塊魂
【かたまりだましい】
| ジャンル | ロマンチックアクション |  
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| 対応機種 | プレイステーション2 | 
| 発売元 | ナムコ | 
| 開発元 | ナムコ ナウプロダクション
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| 発売日 | 2004年3月18日 | 
| 定価 | 4,725円 | 
| レーティング | CERO:全年齢対象 | 
| 廉価版 | PlayStation 2 the Best 2004年11月3日/2,800円
 2006年6月8日/1,800円
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| 配信(税込) | ゲームアーカイブス 2012年11月21日/1,234円
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| 判定 | 良作 | 
| バカゲー | 
| 塊魂シリーズ | 
 
概要
王様が酔った勢いで銀河の星たちを破壊し尽くしてしまったため、「塊」で星を作って星空を蘇らせるというロマンチックなストーリー。
プレイヤーは「王子」(かなり小さい)となり、親である大コスモの「王様」(かなり大きい)に代わり、塊を転がして大きくする3Dアクションゲーム。
特徴
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基本操作で使用するのはアナログスティック2本のみ。スティックを両手に模し、前に倒すと「塊」を前に、横に倒すと横に転がす。
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他にダッシュなどの特殊操作もあるが、基本はこれだけである。
 
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塊がステージ中に散らばったモノに接触すると、小さいモノであれば巻き込める。最初は塊自体も小さく巻き込めるモノは限られているが、どんどんモノを巻き込んでいくと塊が次第に大きくなり、大きいモノも巻き込めるようになる。
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最初は鉛筆や消しゴムなどを相手にしていたのが、だんだん家具 → 生き物 → 車 → 樹木のように大きくなっていく。
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ゲーム後半で、ビルや山などが軽快なSEとともに根こそぎゴッソリ巻き取られていく様は圧巻。
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昆虫や小動物のみならず、人間も容赦なく巻き込まれる(巻き込むと悲鳴を上げる)。学校や商店街など人の集まる場所に塊を転がしていき、そこの人間を片っ端から巻き込んでいく地獄絵図も本作の定番。
 
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一部のステージでは道がカラーコーンなどで塞がれており、塊が一定のサイズ(=塞いだ障害物を巻き込んで除去できるサイズ)に達しないと通れないようになっている。
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また、塊がステージ毎に決められた一定のサイズに達すると、現在の塊のサイズに対してごく小さいモノは存在が消えてしまい巻き込むことはできなくなる。
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つまり、5cmとかの小さいモノは塊が割と小さい時点で巻き込んでおかないと、塊が10mにも100mにもなった時点で巻き込むことはできないということである。
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通常プレイではあまり気にしなくていい要素だが、後述のコレクション収集やプレゼントでは絶対に意識する必要が出て来る。
 
 
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ステージは、クリア条件に応じて2種類に大別される。
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「星をつくる」: 制限時間いっぱい塊を転がし続け、終了時点で規定サイズを超えていればステージクリア。
 ステージクリアの条件達成時間が早かった場合は「流れ星」を取得し、その達成タイムが記録される。
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「星座をつくる」: 特定カテゴリのモノを数多く集めるのが条件。
 
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巻き込めるモノの種類は1000を超える。巻き込んだモノは「素敵コレクション」というリストに、茶目っ気溢れる解説文付きで掲載される。コンプリート特典もあり。
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ステージには「プレゼント」が隠されている。
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これを巻き込んでステージクリアするとアイテムとして入手でき、ゲーム中に装備する事で王子のアバターを装飾できる。
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隠しアイテムだけあって、空中などかなりいやらしい場所に置いてある。
 
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BGMのクオリティが高く、また全体的に風変わりである。
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多くのステージ曲は「ステキソング」と言うボーカル曲である。本業の歌手やタレントなどが、それぞれの普段の姿とはイメージもジャンルも異なる楽曲を担当している。
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メインテーマ「塊オンザロック」に元クリスタルキングの田中雅之。続いて新沼謙治、水森亜土、椛田早紀、チャーリー・コーセイなど。そしてエンディングはかの松崎しげるである。
 
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歌詞の大半は「この広い大宇宙の下、固まり合いつながり合って大きな星になる」という、ゲーム全体を貫く壮大なテーマに沿った内容となっている。
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エンディング後は最終ステージで作成した月に移動する事で自由に試聴可能である。
 
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ステージは家の中や町などといった現実的なモチーフであるものの、グラフィックはポリゴン数をかなり抑え目にして作られているため、一見するとシュール。
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また、一般常識では考えられないほどとっ散らかった、モノだらけの空間であり、一種独特な世界観が形成されている。
 
評価点
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まずシンプルにして斬新なゲームデザインが高く評価された。チュートリアルも簡潔そのもの。
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その人気から後にシリーズ化されるが、基本的なシステムはずっと同じである。それほど本作のシステムの完成度は高かった。
 
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大きくなった塊で大量にモノを巻き込むと、単純に気持ちいい。また今まで手強かったモノたちが、為す術もなく自分の塊に巻き込まれて「うわー」とか言ってる様は気分爽快である。人間の身の丈に縛られないサイズのモノを相手にできるため、視覚的なインパクトもすごい。
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ステージに配置されているあらゆるオブジェクトに干渉が可能で、自由度が高い。
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モノが巻き込まれる時のSEも爽快感に貢献しており、様々な種類がある。それぞれウィットに富んでいて面白い。汎用の「ポン!」はシンプル且つ明快で、動物を巻き込めばそれぞれの鳴き声が、人間を巻き込めば悲鳴や謎ボイスが上がる。終盤、ビル街をごっそり巻き込もうものなら阿鼻叫喚の悲鳴の嵐が響き渡る。最早、大災害である。
 
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高評価を得るためにはモノの配置や取得順序をよく考えたルート構築が重要であり、極めようと思うとゲーム性は高い。塊の大きさだけでなく、ノルマ達成のタイムアタックや発見が困難なレア物の収集などやり込み要素もある。
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キャラクターデザインが個性的でかわいらしい。
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しかし本作の一番人気は、かわいいどころか威厳たっぷりのコワモテと、見た目に反してお茶目な性格と、切れ味鋭い毒舌を併せ持つ王様だろう。プレイ評価が高い時は全力で褒め称えてくれる点も人気の秘密。
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幕間のムービーに登場する地球人の親子は世界観に合わせて立方体の頭とカクカクの体である一方で顔はリアル寄りなので最初は気持ち悪く思えるかもしれないが、ゲームを進めるうちにだんだんと愛嬌を感じられる…かもしれない。
 
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ハチャメチャでシンプルなストーリーと思いきや、エンディングの演出に感動したという声は多い。
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スタッフロールの最中にミニゲームがプレイ可能となっており、その内容とエンディング主題歌の歌詞はぴったり合致していて、本編ストーリーとのつながりもある。
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EDテーマは松崎しげるの熱唱する「愛のカタマリー」となっている。「世界平和」を壮大に歌い上げたバラードであり、後述する間奏部分の強烈なフレーズも相俟って、本シリーズを語る上で欠かせない名曲としてファンから高い支持を得ている。
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ミニゲームの説明は無いので、初見時には操作できる事を知らずただ純粋に歌に聞き入ってスタッフロールを眺めていたプレイヤーも少なからずいた模様。しかしそれもそれで一種の味のあるスタッフロールになっており、感動は衰えない。
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このエンディングを模したステージが続編『みんな大好き塊魂』に登場する。
 
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以降、エンディング中にミニゲームが遊べるので、スタッフロールを見ている暇が無いのはシリーズのお約束になっていく。
 
問題点
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操作性が悪い
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左右のスティックを同時に使う独特な操作方法は、一般的な3Dゲームの操作方法と大きく異なっており、塊を思い通りに動かすにはかなりの慣れと時間が必要。
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後続のシリーズ作品と比べても、操作性の悪さが特に目立つ。
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チュートリアル自体は存在しているが、それらを触った程度では思い通りにはとても動かせる状態にはならない。
 
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塊をうまく転がせるようになるまでは、ノルマ落ちして王様からボロクソに罵られる場合も多い。
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この辛口コメントは次回作以降もお馴染みとなり、たとえノルマを達成しても優れた成績でなければやはり罵倒されるのが通例となっており、当然逆も然り。
 
 
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見た目に反して難易度が高い
 「一見ライト向けの楽なゲームに見えるので挑戦したら、意外に苦労する」というのは『ピクミン』シリーズに似たものがある。
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時間制限が厳しめ
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序盤からして慣れない状態だとクリアできるかどうかすら怪しい時間設定である。
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中盤を過ぎた頃に、刹那的にプレイしていてはノルマクリアの難しいステージが出てくる。ルート構築というある種ストイックなプレイが必要であり、肩の力抜きっ放しではいられなくなる。
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本作は独特なゲームデザインと雰囲気が魅力だが、時間制限が厳しすぎて、それらをのんびりと楽しめるほどの余裕が無い。
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時間制限なしで思う存分巻き込めるモード(エターナル)も存在しているが、3ステージのみしかなく、解放するのにエターナルが存在する通常ステージで好成績を収める必要がある。
 
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このゲームの醍醐味である大量のモノを巻き込む爽快感を堪能できるのは中盤あたり以降で、序盤はチマチマしたモノしか巻き込めず地味さがある。
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「星座をつくる」ステージの中に「特定の物を巻き込んだら即終了」という物がある。これは大きい物を巻き込もうとするつもりが小さい物を間違えて巻き込んでしまう、という危険性が高いため高評価を得るのが難しい。
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しかも小さいオブジェが即死トラップの如く配置されているので、余計に難易度を引き上げている。クリアだけならそれでも良いのだが、高評価を目指すとなると神経をすり減らしながらリトライを繰り返す事に。
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後述のリトライ性の悪さと相まって、かなり面倒。
 
 
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後続のシリーズ作品と比べると、塊が障害物に引っかかりやすい。
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塊の耐久度も低く、ちょっとぶつかっただけでせっかく作った塊が崩れてしまいやすい。引っかかりやすい点も相俟って、抜け出そうと力を込めて塊がどんどん崩れていく事など日常茶飯事である。
 
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突き詰めるとレースゲームやRTAのようなゲーム性を持つ本作だが、リトライ機能はステージ中にしか使えず、クリア後に再挑戦するには手間がかかる。
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ステージ選択画面の全体マップが球状で、デザイン面での人気は高いものの、インターフェース面では使いにくい。
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通常ステージが全て同じアイコンで表示されるため、実際に近づいてみなければ見分けがつかず、目的のステージを見失いやすい。
 
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カメラワークはイマイチ。またオブジェクト透過処理してくれないため、何がなんだかわからない状況になる事もある。
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酔いやすい。もともと3D酔いしやすいゲームデザインだが、PS2時代の解像度では特に酔ってしまう人が多い。
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移動で左右のスティックを両方とも使うため、一般的な3Dゲームと異なりカメラの操作を自由に行えず、酔いやすい。
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演出としては面白いのだが、グルングルンとカメラの視点が切り替わるのも、この問題点を助長してしまっている。
 
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やりこみ要素として、各ステージに「イトコ」が一人ずつ隠されているのだが、その出現条件が面倒
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通常ステージでは、一度「月をつくる」をクリアしてエンディングを見なければ出現しないため、単純に二度手間になる。
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特殊ステージでは、一度そのステージをクリアしなければ出現しないため、こちらも二度手間になる。
 
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人によってはこれらの入手条件に気付かず、「出現エリア付近を必死に探しているのに、どこにも見つからない」という状況になることがある。
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初期版では「跳び箱の4段目」が巻き込めない地面の下に配置されてしまっており、素敵コレクションをコンプリート出来ないバグがある。
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再プレス以降や廉価版では修正されている。
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「地面の下に配置してしまった」ことについては本作ディレクターの髙橋慶太氏が自身のTwitterで明らかにしている。
 
総評
第一印象の面白さと新しさだけでなく、中身の分かりやすさと奥深さを併せ持つ秀作。
爽快感を多少犠牲にしてでも、ゲームとしてほどよく歯応えのある難易度でバランスが維持され、一発ネタに終わる事なく数多くのシリーズ作品が作られた。
「シュールでカオスでサイケデリックで、なおかつ万人向け」という優れたデザインセンスも好評であり、「ロマンチックアクション」の名に恥じないステキな世界が構築されている。
そんな独特の作風に合わせて作られた、変テコでありながらクオリティの高いBGMも魅力の1つ。一見の価値はある作品である。
余談
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現実と非現実のちょうど中間をさまようような本作独特の世界観には妙な中毒性があり、つい現実の世界を「あの樹木群に突っ込んで巻き取りたい」などという目で見てしまう人もいるとか。
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ゲームソフトとして史上初のグッドデザイン賞(2004年度)を受賞。
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本作のED曲を担当した松崎しげる氏は以降のシリーズでもOPやEDの主題歌を手掛けている(『ビューティフル塊魂』を除く)。いずれもシリーズのテーマに合致した良曲なのだが、何故か毎回「日に焼けた肌」という氏の象徴とも言うべきフレーズが何の脈絡も無く飛び出すのがお約束となっている。
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本作の「愛のカタマリー」では、間奏部分で「地球が輝く為に必要なもの」として幾つかの要素が挙げられるのだが、最初は「自然を愛する心」とそれらしい物なのに以降は「バランスの取れた食生活」「十分な睡眠時間」と少々ズレたものになっていき、最後は「日に焼けた肌」である。
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『みんな大好き塊魂』ではOP曲「塊オンザスウィング」は最後の締めを飾るフレーズが「日に焼けた肌」。一応、太陽に関する歌詞はあるのだが、その前の歌詞との接点が皆無なのがまた「らしい」と言うか…。
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『僕の私の塊魂』のED曲はタイトルの時点でお察しの「輝け! Mr.サンシャイン」。全体として見ればテーマに沿った歌詞なのだが、途中は完全に氏の日焼け自慢となっている。
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『塊魂TRIBUTE』のED曲「SHADOW AND LIGHT」はいつになくネタ要素の無い正統派の歌詞と思いきや、タイトルにある「影と光」を「日に焼けた肌と輝く白い歯」に例えている。流石と言うか何と言うか…。
 
その後の展開
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2018年12月に本作のHDリマスター版『塊魂アンコール』がSwitch/Win(Steam)で発売された。2020年11月19日にはPS4/One版も発売された。
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開発は『リトルウィッチアカデミア 時の魔法と七不思議』(PS4/PC)の開発にも参加したモンキークラフト。
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Win版は比較的動作が軽めで、一般的にゲームには不向きだと言われているオンボードGPU(Intel HD Graphics)でも全然問題なくプレイできる。
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オートセーブには対応しておらず、手動でセーブしなければならないので注意。
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リメイクではなくあくまでリマスターなので、特に追加要素や次回作以降のシステムの搭載は無く、リトライ不可などの問題点も据え置きである。
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ただし、制限時間はかなり緩和されており、むしろ時間が余ってしまうほど難易度が下げられている。また、ロード時間が短縮されている。
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また、王様のセリフがリマスターであることを自覚したものになっていたり、ストーリー中のムービーやエンディングに字幕が追加されていたり、一部効果音の変更などがある。
 
 
最終更新:2024年05月21日 17:00