、不自然な瞬間移動することが殆ど(会話終了を待って○ボタンを押してもこうなる)。
    • キャラクターの周期的な待機モーションですら、その周期の境目がつながっていないことがある。
    • 遊太の左腕を前に突き出すポーズが不気味。なぜか左腕が電気あんまのような普通の人間には出来ない微振動をする。しかも主人公なので何度も見る事になる。
    • 隣人も、どこかから電話がかかってこようがお構いなしにさっきまでとっていたモーション(地べたで転がるなど)をやり続ける。体はピクりともせず声だけで電話に反応するという、かなり奇怪な光景が出来上がる。
      • さすがにあらゆるキャラにも同じモーションは使い回さないが、ひとつのキャラが同じモーションを使い回すことは多い。声優や2Dアニメはしっかりしているので、ゲーム化でモーションを急遽作って失敗したともとれる。
    • また、キャラが3Dと言っても基本はその場でモーションを取るだけで、歩いたりはしない(カメラが逸れたり暗転するだけ)。言ってしまえば立ち絵が3DのテキストADVにカメラワークを付けたようなものである。
    • 3Dキャラ自体、古来館の住人達、チラ之助にムヒと言った動物、それ以外が2~3人と少ない。他のキャラは2Dの一枚絵やアニメシーン、或いは声だけしか登場しない。上述したラブラの弟が電話のみの登場になったのも、1シーンしか出ないキャラの3Dモデルを作る手間を省いた所為であろう*13
  • 自由度が高くない
    • イタズラ系統はシナリオにて決められたタイミングでのみの行使となる。このイタズラもゲーム性がほとんど存在しないため、このゲームに割かれる操作の大半はシナリオを読むことになりがち。
      • クリア後に好きなチャプターを選んでプレイするという特典は一応ある。
    • ゲーム後半は選択肢を選び物語を分岐させるようなゲーム性に変わってくるが、その分岐の数もほかのADVと比べれば大して多くはなく、間違えた(アニメから外れる)選択肢を選んでバッドエンドになる程度。設定上仕方ないが、バッドエンドの内容もどれも同じ。
      • イタズラ・イタゴラパート、及びアパートの探索要素が無くなる所為もあり、早いペースでどんどん話数が進んでいく。ストーリー後半のプレイ時間は短め。
  • アニメの使い回し
    • 評価点でもパンチラッと触れたが、やはり多くのアニメムービーがアニメ版の使い回しであるのは事実である。
    • 特に最終決戦はほぼアニメ11話、最終話をそのまま流しているだけ。ADVでは表現できない怒涛の激闘シーンだが、アニメ視聴済みの人からすると少々退屈。
      • 愛の出撃シーンや幽体に憑依されたラブラが駆け付けるシーンなどはゲーム版の展開に合わせて微妙に台詞やカットが変わっていたりするが、それぐらい。
      • 一方、エピローグ直前はアニメを使い回しているのに展開自体は全く違うものにするという、本作の設定を活かした手法が用いられている。
    • 新規アニメも存在するが、静止画のコマ送りのような演出に音声を付けただけのムービーが多い。特にストーリー前半に目立ち、新規アニメーションは後半まで殆ど無い。
    • アニメ版の1シーンをバンクのように複数回流用するシーンもあるのだが、元がアニメから切り取ったシーンなのでぎこちなさが生じている部分も。
      • 例えばみかたんがストレンジジュースに変装する演出はアニメ第1話の当該シーンを使っている所為で、最初のみかたんの「了解!」という台詞が前のシーンと繋がっていない箇所もある(元のシーンでは直前の明香の号令にみかたんが応じており、その部分からのアニメを使い回している為、シーンによっては誰も何も言っていないのにみかたんが一人で「了解!」と言っているように見える)。
      • キャラが口パクしたままフェードアウトするなど、シーンを無理矢理区切っている箇所も。
    • 上述したように各話のEDは曲はオリジナルだがアニメは放送時の使い回しなので、歌とアニメのタイミングがあまり合っていない。
    • シナリオ展開が若干変わっている所でアニメをそのまま使い回した結果、不自然になってしまっている箇所もある。
      + 例えば
    • ストレンジジュースの正体がみかたんだとバレるシーンは、アニメ版では「亀男の攻撃で仮面が砕け、その事に気付かず住民達の前に出てしまった為」だったのだがゲームではこの時点ではバレず、戦闘後もストレンジジュースの姿で会話をする。
      • しかしムービーの中に仮面が砕けるシーンがそのまま残っているので、砕けた仮面がいつの間にか復活している構図になってしまっている。また、アニメ未視聴者からすれば、仮面が砕けるシーンは謎の演出でしかない。
    • 一方、みかたんと明香の会話を愛とラブラが盗み聞きするシーンでは、3Dとの兼ね合いの為にみかたんの服装がしっかり普段着に直されている*14
      • 他にも後半でグリーゼを追い詰める場所は川辺から神社に変わっているがそこもちゃんと修正されている。手間が掛かるのは判るが、これぐらいの修正が全体に掛かっていれば良かったのだが。
  • アニメとの関連性
    • 本作のアニメとの関連性は発売前のインタビューの時点で明かされているが…。
      + ネタバレ
    • 『パンチライン』は一種のループものであり、アニメ最終回で人類滅亡は回避されるが、別のループがまた違う時空で始まる事が語られていた。ゲーム版のループ回数はアニメよりも2回分増えており、本作はその別のループを取り上げたストーリーとなる。
    • しかしアニメとの関連性はこれと言って無く、精々「無数のループの中で成功した周が存在する」と軽く語られる程度である。アニメの時の周が何らかの影響を及ぼす事も無く、結末こそ違うが大筋の展開はアニメと同じである。アニメと一体どんな形で繋がるのかと期待すると肩透かしを喰らう事に。
      • アニメ版の展開を知っているはずのチラ之助もその事に関しては上述の軽く語るシーン以外は触れる事も無い。霊界の掟によって必要以上の真実を口に出来ない為ではあるのだが、アニメとほぼ同じ行動を取っているはずの本作の遊太を特別視したり、「こんな歴史、おいらは初めてなのら」というアニメと同じセリフを言うのは少々違和感が拭えない。
    • 確かに元々ゲーム用の企画であり、シナリオもゲーム版の方が先に出来ていた訳だが、発売から一年も先行してアニメを放送していたのだから、何かしらのリンクや仕掛けが欲しかった所である。
    • また、ゲーム版でループが完全終了という事はなく、エンディングではアニメ同様、また別のループが始まってしまう。本作の構造上、人類滅亡が回避されようがされまいが「次の遊太」は必ず発生してしまうので、本作主人公の遊太にとってのループは終わっても、別の時空におけるループ自体は終わらないのである。
      • 但し、アニメ版のような含みを持たせたラストシーンの演出は無く、物語自体はきっちりと完結している。

総評

読み物としてはなかなか奇怪な構成と設定をかかげた先鋭的な内容。この奇怪さをゲームシステムでも演出しようとしたことにより、ひとつのゲームとしてはなかなか歪に仕上がってしまった印象が持たれる。良く言えば商品として異彩を放てたし、悪く言えばゲーム性が弱い。アニメを流用した2Dムービーと不出来な3Dアニメーションも調和が取れているとは言い難く、ノベルゲームとしても歪さが否めない。
但し、先行して放送されたアニメ版のストーリーはほぼ全て内包しつつそれを補完する部分もあり、また結末もアニメより綺麗にまとまっている為、アニメ未視聴者が新たにこの複雑怪奇な世界に触れるには丁度良いし、アニメ視聴済みの人でも物語の理解を深めるのには貢献してくれるだろう。


余談

  • 本作発売よりも前から、コミカライズ版『パンチラインMAX』が連載されていた。
    • 内容はアニメ版の後日談だが、ゲーム版はエンディングがアニメとは異なるのでそちらには直接は繋がらない。別の形で同じ事件があったと解釈出来ない事も無いが。
  • 本作発売の約2ヶ月後には同じ打越作品であり、極限脱出シリーズ完結編の『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』が発売されている。
    • 本作はこの通り基本はおバカなノリで勢い重視のコメディ作品だが、あちらは徹底して硬派で重苦しい作品である為、打越氏はほぼ同時期に正反対の作風のADVを二つリリースした事になる。
  • 1988年に同名の映画がアメリカで上映されたが、本作とは全くの無関係である。上述した通り「Punchline」は本来は「オチ」という意味なので、当然この映画のタイトルもその意味で付けられたものである。
    • RULE of ROSE』の開発会社も同名だが、勿論関係無い。
  • 打越氏が後に手掛けた『AI: ソムニウム ファイル』は繋がりは無く作風も異なるのだが、キャラデザインや設定の一部にどことなく本作を思わせる部分がある。
    • また、探索部分も本作の反省を生かしたかの如く大幅にゲーム性が拡充されており、一筋縄では行かなくなっている。
  • アメリカ、ヨーロッパでは約2年遅れの2018年に発売。極限脱出シリーズは元より、『Ever17 -the out of infinity-』や『ルートダブル -Before Crime * After Days-』などの過去の打越・中澤作品同様、何だかんだで本作もまた海外進出を果たした。
    • 2019年5月23日にはWindows版がSteamにて配信開始。全世界配信のため、海外PS4/PSV版同様イギリスのPQubeがパブリッシャーとなっている。「海外版である『Punch Line』の配信」という扱いではあるが、UI/音声/字幕は日本語対応。