爆走デコトラ伝説 男花道夢浪漫
【ばくそうでことらでんせつ おとこはなみちゆめろまん】
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ジャンル
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レーシング
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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スパイク
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開発元
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パオン
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発売日
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2003年1月23日
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定価
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7,480円(税抜)
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廉価版
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爆走デコトラ伝説 男花道夢浪漫 スペシャル 2003年11月6日/3,300円
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判定
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クソゲー
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シリーズファンから不評
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ポイント
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シリーズ初のPS2作品 グラフィックは相応に進化 その一方でゲーム性は大幅に劣化 希薄な義理人情やデコトラ文化へのリスペクト
未完成品と言われても仕方のない出来
良質な演歌BGMは健在
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爆走デコトラ伝説シリーズ 男一匹夢街道 / 男人生夢一路 / for WonderSwan / 男度胸の天下統一 / 男花道夢浪漫 / 男花道アメリカ浪漫 / 天下統一頂上決戦 / BLACK
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概要
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PS1からPS2への移行も佳境に差しかかった2003年、スパイクから発売された「爆走デコトラ伝説」シリーズの一作。
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同シリーズとしては1999年発売の「男人生夢一路」以来のリリースであり、初のPS2作品でもある。ナンバリングは冠されていないが、非公式に3作目として扱われることも多い。
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後に発売された廉価版「男花道夢浪漫 スペシャル」は単なる価格改定版ではなく、バスやパトカーといった使用可能な特殊車両がいくつか追加されている。
システム
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基本的なシステムは初代作「男一匹夢街道」と同様。延々と直線が続く高速道路をアクセル全開で突っ走るのみという、極限まで簡略化された操作系も不変である。
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前作「男人生夢一路」に引き続き、ブースト機能「男の気合」を搭載。ただしゲージ制だった前作とは異なり、今作では3回までの回数制となる。
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このほか、敵車だけでなく一般車からスリップストリームを得られる仕様も前作から受け継いでいる。
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今作では道央・東北・中央・東名・名神・山陽・九州の各高速道路を走行可能。ゲーム内ではいずれも「〇〇圏」と称される。
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前作のような時間変化こそ実装されていないものの、コースごとに昼や夕方、夜といった異なる時間帯が設定されているほか、シリーズ初となる雨のコースも収録されている。
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工事や事故による車線規制、一般車が増える渋滞イベントなど、ランダムで発生する要素も用意されている。
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過去作に収録されていた関越・北陸・中国の各高速道路は未収録だが、今作では中央圏コースがランダムで「峠道」に変化するという要素が存在する(ゲーム中では雨で高速が通行止めという設定)。
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高速道路とはまったく異なる、極端に狭い道幅と険しいレイアウトが特徴であり、従来の高速主体のゲームデザインから大きく外れた難所となっている。
問題点
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グラフィックの進化とは対照的に、ゲーム性は劣化の一言に尽きる。
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レースゲームの肝である
スピード感がまったく感じられない
描写。加えて挙動はトラックとは思えないほど軽く、重量車両ならではの迫力やリアリティに欠ける。
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敵車の挙動も不可解で、一例として大きく先行している間は低速で走行するが、自車が接近した途端に急加速するというもの。対人戦であれば舐めプと思われてもおかしくない動きを見せる。
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ゲームバランスの著しい崩壊を招いているのは言うまでもないが、この仕様を逆手に取ってスタート直後から敵車を大きく先行させておき、ゴール直前で「男の気合」を使用して一気に抜き去るといった戦法もある。
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積荷の耐久度がかなり低く設定されており、過去作のような体当たりやブロック上等の走りをしようものなら、荷物破損からの強制敗北は待ったなし。
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シリーズが持っていた「ぶつかり合いの痛快さ」という本来の魅力を根本から崩されたといっても過言ではない。
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過去作で可能だったレース中のリトライが不可能。
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初代作ではリトライしても一切お咎めなし、前作でも一部ペナルティはあるもののリトライ機能自体は存在したが、今作では完全に削除された。リタイアは可能だが敗北扱いとなるため、負け確定の状況に陥ったとしてもリカバリーする手段が事実上存在しない。
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一般車への接触など、交通違反を繰り返しているとパトカーが妨害に現れる。この仕様自体は前作と同様だが、今作では
前に出た瞬間0km/hで完全停止
するというあまりにも現実離れした挙動を見せる。
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自車の交通違反のみカウントされていた前作とは異なり、今作では敵車の交通違反もカウントされる。パトカーは自車・敵車問わず前走車を妨害するため、プレイヤーだけでなくライバルにも妨害を仕掛けるのがまだ救いか。
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…かと思いきや、前出の仕様が原因で「
後追い中の敵車が犯した交通違反が原因でパトカーが湧き、こちらが妨害される
」という理不尽な状況にもなりうる。
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総じてリアル路線を指向したものの、本物のリアリティには到底届いておらず、ゲームとしてのテンポの良さが損われるばかりという、中途半端な仕上がりとなってしまっている印象を受ける。
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使用可能車種とカスタム要素の乏しさ。
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今作で使用可能なトラックは中型と大型の箱型トラックのみで、過去作で使用可能だったダンプや平ボディー車は登場しない。
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「男花道夢浪漫 スペシャル」では追加車種としてダンプが登場するが、スペシャル版の追加車種はすべてカスタマイズが不可能であるため、実質的な遊びの幅は広がらず、大きな意味を持つとは言いがたい。
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大型車に乗るには「技能競技会」と呼ばれる実技試験に合格する必要があるが、極端に狭いクランクや一本橋など内容は極めて難しく、攻略には相当な根気を要する。
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この大型免許試験というシステム自体、初代作の開発スタッフが制作した『~アートカミオン~ 芸術伝』の二番煎じではないかという指摘もある。
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カスタムパーツには「愚連隊バンパー」や「親不孝バイザー」といった奇妙な名称が付けられており、造形も現実的でないものが目立つ。そもそも絶対的な種類の数からして少なく、特に
流れるウインカーのリアバンパーが皆無
というのはデコトラとして致命的と言えよう。
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ホーンやボイスを試聴できないなど、機能面での過去作からの明確な劣化も見受けられる。
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ボイスに関しても、男声・女声を含む複数の声質が用意されていた過去作とは異なり、今作では男声1種類のみ。しかも新録ではなく、前作で使用された菅原文太氏の音声を
そのまま流用
している。
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ライバルトラックもその多くが専用モデリング・パーツで構成されていた過去作とは異なり、今作ではプレイヤーが購入可能なパーツのみで組み上げられた車両しか登場しない。このため、過去作にあったライバルトラックをゲット(使用可能に)するという概念も存在しない。
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これにより自車と敵車との差別化が弱くなったばかりか、ライバルトラックをゲットするというコレクション要素までもが失われてしまった。
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あまりにも不愉快
な全国制覇モード。
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シリーズの要となるこのモードだが、過去作でもお馴染みのライバルが登場するストーリーモード(後述)とは異なり、登場ライバルは全員が新規キャラクターである。
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各高速道路にはライバルが3人ずつ配置されている。過去作と異なり倒す順番は自由であり、全員を倒すとそのままエンディングに突入する。ライバルとの交流も描かれないため、物足りなさが残る。
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何よりも問題なのは、彼らのほぼ全員の
態度が極めて悪い
という点。敗北後も主人公を認めることなく拗ねたり悪態をつき続けたりと、なんとも胸糞の悪い展開が繰り広げられる。その傾向は主人公が全国制覇を成し遂げた後も変わらない。
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ライバルに勝利すると相手のトラックの荷台ペイントを入手できるのだが、その代償として「
屈辱の烙印
」を押さなければならない。この仕様は任意ではなく
強制
であるため、押さずに進むことは不可能。
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「屈辱の烙印」とは、白地の背景に「へたれ」「負け犬」といった屈辱的な文言が入ったペイントのこと。こちらが勝利を収めるごとにライバルトラックは無惨な外見へと変貌していき、最終的には全ての面が「屈辱の烙印」で埋め尽くされてしまう。
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結果として、今作の全国制覇にはシリーズ本来の魅力であった「義理人情」や「デコトラ文化へのリスペクト」といったものはほぼ存在しない。
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主人公も台詞こそ発さないものの、ライバルのトラックを汚して貶めていく行為は
救いようのない人間の屑
としか言いようがないものであり、ライバルを蹴落とすことだけに執着する後味の悪い構図になっているのは否めない。
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もっとも、ライバル側も終始こちらを侮蔑する態度を崩さないことを考えれば、「屈辱の烙印」はその鬱憤晴らしであると捉えることも出来るが…
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それにしてもデコトラ文化を
単なる喧嘩の道具
のように扱っている印象は否めず、制作側の文化理解が十分でなかった事をうかがわせる。
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決して完璧とは言えないストーリーモード。
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全国制覇よりも今作の目玉、かつ従来の「デコ伝」らしい世界観が展開されるのが、全5章から構成されるストーリーモード「男花道夢浪漫」である。
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主人公が想い人を追って全国を駆け巡り、敵対勢力からの妨害を受けながらも夢を追い続ける…というベタな展開ではあるが、ゲームタイトルをモード名に冠してるだけあって、作り込みはそれなりに上々。
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過去作でもお馴染みのメンツに加え、新たなパロディ風キャラクターも登場する。過去作メンツのキャラクター崩壊が著しいのはまた別問題だが…
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主人公がライバルとの出会いやバトルを通じて成長していくという構成は、過去作におけるストーリーのフォーマットそのもの。本来なら、この流れこそ全国制覇モードに取り入れるべきだったのではないかとさえ感じられる。
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しかし、このストーリーモードにも重大な欠点が存在する。それは
キャラクターボイスが皆無
という点。
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豪華声優陣によるフルボイスが売りだった前作と比較すると、この点は極めて大きな劣化と言わざるを得ない。その落差の大きさから「前作で声優のギャラを使い果たしたのでは?」という冗談さえ飛ぶほど。
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そこかしこに見え隠れする手抜き感。
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メニューUIは画面遷移時にいちいちセーブ画面を挟むなど使い勝手の悪さが目立ち、デザインも簡素。
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エンディングは黒背景にスタッフロールが流れるもので、BGMもレース中の曲と同一。過去作のようなCGムービーや実車走行映像も無ければ、エンディング専用曲も無い。
評価点
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ハイクオリティな演歌は健在。
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前作に引き続き、歌手には北島三郎とその門下生たちによる「北島ファミリー」を、作詞作曲には初代作から本シリーズに携わり続けている志倉千代丸氏を起用。
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オープニングテーマ「人生航路」は、前作にも登場した「二代目一番星」と「烈火伝」という2台のデコトラを主役に据えた美麗なCGムービーと相まって、特に評価が高い。
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しかしこの2台は
本編に一切登場しない
。このため「オープニング詐欺」「クソゲーだがBGMだけは良い」といったよくある皮肉が見事なまでに当てはまってしまう結果となった。
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過去作では車線変更のみの「シンプル操作」と、ステアリングを直接操作する「カスタム操作」の切り替えは設定画面から行う必要があったが、今作では方向キーを押すとシンプル操作、左スティックを倒すとカスタム操作という形で、レース中にシームレスな切り替えが可能となっている。
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操作性そのものもスティック向けに最適化されたことで、カスタム操作の扱いやすさは過去作から大きく向上している。
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ハード性能が向上したこともあって、グラフィック面は概ね良好な仕上がり。少なくともPS2の後発作である「真・爆走デコトラ伝説」よりは明確に優れている。
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プレイヤーやライバルが使用するトラック、さらには一般車両も、
モデルとなった実車の特徴をしっかりと捉えたモデリングとなっている。
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各高速道路の風景や雰囲気も比較的現実に忠実に再現されており、景観面についても一定のクオリティが確保されている。
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(スペシャル版のみ)追加車種が豊富。救急車・はしご車・パトカーといった緊急車両、果てはたい焼き屋・焼きイモ屋といった移動販売車まで、バラエティに富んでいる。
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積荷やボイス(一部車種のみ)も、通常のトラックとは異なる専用のものが用意されている。地味ながらも芸の細かいポイント。
総評
新時代の「デコ伝」として期待を背負ったタイトルだったが、そのゲーム内容は惨憺たる有様であった。
シリーズの特徴であった「ぶつけ合い上等の痛快なトラックバトル」や「義理人情を軸にした世界観」といった要素が鳴りを潜め、過去作で支持されていた魅力が大きく損なわれれてしまった感は否めない。
そればかりか全体的に作り込みが甘く、開発途中のままリリースされたかのような手抜き感が目立つ。
決して極端な酷評が集中したタイトルではないが、良作と呼ぶには程遠い出来であり、むしろ「クソゲーの烙印」を押されていないことが不思議に思えるほどである。
それでもハード性能の向上にあわせてグラフィック面は確実に進化しており、他のシリーズ作品にはない一風変わった車種を使用できるなど、評価点が何一つ見当たらないというわけではない。
シリーズ恒例の良質な演歌BGMも健在なので、音楽を楽しむ目的であれば一定の価値は十分にあるタイトルと言えよう。
最終更新:2025年12月16日 10:51