【きらーせぶん】
御主人様 ヤバイです
グラスホッパー・マニファクチュアとカプコンが組んだアクションアドベンチャー。
『ムーンライトシンドローム』『シルバー事件』『花と太陽と雨と』と言った非常に癖の強いゲームで知られるクリエイターにしてGHM代表の須田剛一氏が監督・脚本を手掛け、『バイオハザード』の生みの親である三上真司氏が制作総指揮を取った。
前述の作品のような尖った作風が特徴の須田氏だが本作はそれをとことんまで突き詰め、ゲームデザイン・シナリオ・システム・グラフィック・演出・BGMとあらゆる要素が他に類を見ない型破りなセンスに溢れた先鋭的作品となっており、須田氏とGHMの存在感を世界に示す出世作となった。
当初はカプコンのGC独占新作5タイトルの1つであり、2003年冬発売予定とされていたが延期の末にPS2版も発表され、2005年6月に2ハード同時発売となった。
基本どちらも同じだが、GC版の方が若干グラフィックの質が良い。また、日本のPS2版は一部表現に規制が掛かっている。
レーティングは発売当時は同ハードの『バイオハザード4』と同じくCERO:18歳以上対象(*1)だったが、2006年6月の改訂以降はGCで唯一のCERO:Z指定タイトルとしても名を刻んだ。
アドベンチャーを主に手掛けてきたGHMとしては初となるオリジナルのアクションゲーム(*2)であり、同時に初の世界的リリース作品である。
同社は本作を皮切りに、国内外に向けたアクションを主体に開発していく方向へと舵を切った。
神に笑いを、悪魔に慈悲を。
ハーマン・スミスは、“神殺し”の異名を持つ、神を殺せる唯一の殺し屋である。“多層人格者”であるハーマンが所有する7名の人格は、それぞれの特異な能力を殺しの手口としており、ハーマンは7人の人格とその特殊能力を使い分けることで、あらゆる困難な殺しを遂行してきたのだ。
──人は7人の人格を総称して、「killer7」と呼ぶ。
そんな殺し屋の存在とは対照的に、あらゆる国際紛争が終結し世界は平和を手にしていた。
しかし新たなる脅威が出現した…世界に蔓延する笑う顔現象─“ヘヴンスマイル”と呼ばれる暴爆徒が、世界中のあらゆる場所で突然“人間爆弾”となって自爆テロを引き起こしたのである。
政府はハーマンに“ヘヴンスマイル”の抹殺を依頼。ここに、宿怨の相手である“神の手を持つ男”、クン・ランとの戦いが再開するのである。合衆国は、混乱の時代に突入した───。
+ | スミス同盟の人格 |
+ | クリア後 |
極めて癖が強くパンクな作風が特徴の「須田ゲー」の中でも極致と言える怪作。
あらゆる要素において類似するものを持たず、そのハイセンス・先鋭的過ぎる内容は国内外の業界に衝撃を与え、パンククリエイター「SUDA51」として須田氏の名を世界に轟かせた。
「王道」や「万人向け」という言葉とはおおよそ対極に位置するゲームであり、そう言った点は最初から度外視されていることは明白である。
故に誰にでも勧められるなどとは到底言い得ないが、この不条理社会に魅せられ、飲み込まれた人にとっては本作は決して忘れられない唯一無二の逸品となるだろう。
また、奇抜さに反してゲームの作り自体は堅実であり、その点で言えば過去の須田ゲーよりとっつきやすいとも言える。
一般向けのゲームに飽きた人、生半可な奇ゲーでは満足できない人は、この「ハードで、ドライで、ナイフエッジ」な世界に思い切って飛び込んでみては如何だろうか。
*1 現在のCERO:Z(18歳以上のみ対象)とは異なり、18歳未満でも購入できた。
*2 オリジナル以外では、シャイニングシリーズの『シャイニング・ソウル』『シャイニング・ソウルII』を開発している。
*3 TARGET:06は非常に短いエピローグシナリオであり、TARGET:05が実質的な最終章になる。TARGET:05クリア時にも一度スタッフロールが流れる。
*4 GCではAボタン、PS2では◯ボタン。
*5 その章の上限に達すると血清精製機が故障し、担当のドクターも去ってしまう。これは章をやり直しても解除されない。
*6 生首を紙袋に入れるのは恐らく『ムーンライトシンドローム』のセルフオマージュであろう。
*7 ボス戦で負けた場合はボス部屋前に置かれるなど、回収不能になる心配は無い。
*8 「死闘」では相当能力を上げないと習得できないスキルである。
*9 敵の攻撃力・耐久力が高く、逆に血液・血清の上限がとにかく低い。挙句、腫瘍は一切見えないという高難易度。
*10 一方は日本のXEBECだが、もう一方はイギリスのunit9という制作チームであり、同じアニメムービーでも雰囲気からして全然違う。
*11 腫瘍を撃ち抜かず笑う顔を倒すと、何本もの赤い糸が飛び出る感じの滑稽な流血と共に死亡する。
*12 しかも、その見た目は「全身拘束着&ギャグボールを咥えて目蓋を縫っており、常に中空からロープで吊り下げられた」というとんでもない姿で、初見プレイヤーは大抵「ヤバイのはお前だ!」と突っ込むことだろう。
*13 Macに標準で搭載されている読み上げコンテンツで、その中でも奇声を選んでいる。他の須田作品にも見られる演出である。
*14 人格交代時と同じ演出だが、敵が軽快な音と共に粒子となって散り、操作キャラの決め台詞も聞ける。人格によっては「サノバ◯ッチ」「◯ァックユー」と明け透けに言い放つ。
*15 ただし、「負け犬」「無様」などとボロクソに言われる。
*16 須田氏によると、マスクだけで3部作のゲームが作れるほどの裏設定を作り込んでいるらしい。
*17 本編のエピローグもそれを示唆する形で終わっている。
*18 須田氏曰く「ぼくはドラッグもやりませんし、タバコもすいませんし、お酒は好きですけども、すぐに酔っ払ってしまいます」とのこと。
*19 ムービー後も死体がその場に残るのだが、日本PS2版では人間なのか笑う顔なのかよく分からない見た目になっている。