零 ~月蝕の仮面~
【ぜろ つきはみのかめん】
ジャンル
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ホラーアクションアドベンチャー
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対応機種
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Wii
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発売元
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任天堂
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開発元
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任天堂 テクモ グラスホッパー・マニファクチュア
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発売日
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2008年7月31日
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定価
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6,800円(税込)
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レーティング
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CERO:C(15才以上対象)
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判定
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なし
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零シリーズ
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ストーリー
「誰も覚えていないことは、存在しないことになるのだろうか…」
本州の南に浮かぶ島、朧月島で10年に一度開かれる朧月神楽。
その神楽の最中に5人の少女が神隠しに遭った。少女たちは1人の刑事に助け出されたが、全ての記憶を無くしていた。
10年後、神隠しに遭った少女のうち2人が死んだ。顔を覆い、泣き叫ぶような無残な姿で…。
残された少女、水無月流歌・月森円香・麻生海咲の3人は、友人の死の謎を解き明かすため、そして失った記憶の先にあるものを確かめるために朧月島へと渡った…。
概要
テクモの和風ホラーゲーム『Project Zero』シリーズの第4弾。
前作を作った後、Project Zeroチームが解散していたために続編が絶望視されており、シリーズのファンからは大きな期待が寄せられた。
シナリオ・ディレクターとして『トワイライトシンドローム』『killer7』などで知られる須田剛一氏が参加している。
舞台や登場人物は一新されており前作のストーリーと直接的な繋がりはなく、新シリーズとして位置付けられている。
共通しているのは、射影機を使うという点のみ。
なお副題について、基本的に公式では「蝕」の字が用いられているが、ワードマーク上では繁体字の「飠に虫」となっている。
前作からの変更点
システム(探索関連)
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今作でも前作同様、3人の主人公を操作してストーリーを進めていく。
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水無月流歌
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本作におけるメイン主人公。射影機を使って戦う。
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使用できる強化レンズが多く、霊子吸収が多いため強化レンズを積極的に使って行ける。
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麻生海咲
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射影機の開発者として過去作でも名前が登場していた麻生邦彦博士の子孫であり、流歌とは違う射影機を使って戦う。
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強化レンズの数が少なく霊子の蓄積も遅いが、キャプチャーサークルが広く、自動で敵を捉えるレンズが入手できる。
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霧島長四郎
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元刑事の私立探偵。「霊石灯」と呼ばれる懐中電灯を使って戦う。また男性なので移動が速く、打たれ強い。
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霊石灯は、月霊力と呼ばれるエネルギーを消費して攻撃する。いうなればフィルムの代わりにエネルギーを消費して戦う射影機のようなものなのだが、恐ろしく攻撃力が高く、他の2人と比較するとまさに無双状態になる。ただし、その分複数の霊を同時に相手にしなければならない機会が多い。
システム(戦闘関連)
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前作では主人公の3人が使用する射影機はファインダーモードでの画面デザインが統一されていたが、今作では流歌の使用するものと海咲の使用するものが完全に別物であるため、外見もファインダーモードの画面デザインも異なるようになった。
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流歌の使用するものは、本体に華美な装飾が施されており、ファインダーモードでの霊力ゲージは月の満ち欠けをモチーフにしたシンプルなもの。
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海咲の使用するものは、シンプルな外見に相反するように、蔦のよう文様が浮かび上がる装飾的な霊力ゲージとなっている。
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セーブポイントで回復アイテムやフィルムが買えるなど、初心者でも挑みやすい低難易度になっていると言える。
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ただし、敵の攻撃力は全体的に高めになっているので油断はできない。
その他
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難易度は「EASY / NORMAL / HARD / NIGHTMARE」の4種類。
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難易度は高くなればなるほど敵が強くなり固くなる他、シャッターチャンスとフェイタルフレームの受付時間が短くなる。また、セーブポイントで買えるアイテムが少なくなり、値段が上がる。
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今回も例に漏れず、おまけ要素が充実している。
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注目すべきはコスチュームであり、本作は任天堂が開発に関わっているためコラボレーションとして「ゼロスーツサムス」と「ルイージ」の衣装がある。
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もちろん、浴衣や制服といった和風な物から萌え的な物まで用意されている。またメガネや髪飾りなどのアクセサリーもある。
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他に、条件を満たすことでのみ入手できる強化レンズなどもある。しかし、バグ(後述)があるためオールコンプは不可能になっている。
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開放条件はステージの随所に隠されている鬼灯人形を撮影する、霊リストをコンプするなどで解禁されていくのでやり込み甲斐がある。
評価点
進化したグラフィック
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ハードが次世代機へと移り、グラフィックはさらに進化した。
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また、本作の主人公の1人である霧島長四郎は、渋カッコいいナイスミドルで人気が高い。
雰囲気
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今作の主な舞台は離島にある廃病院である。
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ただし、いかにも病院らしい近代建築で統一されているわけではなく、半分は大正ロマンの雰囲気を漂わせる洋館風の建物となっている。
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湿っぽい日本家屋を期待していた人たちからは若干の不満があったものの、日本家屋がマンネリ化していたことと、洋館も廃病院もホラーとしては定番の舞台であることから概ね好評である。
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洋館風の建物は、正確には日本家屋の建築技術を使って洋館を真似した「擬洋風建築」と呼ばれるジャンルのものだが、階段ホールの中央に巨大な鳥居が設置されていたりと、その内部は和洋が混在した外見よりも更に浮世離れした、独特の雰囲気を醸し出している。
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過去作の『紅い蝶』が「紅」、『刺青ノ聲』が「青」をテーマカラーとして使ってしたのに対し、本作では「月」がテーマになっているため月を思わせる「白みかがった黄色」がタイトルロゴやシステム画面など各所で使われている。
賛否両論点
視点
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本作では過去作のような俯瞰視点ではなく、『バイオハザード4』のようなビハインドカメラが採用されている。
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直観的な操作がしやすくなった一方で、射影機画面と通常画面がほとんど一緒になってしまい、主観と俯瞰を切り替えられなくなったのが残念だという声も多い。
Wiiコンを用いた操作
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「Wiiコンを懐中電灯に見立て、探索する」ことをウリにしていたのだが…。
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Wiiコンを懐中電灯のように傾けることで操作できるのは上下の角度だけで、左右に向けるためにはWiiコンを水平に構えたままひねるという不自然な操作をする必要があり、「懐中電灯に見立てている」とは言い難い。
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ただし、全体的な操作性自体は決して悪くない。それどころか、かなり良い方である。
3人主人公の弊害
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今作でも、主人公が複数であるためにストーリーを追いづらいという意見が出た。
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特に今作は主人公によって目的が違うので、なおさら追いづらかったようである。
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一度クリアした人はこちらで詳しいことが書かれているので参考にして欲しい。
アイテム購入システム
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本作では床落ちのアイテムがほとんどなく、セーブポイントで撮影ポイントを支払い交換するのが主要のアイテム入手方法となる。これ自体は特に批判もなく、好評なのだが…。
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難易度が変わると、購入できるアイテムの種類と値段が変わる。特にNIGHTMAREでは一切のアイテムが購入できない。
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難しい難易度なんだから当たり前じゃないの?と思うかもしれないが、このゲームは難易度を超えた引継ぎが可能で、優しい難易度でアイテムを買って持ち越すことができるため全く意味がない。逆にそれを知らずにNIGHTMAREを始めてしまうと、アイテムが足りなくなって地獄を見る羽目になる(詰みになることはないが)。
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どうしてもアイテムの購入を禁止したければ、自分で引継ぎなしの縛りを入れてプレイする必要がある。
ゴーストハンドシステム
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一部のアイテムを取る時に、手を伸ばしてアイテムを拾うモーションが入る。この時、一定の確率で幽霊の手が出てきてビックリ! となるイベントなのだが…。
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最初こそドキドキするものの、すぐに振りほどかないとダメージを受けるということはないため、正直数回遭遇すれば飽きる。
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しかも、手に捕まれた時は、そこに落ちていたアイテムは消滅してしまう。一応、ストーリーの進行に関係するイベントアイテムを拾う際には出現せず、しかも取れなかった分は別の場所で補完されるが…。
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実は拾う際に手を伸ばす時、Aボタンを細かく連打してゆっくり拾うと画面隅から出現する手が見えるため、そこで拾うのをキャンセルすれば消失を避けることができる。
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とはいえ、前述の通り大したアイテムが落ちているわけではないし、ぶっちゃけ面倒なだけである。
射影機のシステム
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ロックオンの存在。
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敵をロックオンしてしまえば、敵が消えない限り敵を捉え続けることができる。操作が手軽になった一方で、「自分で敵を補足する楽しみがなくなり、ただのタイミングゲーになった」という意見も多い
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「嫌なら使わなければいい」と思うかもしれないが、敵はロックオンを使うことを前提にしたようなかなり極端なモーションで攻撃してくる上、ロックオンボタンと射影機のエイム速度を上げるボタンが同一であるため、ロックオンを使わない=射影機の操作が遅くなる。
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また、後述のシャッターチャンス時のズームやフェイタルフレームコンボの仕様などから、ロックオンを使わないととても遊べたものではない。
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もちろんロックオンを使うことを前提になっているので、使ったところでヌルゲーになるわけではない。あくまでも「今までの『零』と比較した場合」である。
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シャッターチャンスやフェイタルフレームになるとズームされる。
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今までの作品でもシャッターチャンスやフェイタルフレーム時にはわずかにズームされていたが、今作のズームはかなり極端で周囲の様子が全く見えなくなってしまう。そのため、敵を巻き込むのが大変難しい。
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今作では霊力フルチャージが強制的にシャッターチャンスになるので、このズームになる場面はかなり多い。
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フェイタルフレームの過剰な優遇と、通常撮影の冷遇。
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霊力のチャージ自体は前作や1作目と似た仕様なのだが、通常撮影時の威力がとても低く、シャッターチャンスでも1.25倍の威力。しかも、敵がキャプチャーサークルから一瞬でも外れると霊力がゼロになってしまう。
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今までの作品では、敵がキャプチャーサークルから外れると徐々に霊力が下がっていったため、ゼロになる前に敵を捕捉し直せば再度途中からチャージすることができた。
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今作も厳密には同じ仕様であり、途中からのチャージも可能なのだが、1秒もしないうちにゼロになってしまうので、ほとんど活用できることはない。
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それに対し、フェイタルフレームは通常撮影の1.7倍もの威力である。しかも、コンボにつなげると最初にチャージされた霊力に関係なくフルチャージの威力になり、コンボがつながればつながるほど威力が上昇する。
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例えば、最強のカメラ&○七式フィルムでフルチャージのショット(シャッターチャンス)を10回決めると5000ダメージだが、威力1のショットでフェイタルコンボを10コンボまで決めると、15000程度のダメージになる。
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フェイタルフレームの撮影は少し難しいが、コンボの撮影は極めて簡単であり、全く同じタイミングでボタンを押し続けるだけ。1発目が決まってしまえばコンボはすべて決まったようなものなのだ。
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ただし、コンボを繋げる数には制限があり、残り体力に応じて3~8コンボまでの制限がある。
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この仕様により、通常撮影の利用価値は前々作以上に大暴落し、もはや何のために存在するのか分からないレベルになってしまった。
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もっとも、一発で1万を超えるダメージを叩き出したり、過去作では考えられなかった7桁台のスコアを出すのはなかなか爽快である。
ラスボスと真のラスボス
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本作はWiiコンを使ってピアノを弾く場面があるのだが、リズムに合わせて弾かなくてはならず、なかなか難しい。
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とはいえ、最後のピアノを除けばペナルティはないので、じっくり取り組めば良いのだが…。
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ラスボスを倒した後にピアノを弾く必要があり、ここで3回失敗するとラスボスが復活してしまう。
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強力なフィルムとレンズを使えば、数回撮影しただけで死んでしまう程にラスボスは弱い。その対極の如く、クリア目前のプレイヤーを嘲笑うかのように難しいピアノ。あまりの難しさに「本作の真のラスボスはピアノ」と言われる程。
問題点
大量かつ重大なバグの数々
本作の欠点を挙げるとすれば「バグ」の一言に尽きる。ここでは、中でも重要なバグを取り上げていく。
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フリーズバグ
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"三ノ蝕 忘日"にて「暗号のようなメモ」を入手し、灰原病院ニ階の医師詰所奥の扉を開こうとするとゲームが止まってしまう。
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ストーリーに関係のある扉では発生せず、いわゆる「寄り道」が好きな人が引っ掛かりやすい。バグが発生する条件を満たしたら、その扉には近づかずにいれば回避できる。
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やり残したことがある場合は、バグが起こる前のデータをロードするか、そのまま進めて次の刻でやりに行けばよい。
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霊リストバグ
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霊リストに、どうしても撮影できない霊がいる。
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厳密には撮影してもリストに載らない。
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このバグは、後述の特典バグとの結びつきが強い。
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特典バグ
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クリア後の特典に、どうしても解放できない項目がある。
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公式のアナウンスでは、上記の霊リストバグと合わせて「仕様(消し忘れ)」ということになっているのだが…。
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本作では、シリーズ恒例の「霊リスト完成時の特典」が存在しない。150体撮影や、200体撮影などの特典はあるのに、である。
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そして、有志の解析によって埋まらない霊リストをすべて埋めると、特典が解放されることが発覚した。ゲームのテストプレイをしていれば簡単に見つかりそうなバグなのだが…。
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ちなみにコスチュームは全て入手できるので、その点は安心して欲しい。
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難易度がおかしくなるバグ(通称:ルナティックバグ)
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難易度NIGHTMAREでクリアした直後のプレイでは、難易度EASYでも敵の攻撃力がNIGHTMARE並みになり、NIGHTMAREでは想像を絶する攻撃力になるというバグ。
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比較的規則性がみられるので実はバグではなく、「仕様ではないか」という見方もあり、またゲームが面白くなるバグなので割と好意的にみられている。
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なお、EASYでクリアすると元の攻撃力に戻る。
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上記からもわかるように、ストーリーにかかわるバグは少ないため、ライトユーザーには気にする人がほとんどおらず、事実ストーリーは普通に楽しめる。
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一方で、やり込み要素に致命的なバグがありながら修正版ディスクへの交換やパッチデータの配布などもなく仕様として完全放置を決め込んため、コア層からは多くの批判を受けた。
その他
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「咲」状態の仕様
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一定の条件下で悪霊を撮影すると、第二形態ともいうべき「咲状態」の姿になる。図鑑には元の霊とは別に登録されるので、コンプには悪霊ごとの咲状態の撮影は不可欠である。
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この「咲」状態への変化の条件に、面倒な要素が含まれている。
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基本はある程度まで体力を減らしてから、マックス状態で撮影すればよいのだが…。
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特定の蝕で現れた場合でなければ咲かないという仕様になっている(もしくは咲く確率が非常に低い)。
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そしてそれは霊ごとに決まっており、何時が咲く蝕の戦闘なのかは攻略サイトなども見ないとわからない。
例えば「白槻冬子」は一ノ蝕で戦闘になるが、このときは条件を満たしても咲かない。
咲くのは二ノ蝕 or 四ノ蝕で戦闘になったときだけ。
一方で「雨木一人」は一ノ蝕の初対面時から咲かせることができる。
以降もランダム戦闘として出現し、そのたびに咲かせることができる。
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さらに言えば条件を満たせば必ず咲くわけではなく、だいたい50%程度とされている。しかしこれも章ごとに若干上下するとも言われており、場合によっては何度もやり直すことになる。
---戦闘機会の少ない悪霊で咲かなかったときなどは面倒なことになる。
例えば「相庭伊織」は2回しか戦闘の機会がなく、2回とも対複数戦になる。
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そしてさらに、2体同時には咲かないという仕様も付いてくる。
片方ずつ咲かせてから倒せばいいが、対複数戦ということで難易度がちょっと高い。
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一応はさらなる解決策として周回して咲かせるというのもあるにはある。
ただその場合は誰が咲いてないのか、咲く戦闘はいつなのか、事前にメモをして戦闘前にセーブするという手間がかかる。
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特にいつが咲くタイミングの戦闘なのか分からないのでコンプ勢にはストレスになっている。
総評
続編が絶望的であった『零』シリーズの新作であり、Wiiの機能を意欲的に盛り込んだ作品。
プラットフォームも変わり、大きくモデルチェンジしたシステムに賛否はある。
しかし、相変わらず美麗なグラフィックとアクションゲームとしての質の良さは高く評価されている。
一方で簡単にわかりそうな致命的バグが放置され、やり込みに大きな支障が出ていることは否めず、未だに厳しい評価を受けているのもまた事実である。
しかし、Wiiを持っているホラゲーファンや、美少女が大好きなあなたには胸を張ってお勧めできる一品である。
余談
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廉価版の売り上げを除外すると、シリーズの中では最も販売数が多かった作品である。
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しかし、それでも任天堂が予想していたよりも売れなかったためか、海外での販売が中止されてしまった。
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このことは海外のファンを大いに悲しませ、有志によって英語化パッチが作られたほどである。
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著作権的にはアウトだがテーマソング『ゼロの調律』も英語バージョンである『ZERO』に差し変えられている。
その後の展開
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2023年3月9日にPS5/XSX/PS4/One/Switch/Winで本作のリマスター版が発売された。なお、こちらは海外でも発売された。
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新要素としてフォトモードが実装され、新規コスチュームも追加されたが、パンチラはできなくなってしまった。
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オリジナル版とリマスター版の比較動画
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最終更新:2024年08月11日 07:00