killer7

【きらーせぶん】

ジャンル 多層人格アクションアドベンチャー

対応機種 ニンテンドーゲームキューブ
プレイステーション2
Windows(Steam)
発売元 カプコン
【Win】NIS America, Inc.
開発元 グラスホッパー・マニファクチュア
【Win】Engine Software
発売日 2005年6月9日
定価 5,800円(税抜)
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
廉価版 【PS2】2007年5月24日/3,080円
配信 【Win】2018年11月16日/2,525円
備考 PS2版にのみ独自の表現規制あり
判定 良作
怪作
ポイント 全てにおいてセンスの塊
解読不能の不条理世界
GCで唯一のCERO:Z指定タイトル



御主人様 ヤバイです



概要

グラスホッパー・マニファクチュアとカプコンが組んだアクションアドベンチャー。
ムーンライトシンドローム』『シルバー事件』『花と太陽と雨と』と言った非常に癖の強いゲームで知られるクリエイターにしてGHM代表の須田剛一氏が監督・脚本を手掛け、『バイオハザード』の生みの親である三上真司氏が制作総指揮を取った。

前述の作品のような尖った作風が特徴の須田氏だが本作はそれをとことんまで突き詰め、ゲームデザイン・シナリオ・システム・グラフィック・演出・BGMとあらゆる要素が他に類を見ない型破りなセンスに溢れた先鋭的作品となっており、須田氏とGHMの存在感を世界に示す出世作となった。

当初はカプコンのGC独占新作5タイトルの1つであり、2003年冬発売予定とされていたが延期の末にPS2版も発表され、2005年6月に2ハード同時発売となった。
基本どちらも同じだが、GC版の方が若干グラフィックの質が良い。また、日本のPS2版は一部表現に規制が掛かっている。

レーティングは発売当時は同ハードの『バイオハザード4』と同じくCERO:18歳以上対象*1だったが、2006年6月の改訂以降はGCで唯一のCERO:Z指定タイトルとしても名を刻んだ。

アドベンチャーを主に手掛けてきたGHMとしては初となるオリジナルのアクションゲーム*2であり、同時に初の世界的リリース作品である。
同社は本作を皮切りに、国内外に向けたアクションを主体に開発していく方向へと舵を切った。


ストーリー

神に笑いを、悪魔に慈悲を。

ハーマン・スミスは、“神殺し”の異名を持つ、神を殺せる唯一の殺し屋である。“多層人格者”であるハーマンが所有する7名の人格は、それぞれの特異な能力を殺しの手口としており、ハーマンは7人の人格とその特殊能力を使い分けることで、あらゆる困難な殺しを遂行してきたのだ。

──人は7人の人格を総称して、「killer7」と呼ぶ。

そんな殺し屋の存在とは対照的に、あらゆる国際紛争が終結し世界は平和を手にしていた。
しかし新たなる脅威が出現した…

世界に蔓延する笑う顔現象─“ヘヴンスマイル”と呼ばれる暴爆徒が、世界中のあらゆる場所で突然“人間爆弾”となって自爆テロを引き起こしたのである。
政府はハーマンに“ヘヴンスマイル”の抹殺を依頼。ここに、宿怨の相手である“神の手を持つ男”、クン・ランとの戦いが再開するのである。

合衆国は、混乱の時代に突入した───。


ゲームシステム

  • 主人公は7つの人格を持つ殺し屋「スミス同盟」またの名を「キラー7」で、7つの人格を適宜切り替えながら敵を排除したり謎を解きつつステージを進んでいく。
    • 殺し屋なので大抵はターゲットの殺害依頼を受けて出発するのだが、どのターゲットも敵が蔓延りギミックが張り巡らされたアクションステージの奥で待ち受けているので、プレイヤーは戦闘と謎解きをこなしながらターゲットの元を目指す。
  • シナリオは『ムーンライトシンドローム』や『シルバー事件』のように章分けされており、1つの章をクリアする毎に新たな章がプレイ可能になる。
    • 章は殺し屋らしく「TARGET」と表記され、TARGET:00からTARGET:06までの全7章で構成される*3。しかしいくつかの章は前後編に分けられており、それを加味すると全体的な章数はもっと多い。
  • ゲームのイメージとしては「謎解きアドベンチャーの要素を持つアクションシューティング」だが、移動はスティックや十字キーを使わず「移動ボタン*4」を1つ押すだけで決められたルートを前進し、分かれ道に到達すればプレイヤーが進行方向を選ぶ形となる。
    • プレイヤーが自由に行える方向転換は180度ターンのみで、分かれ道以外では進むか戻るかの二択だけで主人公を操作する。
    • 調べられるポイント、話しかけられる人物に到達すればそれに応じてプレイヤーがアクションを選択する形となる。
    • 銃を構えるとファーストパーソンシューティングのような主観視点となり、照準を動かして敵を狙い撃つ。上記の点と併せ、アーケードのガンシューティングにも近いと言えるかもしれない。
    • 習得スキルによっては、這いずる敵を仕留めたり、飛び掛かってきた敵をカウンターアタックで倒せるようになる。
  • 笑う顔(ヘヴンスマイル)
    • 本作の主要な敵。本作の敵キャラはボスを除くとこの笑う顔のみである。
    • スミス同盟の宿敵であるクン・ランの「神の手」によって生み出された生体兵器であり、頬まで裂けた口と鋸のような牙を持つ。「笑う顔」の名の通り狂ったような笑い声を上げる習性がある。
    • 主な攻撃方法は自爆であり、人間を認知すると飛び掛かって爆発することで殺傷する。当然、自身も死ぬ。
    • 大半は「都市迷彩」によって透明化しており、肉眼ではほとんど見えない。しかしガルシアンの持つ「千里眼の指輪」の力により、主人公は笑う顔を可視化する「索敵」が可能となっている。主観視点時に索敵を行うと笑う顔が見えるようになる。
      • 索敵していない状態で笑う顔を認識するのは極めて困難だが、上述のように笑う顔は笑い声を上げる性質があり、主人公が近付くと必ず笑い声によって存在を知らせる。移動時に笑い声が聞こえたら攻撃体勢に入るのが基本となる。
    • ほとんどの笑う顔は体のどこかに「腫瘍」という弱点を持ち、ここを狙い撃てばクリティカルヒットとなり一撃で倒せる上に血も多く手に入る。連続でクリティカルヒットを出せば入手する血も多くなっていく。
      • 腫瘍は照準を合わせると黄色く光る。なので、狙う場合は敵の全身を舐め回すように調べる形に。
      • しかし狙いが定まるかどうかはパラメーターが影響するので、強化していないうちは腫瘍に照準を合わせたつもりでもなかなか命中しないことも。
      • 一部の笑う顔は腫瘍を持たないが、そう言った種類は固有の弱点があり、それを撃ち抜いてもクリティカルヒットとなる。
    • 腫瘍ほどではないが腕や足、頭部などを部位破壊しても血が稼げる。
  • 薄い血と濃い血
    • 笑う顔を倒すと手に入るリソース。薄い血は体力回復や必殺技の発動に使用する。濃い血はそのままでは使えないが能力強化に必要な「血清」の材料となる。どちらも章をクリアするとリセットされるが、血清は持ち越される。
    • 濃い血はクリティカルヒットで湯水の如く溜まっていくが章毎に作れる血清の上限は決まっており*5、能力強化の機会は限られている。誰のどのパラメーターを強化するかは考える必要がある。
  • 人格交代
    • よくある1つの肉体に複数の人格を持つ「多重人格」とは異なり、スミス同盟の「多層人格」は人格が交代すると肉体や特殊能力、所持品までもが全くの別人に変身するという特徴がある。
    • ぞれぞれの人格は戦闘時の性能はもちろん、ギミックに用いる能力も異なり、障害の突破や謎解きにも人格を交代しつつ各々の能力を駆使しなければならない。
    • 交代はいつでも可能。ただし、ハーマンは特定のシチュエーションでのみ、ガルシアンはハーマン部屋のテレビでしか交代できないので、それ以外の6人を適宜切り替えながら進める事になる。
      • また、ステージ開始時は寝ていて交代不可の人格もいるので、一定数の笑う顔を倒してハーマン部屋のテレビから起こさなけれなならない。
    • 敵の攻撃でやられると、その人格は生首が紙袋に収められてその場に放置される*6。その後、最後に立ち寄ったハーマン部屋から別の人格に交代して再開となる。死亡した人格はガルシアンが生首紙袋を回収して復活可能となる。
  • 謎解き
    • 本作は鍵となるアイテムは基本的に「 微妙 (ビミョー) 造形物 (アイテム)」という銀色のオブジェで統一されている。
      • 『バイオハザード』でよくある「窪みにはめ込むエンブレムや宝石」の類と言えるが、何故どこもこのような仕様で統一されているのかは一切説明されない。
    • スミス同盟は炎・水・風と言った属性の指輪を使え、これらを活用してオブジェクトを操作する。指輪はストーリーが進む毎に手に入る。
      • 謎解き用ではなく、装備すれば体力や攻撃力を上昇させる戦闘用の指輪もある。
    • 各所には「 羈絆門 (キハンモン)」という特殊な空間があり、中ボスにあたる「 種本体 (オリジナルズ)」と呼ばれる新型の笑う顔が待ち受ける。これを倒して突破すると羈絆門は消滅する。
      • 羈絆門を通るには魂の弾丸、略して「 魂弾 (タマタマ)」を規定数探し出して支払わなければならない。
    • これらに加えて各人格の特性を活かしたり、パスワードを探し出して入力すると言った謎解きを突破して先に進む。
  • 残留思念
    • 死者の思念。スミス同盟に殺された者達らしく、「千里眼の指輪」の力で存在を認知している。ハーマンに仕えるイワザルを始めとして要所要所に現れ、世界観や情勢の説明、謎解きのヒントなどをくれる。
    • ストーリー中に死亡した者が残留思念として再登場する場合もある。
  • ハーマン部屋
    • 物理構造を無視して各所に異空間のように点在する部屋。いわゆるセーブ部屋であり、テレビによる人格交代や人格の覚醒・血清の精製・能力強化を行う。
    • ハーマン部屋にはハーマンに付き従うサマンサがいるが彼女は部屋に応じて格好が異なり、メイド姿の時はセーブをしてくれる。しかし、私服姿の時はだらけてるだけで何の役にも立たない。よって本作は『バイオハザード』などと異なり、セーブ部屋だからと言って必ずセーブできるとは限らない。
    • 奥にはイワザルがいて、チュートリアルや遭遇した笑う顔の対処法を教えてくれる。
+ スミス同盟の人格
  • ハーマン・スミス
    • スミス同盟の最上位で判断の決定権を持つ総元帥。多層人格の能力者でもある謎多き人物。車椅子を必要とする身体で、普段はろくに動けず介護役のサマンサから一方的に虐待を受けているが、スミス同盟総帥として覚醒すると途端に貫禄のある指導者へと変貌する。このハーマンの下位に存在する下記の7つの人格で構成される実行部隊を「キラー7」と呼ぶ。
    • 公式サイトには「主人公」と書かれていたが、基本的に司令塔の役割なのでここぞと言う時以外は姿を見せず、平時は基本的にストーリーに絡まない。
    • 一部のシチュエーションでのみ操作可能で、武器は対戦車ライフル。
  • ガルシアン・スミス
    • キラー7を統率するリーダー格で、長身の黒人男性。普段は彼が表出して生活しており、依頼人との交渉も行う。ストーリーにおいても最もウエイトを占めた人格であり、本作の実質的な主人公と言える。
    • 冷静な性格でどのような依頼でも淡々とこなすプロだが、同時に情も解する人物でもある。
    • 武器はサイレンサー付き小型拳銃。戦闘の性能としてはリロードが速いぐらいしか取り柄が無く、低攻撃力&能力強化不可という弱キャラとなっている。他の人格と違ってハーマン部屋のテレビ以外では交代不可で、他の人格への交代も同様。指輪も使えない。
      • しかし死亡した人格を復活させる能力を持ち、他の人格が倒れた場合はその場所に赴いて死んだ人格の生首が収められた紙袋を回収すれば復活させられる*7
      • 逆に言えば、他の人格が死んだらペナルティのような形でガルシアンの操作を強要される形となる。そしてガルシアンが死亡するとゲームオーバーである。
  • ダン・スミス
    • アイルランド系で、ワイルドな出で立ちのクールガイ。本質は好戦的で、その容赦の無さから「暴君」の異名を持つ。銃を持つ手を肩の後ろに預けるポーズが特徴的。
    • ガルシアンに次いで出番が多く、特にTARGET:03では1章丸々使って掘り下げが行われている。性能面でも標準的で、ガルシアンをストーリー面での主役とするならダンはゲーム面での主役とも言える。
    • 武器はリボルバー。しかし攻撃力が高いが他の性能は中途半端で、最初のうちはオールラウンダーと言うより器用貧乏気味。しかし中盤で新武器を手に入れてからは一気に使い勝手が良くなる。
    • 特殊能力は「魔弾」。薄い血を3本消費して強力なチャージショットを放つ。特定の敵を倒す際にも必要となる。
  • カエデ・スミス
    • 日系人でスミス同盟の紅一点。陰鬱な性格で言動も攻撃的。血飛沫風の模様をあしらったワンピースを着ており、常に裸足で行動する。
    • 武器はスコープ付き自動拳銃。射撃時にはズームインが可能であり、貴重な狙撃要員となる。しかし体力は低めで動作も鈍い。特にリロードはもたつくので非常に遅く、接近されると一気にピンチになるという欠点がある。
    • 特殊能力は「血のシャワー」。リストカットして血を降らせ、壁や障害物を不可視化している結界を破壊する。また、血痕を吸収する事も可能。
  • ケヴィン・スミス
    • イギリス系のアルビノ。上半身裸でサングラスを掛けた怪しい風貌であり、一言も言葉を発しない。
    • 武器はナイフ。他の人格と違って銃は使わず投げナイフで攻撃するので、弾切れもリロードも無いが攻撃力が非常に低い。また、攻撃ボタンを押してから着弾までタイムラグがある。故に強敵との戦いには向かないが、攻撃時に照準がブレない性質があり、腫瘍を狙いやすいという利点がある。特に強化が進んでいない前半は血液稼ぎ要員として活躍しやすい。
    • 特殊能力は「透明化」。一定時間透明になり、敵に認識されないばかりかすり抜けも可能。センサーも反応しないので、セキュリティ突破にも利用する。
    • 特殊攻撃は「 二刀投げ (ツインスパークリング)」。広範囲にナイフの乱れ打ちを放つ。レベルが上がるとより強力な「 無限刀投げ (シャインスパークリング)」になる。
  • コヨーテ・スミス
    • プエルトリコ系のラフな格好の人格。元窃盗犯であり、非常に高い身体能力とピッキングの腕前を持つ。
    • 武器は改造リボルバー。突出した長所は無いがダン以上にバランス型であり、使いやすい。しかしダンの新武器入手後はお役御免になりがち。
    • 特殊能力は「デッドリージャンピング」。高いジャンプで高所にも登れる。また、南京錠を無条件で解錠できる。
    • 特殊攻撃は「特殊改良マグナム弾」。ダンの「魔弾」と似ているが、そちらに比べて使用する薄い血が少なく威力も低い。
  • コン・スミス
    • 華僑移民でスミス同盟の最年少。盲目の少年だが超人的聴力で視覚を補っている。
    • 武器は二丁拳銃。連射力が高く、移動速度もリロードも最速。しかし体力はカエデ以上に低く、下手に攻撃を受けるとすぐに死んでしまう。
    • 特殊能力は高速移動。元々早い移動速度がより速くなる。ステージを右往左往する場合が多い本作では重宝するが、油断すると笑う顔に突っ込んでしまう可能性も。
    • 特殊攻撃は持たず、他の人格ほど超常的な能力も無いが、小柄な体を生かして狭い通路を突破したり優れた聴力を活用する箇所がある。
  • マスク・ド・スミス
    • メキシコ出身で覆面レスラー。礼儀正しく穏健な性格で、現役プロレスラー時代はベビーフェイスだったらしい。
    • 武器は2丁グレネードランチャー。威力は高いが一発毎のリロードが必要で攻撃速度も遅く、何より腫瘍が狙い撃てないので使い所が難しい。しかし亀裂の入った壁を破壊するのに活用できる上、複数あるパワーアップイベントを経て最終的にはリロード不要の無限弾になる。体力も見た目通り高い。
    • 障害物をプロレス技で破壊したりマスクでしか倒せない敵が複数存在し、ピーキーな性能に反して出番は多め。
    • 特殊攻撃は「電撃弾」と「集束弾」。一部の敵を簡単に倒せる上に、これでしか倒せない敵もいる。しかもパワーアップ後は超強力なミサイル攻撃「ファイナルサーカス」を会得する。
    • このように特殊攻撃も多く、パワーアップイベントまで複数回存在するなど、須田氏のプロレス愛が形作ったキャラクターと言える。
  • 難易度選択
    • 本作の難易度はイージーにあたる「敢闘」とノーマル~ハードにあたる「死闘」に分けられる。
    • 「敢闘」は敵の耐久力が低い、血液・血清の上限が高い、謎解きのヒントが多い、索敵するだけで自動的に腫瘍に照準が合う*8など至れり尽くせりであり、アクションが苦手な人でもあまり苦労せずクリアできるだろう。
    • 「死闘」は前述の補正が無く、腫瘍も自分で見つけねばならないという歯応えのあるモードであり、アクションが得意な人ややり応えを求める人はこちらを選ぶと良い。
      • ちなみに、須田氏は最初は「死闘」のみを想定していたが、三上氏からのアドバイスで「敢闘」を追加したという。
+ クリア後
  • 一度クリアすると若き日のハーマン「ヤング・ハーマン」を使用可能な「killer8」がプレイ可能になる。難易度は「死闘」以上に難しい「血闘*9」で固定。
    • ヤング・ハーマンはサブマシンガンを得物とし、最強クラスのパラメーターを誇るキャラだが能力強化不可という重大な欠点があり、最終的には他の人格に抜かれがち。
  • 「killer8」をクリアすると、バッタの着ぐるみを着た「ホッパーマン」のみが襲い来るおまけゲーム「Hopper7」がプレイ可能。ステージはTARGET:00のみ。
    • ホッパーマンには腫瘍が存在しないが、何処を撃っても一撃で倒せるほど弱いので難易度は低い。

評価点

  • 全てにおいて類を見ないセンス
    • 卓越したセンスと独特の世界観で知られる「須田ゲー」だが、本作はその極地と言えるほどにあらゆる要素がスタイリッシュ且つ不条理極まりないセンスで構成されている。
      • パッケージ裏にある「ハードで、ドライで、ナイフエッジ。この不条理社会に酔・い・シ・れ・ろ」に偽りは無い。
  • スタイリッシュな映像表現
    • モデルはトゥーンレンダリングで表現されるが、コントラストを突き詰めたシャープな陰影により同系統のゲームとは一線を画したクールな造形を実現している。
      • 花と太陽と雨と』の方向性を突き詰めたとも言えるが、デフォルメを利かせたあちらと異なりキャラの造形そのものも世界観に合致する形でよく作られている。
    • イベントシーンの字幕では文字が常に脈動し続け、仮名文字と漢字は意図的に書体やサイズを変え、漢字には当て字を多用したルビを振ったりと、タイポグラフィのセンスも目を見張るものがある。
      • 「死」「殺」の文字は常に赤文字で描かれ、出血を想起させるアニメーションが施されている。加えて「殺る」は「トる」と読むなど独特のスタイルが前述の表現や須田節全開の台詞回しと共にプレイヤーを否応なしに不条理社会へと引き込んでいく。
    • 加えて『シルバー事件』でも見られた「シナリオと雰囲気の提示のためにビジュアルコンセプトを大胆に変える」という試みは本作にも見られ、シナリオによってはイベントシーンが2Dアニメで描かれる。しかも制作会社を2社招いて絵柄と表現が異なるアニメを用意する拘りぶりである*10
  • 残虐性・狂気・理不尽・インモラル・メッセージ性・悲哀・電波・風刺・ギャグ・陰謀・超科学と様々な要素が混在した難解なシナリオ
    • 過去の須田作品にも見られた題材や作風を含め無造作に詰め込み、ショッキングで混沌とした様相を見せながらも妙な説得力を持ち、プレイヤーを惹き付けて離さない魔力を放つ。
      • 須田作品らしい独特の台詞回しはより強烈なものになり、比喩・暴言・下ネタ・ジョークを織り交ぜた端的なテキスト群が前述のタイポグラフィと共に本作の雰囲気を唯一無二の代物へと昇華している。
    • 大筋は「笑う顔という災害級のテロに、その抹殺依頼を受けたキラー7が立ち向かう」というものだが序盤を過ぎるとその流れは薄れ、章毎に全然違う行動理念で依頼に向かう形となる。
      • 章毎の直接的な繋がりは無く、各章のテーマもバラバラ。それどころか前述のように映像表現自体もバラバラで、宛らシナリオの多層人格とも言うべき構造となっている。しかし、意外な所に伏線が張られている場合もあるので油断ならない。
    • TARGET:01からして「日本に向けて200発のミサイルが放たれる」という常軌を逸した展開から始まる。では着弾を阻止する展開になるかと言うとそうではなく国家間の政治的駆け引きや、この事態に乗じたいくつもの勢力の策謀が交錯する様が描かれ、最後は衝撃的な結末を迎える。
    • 子供の誘拐と臓器売買や小児性愛と言った過酷でセンシティブなテーマ、一般人の虐殺などのショッキングな描写も包み隠さず盛り込まれている。
      • ただ、独特のキャラ造形や映像表現もあってリアルさやグロテスクさは然程ではない。出血表現も赤い粒子が飛び散る感じの独特の表現になっている*11
    • 作風自体は極めて硬派だがコメディタッチの演出もあり、過去作でも見られた人を喰ったシニカルジョークも多数存在する。
      • ギャグ方面では吹っ切れたような演出も多く、特に「 教育的指導促進委員会会長 (ヘッドマスターニートガール) アヤメ・ブラックバーン サバイブ」「匿名仕置戦隊ハンサムマン」は何のゲームかと突っ込みたくなるほどのぶっ飛びぶりで笑わせてくれる。
      • しかしこう言ったネタ要素の背景は決まって後ろ暗く薄ら寒いものであり、ふざけたノリの裏に底知れぬ闇を感じさせるのも本作の特徴である。
      • コメディタッチのシナリオも、その裏にあるテーマは「急速な発展を遂げる都市の狂った実態」「企業によって歪められるクリエイターの作家性」などといったシリアスなものである。
    • ストーリーの根幹には「知らぬ間に個人の存在が権力に管理される恐ろしさ」という『シルバー事件』に通じるテーマもある。
  • 強烈なキャラクター
    • 須田作品らしく一癖も二癖もあるキャラクターは健在。本作は世界観のイカれぶりも相まってその度合いは過去最高と言っていい。
    • 特にステージ中に現れる残留思念は「 御主人様 (マスター) ヤバイです」を始めとする丁寧なのか失礼なのか判断に困る言い回しで助言を与え続けるイワザル*12、いちいちその場に適応した現れ方をしつつ「ぶっちゃけ」「実際」「-だべ」と言ったくだけた口調で状況を要約してくれるトラヴィス、ヤンデレも真っ青の自分語りを顔文字を交えつつ行う生首少女スージーなど、どれも「個性的」という言葉では収まらないほどの存在感を放つ。
      • 見た目や発言内容に加え、大半の残留思念の台詞には合成音声*13が使用されているので余計にインパクトは強い。
      • 挑発的でイカれた連中であるが、ステージ探索がプレイ時間の大半を占める本作では最も相対するキャラクターであり、不思議と愛着が湧いてくるというプレイヤーは多数。
  • 独特ながらアクションゲームとしても破綻の無い作り
    • ゲーム性の薄い作品の多かったGHMだが、本作はカプコンが関わっているためか他のアクションゲームと比較しても遜色ない完成度である。
      • 基本はオーソドックスなガンシューティングながら、見えない敵の索敵、迫り来る敵の弱点を狙い撃つ緊張感とクリティカルを決めた時の爽快感*14と、本作独自のプレイ感覚が味わえる。
    • 珍妙な謎解きギミック、物理法則を無視した構造、生首を回収して復活させる仕様など、奇抜な要素が揃っているものの、いずれも不条理世界を表現しつつアクションゲームとしてプレイヤーを楽しませる作りになっている。
      • 謎解きは奇抜ではあるが、ヒントを教えてくれる残留思念が存在し、分からなければ濃い血と引き換えにより直接的なヒントも貰える*15親切設計なので、詰まることはそうそう無いだろう。
    • アクション面に加え、人格の使い分け、限りある血清の振り分けなどの戦略性も備えており、長丁場が多いステージを飽きずに進められる。
    • 移動ボタン一つで進む進行方向は一見退屈そうにも思えるが、制作側の意図したカメラワークに違和感なく移行させて移動パートにライブ感を与えたり、プレイヤー側の操作のブレをなくすという利点につながっており、どこにアイテムや入り口、ギミックがあるのか分からないという心配も無い。
      • 視点が限定されるので敵が見え辛くなる、という想定されるであろう問題も上述の「笑い声」と「都市迷彩」でクリアしているのも見事。
    • 各ステージには個性的なギミックがあり、基本が繰り返しのゲーム進行の中で飽きさせない工夫もある。
    • ボスもまた非常に個性的であり、「ひたすら互いに銃を撃ち合って当てた弾数を競う」「鳩が飛ぶの合図に早撃ち勝負」と言った独自ルールを設けるボスや、「パックリ割れた頭から脳漿を飛ばして攻撃」「触手で繋がったアフロヘアーが弱点」と言った頭のネジがぶっ飛んだボスなど様々。
      • TARGET:00のボスからしてまさかの萌えキャラであり、しかし本格的に戦闘が始まるとホラーな見た目になるというギャップも皮肉の利いた演出で意表を突く。
      • これらボスは直前に倒し方のヒントを教える残留思念が現れる。しかしどれも奇抜な上にヒントも抽象的なので、実際に戦ってから突破口に気付くパターンも多い。
  • GHMらしくBGMも良質
    • 作曲はGHM作品や『地球防衛軍』シリーズなどのサンドロット作品でお馴染みの高田雅史氏と、後に『ノーモア★ヒーローズ』シリーズを手掛ける福田淳氏。世界観にマッチした楽曲が揃っており、プレイヤーの体験する不条理社会をクールでパンク、時にサイコに彩る。

賛否両論点

  • 過激でインモラルで容赦がなく悪ふざけも全開。その極めて攻撃的な内容は当然ながらは激しく人を選び、とても幅広い層に勧められるものではない。
    • 数々の不条理な展開や演出も、付いていけない人は即座に置き去りにされ、ただ唖然とするしかないほどに尖りきっている。
    • 謎解きも理解不能なものばかり。過去作でもガイドブックを読んでやっと答えが分かるような奇抜な謎解きはあったが、今作では羈絆門や微妙な造形物ばかりか通常の謎解きまで最早「考えたら負け」なレベル。よく突っ込まれる『バイオハザード』のセキュリティすら普通に見えるほどである。
      • 幸い常識にさえ囚われなければ、謎解きの方向性は比較的分かりやすい部類なのでその点での理不尽さはない。
    • 逆に言えば、合致した人にとっては古今東西のどのゲームでもまず味わえない刺激的な体験により、このゲームは決して忘れられぬほど心に刻み込まれるだろう。

問題点

  • 笑う顔との戦闘は腫瘍を探して狙い撃つのが基本であり、腫瘍に当てると攻撃力に関係なく一撃で倒せるので攻撃力強化の旨みが少ない。
    • ボスも大半が「特定の弱点に一定回数当てて倒す」タイプであり、こちらでもあまり活かせない。かと言って全く鍛えずにいると、例外的にいるやたら体力の高いボスに苦戦する。
  • 移動ボタン一つでレール状に移動する仕様は上述のような利点がある一方、進行方向が分かりづらいという問題もある。
    • カメラが目まぐるしく変わるので、自分がどの方向を向いているのかすぐに分からなくなる。一応、分岐点では方角が表示されるがそれでも分かりにくい。
    • マップは参照可能だが、本作は『バイオハザード』と同様に「現在地の部屋の色が変わる」仕様で主人公の向きは表示されない。このマップと前述の方角、そして周囲の構造と照らし合わせて方向を見出すしかない。
  • 銃撃時には残弾数が表示されない。
    • 確かにモデルチェンジ前の『バイオハザード』でも表示はされなかったし、ある意味リアルとも言えるが、ガンシューティング要素の強い本作では不親切でもある。慣れないうちは思わぬリロードで敵の接触を許しがち。
  • 笑う顔の攻撃方法は基本的に自爆のみなので迫り来る笑う顔をひたすら撃ち倒す「()られる前に()る」戦法が戦闘の基本であり、やや単調さも否めない。
    • また、ダメージは連続でヒットするので、複数の笑う顔に組み付かれると体力の低い人格ではあっという間に()られてしまう。
  • 人格復活時の生命力注入がきつい
    • ボタンを連打してゲージを貯めるのだが、このゲージは連打力が足りないと減少していく。つまり一定以上の連打をゲージが溜まるまでキープしなければならない。しかもこのゲージは体力値に応じて変わるので、最大体力のマスクの復活は本当に指が疲れる。
  • 後半はまともなボスがいなくなる。
    • TARGET:03までは個性的なボスが登場するのだが、TARGET:04以降はボスらしいボスが一切登場せず、そのまま最後まで行ってしまう。
    • TARGET:04のボスはハーマン含む全人格と相手側が1人ずつ対戦していくのだが、誰が勝って誰が負けるのかが最初から決まっており、大層な演出が入る割には完全な出来レースとなっている。
    • TARGET:05のボスは実質的なラスボスだが、これも決められた手順に従うだけの予定調和。展開も相まって虚無感に苛まれるかもしれない。そしてエピローグとなるTARGET:06のラストは棒立ちする敵をただ数発撃つだけ。
      • 強敵という意味ではTARGET:05の最後の羈絆門に出る種本体の方が該当する。しかしこれも倒し方が判ればあっさり倒せる。
    • 『ムーンライトシンドローム』『シルバー事件』『michigan』などでも最後の敵があっさり倒されるのがお約束であり、須田作品らしいプレイヤーを喰ったような意表を突く演出という面もあるのだが、アドベンチャーのこれらに対して本格アクションの本作の場合だと拍子抜け感が強い。また、せっかくの強化も活かせないまま終わってしまう。
      • これを顧みたのかは定かではないが、以降の須田作品ではちゃんとしたラスボスが登場するようになった。
  • ストーリーは本当に理解不能
    • 残虐性や性的表現などの人を選ぶ部分を別にしても、ストーリーは複雑怪奇にして難解極まりなく、それでいて説明不足であり、全て理解するのはまず不可能である。
    • 終盤の展開は本当に難解であり、唐突で投げっぱなしな部分も少なくない。多くの謎や思わせぶりな演出に対して当然のように解答が与えられないまま完結するので、初回プレイでは何が何だか分からないまま終わってしまう人も少なくないだろう。
    • そもそも本編中に得られる情報は全体の3割にも満たないとされ、プレイを繰り返したところで疑問は解消されるどころか逆に「2歩進んで3歩下がる」と評されるほど増えていく。
      • 大前提となる「多層人格」の仕組みに関してもゲーム中には詳しく説明されない。ゲームだけではどうして別人に変身するのかも、何故TARGET:03でダン個人の過去が語られるのかもよく判らないかもしれない。
    • この理解させることを放棄してプレイヤーを煙に巻く構造は須田作品ではお馴染みであるものの、今作は本当に複雑にして情報が少ないのでその度合いは段違い。
    • 加えて本作は実は須田氏が用意したシナリオの3分の1しか使用されなかったとされているので、余計に混乱を深める構造になっていると思われる。
      • 個性的な残留思念も、実はこのシナリオカットで生じた齟齬や空白を補間するために急遽生み出されたキャラである。
    • こう言った点は考察好きのプレイヤーに好まれ、本作も実際にネット上では多くの考察で賑わっていたが、ゲーム本編だけではその材料も十分に手に入らない。
      • その手掛かりを得るため、後述する副読本『Hand in killer7』が発売されているが、再版はされておらず現在はプレミア化してしまっている。
  • 人格の掘り下げ格差
    • ゲーム進行にはどの人格も活躍の場があるのだが、ストーリー中での扱いは差が激しい。メインであるハーマン、ガルシアンを除くと、ダンは主役のTARGET:03ばかりかTARGET:04でもアニメの中で活躍しており、マスクは作者の愛すら感じるほどやたらと目立つ*16。対して、他の人格はろくにイベントにも登場せず、ほとんど掘り下げが成されていない。
    • 喋らないケヴィンは元より、カエデもコヨーテも作中の台詞は皆無であり、戦闘時と人格選択画面ぐらいでしか喋らない。コンはハンサムマンのイベントで喋るがその程度であり、イベント中の活躍は皆無。彼らの人柄や過去について知りたければ『Hand in killer7』を読むしかない。
    • 人格間のやり取りも特に無い。実際は「ハーマンを敵視しつつガルシアンとは協調関係を結ぶダン」「ダンとコヨーテの間で乙女心が揺れ動くカエデ」「コヨーテを慕い、ダンを快く思わないコン」などの関係性が存在するのだが、これも本編だけでは人格選択画面のボイスで多少仄めかされる程度でしか描かれない。
    • 上述の通りシナリオの3分の2が未使用とするならば、その中に彼らの活躍や掘り下げの場があったのかもしれない。
      • 事実、後述する「Grasshopper Direct 2024!」の中でGHMの市来信高氏が「コヨーテはもともとのシナリオではめちゃくちゃ喋ってた」と明かしている。

総評

極めて癖が強くパンクな作風が特徴の「須田ゲー」の中でも極致と言える怪作。
あらゆる要素において類似するものを持たず、そのハイセンス・先鋭的過ぎる内容は国内外の業界に衝撃を与え、パンククリエイター「SUDA51」として須田氏の名を世界に轟かせた。
「王道」や「万人向け」という言葉とはおおよそ対極に位置するゲームであり、そう言った点は最初から度外視されていることは明白である。
故に誰にでも勧められるなどとは到底言い得ないが、この不条理社会に魅せられ、飲み込まれた人にとっては本作は決して忘れられない唯一無二の逸品となるだろう。
また、奇抜さに反してゲームの作り自体は堅実であり、その点で言えば過去の須田ゲーよりとっつきやすいとも言える。
一般向けのゲームに飽きた人、生半可な奇ゲーでは満足できない人は、この「ハードで、ドライで、ナイフエッジ」な世界に思い切って飛び込んでみては如何だろうか。


移植

  • 2018年3月のグラスホッパー・マニファクチュア創業20周年記念兼『シルバー2425』発売イベントにて、須田氏自身から『シルバー事件』に続く本作と『花と太陽と雨と』のリマスターが公言された。
    • この際は氏は「ちゃんと、あの……10年以内に実現したいと思っています」と語っていたが、本作はその年のうちにSteam版が実現。同年11月に発売に至った。
      • 言語は英語・フランス語・ドイツ語・日本語の4ヶ国語に対応。グラフィックはGC版をベースに精細化され、1080p/60fpsにも対応している。
      • PCゲームなので当然ながらキーボードとマウスでの操作も可能になっており、特に射撃はマウスでやると細かい狙いが付けやすいという利点がある。
      • ゲームそのものもGC版がベースになっており、冒頭のチュートリアルやセーブ時などのテキストが全てGCコントローラを使っている際の操作説明になっている。
      • ちなみに、オリジナルの英語版は残留思念の台詞にしか字幕が表示されなかったが、このリマスター版ではムービーでも英語字幕が表示されるようになっている。
      • 開発は海外のEngine Softwareが担当。同社は後に『ノーモア★ヒーローズ』シリーズのリマスターも担当する。

余談

  • ゲームから約2ヶ月後に副読本『Hand in killer7 -Kill the past, Jump over the age.-』が発売された。これを読むことで多くの情報が提示され、疑問もかなり解消される。
    • しかし、この本においても解けない謎や新たな謎が多数提示され、実は本編で描かれた出来事にはもっと大きな裏側が存在しており殺し屋キラー7の物語は数百年に渡る戦いのほんの一幕に過ぎない*17という、さらなる混乱を招く設定が明かされるため、結局は本作の全貌はまるで見えてこない。
    • 副読本のインタビューで須田氏による解説も行われているが、その氏自身が自分の発言が嘘である可能性を匂わせたりと、最早理解させる気が無い模様。
    • 公式の見解も「理解するよりも感じるべきであり、プレイヤー各人が自分なりの解釈をすべき」となっており、最終的な結論は各々の解釈に委ねられている。
    • 現在、この本の入手は容易ではないが、Wikipediaの本作の記事にはある程度の情報が書かれている。クリア後に見てみるといくつかの疑問は解けるだろう。無論、クリア前は閲覧注意。
  • 海外では特に高い人気を誇り、多くの賞で受賞・ノミネートを果たしている。
    • しかしその海外からは「きみはなんでこんな気の狂ったゲームを作ったんだ」「きっとドラッグをやりながらゲームを作ってるんじゃないか」と散々言われたという*18
    • 対して須田氏はこのようなゲームを作る理由として「人と同じことをするのが凄く嫌い。誰もやってないことをやりたい」「大手が作るのとは全く違う、誰も考え付かないゲームを作るのが役目だと思ってる」と言った旨を語っている。
  • 奇抜なアイデアだらけの作品だが、須田氏が理由を説明すると三上氏は大笑いしながら大抵はOKを出していたという(参照)。
    • 上述の「脳漿を飛ばしてくるボス」に関しても当然「なんでそんなことを考えついたんだ?」と聞かれたが、「こういうことをぼくがやりたいから」と答えたら即採用されたとか。
    • そんな中、タイトルに関して意見を求めた時に一度だけ須田氏が三上氏に怒られたという。「Killer」と付くタイトルをGCで発売することが任天堂的にNGではないかとカプコン側から指摘を受け、新しいタイトルを一緒に考えるように頼んだところ「なんでディレクターの君が考えないんだ」と激怒されたらしい。結果、須田氏の決定はそのまま採用され、当初のタイトルのまま問題無く発売された。
  • 須田氏自身によるスピンオフ小説「killer is dead ~殺し屋は死んだ~」が『電撃PS2』誌上にて連載されたが、第6回を最後に途切れている。
    • 元々全7回予定であり、「最終回直前 須田剛一スペシャルインタビュー」なるものも掲載されておきながら、その最終回は掲載延期になり、そのまま未完の実質的な打ち切りとなった。
    • 掲載から約10年後の2016年にファミ通.comにて再掲載されたがこちらも第4回までしか掲載されず、いずれにせよ未完のままである(参照)。
    • 「killer is dead」というタイトルは後に別作品に用いられた。また、この小説の主人公であるシゲキ・バーキンは『ノーモア★ヒーローズ』に登場するバッドガールの父親へと再設定され、『Travis Strikes Again: No More Heroes』にて主人公のひとり「バッドマン」として登場を果たした。
      • この小説の中では本作のダンの過去も描かれ、シゲキとも出会っている。その設定を引き継いでか、ダンは『Travis Strikes Again: No More Heroes』に声優もそのままに出演している。
  • 本作の半年前に発売され、同じく三上氏が携わった『バイオハザード4』では本作に肖った「キラー7」というマグナムが登場する。
    • しかし、モデルはマグナム使用者のダンやコヨーテではなくカエデの銃である。
    • この「キラー7」は18年後に発売された同作のリメイク版『バイオハザードRE:4』にも登場している。
  • サウンドトラックに収録された未使用曲「Reflect」は、後に高田雅史氏がセルフリメイクした「IceCube Pf.(RX-Ver.S.P.L)」としてPS2版『beatmania IIDX 12 HAPPY SKY』に収録されている。
  • 当時ソニーが自主規制を強化していた関係もあってか、概要で述べた通り日本PS2版では一部表現が隠蔽か控えめに変更されている。
    • 例えばTARGET:00で笑う顔の爆発により若者の首が飛ぶ表現を削除していたり、女性が身体の後ろを剥ぎ取られて殺されるシーンではその部分を映さないようにカメラアングルを変更していたり*19、など。
    • TARGET:02冒頭ではサマンサがハーマンに跨って喘ぐシーンがあるのだが、日本PS2版では謎の音楽が流れて喘ぎ声が聞こえなくなっており、サマンサがハーマンから降りるシーンがカットされている。音楽にノっているだけなように見せているのだろうが、サマンサの表情がそのままなのでちょっと苦しい誤魔化し方にも思える。
    • スージーが規制音だらけの過激な発言をするシーンではその台詞が丸々カットされている。元々規制音で伏せられている台詞をカットしても仕方ないような気もするが…。
    • 規制が掛かっているのは日本版のみであり、海外ではPS2版も無規制となっている。無論、Steam版もGC版ベースということもあり、日本語設定にしても規制は無い。
  • 日本版、海外版共に英語音声だが、実は合成音声で話す残留思念の台詞は海外版で変わっている。
    • 日本版は元の脚本をそのまま質の低い機械翻訳に放り込んだような感じだが、海外版では英語圏の人にも自然に伝わるように書き直されている。声質もやや違っている。
      • 例えばイワザルが毎回言う「(ワレ)はハーマンの()(モト)に」は、日本版では「The waywardness is under harman's name」で、海外版では「In the name of Harman」になっている。
      • 海外版の台詞はしっかり元の意味が伝わる言い回しだが、日本版の台詞を日本語にすると「 我侭 (ワガママ)はハーマンの 名前 (ナマエ)(シタ)」という意味不明な文言になる。
    • しかし、通常の台詞は翻訳の質を海外のディレクターに褒められるほどだったらしく、本作の翻訳そのものが低品質な訳ではない。詳しい理由は不明だが、日本版では細かく手が回らなかった合成音声部分を海外版発売までに修正したという事なのかもしれない。
    • 実際、ほとんどの日本人プレイヤーにとっては字幕の方がメインであり、合成音声の英語を正確に聞き取れる人も多くはないのであまり突っ込まれなかった。
      • ちなみにSteam版には両方の音声が収録されており、日本語設定にすれば修正前の音声になる。
  • GHMは本作の後はしばらく『サムライチャンプルー』や『BLOOD+』と言ったアニメ作品のゲーム化を手掛けるが、そう言った作品にも須田カラーは色濃く現れている。
    • 特に『BLOOD+ ONE NIGHT KISS』はキャラゲーでありながら本作を踏襲したような映像表現となっている。
  • 本作の後、須田氏は『Kurayami』なるサバイバルアクションを考案し、再び三上氏に持ちかけて企画が始まった。
    • しかし、紆余曲折あり結局『Kurayami』は名前通り日の目を見ることなく、須田氏と三上氏のコラボレーション第2弾は当初の構想と全く異なる『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』としてリリースされた。
    • 『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』および『Kurayami』の没案は別タイトルの『Black Knight Sword』や漫画『暗闇ダンス』にて再利用されている。
  • 2024年7月31日に配信されたGHMの公式番組「Grasshopper Direct 2024!」において、須田氏が本作の完全版および続編のリリースに意欲を示した。動画はこちら。
最終更新:2024年08月07日 16:24

*1 現在のCERO:Z(18歳以上のみ対象)とは異なり、18歳未満でも購入できた。

*2 オリジナル以外では、シャイニングシリーズの『シャイニング・ソウル』『シャイニング・ソウルII』を開発している。

*3 TARGET:06は非常に短いエピローグシナリオであり、TARGET:05が実質的な最終章になる。TARGET:05クリア時にも一度スタッフロールが流れる。

*4 GCではAボタン、PS2では◯ボタン。

*5 その章の上限に達すると血清精製機が故障し、担当のドクターも去ってしまう。これは章をやり直しても解除されない。

*6 生首を紙袋に入れるのは恐らく『ムーンライトシンドローム』のセルフオマージュであろう。

*7 ボス戦で負けた場合はボス部屋前に置かれるなど、回収不能になる心配は無い。

*8 「死闘」では相当能力を上げないと習得できないスキルである。

*9 敵の攻撃力・耐久力が高く、逆に血液・血清の上限がとにかく低い。挙句、腫瘍は一切見えないという高難易度。

*10 一方は日本のXEBECだが、もう一方はイギリスのunit9という制作チームであり、同じアニメムービーでも雰囲気からして全然違う。

*11 腫瘍を撃ち抜かず笑う顔を倒すと、何本もの赤い糸が飛び出る感じの滑稽な流血と共に死亡する。

*12 しかも、その見た目は「全身拘束着&ギャグボールを咥えて目蓋を縫っており、常に中空からロープで吊り下げられた」というとんでもない姿で、初見プレイヤーは大抵「ヤバイのはお前だ!」と突っ込むことだろう。

*13 Macに標準で搭載されている読み上げコンテンツで、その中でも奇声を選んでいる。他の須田作品にも見られる演出である。

*14 人格交代時と同じ演出だが、敵が軽快な音と共に粒子となって散り、操作キャラの決め台詞も聞ける。人格によっては「サノバ◯ッチ」「◯ァックユー」と明け透けに言い放つ。

*15 ただし、「負け犬」「無様」などとボロクソに言われる。

*16 須田氏によると、マスクだけで3部作のゲームが作れるほどの裏設定を作り込んでいるらしい。

*17 本編のエピローグもそれを示唆する形で終わっている。

*18 須田氏曰く「ぼくはドラッグもやりませんし、タバコもすいませんし、お酒は好きですけども、すぐに酔っ払ってしまいます」とのこと。

*19 ムービー後も死体がその場に残るのだが、日本PS2版では人間なのか笑う顔なのかよく分からない見た目になっている。