スーパーリアルベースボール '88
【すーぱーりあるべーすぼーる はちじゅうはち】
ジャンル
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スポーツ(野球)
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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2MbitROMカートリッジ
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発売元
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バップ
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開発元
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パックスソフトニカ
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発売日
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1988年7月30日
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定価
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5,500円
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判定
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クソゲー
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ポイント
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アンリアルベースボール スーパーテクニカルベースボール 誇大なキャッチコピー 阪急・南海の実名参戦は評価の余地あり ホームランやホームインよりもアウトが騒がしい
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概要
リアルさを追求したゲーム内容と、全て実名の選手名などが印象的な野球ゲーム。日本テレビ放送網のグループ会社であるバップが発売元となることにより、初めて日本野球機構から実名使用の許諾を受けたプロ野球ゲームとして話題になった。
キャッチコピーも(いろいろな意味で)特徴的。(余談の項を参照)
しかし残念な事に野球ゲームとしての出来は…。
内容
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試合は12球団から1チームを選んで1試合のみを行う。
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選択は自由、観戦も可能で対CPUが使うチームも任意で選択できる。またCPUのチームのスタメンオーダーも自由に決められる。
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リーグのようなモードもないが、そこは当時雑誌企画で行われた『ファミスタ』でのリーグ戦のようにカミベース管理のアナログ関与で行えということだろう。
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とことんマニュアル操作の野球ゲーム。
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取り分け特徴的なのが送球時はもちろん捕球するのにもAボタンを押す必要がある(一応ピッチャーの投球をキャッチャーが捕る場合のみ自動)。
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他の野球ゲームのようにただ投げっぱなしでは取り損ねてボテッと落としてしまう。しかも内野手の場合、そうなると目の前に落としているのにすぐは拾えない。
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投球は長押しで行い、リリースするタイミングをボタンを離すタイミングで決められる。つまり、タイミングでコースを投げる方式。
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投球前は、十字ボタンで守備位置を動かせる。ピッチャーのみを動かす場合は長押しで、守備シフトは前後左右1回ずつ押す必要がある。
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打者はAを一度押して構えないと振ることができない。Aを長押しするとバントになる。
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ピッチャーにとってはバットを構える間に投げるという速攻戦法も有効。
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ランナーのリード度合いはBを押しながら走る方向の十字ボタンを押した回数で調整。連打によって盗塁もできる。
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といった具合にこれらの操作がすべてリアルタイム進行で行うことができる。
問題点
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リアルを謳っている割にはお粗末な仕様。
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リアルの選手の成績の打率が高いほどミートカーソルの動きが速く、ジャストミートもさせやすく、長打を出しやすい。
このため、リアルの成績が打率.270程度の長距離バッターより.300以上の選手がホームランを打ちやすくなっている。
1987年シーズン終了時点の成績がほぼそのまま反映されており、西武ライオンズの秋山より、広島東洋カープの正田がバンバン本塁打を打てると書くと、野球を見ている人がぎょっとすると言えば良いだろうか。
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ホームランが225メートル飛ぶことがある。
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三振すると何故か投手がホームへ走っていく。チェンジするときは何故か走らない。
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後逸してしまうと、追いかける→ボタン押す→ボールが通りすぎていて取れない→また追いかけ(ryの無限ループに突入することがある。
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守備時はバックネットから視点になるのだが、内外野の視点切替がなく、遠近法が極めて見づらいため外野手の捕球はカン任せになる。
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アウトになると「OUT」の表示とともに「ビャーーーー」というノイズのようなやかましい効果音が長めに鳴る。併殺打の時は連続して鳴るので更にうるさい。
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逆にセーフだった時は、「SAFE」の文字も効果音もまったくない。
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ストライク(ファールは例外)やボールになった場合はカウントが増えるのみ。
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そのくせ「FOUL」の表示はある。
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BGMにホイッスルのSEが重なるのだが、しつこくて耳障り。河川敷で素人応援団がホイッスルを吹き鳴らしているようなイラ立ちを覚える。
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BGMは高校野球でよく使われているもので、良く言えば聴き慣れているが、悪く言うとオリジナリティがない。ファミスタも同じBGMを使っているが、さすがにアレンジはしてある。
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試合の結果告知があまりに味気ない。
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トータルスコアのみ表示してその前でカーソル代わりのミニキャラが飛び跳ねて喜んだり負けてガッカリしているだけで、安打やエラー、盗塁など細かい成績を全く出さない。
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折角マニュアルで操作しない限りエラーしてしまうなど、技術が要求されるシステムなのにこういった場面で出さないのでは持ち味を殺している。
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選べるモードは「1P」「2P」「WATCH」の3つで、1試合のみを行い、ペナントモードは存在しないなど内容が薄い。
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一応当時はペナント等の要素は珍しく、あっても一定数勝利するだけ等存在価値は微妙ではあったので「無駄な要素を省いた」と良いほうに解釈することはできるが上記の試合結果告知同様に、このようなモードがあれば煩雑な操作をマスターしてまで上手くなることに目的意識を持つきっかけになったかもしれない。
賛否両論点
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独特のシステムのせいで、初心者にはハードルが高いが、操作をマスターすれば普通に遊べる。
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ピッチャーのリリースポイント・バットを構える・捕球するときと、何をするにもボタンを押さなければならないため、アクション要素が強い。
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ショートゴロを一塁でアウトにするには、「ショートが球を捕るとき・一塁送球するとき・一塁ベースカバーの野手が球を捕るとき」でそれぞれ1回、計3回もAボタンを押さなければならない。
ボタン押しっぱなしでもいいが、移動しながら押しっぱなしにすると低速移動になる。ちなみに球を捕るときのボタンを失敗するとエラーになる。
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リアルを謳っている割にはお粗末な表現。
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投球時のボールがどう見てもバレーボールぐらいの大きさ、回転もしていない。
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ただし当時の画質や、ヒットの際に画面奥に飛んで小さくなることを考えると、見やすさ重視として評価できる。
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相手選手の投げる球が常識ではありえないくらい異様に曲がる。球が曲がりすぎて死球になることもある。
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しかし、高低差の概念が無いのに変化が少なければ、見た目にもゲーム性としても物足りなくなるので許容すべきではある。変化が大袈裟なのは2Dでは普通。
評価点
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同チーム対戦ができる。
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後のSFCの時代からすれば当り前のように思えるが、当時はどんなゲームでも同チームや同キャラ戦ができないのが当り前だった。
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当然ながら選手の能力は同じであるため、実力勝負にはもってこいである。
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スコアボードの表示は当時としては高レベル。
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名前も日本人選手はひらがな、外国人選手はカタカナに分けられている上、5文字以上の名前の選手にも対応している。
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高めはフライに、低めはゴロになりやすい等、ちゃんとリアルな部分もある。
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「阪急ブレーブス(現・オリックス・バファローズ)」と「南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)」が実名で登場する唯一の野球ゲームである。
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これはこの年の秋にそれぞれオリックスとダイエーに身売りされたことによる。
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2015年まで現役であった阪急ブレーブス所属経験者の中嶋聡は残念ながら収録されていないが、最後の南海ホークス戦士と名高い吉田豊彦は「よしだと」として入っている。
総評
無駄に煩雑な操作性、外したキャッチコピー、意味あるのかないのか分からない実名選手…しかし操作をマスターさえすれば普通に遊べたり、(更に劣化した)続編と比べるとまだまともと言える部分もある。
スーパーリアルというよりスーパーマニュアル、スーパーテクニカルと言った方が正しいかもしれない。ユーザー受けはともかくとして「とことんなまでに実力主義な野球ゲームを作りたかった」というこだわりは一応感じられる。
とどのつまり「人気作になりたかった駄作」と言うべきか。また、BGM・効果音のやかましさは尋常ではなく、電源を落とした途端、静寂が訪れる。
余談
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本作は「これは、野球ゲーム史に残る問題作だ。」と謳っていたが、ある意味その通りの問題作になってしまった。
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当時「週刊少年ジャンプ」誌上で、「キム皇」こと木村初氏は本作を「これは最低の野球ゲームだ」と痛烈に批判していた。この出来ならば当然と言えば当然ではあるが…。
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前年までは一大ヒットの『燃えろ!!プロ野球』(1987年7月発売)『プロ野球ファミリースタジアム'87』(1987年12月発売)など無許可でしれっと実名を使っていたが1988年から実名を使うには日本プロ野球機構の公式なライセンスが必要になった。
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だが、当時のファミコンプレイヤーである少年層ではそのような事情など知る者は限られており、本作が1988年発売最初の野球ゲームであったならば「すべて実名」と言われても「当たり前だ!」としか思われなかっただろう。
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当時は野球ゲームが歴代稀に見る一大ブームの時代で、6月にファミコンで『究極ハリキリスタジアム』(タイトー)PCエンジンで『パワーリーグ』(ハドソン)といった大ヒット野球タイトルが本作に先立って発売され、そのもじられた名前の選手を見たことで上記のような事情そのもの、少なくとも「実名が使えなくなった」を察することができたからこそCMや広告などでの「すべて実名」という触れ込みが決して「当たり前」ではなく「本作の魅力」として伝わったものと思われる。そんな効果もあってか売上60万本を記録した。
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裏を返せば上記の2作品がなかったらその魅力が伝わらず、伝わった頃にはそれ以前に最悪な操作性ばかりが口コミで伝わって「いくら実名でもそんな操作が面倒くさいクソゲーはやりたくない」と敬遠された可能性も否定できないので、ある意味運に恵まれた作品といえるかもしれない。
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開発元が違うのにこれの悪いとこばかり引継ぎさらにダメな要素まで追加してしまった『ベースボールファイター』という続編的ソフトも存在する。
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このゲームの雑誌の広告の「くろまてがクロマティになる」という糸井重里氏のキャッチコピーもあまりにも有名だったが、そのコピーが発表される直前に当のクロマティ選手本人が欠場に追い込まれてしまった。またクロマティ選手は本作のCMキャラクターも務めており、本作のテレビCMにも出演していた(冒頭のパッケージ画像にも右上にさりげなく写真が使われている)。
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当時バリバリ現役のウォーレン・クロマティ氏が出演したCM
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本作で登録されている選手に発売当時マイナーな選手だった高田誠(巨人)が含まれている。
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高田誠氏に関しての詳細
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高田は1987年デビューだが1年目は全く出場機会がなく2年目の当時、初めて一軍出場し同年28試合に出場した。
将来的な正捕手候補と期待されたものの、翌1989年には中日で元正捕手だった中尾孝義が加入するなど再び出番がなくなり1989~1991年の3年間では5試合しか出られず、1991年オフにオリックスに移籍。 移籍をきっかけに正捕手級の扱いを受けて出場機会がグンと増すことになった。
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そして彼の存在が広く知れ渡ったのは1994年にイチローが大ブレイクしてオリックスが注目された頃であり、1996年にパ・リーグ連覇を成し遂げ、日本シリーズで古巣の巨人を破って日本一に輝いた時、同じ元巨人として四條稔、勝呂壽統らと共に「いつか日本シリーズで自分たちを放り出した巨人を倒すことを誓い、それを成し遂げた者たち」として高田もまた注目されることになり、やっと元巨人の選手としても広く知れ渡った。
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また、捕手は基本的に打撃よりも安定したリードなどが重要視される土台石的なポジションのため目立ちにくく、その捕手に限っても長年に亘り正捕手として存在感を示してきた山倉和博や近鉄で元正捕手の有田修三、翌年以降も上記の中尾孝義など名立たる面々が名を連ねる巨人軍ではかなり影の薄い存在だった。つまり巨人の選手として現役の頃の高田はまるでマイナーな選手でしかなかったのだ。
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しかもゲームともなれば更に限られた選手しか登場できない上に、打撃成績の優れた選手ばかりが目立つため、それらが優先されがちなため尚更である。
ただ本作はポジションまで選手ごとにしっかり決められているため、ちゃんと正式な捕手を選抜して入れる必要があることと、実質同年デビューでまだ期待されていた時期だったことが幸いしたと言えるだろう。 しかし、そんな形でゲームに登場したものの残念ながら当時のゲームプレイヤーにとって捕手の重要さを知る者は少なく、やはり貧打が災いして特別記憶に残るものにはならなかったようだ。
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最終更新:2024年08月13日 12:59