X
【えっくす】
ジャンル
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シューティング
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対応機種
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ゲームボーイ
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発売元
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任天堂
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開発元
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任天堂 アルゴノートソフトウェア
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発売日
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1992年5月29日
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プレイ人数
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1人
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定価
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3,786円(税別)
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判定
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良作
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ポイント
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旧GBでフル3Dシューティング つきまとう処理落ち
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概要
任天堂とアルゴノートソフトウェア(当時)が共同開発したGB専用ソフト。
白黒GBカセットの時代においてワイヤーフレームながら3D空間を表現したゲームであり、後のSFCにおける『スターフォックス』や『ワイルドトラックス』へと繋がる技術的実験作。
特徴
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最大の特徴はワイヤーフレームで描写されている3D空間。マップの地形及び敵などのオブジェクトはデフォルメされて形として分かりやすく表現されている。
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常にVIXIV(プレイヤーが操る多機能戦車)の中から見る一人称視点であり、様々な情報が機体の中から確認可能。
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「燃料ゲージ」:初期値は目盛り1つ、最大値は4つ。これが尽きると、速度がターボに達せず飛行も出来ない。ほとんどのミッションで常にターボすることが前提となっているため、これが尽きると非常にミッション進行が遅くなり不利にもなる。灯油ポリタンク型の燃料で回復。
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「レーダー」:自機を中心とした目標物や敵の位置を知るのに必要不可欠。敵は全て点滅するのが特徴。
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「グリッドスクリーン」:レーダー以外で現在位置しているエリアを知るのに必要で、左上から順に0~7まである。セレクトを押すことで見られる「ペーパーマップ」でも現在位置を知ることが出来るが、それと比べてアクティブに把握可能。
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「ミサイルゲージ」:所持しているミサイルの個数が表示される。初期値は0個で最大8個。
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「高度計」:飛行している際の高度が表示される。低すぎるとそのまま地上に降りてしまう。
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「シールドゲージ」:VIXIVの耐久力。表示は8目盛りで、9回ダメージを受けてしまうとゲームオーバーとなる。また、目盛りが残り1つ・残り0つだと、その具合に応じてレーダーが砂嵐を帯びたように視認性が悪くなる。キノコ型のシールドマッシュルームで回復。
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「接近探知機」:画面真下の左右に6目盛りずつ斜め線として表示され、普段は黒い目盛りが白で埋まるほど敵が接近していることを示す。レーダーに捕捉できるほど接近されると点滅し、警告音が鳴る。シールド残量が0だと誤作動を起こす。
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「制限時間」:ほとんどの場合はミッション自体の制限時間を表し、これが切れるとゲームオーバー。一部ミッションでは敵地下トンネル爆破までの時間や、バタフライの繭が孵化するまでの時間として使われる。
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いくつかの施設や設備が標準で設置され、VIXIVをサポートする。ミッションが切り替わるとすべての状態はリセットされる。
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「レーダー基地」:ミッション達成に必要な各種情報を表示するほか、兵器の選択・持ち出し、若干のアイテム補充が可能。ミッションによって情報の重要性が異なり、必要不可欠と言えるほど重要な時もあればむしろ無視した方がよいものまで様々。兵器で割と簡単に壊せるほか、敵軍から破壊目標として定められることも数回ある。
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「トンネルエントランス」:敵と遭遇しない安全な地下空間を通行して、遠くのエリアへと辿り着ける。移動中は敵軍の移動や制限時間の経過もストップするため、上手に活用すると時間経過を大幅に抑える事が可能。ただしスピード調整は原則不可能で、障害物に激突するとダメージを受ける。敵軍がこれとは別個の専用地下トンネルを建造するミッションもある。
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「ジャンクション」:トンネルエントランスから通じる4本のトンネルを集約する中継地点。好きな出口へ通じるトンネルを自由に選択できるほか、シールド・燃料・ミサイルのどれかを1ミッション中1回だけ全回復できる。
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「パワーキューブ」:エリア4箇所に点在する箱。レーザーで攻撃するたびにシールド1回復。壊すとシールドマッシュルームを落とす。
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「ニュークリアサイロ」:いくつかのミッションにおいて目標拠点となる建造物。敵軍やトラブルによって破壊の危険に何度も見舞われる。ストーリー上重要な存在なので破壊されると即ゲームオーバー。
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兵器は4種類あり、変更するにはレーダー基地に入る必要がある。
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「ロックオン」:Bボタンを押すと敵をロックオンし、再度押すことでミサイルを発射することが可能で、ホーミングはせず真っ直ぐ飛ぶ。ロックオン中はレーザーも目標物へ正確に発射される。ほとんどのミッションで必要不可欠。ミサイルの消費弾数は1。
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「ボム」:地上であればVIXIVの前に落とし、飛行中であれば下にボムを落とす。とあるミッションで使うことになる。ボム自体を消費するため使用できるのは1度のみ、使った後はレーダー基地で再補充しなければならない。地上で使う場合、バック走行しながら投下しないと2ダメージを受けるが、高度関係なくある程度広範囲にダメージを与える事が可能。何度も補充して投下すれば、ミサイルで捕捉しにくい・ロックオンできない対象物をも破壊できる。
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「ジェットパック」:坂を使わずともターボ状態であればいつでも上昇、飛行できる兵器。
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「ハイエックス」:最終ミッションで必要な破壊兵器。山なりに撃ちだし、着弾すると広範囲に渡ってほとんどの物を破壊する。ミサイル消費弾数は8個かつ、シールド残量が満タンでなければ撃ってはならない。
というのも、着弾した瞬間にVIXIVがどこにいても8目盛り分のダメージをくらうから。1ポイントでもダメージを受けている状態で着弾するとその瞬間にゲームオーバーとなる。
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十字キーの上で前進(速度はSTOP→LOW→MEDIUM→HIGHの順に早くなり、押しっぱなしで最高速のTURBOとなる)、下でブレーキとバック。
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前述のとおりターボ状態では燃料を消費するのだが、常時ターボ状態を前提とした構成となっているためそれ以外は速度調整程度の扱いとなる。
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ミッションは全部で10個。舞台が全て同じテタムスIIということもあってかGBのSTGとしては多いミッション数。
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ミッションが終了するとリザルトにて「ミッション中の撃破対象(敵の主力兵器など)」「その他の敵撃破数(OTHERS)」「敵の攻撃から守り切った施設」等の数によってスターを獲得可能。
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スターは大と小に分かれており、敵撃破では小スター、各ミッションにおける撃破対象やサイロは大スターとなり、小スターは10個で大スター1個に変換される。
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大スターはコンティニューの際に消費される。ミッション2以降から1個ずつ必要な大スター消費数が増加していき、もし足りなければミッション1から。また、いくら大スターを所持していても、到達していないミッションへ飛ぶことは不可能。
評価点
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GBで描かれた独特な3D空間
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ベクタースキャン表示の流れをくむデザインは本作における最大の特徴であり、また可視性と雰囲気を決定づけている。
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白黒であるゆえに色での判別はしにくい。そのため敵やオブジェクト類は一つとして形が被っていない。
紙飛行機のようなミサイル、ぴょんぴょん跳ねるインセクト、もはや棒人間なドクターやまの…など、シリアスなストーリーに反してある意味かわいらしさすら感じるが、これもゲームとしての視認性を重視(もしくは表現上の限界)した結果ともとれる。
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ミッション開始前後で説明をしてくれる司令官も3Dで顔だけ表現されている。そのビジュアルや、トレーニングで操作を誤ると「ばかやろう!! ビシッ!」と怒るインパクトも有名。
『スマブラX』及び『スマブラSP』ではシールやスピリッツの1つとして登場している。
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戸高一生氏によるサウンド
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近未来的な空間を感じさせるタイトルや各ミッション、終盤のミッションになるほどシリアスになっていくBGMは雰囲気を助長するものとしては非常に適している。
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惑星テタムスII突入or脱出時にしか聞けない「トンネルシーン」は『スマブラX』からアレンジして収録され、本作の知名度が一気に高まった。もちろん単体としての完成度も高く突入時では舞台であるテタムスIIへ突入するプレイヤーを盛り上げ、脱出時には近未来的サウンドで出迎えてくれる。
知名度の上昇もあるが、続編の『X-RETURNS』でもアレンジされて流れる。
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ミッション10完了直後のファンファーレも達成感を煽るものとして出来がいい。
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「少々てごわい」が難しすぎない難易度
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画面内の情報は余すことなく使うため、操作やVIXIVの扱いに慣れなければ難しいが、地球でチュートリアルが受けられるほかミッション1は敵も少なく、時間を気にしなければ自由に散策することが可能。
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散策の自由度はさりげなく攻略を自然に覚えるための構造にもなっている。序盤はかなり時間が余り、さまざまな兵器を試す事が出来る。自由に空を飛び、色々な戦い方を体験でき、プレイヤースキルがいつの間にか上がるように出来ている。
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兵器の使い方によっては定石を大きく無視した解法に辿り着くことも可能であるため、プレイヤースキルが上がると結果に直結するというカタルシスを感じられる。
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敵の配置もかなり計算されている。たとえばミッション1の取得目標の近くには普通のザコ敵ではなく「スパイダー」という変り者の敵がいきなり登場する。攻撃をちょっとでも受けるとターボスピードでの追跡でもギリギリという俊足で逃げ出し、それでも深追いすると自爆するというもので、興味本位で自爆を受けたプレイヤーは後の護衛ミッションでスパイダーが出てきたときに「倒すと自爆して護衛対象を巻き込んでしまうから、逃がす・追い払うのが正解」だと気づく。
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ミッションの内容も多彩でバリエーションに富んでいる。どのミッションもレーダー基地の近くでスタートするためまずは基地で情報を収集して動き出すのが定石だが、最終ミッションに至っては開幕から目の前のレーダー基地が破壊されるという、定石を根本からブチ壊しにする衝撃的なスタートを切る。敵もトラップも非常に多くまさに最終ミッションらしい難易度となっている。
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漢字表記
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作中での文字表記には、当時の携帯機としては珍しく漢字が使われている。
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全てが全てというわけではないものの、文字が潰れているということはなく読みやすく表記されている。本作の世界観に合うほか、見やすく短文で目的などを表現できている。
問題点
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何かオブジェクトが映っただけで処理落ちが発生する
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元々フレームレートは高いわけではないが、それでも坂や木を除くほとんどのオブジェクトが画面に映るだけで処理落ちが発生してしまう。映っている物が多い程処理落ちも酷くなっていき、操作も遅くなる。
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顕著なのはミッション6全体とミッション9開幕。前者は護衛トラックや敵で、後者はミサイルを落とす敵艦が3つ並んでいるため。
ミッション6ではオブジェクトを映していたか否かで、現実での時間で数分は変わってくる。
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ボリュームが少ない
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ミッションは全部で10個だが、ミッション遂行以外でのモードは無く、またタイムアタックといったゲーム内でのやり込み要素が無い。
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オプション等の記録要素も無いため、物足りなさを感じてしまう。
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癖のあるVIXIVの操作性
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戦車ということもあってか操作が重く、また停止しないとその場旋回が出来ないためアイテムを取り逃したりレーダー基地へ入る方向を間違えたりするとカバーがしにくい。フレームレートの低さも操作性の癖の強さを助長している。
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レーダー基地等の入り口は地味ながら判定が狭く、ほぼ真正面でも無ければ弾かれてしまう。
総評
カラー以前のGBという限られたスペックの中で3D空間を表現し、ゲームとして成り立たせている点だけでも当時としては驚異的だが、ゲーム内のクオリティも丁寧に高められていることがわかる。
未だにVCなどでの配信がされていないものの、他の作品では味わえない独特な作風を持った作品である。
余談
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続編として、DSiウェアで『X-RETURNS』が配信されていた。
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本作の自機である『VIXIV』の名前は、後にマガジンZ版『メトロイド』において銀河連邦の艦名として取り上げられている。
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前述のとおり『スマブラX』でアレンジBGMが収録された。また次作『スマブラfor』では『X-RETURNS』版のトンネルシーンBGMが収録されている。
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知名度の低さやサプライズ的選出もあってか、「スマブラで(本作を)知った」という人が多い。
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作曲が戸高氏ということもあってか、本作でも「けけソング」が隠し要素として入れられている。判明している中では最初に「けけソング」が入れられたゲームである。
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ミッション4、偽物のドクターやまのを救助した際の画面で42秒待つと流れる。
最終更新:2025年02月15日 06:57