塊魂 ノ・ビ~タ
【かたまりだましい の・び~た】
ジャンル
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さわって、転がして、大きくするゲーム
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対応機種
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プレイステーション・ヴィータ
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メディア
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PS Vitaカード / ダウンロードソフト
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発売・開発元
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バンダイナムコゲームス
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発売日
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2011年12月17日
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定価
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パッケージ版:4,980円 / DL版:4,480円
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プレイ人数
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1人
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通信機能
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PlayStation Network対応
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セーブデータ
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3個
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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なし
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ポイント
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伸びる縮むシステムの導入 大幅なボリュームダウン 中古品の流通を遅らせるための面倒なシステム アコギな(実質)有料追加ステージ
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塊魂シリーズ
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概要
PlayStation Vita発売と同時に発売されたローンチタイトル。
プレイヤーは「王子」(身長 5cm)となり、親である「王様」(かなり大きい・今作からリアルな顔になった)に代わり、塊を転がして大きくしていくという3Dアクションパズルゲーム。
大コスモの守護神であり絶対的な存在であるはずの「王様」がニート同然の情けない姿となり「校長センセイと同じくらい偉い」と言われるまでに落ちぶれてしまった。
「塊」で星を作り王様の元気の源である「腹コスモ」を星でいっぱいにして王様に幻滅している「塊魂ファン」(=王様ファン)達を満足させようというストーリー。
特徴
基本システムを始めとする特徴の多くは、初代『塊魂』とほぼ同様である。
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基本操作で使うのはアナログスティック2本、またはタッチパネルのみ。
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王子の操作する塊をステージ上に存在するものに接触させ巻き込んでいく。塊と比較して小さいものであれば巻き込み、塊にくっつけていくことが可能で、雪だるまを作る要領で塊を大きくしていくことでビルなどの大きなものを巻き込むことができるようになる。
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塊が小さい段階では大きくて弾き飛ばされる障害物も、塊が大きくなっていくと巻き込めるようになるという快感がある。
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前作で初導入された操作である「王子ホッピング」が続投されている。これはいわばジャンプで、高い障害物を楽に乗り越えられる。
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新要素として、前作まで球状のみだった塊を変形させることができるようになった。操作には前面/背面タッチパッドを使い、開くようにこすれば横に、閉じるようにこすれば縦に塊が伸びる。
評価点
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PS Vitaの2本のアナログステックにより据え置き機と同様の操作を初めて携帯機で実現できるようになった。
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新要素である塊の変形。
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「伸ばして」横に細長くすることで多くのものを同時に巻き込んだり、「縮めて」縦に細長くすることで狭い場所にも入り込めるようになった。
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前作までは何度もUターンして巻き込んでいたものを一度に巻き込めるのは爽快。また、狭い場所で巻き込んでいたら塊が大きくなりすぎて出られなくなるというストレスを軽減した。
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いままで2Dで描写されていた「王様」が3Dとなり、ゲーム内でさまざまな面白いポーズをとるようになった。
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シリーズおなじみ、本業のアーティストが多数参加する「素敵ソング」。
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今作のサウンドディレクターは、今までのシリーズで活躍してきた三宅優氏に代わり井上拓氏が担当。今日『アイドルマスター』シリーズなどで知られる氏が初めてサウンドディレクションを務めた作品である。
今までのシリーズで培われた「塊魂らしさ」を活かしつつ、新鮮さのあるジャンル・テイストで仕上げられた名曲が盛りだくさんとなっている。
また、新規曲の一方で過去作楽曲のアレンジも複数収録されており、シリーズファンがより楽しめるようになっている。
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メインテーマはこちらもシリーズおなじみ、松崎しげるの歌う「塊オン・ザ・ステージ」。『みんな大好き塊魂』の「塊オンザスウィング」の流れを継ぐ、明るく元気の出るスウィングジャズとなっている。
ステージ曲としては最終ステージで流れるが、最初は氏の歌唱がないインストバージョンであり、塊が大きくなると歌を聴くことができるという仕様になっている。
問題点
過去作と比べボリュームが少ない
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ステージ数
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初代は基本ステージ10個、特殊ステージ9個の合計19個あったのに対し、本作はDLC無しで基本ステージ8個、特殊ステージ4個の合計12個で、
初代と比べて7ステージ少ない。
そのボリュームの少なさは、初心者でも3時間程度でクリアできてしまうほど。
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さらに言うならば、特殊ステージ4個のうち2個は『みんな大好き塊魂』の流用ステージである。
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収集要素のスケールダウン
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作った星を見ることができる「星空を見る」が廃止。
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巻き込んだ物の王様によるテキトーな解説を見られる「素敵コレクション」(初代で1600個ほど、前作で4000個以上)も廃止。
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代わりに解説を一切なくし、ステージで巻き込んだ不思議なものを見られる「ふしぎコレクション」が用意されているが、数も1ステージに10個ほど、全てで約120個と初代の1/10にも満たない。
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プレイヤーを王子以外に変更する「イトココレクション」のイトコの数も、初代『塊魂』に登場したもののうちの12人(王子含め13人)のみに減少している。
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最終ステージの規模
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『塊魂TRIBUTE』などでは、最終ステージで大きな大きな王様や銀河を巻き込むといった大スケールな塊を作れるが、今作では
達成目標が200mと非常に規模が小さい。
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続編がつくられるにつれて最終ステージの達成目標のインフレがおきてきていたものの、初代『塊魂』でさえ達成目標は300mであり、本作は過去最小である。
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DLCの追加ステージである「グレートジャーニー」であれば目標は600m、最大で1kmとなる。
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このステージにおいて、王様が「今回は王様を巻き込めないのー? こんなの塊魂ジャナイ もうガッカリといわれないためにこのステージを用意しておいた」といった趣旨の発言がある。しかしDLCの解禁の問題もあり「最初から入れておけ」と批判されている。
ゲーム内通貨「アメ」の膨大な必要個数
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今作ではステージクリアごとの得点に応じた報酬として(大体10~100個程度)、また毎日起動するごとのボーナスとして「アメ」とよばれるゲーム内通貨を入手できる。
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アメは連日起動でもらえる個数が増える。10日で最大の256個まで増加。
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王様の機嫌のいいときにもらえ個数を1枚で2倍できて3枚まで使える「おねだり券」(2×2×2=8倍)、獲得した「アメ」の数に基づくランクによりステージクリア時にもらえるアメの数が1.5倍~3倍に増える「塊 友の会」により、更に取得数を増やすことが可能。
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アメは王様の服の購入、BGMの購入、モード解放に必要となり、全部購入するためには40000個ほど必要になる。王様の服はランダムで1割引セールや2割キャッシュバックもあり、おねだり券をうまく使っていけばそれほど厳しくはない。
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だが、王様の服を全て購入したあとに追加される「ゴールデンソフトクリーム」の購入には76500個という膨大な数のアメが要求される。ゴールドトロフィー獲得にはこのアイテムの購入が必要になるため、トロフィーコンプの大きな壁になっている。
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アメ個数を増やす「おねだり券」の入手はランダムで、もらえる頻度は低い。おねだり券3枚に交換できる「ファン魂」というアイテムもあるが、こちらも入手はステージ中にランダムに出現したものを巻き込むしかなく、出現率は低い。またファン魂はDLC追加ステージをプレイするのに10個必要になるため、そちらをプレイしたければ温存しなければならない。
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「塊 友の会」のランクを維持するためには次回のランク更新時までに指定された個数のアメを獲得していなければならず、足りない場合はランクが下げられてしまう。さらにランク更新にはリアルで1日~1週間の経過が必要。
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「不思議コレクションのコンプリート」「イトコ・プレゼントを見つける」といった条件を満たすとボーナスでアメが大量にもらえ、そのときにおねだり券や友の会のランクボーナスで倍率を上げてたくさんのアメを入手するのが効率的だが、もらえるのは一度のみ。収集も難しくはなく数も少ないので、攻略を見るなどスムーズに進めてしまうと友の会の最初のランクアップを迎える前にコンプできてしまう。早くクリアすればするほど損をする仕様。
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やり込みながらアメを集めるとしても難易度は低く、かつステージ数が少ないので作業化してしまう。結果として
塊を大きくするためにゲームをしているのか、アメを集めるためにゲームをしているのか分からなくなっていく。
PSVITAの日付をいじってログインボーナスを獲得するというのが効率的ではあるが、やはり作業感は拭えない。
DLCにまつわる問題
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無料で公開されている追加ステージDLCをプレイするためには、1追加ステージごとに「ファン塊」を10個集める必要がある。
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前述したように「ファン塊」の出現率は低く、ステージ数が少ないため、アメと合わせて作業となりやすい。
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その救済措置として380円でファン魂を10個セットで購入できるが、これでは実質は追加ステージ1つで380円の有料DLCと変わりない状態になってしまう。
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ちなみに追加ステージ担当のキャラクターは、サングラスにかばんを小脇に抱えたガラの悪いおっさんで借金取りを髣髴させる。また、ファン塊を購入すると「これでステージを遊ぶことが出来るね。良かったね。本当に良かったね。」と言う。製作者もアコギな商売をしていると認識しているようだ。
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追加ステージには過去作の物も含まれている。
演出面
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塊作りを命じてくるおなじみ王子の父「王様」の顔がリアルになり、会話時もすべて3Dモデル化された。
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しかし現実の人間の顔を加工し貼り付けたような不自然な出来で、表情や動作も周囲と異なり妙にヌルヌルしている。
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過去作の3D状態の王様と比べても明らかに造形が変わっており、かなり不気味で愛らしさが無くなってしまった。
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参考画像
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これまでの王様
『ノ・ビ~タ』の王様|
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また王様が塊を星にするときの描写が、以前は「塊を空に投げると星になる」というものだったが、今回は「王様が塊を食べて体をくねらすとお腹から星が出てくる」という描写に変わり、「星=王様のう○こ」といった連想をしかねないものになってしまっている。
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世界観の崩壊。シリーズの生みの親である高橋慶太氏が退社して塊魂に関わらなくなってからの作品では、常に少数ながらも指摘する声があったが、今作は特に顕著となっている。
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特に今作の作中アニメーションは"ボブネミミッミ"などで有名なAC部が担当しているため、デッサンの狂ったカオスな雰囲気になっている。
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決してつまらなくはないのだが、以前のほのぼのとした世界観とはまるで方向性が異なり、AC部が塊魂のパロディを描いた、といった調子になっている。
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絵柄やギャグセンスなど、総じて狙って笑いを取りに行っているかのような雰囲気になっており、全体的に悪い意味で俗っぽくなってしまっている。
その他
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PS Vitaにはジャイロが搭載されているが、スマートフォン版塊魂で採用されている傾きによる操作に対応していない。
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これは操作方法が多くなりすぎて煩雑になるからかもしれない。
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PS Vitaのシステムの操作でゲームを終了しないとゲームタイトルにもどる方法がない。
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セーブデータを個別に削除することができず、オートセーブのみで任意にセーブすることができない。
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ステージクリア後のセーブ後に毎回同じコメントが表示される。これがテンポを悪くしている。
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かなり近づかないと物が描写されない。
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向かう先に物があるのかどうかの判断がしづらく、間近にあっても物が消えてしまったりするので、どの物を巻き込んで塊を大きくしていくかという戦略を練るときの足かせになっている。
総評
ローンチに合わせてしまったがために、ステージ数減少・ステージの規模の減少・収集などのやりこみ要素の減少など、上記の多くの劣化を引き起こしたと考えられても仕方ない出来になってしまった。
また中古品の流通を遅らせたかったのか、毎日の起動や現実の時間経過を待たなくてはならない要素があったり、ひとつのアイテムを購入するためだけに膨大な作業が必要とされるなどプレイヤーに面倒を強いるシステムが追加された。
しかし、ゲーム自体には進行不能になるような重大なバグなどの不都合はなく、『塊魂』シリーズの「転がして大きくしていく」などのコンセプトは守っているので楽しめない程ではない。このゲームから塊魂をはじめる方は何の問題もなく楽しめるだろう。
また、「伸ばして縮めて」という新しい要素はいままでのゲームバランスをそこまで崩すものではなく、新しい感覚でプレイできる。
以上のことから凡作という評価がふさわしいと思われる。
最終更新:2024年07月29日 15:33