十次元立方体サイファー ~蒼き月の水底~
【じゅうじげんりっぽうさいふぁー あおきつきのみなそこ】
ジャンル
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大人向け頭脳ミステリーAVG
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対応機種
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Windows
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発売・開発元
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Abel SOFTWARE
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発売日
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DVD:2004年12月24日 CD:2005年1月14日
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定価
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9,240円
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レーティング
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アダルトゲーム
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配信
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【特別パック】2010年10月1日/3,982円
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判定
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なし
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探偵紳士シリーズ
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概要
アーベルの人気シリーズ『探偵紳士シリーズ』の番外編的な作品。
シリーズ2作目である『ミステリート ~不可逆世界の探偵紳士~』に登場した「閉鎖空間での心理状態」を研究している研究所主催の臨床試験を描いた閉鎖物のミステリー。
本作のみの独立したシナリオにはなっているが、移植版では『ミステリート』主人公である八十神かおるが登場するシナリオが追加されている等、それなりに探偵紳士シリーズに関わる作品になっている。
ストーリー
昭和の時代を色濃く残す月光館---
この館において、とある大企業の実験が行われることになった。
閉鎖空間における心理変化の観察・・・・。
被験者にはいくつかのルールが課せられた。
誰もが簡単で高額なアルバイト、と思っていた。
しかし、一人、また一人と消えていくメンバー達・・・。
そして無作為で選ばれたはずだった男女に、奇妙な共通点が判明していく・・・。
結末、絶対予測不可能───
特徴
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動的タイムリンク・システム
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ゲーム内の時刻が画面上に表示されており、移動中も会話中もリアルタイムで時間が進行する。
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会話中の時間進行は厳密には「文章の表示が終了した段階」から進み始めるので、サクサク読み進めればさほど時間は経たないが、表示させ終わった後にゆっくり読んでいるとどんどん時間が過ぎていってしまう。
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そのまま同じ場所に留まっているだけでも、時間と共に人が去ったり、別の人が来たりと時間に合わせてキャラが行動する。
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キャラクターは毎分0秒にワープ的に移動するので、部屋にいるキャラクターをドアの前で待ち構えていても会えない。
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脳波モニター
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実験の一環として登場人物全員には脳波モニターが付けられており、これによりマップ画面でそれぞれが何処でどんな状態なのかが表示される。
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危険な状態やありえない表示等でシナリオを盛り上げる一方、イベントがある場所を特定する等プレイヤー向けシステムとしての側面もある。
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マルチエンド
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ネタバレになるので、詳しくはregionで後述するが、本作は2つのエンディングが存在する。
評価点
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閉鎖空間を活かしたシナリオ
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大きな塀に囲まれ外の様子が窺えない山奥の館を舞台に、「行動するのは夜のみ」等の特異なルールが課されており、その中で起きる殺人事件等が、非常に惹きつけられるシナリオとして描かれている。
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変わったルールも「臨床試験だから」と詳しく説明されない事に理由が付けられており、その理由も物語の謎に関わってくる。
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シナリオ全般の雰囲気としては上手く描かれているのだが、EDについては少々微妙(後述)。
賛否両論点
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CGを見るのに探索要素が必要
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2周目以降は色々な箇所を探索する事で各色のディスクを見つけることが出来、色毎に特定の枚数を見つける事でCGを閲覧できるようになる。
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ヒントを元に探す楽しみはあるものの、CG閲覧はクリア時点で解放して欲しいという意見も多い。
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また、ゲーム中の特定期間内に特定の行動を取る必要がある物など、一部入手難易度が少々高すぎるのも辛い。
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前作にあたる(?)『ミステリート』ではCG閲覧モード自体なかったので追加された事は嬉しいのだが。
問題点
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動的タイムリンク・システムに難点の方が多い。
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時間経過で各人の行動が変わるというのが表現されているのは面白いが、例えば5分後の約束まで待つ際にリアルタイムで5分待つ必要がある等、プレイしていて邪魔に感じる事の方が多い。
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2周目以降は一気に時間を進めるアイテムが登場する為、周回プレイは多少楽になるが、そもそも最初からコレをくれ。
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他にも、文章をゆっくり読んでいるとそれだけで時間が過ぎてしまうため、落ち着いて文章を読む事も出来ない。
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必要以上に伏線の多いシナリオ
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本作の2つのシナリオは、中盤がほぼ共通のシナリオとなっている為、別シナリオの謎に関わる余計な伏線が多数発生してしまっている。
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それぞれのシナリオが事件の真相からして全く異なるものである為、「実は裏では…」といった物ですらなく、完全に余計。
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それ以外にも、どちらのEDにおいても結局何の伏線だったのか不明な点も多く、余計な謎を大量に残してしまっている。
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本作のシナリオは外部スタッフにより一度出来上がった物を菅野氏が一から作り直している。その為にこのような齟齬が生まれてしまったと思われる。(参照:インタビュー記事)
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作中に登場する「忠告者」の正体はゲーム中は黒い影になって分からないままだが、CGギャラリーで正体が判明する。CGギャラリーを見ないと誤解したままになってしまう可能性が高い。
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相変わらずWin版では音声・スタッフロールがない。
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ルート分岐方法(ネタバレあり)
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本作のシナリオは2つ存在するが、どちらに分岐するかはストーリー中に分岐するのではなく、インストール時にランダムで決まり固定される。
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別のシナリオをプレイしたい場合、タイトル画面の「初期化する」を選択する必要がある。
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大掛かりな仕掛けでプレイヤー同士の会話でも驚かせようという考えは分かるが、せっかくの2つのシナリオ自体に気づかせ難い結果となってしまっている。
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また、初期化すればもちろんセーブデータも消える為、続きから楽しみたい場合、初期化前にわざわざセーブデータ等を別に退避させる必要がある。
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ちなみに判別方法は「タイトル画面の背景の時間帯」であり、夕方か夜かで判別できるようになっている。しかし知らなければ当然分かりようもない。
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EDについて(ネタバレあり)
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2つのルートは序盤こそ同じ展開だが徐々に違いが現れ、最終的には全く異なるストーリーとしてエンディングを迎える。
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それは普通としても、本作はそれぞれミステリ物とSF物のシナリオに分かれており、シナリオの毛色自体が全然違う。その為、両方のシナリオ共に好きと言う人は少なく、非常に好みの分かれる終わり方になってしまっている。
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特にSF寄りの通称「青ルート」についてはかなり唐突なSF展開になる。「結末、絶対予測不可能」といかにも閉鎖ミステリーとして煽っていた事もあって、評価は低め。
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また、氏の過去作に似た展開があった為、「焼き直し」と言われる事も。
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ミステリ寄りの通称「赤ルート」はSF展開も無く、説得力のある形でまとまっているため、どちらかと言えばこちらを好む人の方が多い。
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ただ、終盤にかけて救いの無い展開が続き、ラストも物悲しい結末で終わる。所謂「鬱ゲー」的な暗い内容となっており、こちらもこちらで好みは分かれる。
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逆に「青ルート」は明るめの内容になっており、エンディングもハッピーな終わり方ではあるので、こちらを好む人もそこそこ多い。
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総評
『ミステリート』から派生した閉鎖物のミステリーとして独特な雰囲気は上手く表現されており、軽妙な掛け合い等、菅野氏のいつもの高品質なシナリオが展開されている。
反面、その終わり方は賛否両論で、独特過ぎるシナリオ分岐方法やシナリオ間の齟齬も相俟って手放しには褒められないストーリーとなっている。
また、動的タイムリンク・システムも面白い試みではあるものの、プレイしていて邪魔に感じてしまう事が多いのが残念である。
遊びづらいゲームシステムと賛否両論なマルチEDが足を引っ張るものの、閉塞感の描写は良質なので閉鎖物が好きな人には手にとって貰いたい一作。
今プレイするのならシステムが改善された下記移植版をオススメする。
余談
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『探偵紳士シリーズ』はどれもこれもそうだが、本作もフルボイス等を追加してコンシューマ移植されている。詳細は下記。
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2013年1月18日に発売された『菅野ひろゆき メモリアル』には『不確定世界の探偵紳士』や『ミステリート』『アザーサイド・オブ・チャーチ』などと共に本作も収録されている。
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しかし本作を含む一部タイトルはISOファイルでの提供なので、DVD-Rか仮想ディスクドライブソフトが無いとインストール出来ないという面倒な仕様になっている。
十次元立方体サイファー ~ゲーム・オブ・サバイバル~(PS2版)
【じゅうじげんりっぽうさいふぁー げーむおぶさばいばる】
ジャンル
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大人向け頭脳ミステリーAVG
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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アーベル
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開発元
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Abel SOFTWARE
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発売日
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2007年6月28日
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定価
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通常版:6,800円 / 限定版:8,800円(税抜)
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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なし
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概要(PS2)
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18禁要素を排除してフルボイス等を追加した移植版で、それに伴い一部キャラのデザインと設定が大きく変更されている。
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18禁シーンからの改変により、「見せてやる」ともったい付けられた"見世物"のシーンが"見世物"とはいいがたいシーンに・・・
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登場人物の1人「金谷阿佐美」は外見上は全くの別人と化している。ミニスカートは脚が全く出ないロングスカートに、ポニーテールはウェーブロングに、おまけに顔つきまで大人びている。Win版をプレイした人は間違いなく「誰これ!?」と面食らうだろう。
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Win版と違ってインストールは無いので、シナリオの分岐はタイトル画面が出る度にランダムで決まる。判別方法は同じ。いちいち初期化が必要だったWin版よりはシナリオを選びやすい。
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フルボイスも追加された他、『ミステリート2』に繋がるシナリオとして、『ミステリート』主人公の八十神かおるが登場する新シナリオが追加されている。
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しかし、『ミステリート2』は結局発売されないまま菅野氏が逝去。遺されたプロットを基に完成させた『2』と『1』のリメイクをセットにした『ミステリートF』も発表されたがこちらも開発が中止された。
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開発中止の理由の一つとして「『ミステリート2』と派生作品との整合性が取れない」とされている。本作もその一因だったのだろうか。
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尚、このシナリオは「赤ルート」の続きとなっている。菅野氏の想定では「赤ルート」がシリーズとしての正史という事になっていたようだ。
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動的タイムリンクシステムも改善された。
十次元立方体サイファーPORTABLE(PSP)
【じゅうじげんりっぽうさいふぁーぽーたぶる】
ジャンル
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大人向け頭脳ミステリーAVG
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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発売元
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ヴューズ
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開発元
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アーベルソフトウェア
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発売日
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2009年8月27日
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定価
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5,800円(税抜)
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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なし
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概要(PSP)
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基本的には上記PS2版と同じだが、おまけとしてショートミステリー集「十次元からの挑戦!」が追加されている。
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ただし、『ミステリート』のおまけが62問も収録されていたのに対し、こちらは10問しかない為、本当に「ちょっとしたおまけ」。
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「十次元からの挑戦!」内の暗号文がバックログ機能で再表示できないのは不便。
最終更新:2021年11月23日 18:46