小公子セディ
【しょうこうしせでぃ】
ジャンル
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クイズADV?
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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フジテレビ フジミック
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開発元
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グラフィックリサーチ
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発売日
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1988年12月24日
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価格
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5,900円(税別)
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判定
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バカゲー
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ポイント
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増殖する家庭教師の恐怖 家庭教師避けゲー 小公子セディとは思えない奇天烈な展開の数々
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概要
『小公子セディ』はフランシス・ホジソン・バーネットの児童小説『小公子』を「世界名作劇場シリーズ」の一つとしてアニメ化した人気作品である。
本作はそのアニメ版を原作としてゲーム化したもの…だが、非常に勇み足を感じるアドベンチャーになっている。
シナリオは母を求めて各地で情報を集めるというものだが、どの町も問題を抱えておりそれどころではないので、まずは町の問題を解決していくことになる。
システム
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RPGタイプの移動形式
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各建物で情報を集め、その街で起きている問題を解決していく。
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町の外にはモンスター代わりに家庭教師が大量に歩いており、接触すると"おべんきょう"(クイズ)をさせられる。
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誤答してもペナルティは無いが、正解しないと逃げられない。
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マップ中でセディはなぜかジャンプができるが、なぜそんなことが可能かといえば、家庭教師を避けるためのアクションである。
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町の外を歩いている人からは新作スニーカー(移動が速くなる)を貰えることがある。
バカゲー的要素
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話の展開がツッコミどころ多数
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ネタバレなので一応隠し
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例えば最初の町では代官が行方不明になっていて、探すことになるのだが、その真相は、「ドリンコート家から受け継いだ時計塔の鐘が壊れたので、伯爵からのお咎めを恐れて代官自らの手で鳴らしていた。ネズミが邪魔をしていて鐘が直せない」という物。
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代官のやる事かとか、ネズミの駆除はとっととやれとかのツッコミどころもあるが、その時計塔には鍵が掛かっており、その鍵を持ったおじいさんはセディのフルートの音色に惹かれて現れる。しかも「入ってみるかい」と、中の事は何も知らない様子。何がどうしてこうなったのか。
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結局、ネズミ駆除が次の目的になるのだが、フルートを吹くとネズミが時計塔に集まってくるというハーメルンの笛吹き染みた事をした後、猫を借りてきて一掃する。すると、駆除と同時に時計塔の歯車が動き出すという超展開。猫に出来る事を考えるとネズミが歯車に挟まっていたくらいしか想像できないのだが、それなら代官にも簡単に直せるんじゃなかろうか。
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上記に比べるとマシだが、母の行方を知っているらしき人物に「大事な笛を落としてしまった」と暗に探してくる事を頼まれるのだが、その入手手段もおかしい。
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同じ町にいるおばあさんの飼い猫が元気がなくなって困っており、ミルクをあげると元気を取り戻すのだが、その際、「お礼にこの笛をあげましょう」と、探し物の笛をプレゼントしてくれる。落とし物を勝手に拾って行ったのも問題だが、拾った他人の笛を大事な猫の恩人に譲るとか何を考えているのか。
ボケてるのか?
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二番目の町では代官が偽物であり、倉庫の地下に捕まっている本物を助け出すことになるのだが、偽物がどうやって成りすましているかというとなんと仮面をかぶっているだけ。表情でバレバレだろ…
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ちなみに地下に行くために倉庫内でフルートを吹くと何故か隠し階段が現れる。しかも代官が捕まっている牢屋の鍵は上述の前の町で手に入れた時計塔の鍵で開いてしまう。「さいごのかぎ」か何かのつもりだろうか。
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また、この牢屋の場所の情報も「今は牢屋の上に倉庫が建っておるよ。倉庫はレストランの上じゃ。」と、ゲームの都合的にはともかく、実際の構造を考えるとなかなか謎な情報である。
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極めつけは三番目の町。ルーイン(Ruin、廃墟)という名前のこの町はそれまでとうって変わって通行人が一人もいないぼろぼろの街並みに加えておどろおどろしいBGMが流れている。しかも家を訪ねても住人は全員「にげてしまった」と出るだけで何の情報も得られない。それでもなんとかストーリーを進めると衝撃の事実が明らかになる。
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実はこの町、過去に疫病で村人が次々に倒れたところに現れた悪霊にそそのかされ、村人全員が亡霊にされ望まぬ生を強いられている文字通り既に廃墟となった村。繰り返すがこのゲームの元ネタは世界名作劇場である。なぜこんなガチでホラーなストーリーを入れる必要があったのか……
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村人をフルートの音色で成仏させ、セディを食べようとする悪霊に対し、母を想ってフルートを吹く事で親子の絆をグラフィックと会話付きで見せつけ改心させる。その後は町ごと消え去り、唐突な画面転換で住人たちの物と思われる大量のお墓が立ち並んでいるいつものフィールドに放り出される。
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と、ここまで書いた通り、本作のフルートは万能のチートアイテムと化している。
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死んだ父の言葉
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町の問題を解決した際には、町の住民とは異なりリアルな頭身の父親の幻影が空に浮かび、セディに言葉をかけてくる。
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シリアス全開な感動シーンのはずなのだが、本作ではギャグのような展開が続く為、逆にギャグになってしまっている。
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謎のドラクエパロ
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何故か普通の町に武器屋があり、商品のラインナップに「ロトのつるぎ」「みずのころも」等が置かれている。但し、実際に購入はできず、攻略にも全く関係ない単なるネタ的存在。
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別の町には教会があるのだが、毒の治療や呪いの解除、死人の蘇生とやはりどこかで見た事のあるラインナップ。しかしこちらも単なるネタで、依頼すると「ここは教会だ」と怒られるだけ。どうやら、選択肢は相手に提示されているのではなく、セディの脳内選択肢のようだ。
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3つ目の町で起きる代官入れ替えも、「急に人が変わる」「本物は地下牢獄の中」と『ドラクエ3』のサマンオサがよぎる展開。よくエニックスに訴えられなかったものである。
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第2の町の名前が「グラドーエ」……もはやドラクエのアナグラムにしか見えない。
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家庭教師を雑魚モンスター代わりに配置した事
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町の外でセディにお勉強をさせようと大量に沸いて押し寄せてくる家庭教師という存在そのものが非常にシュールかつホラー。
このゲームに登場するキャラの3分の2以上はセディの家庭教師である。
問題点
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何よりも家庭教師がウザイ
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町の外では家庭教師が『Smash T.V.』『ガントレット』ばりにワラワラと沸き、しかもかなり足が速い。
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加えて、たまにクイズ抜きで強制的に家に連れ戻される。鬼か。
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クイズの総問題数が少ない
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FCでかつ、純粋なクイズゲームではない事を考えるとそれなりの問題数はあるのだが、家庭教師に捕まる頻度が高く、中盤には既出の問題ばかりになってしまい、完全に作業ゲーになってしまう。
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同じ問題を繰り返すことでその内容を覚えていくのは「お勉強」と言えなくもないが。実際、イベント中に同じ設問内からクイズを出される事があり、一応、予習になっている。
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また、ゲーム内要素に関するクイズはあるが、原作にまつわる問題が一切ないのも寂しい。
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ジャンルは大半が世界史と地理関連。学校で習うレベルのまともな問題もそこそこあるが、「ライト兄弟の初飛行の距離は?」「ハープの弦の本数は?」など、妙にマイナーなところを突いてくる問題も多い。雑学クイズと見れば出来は悪くないのが幸いか。
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細かい点だが、明らかに「小公子」の時代以降の事柄を平然とクイズに出してくる事もあり、考え無しに百科事典からクイズを作った事が丸わかりである。
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ドット絵の出来が悪い
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町のマップは立体感のないのっぺりとした描き方で、まるでだまし絵のようなありさまである。
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町の人との会話シーンでは相手の全身グラフィックが表示されるが、2頭身でやたら頭がでかい。SDでもないので体のつくりが妙に気になる。
大量に沸く様子と相まって家庭教師は最早モンスターである。
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道が分かりにくい場所がある
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ネタばれ
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最初に向かう町は道なりに右へ行けば良いのだが、次の町はしばらく右に進んだ後、北にあると言われる。しかし道は左右にしか続いておらず、2本ある道の上側かと思っても行き止まりで先へは進めない。
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正解は、「背景の一部にしか見えないが、道沿いの花を突っ切って上側に抜けられる場所がある」である。北と言われて近くを上側に向けていけないかと探索していれば、案外すぐに見つかったりもするのだが、家庭教師が大量に沸いているマップなので、探索もしづらい。
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シナリオが原作からかけ離れている。
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上述の通り、訪れる町はどこもみな問題を抱えているうえ、その問題がどれもおかしなものばかり。ゲームとはいえ、小さな子供に町の一大事の解決を依頼するのはいかがなものか。
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会話パターンが少なすぎる
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時代的に多少は仕方ない面もあるが、ほとんどのキャラのほとんどの会話が
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「さあ・・・」
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「さあ、しらないな」
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もしくはセリフすらなく「・・・」と沈黙するのみ
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……と、とにかく淡泊で味気ない。
評価点
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割と本格的なクイズ
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セディのゲームでクイズゲームをやる必然性はともかく、内容は地理や歴史など家庭教師に教わるものとしては自然な内容であり、難易度の高めの問題も含まれている。
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グラフィック面
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町の人は不格好な2頭身だが、一部のバストアップやイベント絵はクオリティが高い。特にOPデモにおけるキャラクターの再現度はなかなか高く、終盤のイベント等でもCGで盛り上げてくれる。
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パッケージは原作アニメの絵をほぼ踏襲している。
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大筋は王道のシナリオ
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母を探して街々を巡り、町の問題を解決しながら母の情報を集め、最後には母親との再会、祖父との和解が描かれている。
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街々の問題やその解決手段等、ツッコミどころが多いが、あくまで母を探すという本筋部分そのものは原作をうまく昇華してシナリオ化されており、まずまず無難な出来。
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タイトルやフィールドなどで流れるテーマでちゃんとアニメ版OPが使われている。
総評
慣れればある程度どうにかできるとはいえ、町の外の家庭教師避けゲーや反応の少ない町の中の探索等、疲れる要素が多い。
シナリオはそのものは「各町の問題を解決しつつ、母の情報を集めて旅をしていく」ということで、ゲーム内容そのものは原作の内容をうまくアレンジした自然なつくりになっている。
しかしながら、おかしなゲーム性やストーリー展開のせいで思い切り原作からズレた作風と化し、『小公子セディ』とは何だったのかと言いたくなる、ツッコミどころ多数のバカゲーとなってしまった。
余談
まだ信頼性のあった頃のファミ通でのこのゲームの評価で、「素人がBASICで作った(様な)ゲーム」と酷評されていた。
最終更新:2024年10月25日 06:41