私立ジャスティス学園 LEGION OF HEROES
【しりつ じゃすてぃすがくえん りーじょん おぶ ひーろーず】
| ジャンル | 対戦格闘 | 
| 対応機種 | アーケード(ZN-2) | 
| 販売・開発元 | カプコン | 
| 稼動開始日 | 1997年11月17日 | 
| プレイ人数 | 1人~2人 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 初心者にとっつきやすいシンプルさ カプコンのキャラ作りの上手さ
 でもゲームバランスは豪快過ぎ
 | 
| ジャスティス学園シリーズリンク 私立 LOH / 熱血青春日記2 / 燃えろ!
 | 
 
私立ジャスティス学園 LEGION OF HEROES (PS)
【しりつ じゃすてぃすがくえん りーじょん おぶ ひーろーず】
| 対応機種 | プレイステーション |  
 | 
| メディア | CD-ROM 2枚 | 
| 発売元 | カプコン | 
| 発売日 | 1998年7月30日 | 
| 定価 | 7,140円 | 
| レーティング | CERO:B(12歳以上対象) ※ゲームアーカイブスで付与されたレーディングで記載
 | 
| 配信 | ゲームアーカイブス 2012年2月22日/600円
 | 
| 判定 | なし | 
 
※共通項目は省略
概要
『ストリートファイターII』から始まった格闘ゲーム旋風も一段落していたが、まだまだ熱かった時代の作品。
カプコンは様々なアプローチの格ゲーを出していたが、格ゲー初心者向けの遊びやすい作品を模索していた時期がある。その1つがこのシリーズ。
アーケードではシンプルすぎる立ち回りや見た目などの面で大きな支持を得られることなく市場から消えていったが、家庭用に移植されて様々な追加要素を加えていった結果、評価が高まることになった。
特徴
当時のカプコンとしては珍しい3Dモデルを使った格ゲーである。
ただし、弱強のパンチ・キックの4ボタン、レバー後ろでのガードなど操作感覚は2D格ゲーのそれに限りなく近いため、2D格ゲーしか知らない人でもすぐにわかる。
『ストリートファイターEX』同様、2D準拠のシステムを3D格ゲーで再現したものになっているが、加えて「軸移動」の操作も加わっている。
2対2の対戦だが同じカプコンの『VS』シリーズとは異なり、基本的には1対1のラウンド戦でパートナーは助太刀のみとなっており、ラウンドが切り替わる毎に両者ともキャラクター交代が可能。交代せず、そのまま同じキャラクターで戦うことも可能。対戦中のパートナーは「愛と友情のツープラトン」(後述)にのみ影響する。
世界観は熱血スポコン学園少年マンガ的なものとなっており、ビジュアル的にもわかりやすくかつ個性的なデザインのキャラクターが多い。
システム
- 
熱血コンボ
- 
いわゆるチェーンコンボ。基本的に立ち弱攻撃×2→立ち強攻撃→レバー入れ攻撃の順でのみ繋がるが、キャラクターによってはレバー入れ弱攻撃やしゃがみ強攻撃を組み込むことも可能。
 
- 
エアバースト
- 
各キャラクター固有のエアバースト始動技を当てることによって、相手キャラクターを空高く浮かせて空中コンボを決めることができる。エアバースト始動技は基本的にレバー入れ攻撃なので、熱血コンボに組み込んだり根性カウンターから狙うことも可能。
 
- 
根性カウンター
- 
ガードキャンセルしてレバー入力が必要な技を繰り出すことができる。しかしガードキャンセル発生時に時間停止や無敵時間などは存在しないため(最初から無敵時間の存在する技は別)、根性カウンターとして出した技をそのまま相手の熱血コンボで潰されたり、ガードされて逆に根性カウンターを食らったりという事も多い。
- 
ちなみに根性カウンターで出した技を潰された場合、ダメージが通常より大きくなってしまう。しかも、
根性カウンターを潰した技からコンボに繋げられた場合、それらの技までダメージが通常より大きくなる
ため、無闇に狙うと自らの首を絞めることになる。
 
- 
根性ゲージ
- 
攻撃を出す、食らう、挑発するなどの行動で最大9本までストック可能なパワーゲージ。ゲージストックが多いと技の威力が高まる仕様があるため、完全燃焼アタックが弱いキャラや基本攻撃力の低いキャラクターはこれを利用することが重要。
 
- 
完全燃焼アタック
- 
根性ゲージを1本消費して繰り出す超必殺技。基本的に発生時に無敵時間があるため、根性カウンターとして使いやすい。
 
- 
愛と友情のツープラトン
- 
根性ゲージを2本消費し、同じ強さのPKを同時押しすることで出せるパートナーとの合体技。単純な合体攻撃だけではなく、中には根性ゲージを増加させる技や体力回復技も存在する。
- 
レバー入力を必要とせず、発生時に長い打撃無敵時間があるため割り込み技として優秀だが、根性カウンターとして出すことは不可能。また投げは食らってしまうので発生の遅いツープラトンなら見てから投げることも可能。
- 
ちなみにヒットタイミングに合わせてボタンを押すことで攻撃側ならダメージ増加、食らっている側はダメージ減少が可能。
 
- 
熱血受け身
- 
空中に浮かされた時、ボタンを2個以上同時押しする事で無敵時間を伴う受け身が可能。ただしエアバースト始動技ヒット時は受け身不能時間が存在する。
- 
また、インストカードには無いがレバー+ボタン1個でも発動し、こちらはレバー方向へ移動しながら行う。ダウン直前だと地面に手をついて体勢を立て直す。
- 
コマンドは押しっぱなしでも受け付けるため、ふっ飛ばされてからずっとボタンを押しておけば最速発動も可能。
 
- 
相殺
- 
両者の攻撃判定が全く同時に発生した時は攻撃が相殺してお互いノーダメージとなり、さらに両者の根性ゲージストックが1ずつ増加する。
 
- 
軸移動
- 
弱強Kを同時押しする事で軸をずらして相手の攻撃を回避することが可能。さらに至近距離で相手の攻撃に合わせて軸移動すると、相手の背後に一瞬で移動する「回り込み」となる。
 
家庭用
- 
アーケード稼動の翌年、プレイステーションに移植されている。ディスクは2枚組で、AC版を丸々移植した「アーケードディスク」と、家庭用に向けてバランス調整を施した「エボリューションディスク」に分けられている。
- 
「アーケードディスク」はAC版の全解禁状態がベースになったほぼ完全移植であり、さらにストーリーモードがフルボイス化され、後述の新キャラクターも追加されている。一方で追加モードは通常の対戦とトレーニング程度と最低限に押さえられている。
- 
「エボリューションディスク」は家庭用独自のバランス調整がされ、格闘モードのストーリーもカットされているが、このディスクのみの目玉としてオリジナルキャラクターを作成する恋愛シミュレーションゲーム風モード「熱血青春日記」が追加。作中に登場する学園の生徒として一年を過ごす。試験などをこなしながら鍛錬を重ねると育成次第では圧倒的に強いキャラクターも作れる。メモリーカードを持ち寄っての対戦も可能。その他、多彩な対戦モードやオマケも追加されている。
 
- 
熱血ノリに定評のある漫画家、島本和彦氏描き下ろしの「熱血隼人」、ストーリーにのみ登場していたアキラの兄「風間醍醐」が家庭用移植にあたって両DISCに追加された。ただし、ストーリーはなく個別エンディングのみ存在。
- 
醍醐は外道高校の総番長であり、目の傷や学ランなど漢を感じさせる番長キャラクター。
- 
隼人は赤ジャージに竹刀というとてもわかりやすい熱血体育教師であり、そのコテコテぶりは当作の作風にも見事にマッチしていたため好評であった。
時々微妙に熱血を勘違いしている感がある言動もするが、それを含めていかにも島本和彦作品のキャラクターであることがわかりやすい。
 
- 
なお、熱血隼人は元々はゲーメストのAC版攻略ムックに収録されていた島本和彦による短編漫画版で初登場したオリジナルキャラクターであった。
 
 
- 
育成&恋愛シミュレーションモード「熱血青春日記」
- 
名目上はエディットキャラクター育成モードであるが、1本の学園生活シミュレーションゲームとしてもしっかりと作り込まれており、恋愛も楽しむことが出来る。主人公の性別を選択でき、各学園のキャラクターたちと男女交際を楽しめるのは勿論のこと、同性キャラ(男→男、女→女)も攻略可能。これが当時のギャルゲーブームとも大きくマッチして賞賛された。
- 
その好評を得て、熱血青春日記の部分を更に強化して単独ソフト化した家庭用独自の続編『私立ジャスティス学園 熱血青春日記2』も発売された。こちらがシリーズ最高峰というユーザーも多い。
 
評価点
- 
キャラクター造形
 熱血スポ根のノリでキャラクターは造形されており、とてもわかりやすいキャラクター付けがされている。根っからの悪党というキャラクターもいないため、好感を持てる人物ばかりである。
 主人公クラスの太陽学園のメンバーも「性根は優しい猪突猛進」「元気印の紅一点」「クールで陰のある知恵者」と実にベタベタな作り。
 だがこれは叩かれる要素ではなく、むしろ歓迎された。そのベタっぷりが逆に良いという評価がされている。
- 
他の学園の面々もとてもわかりやすい。日本嫌いを公言して憚らない傲慢な性格のアメリカ人、口を開けばケンカばかりだが実はお互い想いあっている2人、男子校に目的があって忍び込んだ美少女など、上から下までお約束の展開がビッシリ詰め込まれている。
 
- 
初心者向けの作り
 ともあれ、とてもわかりやすくシンプルなゲームである。初心者が格ゲーに入っていくのに丁度良い難易度であることは評価されるべきであろう。
 様々なシステムはあるが基本的には熱血コンボとコマンド入力だけで一丁前に動かせるようになる。
問題点
- 
シンプルゆえの弊害
 シンプルであるが故に、やっていい事と悪い事の差が露骨である。
 対戦ゲームとしてガチでやろうとすると一気につまらなくなってしまう。
- 
例えば中段攻撃や下段攻撃からのコンボがほぼ無いこと。皆無というわけではないのだが、可能なキャラクターは全体から見ると一部のみ。
 更に、追撃するには攻撃がヒットしていることが前提の「決め打ち」同然の入力を求められ、ガードされれば痛い反撃をもらう。
 中段攻撃はレバー入れ攻撃の単発技がほとんどで、そこから追撃出来るキャラクターとなると極々わずかで、しかもガードされたら余裕で反撃を食らう。ジャンプ攻撃は速度が遅いため、崩し技として成立しない。
 そのため、いかに相手の攻撃をスカしてこちらの牽制を先にヒットさせるかが勝負の要になってしまい、初心者お断りの「待ち + 差し込み合戦」になってしまう。これでは本末転倒である。
- 
キャラクター間の格差もかなり大きく、組み合わせによってはまともな勝負にならないこともある。
 
 
- 
立ち弱Kのローキックが強すぎる
- 
最も発生の早い通常技でありながら隙も少なく、ヒット確認後熱血コンボに繋ぐことも容易。相殺しても相手の次の技もローキックでない限りこちらのローキックが先にヒットする。根性カウンターを出されてもそのままローキックを連打していれば大抵はカウンター技の攻撃発生前にヒットする(例外は攻撃発生がローキックより早い恭介の幻影キック)。立ち弱Kがローキックでないキャラクターはそれだけで苦戦を強いられることになる。
- 
ローキックが強すぎたため、PS版のエボリューションディスクでは立ち弱Kからの熱血コンボが一切繋がらないよう調整されたほど。
 
- 
愛と友情のツープラトンの長い無敵時間故に起きた弊害
- 
システムの項目にある通り、ツープラトンは相手の投げが逆に成立する程度には相手側にも行動猶予がある。これを踏まえて投げ以外にツープラトンを迎撃する行動を絞っていくと、ある行動が最適解だという結論に簡単に到達してしまう。即ち、ゲージさえあれば相手のツープラトン発動を見てからこちらのツープラトンを後出し発動する事で、無敵時間の差で確実に勝てるというわけである。正直な所、こちらの光景の方が余程ツープラトン返しと呼ぶに相応しい様な…
- 
この仕様のおかげでガチ対戦の場合は相手の連携に対する割込みのツープラトンさえも非常に危険な行動となってしまい、更に慎重にならざるを得ないまま互いに地上でゲージが2本以上ある場合はうかつに牽制する事もままならずにゲージを持て余すという展開も多い。
- 
続編の『燃えろ!ジャスティス学園』ではツープラトン発動時の全身無敵がスーパーアーマー状態へと仕様変更され、ツープラトン発動攻撃が相手の後出しツープラトンでのスーパーアーマーを無効化するのも踏まえてこの問題点は解消されている。
 
 
- 
ビジュアル
 対戦画面でのキャラクターのビジュアルは、当時はまだまだ未成熟な技術であったことを加味しても厳しいものがある。
 2Dグラフィックの方は素晴らしく美麗で文句のつけようが無いレベルのため、落差で余計にガッカリしてしまう。
 格闘ゲームとして動かしやすいようになるべく簡素にしたのであろうが、それにしても…という印象を受ける。
熱血青春日記
- 
パラメーターが把握し辛い
- 
エディットキャラクターには攻撃や防御などの能力値があるのだが棒グラフになっており、ぱっと見ではどれがどのくらいなのかが把握し難い。
- 
「〇〇が上がった!」などと表示されてもゲージがピクリともしない時があるので「本当に上がっているのか?」と思われることもしばしば。
 
- 
続編では若干だが強さを把握出来るようになった。
 
- 
試験での特定科目が難しい。
- 
特に顕著なのが2学期の期末試験で「投げ外し」と呼ばれる項目。言葉の通り、相手が「投げ」てくるのを「外す」テクニックである。
 何が問題かと言うと投げ外し入力の猶予時間が非常に短いこと。投げのモーションを見てから入力したのではまず無理で、ほとんど先行入力に近い入力を要求される。その為、投げ外しだけは諦める人もいる。
- 
一応、相手をいったんダウンさせて、相手が起き上がった瞬間に投げ外しを入力するという方法でタイミングを取ることができるが、100%確実とは到底行かない。
 
 
総評
格闘ゲームとしての完成度は正直高いわけではないが、まがりなりにもカプコン製ではあるため、一定の水準はクリアしている。
その欠点を補ったのは、カプコンが得意とするキャラクター作りの上手さである。格闘ゲームとしてではなく、雰囲気ゲー、キャラゲーという方面で一定の評価がなされた。
ガチ対戦が基本のACには向いていなかったが、友達が集まって家庭用でワイワイ楽しむゲームとしては良好である。
海外版
海外版は『RIVAL SCHOOLS: UNITED BY FATE』というタイトルで発売された。
PS版も2枚組で発売されたのだが、日本版との最大の相違点として「熱血青春日記」モードが未収録となっている。
自分でエディットキャラクターが育成できない代わりに、スタッフにより予め用意されたキャラクターが24体分収録されている。
一応、熱血隼人の実技試験や太P戦ミニゲームはそれぞれ単独で遊べるようになっている。
その後の展開
PS版発売の翌年、「エボリューションディスク」のさらなるバージョンアップ版にあたる『私立ジャスティス学園 熱血青春日記2』が発売。
新キャラクター2名が追加され、バランス調整や「熱血青春日記2」の練り込みが行われている。
こちらは前述の事情もあってか、日本国内のみの発売となった。
その翌年末にはアーケードで続編『燃えろ!ジャスティス学園』が稼働、ドリームキャストにも移植された。
こちらは3on3形式に進化している上に、アーケード版とドリームキャスト版とのデータ連動も可能。
最終更新:2025年09月23日 18:27