ファミリートレーナーシリーズ6 マンハッタンポリス
【ふぁみりーとれーなーしりーずしっくす まんはったんぽりす】
| ジャンル | 体感型アクション |  | ファミリートレーナー
 ※この写真ではA面でプレイしている
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| 対応機種 | ファミリーコンピュータ (ファミリートレーナーB面使用)
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| 発売元 | バンダイ | 
| 開発元 | ヒューマン | 
| 発売日 | 1987年8月31日 | 
| 定価 | 4,900円(税別) | 
| 判定 | クソゲー | 
| ゲームバランスが不安定 | 
| ポイント | ファミトレでさえなければ… 「1時間当たり10分程度の休憩を」
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| ファミリートレーナーシリーズリンク | 
 
概要
『マットコントローラー』を使って足で走ったり跳んだりしてキャラを動かす「体でするゲーム」の『ファミリートレーナー』(通称『ファミトレ』)のシリーズ第6弾。
シリーズは当初『アスレチックワールド』『ジョギングレース』『エアロビスタジオ』など体感によるスポーツゲームを打ち出していたが、シリーズ前作にあたる5作目『迷路大作戦』で『体感スポーツ』の路線から離れアクション系のゲームを初めて出した。
その流れに準じて本作も完全なアクションゲーム路線の作品で、ゲーム内容としては、警察官となり街中の悪人達を捕まえていくというもの。
内容
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主人公の新米ポリスマン「リトル・ベン」を操作して、マンハッタンの町に蔓延る悪党と、その子分を捕まえていくアクションゲーム。
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今は「リトル・ベン」だが、いつか警察官として大手柄をたてて「ビッグ・ベン」と呼ばれることを夢見ている。
 
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ファミトレ作品であるため操作はマットコントローラーを使って主に足で行うことになる。マットは12ボタン式のB面を使用する。
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画面はサイドビュー方式になっている。
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画面下に簡易的なマップがあり、ベンの位置が■で、ターゲットの位置が×で表示されている。
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地下の下水道や地下鉄、建物内などもあり、それらはマップの対象外になっている。
 
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街には犯人やその仲間(実質子分)以外にも一般人が闊歩しており、そんな中から犯人を捜して警棒や投擲武器を駆使してアタックして逮捕するが目的。
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上記以外にジャンプして踏みつけての攻撃できる。
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仲間を全滅させると犯人が現れるようになる。
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犯人の仲間はベンに攻撃してくる。
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一般人を攻撃しても特にペナルティなどはない。アメリカだろうが日本だろうがこんなモラルもクソもないポリスマンが問題ないはずがないが…
 
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各ステージには制限時間があり(初期値9分59秒)、これが尽きるとゲームオーバーとなる。
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またベン自身にも体力があり、敵の攻撃を受けると減少し尽きるとゲームオーバー。体力残量に応じて、ライフゲージ左に見えているベンの顔の表情が変化する。
 
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基本的な操作は下記の通り。
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ド真中の6・7で走る。
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左側へ曲がるなら6と2、右へ曲がるなら7と3(建物に入る時も含む)。
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後ろへの方向転換は10または11。
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道は『アスレチックワールド』のように3列構成になっており5で左側へ、8で右側のラインに移動。
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例えば左ラインにいる時に右ラインに行きたいなら、8を二度押すことになる(1度目で中央ラインに移動)。
 
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アイテム使用は1で投擲アイテム(缶コーラやバグダンなど)、4で警棒。それ以外のアイテムは9または12で使用。
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他にIコントローラーのAボタンで1(投擲アイテム)、Bボタンで4(警棒)を代替することもできる。
 
 
アイテム
| アイテム | 登場ステージ | 効果・用途 | 
| ハート缶 | 全 | 体力が回復 | 
| 時計 | 2~6 | 残り時間が1分回復 | 
| 缶コーラ | 1 | 投擲アイテム | 
| バグダン | 2・5 | 投擲アイテム | 
| オレンジ | 3 | 投擲アイテム | 
| マスタード | 4 | 投擲アイテム | 
| ピストル | 6 | 投擲アイテム | 
| V-MANターボドリンク | 2 | 高速で走ることができる | 
| ハイパードリンク | 3 | 一定時間無敵 | 
| 犬笛 | 4~6 | 警察犬「ポチ」を呼び出して攻撃させる | 
| ガギ | 6 | マフィアのアジトに侵入するために必要 | 
 
ステージ構成
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ステージ1(公園)
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犯人 スナッチャー・ジョー 29歳 180cm 75kg 仲間3人
 遊ぶ金欲しさのひったくり常習犯。
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ステージの特徴
 一本道の狭いマップ。仲間は攻撃してくるがジョー自身特に攻撃はしてこない。
 
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ステージ2(ハーレム)
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犯人 ひったくりルイス 27歳 190cm 80kg 仲間7人
 ひったくりグループの「ルイス軍団」の大将で、足が速く手も速い。
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ステージの特徴
 マップがかなり複雑に入り組んだ地形。ここでも仲間は攻撃してくるがルイス自身足こそ速いものの特に攻撃はしてこない。
 
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ステージ3(倉庫街)
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犯人 アニマルS 32歳 187cm 113kg 仲間4人
 元アメフトの選手で物を壊したり人を殴ったりすることが大好きな暴漢。
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ステージの特徴
 マップは一本道が上下(南北)で2本だけ。その間に倉庫があり、行き来するには倉庫内を通ることになる。アニマル自身もタックルで攻撃してくる。
 
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ステージ4(工事現場)
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犯人 ビッグバーガー 35歳 175cm 125kg 仲間5人
 喰い逃げの常習犯でファーストフード荒らし。
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ステージの特徴
 マップそのものもステージ2ほどではないが複雑。また場所によっては上から鉄骨が降ってくるところもあり(本来なら即死モノだがちょっとのダメージで済む)、ボスのバーガー自身も鉄骨を投げて攻撃してくる。
 
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ステージ5(繁華街)
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犯人 ブラディ・ベティ 19歳 168cm 54kg B82W58H86 仲間18人
 スケ番上がりの恐喝常習犯でナイフ投げが得意。
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ステージの特徴
 入り組んだ地形の2つの町を地下鉄で行き来する。ベティ自身も拳銃で攻撃してくる。
 
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ステージ6(オフィス街)
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犯人 ドン・マヨネーズ 68歳 160cm 70kg 仲間30人
 表向きは実業家だが実態はマフィアの二代目ボス。
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ステージの特徴
 このステージでやっとベンは警察官らしく拳銃で攻撃するようになる。また敵の仲間も銃を撃ってくる。
 マップはステージ2以上に複雑に入り組んでおり、マフィアのアジト内もかなり複雑。
 
マップ外エリア
地下鉄(ステージ5)
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電車のドアに入ると「電車に乗った」という扱いで隣の町へ移動できる。
地下道(ステージ2・5・6)
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マンホールから落ちた場所にある下水道。戻るためには一番右にある高い足場に乗って、更にジャンプしなければならない。
倉庫(ステージ3)
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ステージ3の2本の道を行き来する通路になっている。
工事中のビル(ステージ4)
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上から鉄骨がガンガン降ってくる。これも当たるとダメージ。これだけ鉄骨落ちまくりで崩れないビルが凄い…
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実質ステージ4のラスト部分にあたり、上記の「地下道」から上る要領で上の回を目指していく。
 
バーガーショップ(ステージ4)
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マスタードを手に入れることができる。ここでは敵はおろか一般人すらいない。営業大丈夫か?
ペットショップ(ステージ4~6)
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犬笛を手に入れることができる。ここも敵はおろか一般人すらいない。営業大丈夫か?
プールバー・クラブ・パブ等々(ステージ5)
ポリスステーション(ステージ6)
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中には誰もいないが、ここで拳銃の弾が補充できる。銃自身はベンが最初から持っている(初期残弾9)。
マフィアのアジト(ステージ6)
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ラスボスの居城で本作最後の舞台。中はまるで3D迷路のような構造になっている。
問題点
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非常に煩雑な操作が要求される。
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それまでのような走って跳んでのスタイルだけでなく様々な武器攻撃やアイテム使用といった操作も新しく組み込まれたが、それらも足でしなければならない。前例として『ジョギングレース』での操作を更にややこしくしたといえばわかりやすいだろう。
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そもそもゲーム自体が標準のコントローラーでするようなバランスで作られているため、それをファミトレマットで「走りながら攻撃を行う」というのはいくら何でも無理が過ぎる。
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更にしゃがみながらピストルを撃つとなると尚更で、両手両足で4つのボタンを押さえつつピストル発射の1ボタンを押さなければならない。「頭を使え(物理的に)」ということなのだろうか?
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警棒に至っては最悪で有効な距離が短すぎる上に「走りながら叩く」が前提も同然。
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攻撃手段として「ジャンプしての踏み」も有効とはいえ、プレイヤーとキャラのジャンプの距離をうまく調整するのは相当慣れが必要。疲れていたりすると狙った距離(高さ)でのジャンプができないこともある。
 
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ただし別の人が1コンを持って、一部の操作を補助することもできる。
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『迷路大作戦』のようにプレイヤー視点ならば右や左への方向転換は直感的だが本作のようなサイドビューではそれも少々ややこしくなる。更に道幅が3ライン分あるため、それとの混同もしやすい。
 
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急激に難易度が爆上がりすぎるステージ2。
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上記の通り操作自体が煩雑すぎるのは確かだが、それでもステージ1はそこまで苦にはならないレベル。だがステージ2になるとマップ自体が急激に広く複雑になる。
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それだけにとどまらず、至る所にマンホールが口を開けており、ベン自身の走りがそこそこ速いこともあって意図せず落ちてしまうこともしばしば。道幅は3ラインあるので、違うラインで走っていてたつもりでも見間違って落ちてしまうことも…
 更に、このステージにはパワーアップアイテムでスピードをアップさせるものもあり、そうなると見えた頃には回避できず勢い余っての落下が発生しやすくなる。
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そして落ちてしまうと、これがまた凶悪で説明書はタイムロスになるとしか書かれていないが、まず脱出するために反対側で走り、高いジャンプをして一段上の足場に乗りそこからまたハイジャンプという体力を容赦なく削る苦行を強いてくる。
 これも、ただやみくもに速く走ってジャンプすればいいわけではなく、まず一段階目の高い足場にジャンプして乗るにも、その間合いがシビアで遠いのは元より、ちょっと近づきすぎてジャンプしただけで壁に跳ね返されてしまう。そして折角飛び乗れても、そのままジャンプしても届かないので助走したら勢い余って落ちてしまい、またイチからやり直しになることも。
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加えて上記の通りネズミがうろついており、これまた容赦なくベンにしつこく付き纏ってくるのでベン自身のライフまでゴリゴリ削ってくる。逃げようとすれば当然プレイヤーのリアルな体力を削る。
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極めつけはそんな地獄をやっと抜けても出てくる場所は元の場所ではないので、その把握をしなければならなかったり、元の場所に戻るのにもまた走らなければならない。
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こんなことを繰り返していては制限時間以前に気は滅入って体力はヘトヘトになる。
 
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他のステージも大概なものだが、これほどの苦行を要するならステージ4ぐらいにしてちょうどいいバランスだろう。
 
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なりふり構わなすぎな主人公の警察官ベン。
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最初は警棒しか持っておらず、それ以外はアイテムを現地調達するしかない警察官。主人公以外に警官はひとりも登場しない。
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缶やマスタード、オレンジなどの武器とはいえないようなものを敵に投げつける警察官。
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5面ボスの女性犯罪者に投げキッス(本当は平手打ちらしい)で攻撃する警察官。
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6面になってやっと警官らしくピストルを使うのだが、そこに辿り着くまでが苦行で警察官にあるまじき姿ばかり見せられる。
 
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一時的にパワーアップするアイテムもあるが、どうみてもドーピング。
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警察犬も体当たりするだけでほぼ役立たず。でも隙を作るのに役立つ。
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全6面の最後の2つの面では地下鉄まで使いマンハッタン中を駆け巡るわけだが、地下鉄がどこへ向かうのか
乗ってみないとわからない
。
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しかも最終面に至ってはマップ3つ分の凶悪な広さで、マンハッタン中にいるマフィアの子分全員を倒さなければならないので、迷いまくり、プレイヤーの体力は尽き、待っているのはタイムアップ。
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5面と6面で子分らを倒した後、各ボスがどの地域に現れるかはランダム。
 
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6面のボスは銃も犬も効かないというおまけつき。
 
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見た目もいろいろシュールすぎる点が多い。
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ネズミだろうが樽だろうが拳銃の弾丸だろうが鉄骨だろうがダメージは同じ。ベンは強いんだか弱いんだかよくわからない。
 
評価点
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当時のファミコン作品としては出来のいいグラフィック。
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主人公や通行人など二頭身のキャラクターは可愛らしいデザインである。
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その分、ボス及び頭身の高い子分は微妙なデザインだが。
 
総評
ファミトレにおけるプレイヤーのキャパを完全にオーバーした操作を要求している点からマットとの相性があまり良くない内容だったの一言に尽きる。
本体付属のノーマルコントローラーでのプレイを考えるとそれほど無理のないゲームに仕上がっていたと考えられるだけに「とにかくファミリートレーナーで出したことが失敗」だった。
操作性以外にもいろいろとシュールな挙動も目立つなど対応ソフトの中でも微妙な作品である。
その後の展開
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同年11月27日『ファミリートレーナーシリーズ7 ファミトレ大運動会』を発売。
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久しぶりにスポーツ路線に戻ったゲームで操作性の難もなくなり、大人数でわいわい楽しめるゲームとしてファミトレシリーズの中でも出来の良いゲームになっている。
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本作や『迷路大作戦』の取扱説明書ウラではシリーズ第7弾は『スポーツジョッキー』というタイトルでゴムひも大会、パン食いリレー、スケボーレースなどちょっと変わった運動会とのことで、イメージイラストもスケボーに乗った少年がヤリを持ったアフリカの黒人原住民とライオンの横を突っ切るという運動会というより、その体を取ったハチャメチャなアクションゲームのようなイメージだったが、フタを開けてみればスケボーレース以外は障害物競走、綱引き、ムカデ競争という正統派な運動会ゲームとなった。
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そこには「企画中」という記載があったので、結果的に初期の構想から全然別物に仕上がったとも考えられる。そう考えると発売の間隔が3ヶ月も空いているのも納得。
 
 
余談
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大人でも疲れるゲームなので、ダイエットにはちょうど良いかもしれない。
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ステージ2のボス「ルイス」は俊足という設定で足が速いことから、当時陸上界のスーパースターで日本でも人気が高かったカール・ルイス(アメリカ)をルーツとしているものと思われる(カール・ルイスもゲームの「ひったくりルイス」と同じ当時27歳)。
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そして本作発売と同時期に開催された世界選手権で9秒83と、それまでの世界記録9秒93(カルビン・スミス(アメリカ)が1983年に出した記録)を0.1秒も更新する驚異的な世界新記録を打ち立てたのはベン・ジョンソン(カナダ)である。
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ただ主人公のベンの名は時計台「ビッグ・ベン」をルーツとして、それをもじって「リトル・ベン」なので、これに関しては偶然の一致にすぎない。
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そしてベン・ジョンソンは翌年のソウルオリンピックで上記をさらに上回る9秒79の驚異的世界記録を叩き出すもドーピングが発覚し世間から大バッシングを受け、その象徴的な存在として有名になる。実際にはドーピングは本作発売前の頃から既に手を出しており上記の記録を含め彼の出した9秒台の記録はすべてドーピングによって出せたものと1989年に認めた。
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上記の通り、ゲーム中でベンはドーピングでパワーアップするので奇しくも現実のベンと重なっていたことになる。
 
 
最終更新:2024年05月17日 22:21