イーハトーヴォ物語

【いーはとーヴぉものがたり】

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
メディア 8MbitROMカートリッジ
発売元 ヘクト
発売日 1993年3月5日
定価 9,700円
判定 なし
ポイント 宮沢賢治ワールドでの漫遊記


概要

作家『宮沢賢治』の童話作品を一まとめにした世界観を持つゲーム。
タイトルのイーハトーヴォとは宮沢賢治が作った岩手を指す造語であり、岩手をイメージして賢治が創出した幻想郷イーハトーヴォを舞台としている。

原作童話の内容や宮沢賢治の生涯に関する知識があることを前提とした作りになっているため、ターゲット層はかなり狭い。
早い話、完全に宮沢賢治ファン向けのゲームであるため、興味のない人はまず手には取らないだろうが。


特徴

  • プレイヤーである「私」は、宮沢賢治先生に会うべく彼の残した手帳を探し求めてイーハトーヴォを巡ることになる。
    • 全9章仕立てになっており、各章は「貝の火」・「グスコーブドリの伝記」といった宮沢賢治の短編童話に沿ったシナリオで構成されている。
  • RPGというジャンル名ながらも戦闘や買物と言ったシステムが一切無い。
    • もちろん主人公のステータス成長と言った要素も無い。プレイヤーが行なうのは移動とキャラクターとの会話である。
    • そんなわけでRPG的に言うならば「○○をやってきてくれ」「○○だったらいいのに」と言うのをこなしてシナリオを進めるだけのお使いゲーである。
    • 本来ならADVに分類されるべき作品で、その中でも三人称視点のマップの中に表示されたキャラクターを直接操作することでフラグ立てを進めていくタイプに属している。類似のコンセプトのゲームとして『King's Quest』などがあり、北米ではADVの一形態として認識されている。

評価点

  • 宮沢賢治童話の雰囲気は至極丁寧に表現されている。
    • イーハトーヴォに登場する主要なキャラは、主人公の「私」と賢治先生を除く全員が原作童話の登場人物である。原作の数が多いためオールスターとまではいえないものの、有名なキャラクターは粗方登場している。
    • 各キャラは原作の性格に沿った再現がされていて、雰囲気をぶち壊すようなことはない。
    • 各章の話は若干のクロスオーバー要素を含むものの、基本的には大元の童話の流れに沿っている。良くいえば原作再現、悪く言えば教科書通りと言った出来栄え。
    • 羅須地人協会*1やイーハトーヴォ農学校、カイロ団長の店、猫の事務所といった建物が、違和感なく一つの世界にまとまっている。
  • グラフィックとBGMの出来は素晴らしい。派手さは一切ないが、宮沢賢治の世界を見事に演出している。
    • 本作のエンディング演出はSFCソフト全体でみても秀逸なもので、一見の価値あり。
    • 多和田吏氏によるBGMは特に評価が高い。中でもメインテーマであるイーハトーヴォ賛歌はヒーリングミュージックCDや、オーケストラによるゲーム音楽コンサート5にて、『ドラクエ』や『クロノ・トリガー』等のメジャー作品に並んで収録される程。
    • ドのつくマイナーゲームであるにも拘らず、発売から9年たった2002年にサウンドトラックが復刻されると言うのも稀有な例である。

問題点

  • 大した謎解きもなく、お使いばかりのゲーム性。
    • 「宮沢賢治の世界観を基にしている」という時点で、武器を持って悪と戦う勧善懲悪もののようなシナリオを想像する人はまずいないだろうが、ゲームにおけるRPGというジャンルから連想されるゲーム性を期待すると盛大に肩透かしを食らう。

総評

RPGというジャンルが掲げられているものの、実態はADVそのもので、良くも悪くも作品内に流れる世界観や空気感などをまったりと味わうタイプの、いわゆる雰囲気ゲームである。
内容も、宮沢賢治と彼の作品が好きなファンでなければ理解できない要素が多く、万人に勧められるようなものではない。

一方で、原作を尊重した丁寧な作りこみによって宮沢賢治の童話の世界観を損なうことなく再現しており、ファンにとってはたまらない一品となっている。
宮沢賢治ファンであれば間違いなくお勧めできる作品である。


余談

  • 日本でも『オールド・ヴィレッジ・ストーリー』等があるが、この形態を持つADVは少数に留まった。この認知度の低さが、本作をRPGというジャンルと称した理由の一つとなったのだろう。
    • ちなみに雑誌「ユーズド・ゲームズ」9号(1998年)のSFCソフト特集では、最初からADVとして紹介されていた。
  • かつて、岩手県花巻市にある宮沢賢治記念館や宮沢賢治イーハトーブ館にSFC本体と共に展示され、実際にプレイ可能だったことがある。
    宮沢賢治をテーマに扱ったゲーム自体がほとんど無いのに加え、作品の完成度も評価されてのことだろう。
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