注意:当ページではアーケード版『サンダーフォースAC』と、そのSFC版移植にあたる『サンダースピリッツ』とSwitch版移植にあたる『SEGA AGES サンダーフォースAC』について紹介する。前者は判定「なし」、中者は「劣化ゲー」、後者は「良作」判定であり、問題点の性質が異なっている。
サンダーフォースAC
【さんだーふぉーすえーしー】
| ジャンル | 横シューティング | 
| 対応機種 | アーケード(System C2) | 
| 発売元 | セガ・エンタープライゼス | 
| 開発元 | テクノソフト | 
| 稼動開始日 | 1990年12月 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | メガドライブ版と大差無いクオリティ アーケードで出す意味合いが薄い
 一部ステージの差し替え
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| サンダーフォースシリーズ | 
 
概要(AC)
メガドライブで発売された『サンダーフォースIII』にアレンジを加え、アーケードへ逆移植した作品。
ストーリーや装備に関しては同一なので、『III』の記事を参照。
特徴(AC)
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8方向レバー、3ボタン(移動速度切り替え、ショット、武器切り替え)でプレイ。5種類の武器を使いわけながら、全8ステージを攻略していく(下記のスピリッツも同様)。
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『III』との相違点は以下の通り。
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開始ステージの選択は廃止され、ステージ1からスタートする。また、ステージ開始時のレーダー画面演出も削除されている。
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ステージ4および5が、AC専用のステージに差し替えられた。いずれもステージのコンセプトは概ね『III』に近いものとなっている。
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ステージ4は宇宙空間を舞台とした完全新規のステージで、BGMもオリジナル。ボスは本作オリジナルの大型ニ脚兵器。
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いっぽう、ステージ5は『サンダーフォースII』のサイドビューステージ5面(MD版のステージ8)をアレンジした内容となっており、BGMも道中、ボス戦ともに『II』のそれが使用されているが、ボスは「ヒューマノイド・ハンター」から『III』のステージ5ボスである「モビルフォート」に変更されている。
 
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既存のステージにおいても、敵の出現パターンなどは変更されている。
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『III』では残機がかなり貯まるいっぽうで、シールドアイテムはほとんど登場しない、というバランスだったが、調整が行われた。
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1UPアイテムの出現数こそ変わらないものの、スコアエクステンドの回数が抑えられたため、残機が貯まりにくくなっている。
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いっぽうで、数が少なかったシールドアイテムの出現頻度が上がっており、被弾の保険としてしっかり機能するようになった。
 
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自機の装備に応じて内部ランクが変動し、難易度やアイテム出現数が変化するようになった。この要素は続編の『サンダーフォースIV』にも受け継がれている。
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『III』では、ショットについてフルオート連射の有無が設定可能(デフォルトでは連射ありの設定)だったのに対し、本作では連射設定がカットされているため、連射装置のない筐体では自力で連射しなければならない。
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グラフィックス・ボイスが一新されており、特にボイスはステージ開始時の演出の代替を含め大幅に増えている。
 
評価点(AC)
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ベースとなった『III』と同様に覚え要素は強いものの、対応方法さえわかれば突破は容易なバランス。
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シールドがそこそこの頻度で出現するようになったぶん、初見でもある程度は進めるようになったほか、残機もノーミスで進めば10は貯まるなど、難易度の高騰化が著しかった当時のアーケードSTGのなかでは、比較的良心的な内容といえる。
 
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BGMは再アレンジされ、『III』よりも音質が重厚になった。また、ボイスの再生時にBGMが途切れる問題も解消されている。
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完全新規曲であるステージ4道中のBGMも評価が高い。後に発売された『IV』に隠しBGMとして収録され、条件を満たすとサウンドテストにて聴ける。
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2面のBGMが『III』のそれよりも若干スローテンポになった関係で、『III』では存在していた2面中盤でBGMのサビとシンクロして高速スクロールに突入する演出がオミットされてしまったのは残念なところか。
 
問題点(AC)
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一部ステージが丸ごと変更されているとはいえ、基本的な内容は『III』と大差ない。そのため、大部分で『III』の攻略法が通用してしまい、『III』をやり込んだプレイヤーであれば、比較的簡単にクリア可能。ただし、AC版は目立ちにくいがランク調整要素が存在する。
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無論外部連射装置がついている事が前提の話で、手連射の場合はそれなりに難易度が上昇する。
 一応押しっぱなし(ソフト側の連射)でもそこそこにショットは出るが、ショット1発で倒せる柔らかいザコ敵が少ない本作では間違いなく打ち負ける。
 
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描きなおされたグラフィックスは、『III』よりも美麗になってはいるものの、アーケードゲームとしては、同世代の他社製品よりもかなり見劣りする。
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メガドライブ互換基板「システムC2」で製作されているため、MDレベルなのはしかたないといえばしかたない。
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互換とは言え、実際の基板スペックから比較すると、まず同時発色数においてはMDが512色中64色なのに対し、システムC2は32768色中128色、さらにADPCMが1ch追加され、MDと異なりサブCPU(Z80)がなく、68000だけで処理する仕様のため、MDより動作クロックが高速化されたものが使われており、前述のとおりボイス発声時にBGMが途切れる問題も発生しないなど、MDよりも一部性能面の強化はされている。
 
 
総評(AC)
家庭用ゲームがアーケードに移植されるのはまれで、当時いかに『III』の人気が高かったのかがうかがえる。
しかし、アーケードゲームとしては明らかに低い難易度とループや2周目も無い事からやり込む要素も特になく、1周すれば終わりとなってしまいインカムが稼げない。
シリーズのファンにとっても難易度を上げてやり込む事もできないなど、単体としては名作とされるIIIの改良版として出来は良いものの、稼働形態とゲーム性がマッチせず短命に終わってしまう結果になった。
後述の様に、家庭用ゲームのアーケード逆移植作品の家庭用再移植という稀有なパターンでありながら移植機会に恵まれている事からも、ゲームそのものの素性の良さは窺い知れる。
移植(AC)
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SFC『サンダースピリッツ』 (1991年12月31日発売 8,600円(税別))
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『AC』の移植としては一番乗り。詳細は下記を参照。
 
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SS『サンダーフォース ゴールドパック2』 (1996年12月6日発売 4,800円(税別))
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『IV』とカップリング収録。処理落ちがなくなってる等の差異は見られるがおおむね忠実移植である。
 
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Switch『SEGA AGES サンダーフォースAC』 (2020年5月14日配信 999円(税込))
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有限会社エムツーが展開する『SEGA AGES』シリーズの一作として配信(下記参照)。
 
 
サンダースピリッツ
【さんだーすぴりっつ】
| ジャンル | 横シューティング | 高解像度で見る 裏を見る | 
| 対応機種 | スーパーファミコン | 
| メディア | 8MbitROMカートリッジ | 
| 発売元 | 東芝EMI | 
| 開発元 | テクノソフト | 
| 発売日 | 1991年12月31日 | 
| 定価 | 8,600円(税別) | 
| 判定 | 劣化ゲー | 
| ポイント | BGMの劣化 ショット撃つだけで処理落ち
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概要(TS)
上記の『AC』をSFCに移植した作品。
誤解されがちだが、本作はあくまでも『AC』の移植であり、『III』の移植ではない。もちろん、『AC』自体が『III』の移植なので本作も共通点が多いが。
特徴(TS)
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基本的には『AC』と同内容だが、本作独自の要素も存在する。
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ステージ6と最終面であるステージ8が、オリジナルの内容に差し替えられている。
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ステージ6は無人防衛システム「ケルベロス」と戦う点は同じだが、いでたちや攻撃方法が大幅にアレンジされており、ほぼ別モノになっている。また、ケルベロス破壊後に隕石群が飛来し、さらにそれを抜けると本作オリジナルのボスと戦う展開になる。
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ステージ8は有機物の体内のような、R-TYPE風のシーンになる。最終ボスであるオーン皇帝「カウ・ス」も生物的。
 
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一部のステージ・ボス戦のBGMが、本作独自のそれに差し替えられている。
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『III』と同様、オプションでフルオート連射の設定が可能になっている。
 
評価点(TS)
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グラフィックスの移植度は良好。多重スクロールやラスタースクロールなど、背景もしっかりと再現されている。
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エンディングの一枚絵は『III』や『AC』の、PCゲーム的な雰囲気の濃い絵柄から大幅に描き直され、アニメ調の絵柄となっている。
 
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オリジナル要素は意外と悪くなく、その点を評価する声もある。
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ただ、ステージ6に関しては隕石群シーンが冗長だったり、後半からアイテムがまったく出現しなくなるなど、バランス面では疑問が残る。
 
問題点(TS)
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ハードスペックの関係上、処理落ちが頻発し、テンポをかなり損ねている。
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画面上に敵がまったくいない状態であっても、上下方向にミサイルを発射する武器「ファイヤー」を使うだけでかならず処理落ちが発生してしまったりする。
 
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SFC音源であることを差し引いても、低クオリティとしか形容しようがないBGM。
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新曲の評価そのものはそこそこなのだが、BGMの崩壊ぶりは、元ネタである『III』および『AC』の流麗なメロディラインを台無しにしてしまっている。
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曲を聴き比べると、微妙にテンポアップしている謎のテコ入れ。感覚でいけば、「33回転レコードを45回転で聴く」みたいな感じ。
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また、効果音も全体的にショボくなっていたり(特にボスを倒したときの効果音は「ボボボボ」と異様に濁っている)、アイテムを取得した時の音声がこもっていたりする。
 
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『AC』よりも画面が多少狭くなっているのだが、それに合わせた調整がきちんとされていない。
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敵が画面外にいる、あるいは見えるか見えないかという微妙な状況で攻撃が飛んできたり、画面外でトラップが発動したりといった場面が少なからずある。
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アイテムキャリアーも、『AC』では画面の上から飛来し、その後は地面に沿って移動…という動きかたをするのだが、本作では「画面の上から飛来」する部分がなく、いきなり「地面に沿って移動」してくるので、一部のステージでは取り逃がしやすい。
 
総評(TS)
MDにしかソフトを供給していなかったテクノソフトが、それなりにがんばってSFCに移植した意欲はうかがえる。
しかし、BGMの出来の悪さや処理落ち多発などによる完成度の低さで、シリーズファンからは悪評を得てしまい、『AC』ともども黒歴史扱いされるハメになった。
もっとも、目立ったところはないがひどく出来の悪い部分もない『AC』と本作を同一視するのもどうかという話ではあるが。
余談(TS)
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よく間違えられるのが、「このゲームのCMキャラクターはとんねるずだった」であるが、正確には「このゲームをハメコミ合成していた東芝BAZOOKAのCMキャラクターがとんねるず」である。東芝EMI発売のスーファミソフトであるが、それを利用しての自社テレビの広告にゲームととんねるずを使った、という事である。
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間違えられる理由に、当時のゲーム誌でこのテレビの広告が載っていたのを覚えている方が多いというのがある。ハメコミでサンダースピリッツのタイトル画面が映っているテレビにポーズをとっているとんねるずの二人の広告であったが、ゲーム誌での掲載だからかゲームの広告だと思った当時のちびっ子が多かった模様。
 
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上記の「サンダーフォースIIIの移植」という誤解、出来の悪さから「テクノソフトではない」という誤解と、テレビの件を含めやたら誤解の多いソフトである。特に「サンダーフォースIIIの移植」についてはメガドライブを取り扱わなかったファミコン誌での最初の記事での紹介が「メガドライブの大ヒットシューティングの移植」だった等がある。
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「スーファミは処理速度が低い」ことを決定的にしてしまったのがこのソフトでもある。メガドライブとスーパーファミコンに(ACからの移植ではあるが)一応両方で遊べるタイトルとしてベンチに扱われた形。
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先に発売された『グラディウスIII』も処理落ちしていたが、元のアーケード版グラディウスIIIも処理落ちしていた為にそこまでは言われていない。
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これで「それ見たことか」と勢いづいたのが当時のメガドライブ愛を結集していた「メガディクショナリー」。ファミコン必勝本やハイスコアで取り上げられた有名同人誌である。
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一応付け加えておくと、同時期にもこの2機種双方へリリースされた作品はシミュレーションゲームなどで存在しており、そちらでもやはり純粋な処理性能の差を露呈してしまっている。
 
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一応、仕込まれた裏技が存在する。
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タイトル画面で音が鳴るまでBを連打してゲームを始めると、音が鳴った回数分だけクレジット数が増える。
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タイトル画面でBを連打したあと、デモが始まる前にスタートとセレクトを同時に押せば、モード設定画面に切り替わる。
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ゲームのプレイ中にRとスタートを同時に押すと、ポーズ中でもBGMを聴けるようになる。
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ゲームをクリアし、タイトル画面でスタートとセレクト同時に押し、モードセレクト画面にする。ゲーム中の音楽を聴いたり、自機数を変えるモードが追加される。
 
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東芝EMIはいくつか他にもゲームを出しているが、SFC版『サイバリオン』、『バトルマスター』等微妙な評価の物が多い。特に有名なのがFCのクソゲー『パチコン』。
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1999年には東芝EMIがゲーム事業から撤退している。その主要スタッフが新たに立ち上げた会社がハムスターである。
 
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セガにテクノソフトの版権が移った際に、このサンダースピリッツは「テクノソフト作品の諸権利に含まれていなかった」とセガの奧成氏がスピリッツについての復刻の可能性を質問してきたユーザーに解答している。
皮肉にも、ファンの心を2度ブロークンした続編が発売されてからは、オリジナリティの良さなどから再評価される傾向にある。とは言え、「『VI』よりはマシ」という相対的な評価でしかなく、やはり根本的な評価は低いままである。
SEGA AGES サンダーフォースAC
【せがえいじす さんだーふぉーすえーしー】
| ジャンル | 横シューティング |  | 
| 対応機種 | Nintendo Switch | 
| メディア | ダウンロード専売 | 
| 発売元 | セガ | 
| 開発元 | M2 | 
| 発売日 | 2020年5月14日 | 
| 定価 | 999円(税込) | 
| 判定 | 良作 | 
| ポイント | 『III』と大差が無かったオリジナル版から大きく一新 RYNEXの逆輸入
 スコア稼ぎの幅が広いSTYX量産型
 KIDSモード続投
 サンダースピリッツの悪評を名誉挽回成功
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| SEGA AGESシリーズリンク | 
 
概要(SEGA AGES)
『IV』と『ヘルツォーク・ツヴァイ』に続くテクノソフト作品の移植となる。
特徴(SEGA AGES)
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『ゴールドパック2』で存在した「KIDSモード」に加えて、Switch版の追加要素として『IV』で登場した「RYNEX」「STYX量産型」「サンダーソードを装備したRYNEX」が新規自機として追加。機体に応じてゲーム内フォントやデモ画面も変化する。
 「RYNEX」は以前同シリーズにてリリースされた『IV』の追加要素の逆輸入という側面もある。また、サンダークロー仕様が独立しているのは、本作の演出やステージ数の問題から形態変化という形を採れなかったことによる。
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更に自機の攻撃力上昇などの変更点がある海外市場向けのNEWバージョンや、基板のROM内にデータとして存在していた一部BGMのステレオバージョンも収録されている。
 
評価点(SEGA AGES)
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オリジナル版の時点で『III』と大差なく、攻略方法が通用しやすく、『III』をやり込んだプレイヤーは簡単にクリアできる事に批判があったが、「RYNEX」を始めとする個性的な新規自機の導入により、戦略性と攻略性の幅が上昇した。
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RYNEXはRAIL GUNでTwinVulcanとの戦いが有利になり、SNAKEは敵を撃破する時間は遅いがやりごたえがある。
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STYX量産型はオンラインランキングの導入の事もあって、バックファイアを利用した戦法はハイスコア勢からの評価が高く、従来のSTYXとは違う魅力を引き出してる。
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サンダーソードを装備したRYNEXは敵がいなかったり、前に進みすぎた上にRAIL GUNに効かないRollGunnerはサンダーソードの発動準備の相性がよく、攻略方法がいい意味で変わり、新鮮味が出るようになった。
 
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どこでもセーブの導入
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3DSの『III』に存在したが『SEGA AGES』共通に言える1個から10個に増えたことで保存の幅が増えて、オリジナル版のみならず3DSの『III』より便利になった。
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自機が異なるセーブファイルはその自機の名前が表示されることによって選択ミスが起こらない様に分かり易くなった。
 
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サウンドのステレオ化
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基板内の情報しか存在しなかったが、本作はゲーム本編でもステレオで聴くことが出来るようになった。
 
問題点(SEGA AGES)
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オンラインランキングの基準が狭い。
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どの自機が異なっても「フリースタイル」で共通になり、幅の狭さに不満がある。
 
総評(SEGA AGES)
『III』と大差が無かったオリジナル版に大規模なメスを入れて大きく差別化を成功し、時代に合わせたことに相応しい理想的な完全版である。
余談(SEGA AGES)
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当初は『III』の移植を検討したが既に3DSに移植済み、一方で『II』だとナンバリングが逆戻りしてしまう。そこで『III』とはまた異なる内容で、かつ高クオリティのグラフィックをもユーザーに届けられる、更にシステムC2のノウハウもあるとのことで『AC』が選ばれた。
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この他テクノソフトの数少ないAC作品として『ハイパーデュエル』も候補に挙がっていたが、オリジナルの基板を使用しており、本作のためだけに基板を一から解析するのは現実的ではない理由から除外されている。
 
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2018年の移植発表から配信が2年も長引いたのは、基板のROMの逆アセンブルと解析、追加要素を取り入れるためのシステム調整やバグ修正に時間が掛かったため。
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本シリーズのスーパーバイザーであるセガの奥成洋輔氏は、前述する『サンダースピリッツ』の件もあって本作には元々あまり良い印象を抱いていなかったが、この移植が再評価の機会になったことを語っている。
最終更新:2024年06月06日 16:41