THE LAST STORY
【らすとすとーりー】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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Wii
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発売元
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任天堂
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開発元
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ミストウォーカー AQインタラクティブ
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発売日
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2011年1月27日
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定価
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6,800円 Wii本体同梱スペシャルパック:25,800円
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象)
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コンテンツアイコン
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セクシャル、暴力、犯罪
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備考
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早期購入特典にビジュアルファンブック・ミニサントラCDが付属
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判定
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なし
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ポイント
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坂口と植松のコンビ再び シンプルかつ奥が深い戦闘システム やっぱりムービーゲー ※ファイナルファンタジーではありません
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概要
スクウェアを離れ、ミストウォーカーを立ち上げ独立した坂口博信氏の任天堂発売タイトル第2弾。
また、氏が『ファイナルファンタジーV』以来にディレクターを務めた作品でもある。
据え置き機としての発売は『LOST ODYSSEY』以来であり、Wiiでの発売は今作が初めてである。
タイトルが『ファイナルファンタジー』を彷彿とさせるのは氏曰く「これで終わりになっても後悔はしない」として名付けたものとの事。
また、音楽も『FF』でお馴染み植松伸夫氏が担当している。
キャラクターデザインは『ドラッグ オン ドラグーンシリーズ』で有名な藤坂公彦氏。
今作の直前に開発中止が決定してしまった同スタッフの作品『クライオン』での起用が注目されていただけに喜ぶユーザーも多かった。
タイトルがFFに似ていてかつ坂口氏による作品である事から、発表当時は「真のFF」として揶揄する者も多かった。
特徴
戦闘システム
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『ゼノブレイド』に代表される、画面切り替えの無いシームレスバトルとなっている。
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操作系統はかなりシンプル。基本的に敵に寄りかかるだけで攻撃が出来る。オプションでボタンによる操作にも切り替え可能。
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障害物や壁に寄りかかるハイド。これを利用して敵の隙を付いた戦術も出来る。
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フィールドに置いてある砲弾を投げつける事も出来る。
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戦闘中に仲間に近づくことで会話も聞ける。
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ギャザリング
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ギャザリング発動により、敵をプレイヤーに注目させるシステム。簡単に言うなら「自分自身を周囲の敵すべてに向けた囮にする」というもの。
自分がやられるリスクが高くなる反面、仲間の魔法詠唱時間が短くなる他、発動中にプレイヤーの攻撃が当たるとHPを回復出来るという見返りもある。
また、レベルが上がれば発動中にガードし続けると力が蓄積し「ギャザリングバースト」という逆転技を使えるようになる。
戦闘不能となった仲間を回復することも出来る。
ただしライフゲージがゼロになったらその戦闘では回復できなくなる。主人公のエルザの場合は当然ゲームオーバー。
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魔法サークル
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キャラクターが魔法を使うと、一定時間その魔法の範囲サークルが表示される。
味方側の場合、ウインドにより効果を拡散させる事ができる。
回復の場合は範囲内からパーティ全体に回復、炎魔法の場合はアーマーブレイクの追加効果など。
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敵側の場合、サークルを消滅させられる。回復魔法を使った場合などに有効。
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テンション技
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戦闘中にゲージが溜まっていき、最大まで溜まるとキャラごとの固有技が使えるようになる。
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注目モード
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視点が主観となり、ボウガンによる攻撃や敵の弱点を探したり、利用できる地形や落ちてるアイテムなどを調べたい時に使う。ボタン一つで切り替えが可能。
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イベント中に挿入されて、目標を見つけるとゲームが進むという仕組みもある。
マルチプレイ
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マルチプレイはレベル・装備品の強さは反映されず外見のみが反映される。つまり、レベルの格差が無い。
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複数のプレイヤー同士で争う「乱闘」、プレイヤー同士が共闘し敵と戦う「討伐」の二つがある。
この時、取得したアイテムはゲーム本編で使うことが出来る。
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テキストチャットは出来ないが、その代わり予め用意された定型文が非常に多い(7,000種類以上)。
また、通常はエルザしか操作できないが、ここでは他のキャラも選択可能。
その他
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シナリオはチャプター仕立てとなっている。
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街は一つだけしか用意されていないが、その分規模と施設が充実している。
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また、ショップ自体は一部を除き街以外にも転々と存在しているため、買い逃しは殆ど無い。
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マップ間移動が可能。
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武器や防具などの装備品は鍛えることにより、追加効果が付く。
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装備品はムービーにも反映される他、染料を入手することで装備品のカラーを変えることが出来る。中には『透明染料』というネタ的なものも。
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装備品には元々様々な装飾品が付いているが、それらを一部ずつ取り外してカスタマイズする事も可能。それだけでは強さに影響しないので、自由に見た目の変更をできる。パーツは防具レベルに合わせて増えていく。
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ムービーはプリレンダとリアルタイムレンダリングの二種類が併用されている。
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基本的にプリレンダは回想や重要キャラの初登場、遠景などで使われる程度。前述の装備品の事を考えてと思われる。
また、リアルタイムの出来もプリレンダと遜色がない。
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闘技場やサモンサークル(ギャザリングで敵を呼び出せる魔法陣)など、フリーバトルエリアが多い。
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アイテムの種類はそれぞれ項目分けされている。個数表示もされる。
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システムのチュートリアルも充実している。メニュー画面からいつでも見返すことが出来る。
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町人たちからクエストを請け負うことも出来る。
評価点
戦闘システム
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ギャザリングや魔法による連携を駆使して敵陣をかき乱したり、主観により地形の倒壊を命令したりと数多くの行動がとれ、どんな行動をするかはプレイヤーに委ねられる。
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有利な行動をとって圧倒するもよし、魔法サークルの拡散効果でジリジリと攻めるもよし、壁張り付きからの切りつけばかりのチキン戦法をとるもよし、と同じ戦闘でも色々な戦い方ができる。
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エフェクトも派手で、戦闘はとにかく爽快。
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難易度は低めに設定されているので、初心者も取っつきやすい。戦闘が終わったら全キャラ全回復する。
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マルチプレイの評価も高い。
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共闘ではキャラクター一人一人にとれる行動が決まっており、ギャザリングも使えないので、敵が誰を狙っているのかしっかり観察して立ち回る、という本編とは違った楽しさがある。
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時折ディレクターの坂口氏がTwitterで宣言してからマルチプレイに参戦するというイベントも行われた。
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シームレスバトルながら非常にスピーディーな戦闘で、テンポが良い。レベル上げをする必要も殆ど無い。
美しいグラフィックとBGM
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グラフィックはHD機には劣るものの、Wiiのゲームとしてはトップレベルの見栄えの良さ。
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街の作り込みが豪華な事も合わせて、美しさに見とれる。水の質感も美しい。
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植松伸夫作曲の音楽は物凄い高評価。
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通常戦闘「秩序と混沌と」特殊ボス「狂乱の誘い」ラスボス戦「全てを支配せしもの」など戦闘曲は戦闘のスピード感を損ねず、プレイヤーのテンションを高めてくれる良曲揃い。
個性豊かな仲間たち
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各キャラクターはとてもキャラが濃く、短いシナリオのなかでしっかりとプレイヤーに印象づけがされている。見せ場のイベントもあり、感情移入もしやすい。
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傭兵団メンバー
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エルザ(CV:宮野真守)
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本作の主人公。クォークと共に設立した傭兵団で働きながらいずれ騎士になることを夢見る青年。
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ルリ島での任務中に「異邦の者」と共鳴し、ギャザリング能力を獲得する。
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カナン(CV:折笠富美子)
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本作のヒロイン。ルリ島の領主アルガナン家の姫君。叔父のアルガナン伯爵の管理下の元、城に幽閉されている。
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城を抜けだして街を散策したり、城下町で狼藉を働く騎士を叱責したりと大胆な行動をする。
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クォーク(CV:石塚運昇)
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エルザ達が所属する傭兵団のリーダー。エルザとは幼少の頃から行動を共にする良き兄貴分。
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彼が常に腰に下げている剣は、エルザと共に傭兵団立ち上げの際に購入した物だが、装飾用の切れない剣だと知らずに購入していた。
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セイレン(CV:豊口めぐみ)
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二刀流の女剣士。傭兵団の切り込み隊長。大酒飲みで口は悪いが、根は優しい姉貴分。
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ユーリス(CV:下野紘)
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傭兵団最年少で口数少ない無愛想な少年。魔法の腕は一級品。
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普段の冷静な態度とは裏腹に幽霊の類が苦手でパニックになる。
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ムール(亀のモンスター)
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ジャッカル(CV:藤原啓治)
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軟派な性格で美女を見たら口説きにかかる軽薄な性格。
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セイレンとは犬猿の仲だが、なんだかんだで軽口を叩きつつも互いに惹かれ合っていく。
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マナミア(CV:能登麻美子)
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神秘的な雰囲気を漂わせる美女。だが、人智を超えた健啖家で傭兵団の懐事情を悩ませる。
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森で神獣に育てられた過去があり、大地の荒廃した原因を探っている。
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様々な反応を見せるキャラクター
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走っている最中、NPCとぶつかると愚痴をこぼしたり、いたずらで転倒させたりも出来る。
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NPCとぶつかった時の動きも実にリアルで脈動感も感じられるほど。
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「いたずらバナナ」というボウガンで発射出来るアイテムがあり、それを撃ち込むとNPCや敵や味方を転倒させられる。ボウガンを使える機会に登場するキャラの大半はもちろん、
重要人物やラスボスまでもがすっ転ぶ
。その光景はじつにシュールである。
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キャラによってはフルボイスで喋ってくれる事も。
その他評価点
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ヌンチャクによる操作とクラシックコントローラによる操作がほぼ同じ。
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相違点はカメラ操作が出来るか出来ないか程度。クラコンが無くても十分に楽しめる。
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ストーリーは王道で解りやすい。専門用語もあるが難解という程でもなく、プレイしていればおのずと理解できる。
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常にセーブは出来ないものの、至る所にセーブポイントがあるため中断は容易。また、オートで中断セーブ(ゲームを終了すると無効)もしてくれる。
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また、ダンジョン探索時に仲間の会話が流れる事も多い。
賛否両論点
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基本的に一本道、かつムービーがゲームの大半を占める。
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ムービーだけでチャプターが終わる事もしばしば。
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シナリオに際立った評価点があればこの路線も評価できるのだが、本作のシナリオは良くも悪くも徹底した王道系であり、そこまで注力させるほどの要素とは言い難い。
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前述の通り、ムービーの途中で注目モードに入る事も多く飽きさせない工夫はあるのだが…。
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ただ、この時注目すべき対象がわからないといつまでたってもイベントが進まない。しかも注目モードのとき視点の移動はリモコンのポインターで移動できない。『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』や『斬撃のREGINLEIV』では弓矢の操作時には狙いをポインターでつけられるというのに…。
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戦闘の難易度が低く、序盤はゴリ押しでも大抵勝ててしまう。レベル差によるハンデも大きい。
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ゲーム初心者にも向けた難易度とも言え、ストレスも緩和されている側面もあるので一概に悪いとも言えないが。
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リアルタイムムービーは早送りやボイスカットは出来るものの、スキップが不可能。プリレンダムービーのみスキップが可能という仕様。
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これは坂口氏が「早送りならば、字幕が見えるので物語の筋は追っていけるし、物語がぶつ切りにならない」という考えから導入された。
問題点
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世界観が狭く、街は一つだけ、その他ダンジョン複数…と、やや寂しい。
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ダンジョンにしてもそこへ向かう道などもなく、自由に歩き回れるのは基本的に街だけ。ダンジョンにはワールドマップからワープして向かう。
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そんな狭いなかで「大地の荒廃」「主人公の力の謎」「異民族との紛争」など多くのテーマが詰め込まれているため、壮大なテーマがこぢんまりとした印象になってしまっている。
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一本道である事を考慮した上での狭い世界なのかもしれないが。また、ストーリーなどから舞台設定そのものは奥深く練られている事が窺える。
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ボリュームが少なめ。約15~20時間程度でクリア出来る。
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一応、2周目への引継ぎなどはあり、2周目は一部大型モンスターの強化や、武器の成長限界撤廃といった特典が得られる。
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シナリオそのものはかなり雑。
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唐突な展開が目立ち、偶然辿り着いた先でこれまた偶然重要なものや探していたものがみつかる、危機に陥ると不思議な力が発動して形勢逆転といった展開が何度も繰り返される。
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街ではミニマップの表示機能があるが、ダンジョンでは表示出来ない。
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カメラもよく動く事と合わせて、迷ってしまう事もある。しかも暗い。
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とはいえ、構造そのものはシンプルかつそれほど長くない事が多い。
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ダンジョンでは進行中にキャラがしゃべってくれるが、聞きたいと思っても道を進みすぎてしまうとムービーが入ってしまい、ちゃんと聞けないことが多々ある。
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ダンジョンには何回も入れるが、キャラがしゃべるのは初回だけ。さみしい。
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サブクエストの進行具合がいつでも確認できない。
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マルチプレイでのチャットは定型文しか入力出来ず、不評。
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ロード時間そのものは短いが、頻繁に入る。気になる人は気になるかも。
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パーティキャラもストーリーの都合で頻繁に入れ替わるためあまり自由にパーティを組む事は出来ない。またオフラインだと操作できるのは基本的に主人公のエルザのみ。
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Wiiとしては破格の高グラフィックである反動か、コマ落ちがやや多い。ムービーですらカクカク。
総評
本作を一言で纏めると『戦闘の自由度は高く高評価だが、シナリオは一本道路線で自由度が低い』となるか。
良くも悪くも坂口博信が作ったゲームらしい出来といった所である。
当初は、同じシームレスバトルを採用した『ゼノブレイド』の高評価から期待も膨れ上がっていた。その期待は任天堂側の強力すぎるバックアップによるものであるという面も持っていた。
現在では戦闘システムそのものは評価されているが、王道的で捻りの少ないシナリオが一本道的でムービー偏重の演出と噛み合っていないことや、細かいシステムの不親切な部分などが足を引っ張っている感もあり、『ゼノブレイド』となにかと比較され、ガッカリゲーと評するものもいた。
とはいえ完全新作のゲームとしては十分及第点の出来であり、改善すれば良作になる余地や開発力の高さが窺える部分があるため、続編などシリーズへの発展には期待できるものとなっている。坂口ゲー好みのユーザーには『ゼノブレイド』よりも気に入ったという声もちらほら聞かれる。
海外においても、メタスコア81となかなかの高評価を得ている。
その後
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今のところ音沙汰はないが、任天堂のインタビュー企画「社長が訊く」でモノリスソフトの高橋哲哉と本作の坂口と任天堂社長岩田聡の対談が組まれ、高橋と坂口でまた一緒に仕事をしたいという旨の話題が登場している。
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後にミストウォーカーが開発したスマートフォン用RPG『テラバトル』において、度々本作とのコラボイベントが行われている。
最終更新:2022年03月01日 00:42