蚊
【か】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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Sony Computer Entertainment
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開発元
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ズーム
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発売日
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2001年6月21日
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定価
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5,800円(税別)
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廉価版
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PlayStation 2 the Best 2002年6月27日/3,000円(税別)
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配信
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クラシックスカタログ:2024年9月17日/1,100円
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判定
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バカゲー
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ポイント
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タイトルが日本一短いゲーム 蚊が主人公というバカゲー すさまじくシュールな世界観
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蚊 シリーズ 1 / 2
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概要
ソニー・コンピュータエンタテインメントがPS2最初期に送り出したバカゲー。
タイトル通りプレイヤーは蚊になり、山田家という家の住人から吸血しまくる、という内容である。
システム
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プレイヤーが操作するのはアメリカンカートゥーン調にデフォルメされた蚊。では世界観全てがアメリカンカートゥーンなのかというと、他の部分は可能な限りリアルに描かれているので、主人公の浮きっぷりがすさまじい。
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操作方法は、左スティックで移動、右スティックで位置調整、R1で加速。
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吸血ポイントやリラックスポイントなどを画面中心のサイトに納めるとロックオン状態となる。ここで○ボタンを押すと、対象に突進する。
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これら以外にも、リモコンのスイッチなどの特定のオブジェクトもロックオンする事ができ、突進すると何らかのギミックが発動する。蚊にそんな事はできないなどと突っ込まない方が無難である。
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ステージ内には50個集めるとライフアップの「ハートリング」や体力回復の「ハート」の他、「EXタンク」「おいしいもの」という物が用意されている。
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EXタンクを取ると本来の吸血量を上回って血を吸えるようになる。全てのEXタンクをいっぱいにすると二年目に突入する。
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二年目はいわゆるハードモード。難易度が上昇している他、ストーリーの一部台詞も変化している。
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おいしいものは超小型のおにぎりやみかんなど。取ると攻略のヒントが貰える。
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ステージ内には蚊取り線香や燻蒸式殺虫剤などのトラップがしかけられている。もちろん触れるとダメージ。
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ターゲットである人間にはストレスというものが設定されており、視界内を飛んだりしてこれが一定値以上になると「バトルモード」に突入する。
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バトルモードでは人間の攻撃をかいくぐりつつ、全身の各所に設定された「リラックスポイント」というものを攻撃し、人間をリラックスさせる。
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一定の時間内にバトルモードをクリアすると、新しい体色が選べるようになる。
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吸血ポイントに突進すると吸血モードに入る。多くの吸血ポイントは、人間が特定の体勢を取った時に出現する。中にはギミックを動かさなければ現れない吸血ポイントも存在する。
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この状態になったら、あとは本能のおもむくがままに吸い続ければいい。
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ただし、人間も刺されると異変を感じる。吸血の度合いを調整しないとストレスがどんどん蓄積していき、バトルモードに突入したり、最悪、その部分を叩き潰してこようとする。この際体力にかかわらず一撃死するので、引き際を見極める必要がある。
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時には刺した瞬間に潰される事も。リアルっちゃあリアルだが理不尽。
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あまり血を吸いすぎると、体が重くなって上手く飛べなくなる。当然攻撃をかわしにくくなるので、吸う量にも気をつける必要がある。
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各ステージは「山田家の人々の会議→ステージ説明→規定値以上吸血→クリア」という流れになっている。
バカゲー要素
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シュールな世界観
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あなたは蚊です。冬を越すために血を吸いまくってください。
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…ゲームを始めるといきなり上のようなナレーションが入り、プレイヤーは蚊にされてしまう。導入が唐突すぎである。
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蚊になってしまったプレイヤーが田中敦子の丁寧なナレーションに導かれるのもまたどこかおかしい。
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しかもこのナレーション、後半や二年目にもなると山田家に対して皮肉めいた言葉を口走る事も…。
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そもそも蚊って冬を越すような生き物じゃないんじゃぁ…?なんて考えは早めに捨てておいた方が、後々楽である。
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とはいえ、一口に蚊と言っても、冬眠するもの・冬は卵だけ残すもの・冬も休眠せず動き回るもの等、色々な種類がいるのだが。詳細はこちら
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なお、英語版タイトルは『Mr.Mosquito』であり、普通血を吸うのはメスだけの筈なのにミスターって…?
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山田家の現実離れした超人っぷり
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一見ごく普通の3人家族に見える山田家であるが、その実態はとんでもない超人一家である。
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狭い部屋の中でサマーソルトキックを放つ長女の山田麗奈など序の口。
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主婦の山田カネヨと来たら、空中を縦に高速回転しながら殺虫剤をバラ撒く「カネヨ・ザ・ミラクル」という人間離れした技を持つ。また、あるイベントシーンでは空中で回転するだけでただのジャガイモをコロッケに変えている。化け物だ…。
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大黒柱、山田健一は序盤こそただのハゲ親父にしか見えないが、至近距離で直撃すれば即死は免れない気功弾「健一ミラクル」や、両手から全方向に謎の光線を放つ「健一 ザ イリュージョン」など謎の必殺技を多数習得し、それを躊躇なく蚊にぶっぱなす危険人物である。更には二年目になると「健一 ザ イリュージョン ファイナル」と無駄にパワーアップしている。蚊は何故こんな家をターゲットに選んだのだろうか…?
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吸血が続くと山田家も蚊を敵視するようになり、自身の周りを何かの儀式の如く蚊取り線香で囲む、殺虫灯で壁を作る、床も壁も天井も殺虫剤塗れにする、など手段を選ばなくなっていく。虫刺されよりあなた達の健康が心配です。
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終盤になると山田家も本気で蚊を潰しに掛かって来る。その為、各人間との最終決戦ではステージ開始と同時にバトルモードに入るので、気絶ポイントを突いて人間を気絶させて吸血しなければならない。そんな危険な蚊が居てたまるか!
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そして吸血された人間は敗北を悟り、倒れ、意識を失う。そして残された家族達は仇を討とうと躍起になる。蚊相手にそこまで本気にならなくても…。
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最終ステージは山田家全体が殺虫剤の煙で充満する前に、戦いに負けて気絶している三人から吸血すると言うもの。蚊の所為でここまで悲惨な目に遭うとは…。
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蚊によってリラックスポイントを突かれた人間は「肩こりが取れた」「腰痛が治った」などと呟く。寧ろ、この蚊は益虫なのでは…?実際、続編はこの特性を活かしたシステムになる訳で…。
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本作は「山田家の夏」と一応のサブタイトルが付いているが、ある事をするとタイトル画面のサブタイトルがランダムで変化する。「羽音と情緒」「山田家ボルケーノ」などと変なタイトルばかりだが、不思議とどれも間違ってはいない。
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隠しコマンドを入力すると健一バージョンとカネヨバージョンの蚊が使用可能になる。もはや何も言うまい。
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何故か麗奈バージョンは存在しない。したらしたで反応に困る気もするが…。
評価点
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現在までほとんどフォロワーのいないその独特の発想。
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そもそも「蚊が主人公のゲームなんて真似したくねーよ」という感情は置いておいて、ゲームデザインそのものは非常に秀逸である。
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非常に弱々しい生き物が、生き残るために知略の限りを尽くして自分よりはるかに巨大な生き物に立ち向かう…蚊が主人公であることを除けばいっそ悲壮とも言えるだろう。
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常に一撃死の緊張感が漂うゲームデザインは命の儚さを教えてくれる。
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二年目クリア時のテロップは命の儚さ、そして尊さについて考えさせられる…かも?
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そして作中のBGMは通常時も戦闘時も、まるで怪獣映画のような恐ろしくも壮大な曲が多い。蚊にしてみれば人間に立ち向かう事はそれと同じようなものなのだろう。
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二年目に突入するためのEXタンク収集、カラーリングコンプなどやりこみ要素もそれなりにある。
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またとある操作で隠しミニゲームが遊べる、という小技もある。二人プレイ専用の対戦ゲームで、プレイしても何の特典も無いが、こちらもシュール極まりない内容で意外と中毒性がある。
問題点
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画面酔いしやすい。
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3Dグラフィックであっちこっち画面が振られるので、苦手な人はあっという間に酔う。
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ボリュームが薄い。1年目は全12ステージしかない。
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家具は人間サイズなのに、取得できるアイテムなどは全て蚊サイズなので、どこに何があるのか非常にわかりにくい。
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ローディングは長め。その代わりステージ内では殆ど処理落ちなどは見られない。ただしステージ10のみ処理落ちしやすい。
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ちなみにローディング中は蚊取り線香や、かゆみ止めなど様々な蚊対策アイテムが表示されている。
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刺せる場所は固定であり、自由に吸血ポイントを選ぶ事は出来ない。
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蚊の気分を味わうには、この自由度の低さがネックになってくる。
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リラックスポイントは体の反対側からでもロックできてしまうので、突撃したと思ったら相手の体に激突して停止、と言った状況が頻発する。
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トラップに殺虫灯が登場するが、これがただの「触れるとダメージを受けるオブジェクト」に過ぎず、特性を活かせていない。
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現実の蚊ならともかくプレイヤーが操作する蚊がこんなものに誘われる訳が無く、かと言って操作がおかしくなると言ったようなギミックも無い。
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しかも最初に登場する殺虫灯はクローゼットの上に配置されているので、トラップでも何でも無い。しかしナレーションは「気をつけて下さい」と言う。気をつけなくてもこんなものにやられはしないだろう。
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一応、この殺虫灯の周りにアイテムがあるので、知らずにいるとうっかり触れてしまう可能性はあるが。
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終盤の殺虫灯で埋め尽くされた壁は視覚的なインパクトはある。
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狭い隙間に入れる場所と入れない場所があり見極めが難しい。
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入れない隙間に向かって見えない壁にガンガンぶつかりまくって怯みまくること必至。非常に怠い。
総評
本作に似通った作品は皆無であり、オリジナリティは非常に高い。
しかし、純粋にゲームとしては微妙な点も多々あり、楽しめるかどうかはその人個人の感性に依るところが大きいだろう。
そのシュールな世界観を受け入れられるかどうか、それが最初の関門になってくるが、この類のバカバカしさに愛着を抱ける人ならばやってみてもよいだろう。
余談
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実は同時期に同じく蚊をテーマとした作品が出されていた。
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『熱血硬派くにおくん』の制作者、岸本良久が開発に関わったタイトルでそのものずばり「THE 蚊」である(先に本作で発売されてしまったための区別らしい)。
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本作が蚊となって現実離れした超人一家を相手に吸血するのに対し、こちらは可愛い女の子に群がる蚊を叩き落とすモグラ叩きゲーだったとか。(参考)
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見て分かるとおり、漢字で書いても平仮名で書いても日本一短いゲームタイトルである。この記録が破られることは今後絶対にないであろう。ただしローマ字にすると2文字である。
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ユニークなタイアップ。
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ステージクリア後のアイキャッチ(ローディング)に池田模範堂の塗り薬「ムヒ」「ムヒアルファS」が表示される。しかも「ぶりかえしにもきく」「しつこいぞ!かゆみ!」と宣伝されている。
その後の展開
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続編として『蚊2 レッツゴーハワイ』も出ている。
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こちらはタイトル通りハワイが舞台になっており、日本の蚊(本作の主人公)とアメリカの蚊からプレイヤーを選べる。
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今度のターゲットは本作から続投の山田家に、ハワイ在住のブラウン家も加えた合計6人となる。
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このブラウン家も山田家に劣らぬ危険一家である。山田家も更に超人化し、最早人外の領域にまで達している。
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ストーリーのバカバカしさはさらに加速。主人公が2人(2匹)になった事でステージ数も倍増し、ボリュームが増している。
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一方、クリア条件は吸血だけではなく、ツボを刺激して人間の体調不良を改善することも加わっており、システムはやや複雑化。とっつきにくさも増している。
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ゲームアーカイブスではこちらのみが配信されている。
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2024年9月にPlaystation Plusのクラシックスカタログで本作が配信された。実に23年ぶりの移植である。
最終更新:2024年10月21日 14:00