ブレス オブ ファイアIV うつろわざるもの
【ぶれすおぶふぁいあ ふぉー うつろわざるもの】
| ジャンル | ロールプレイングゲーム |  
  
 | 
| 対応機種 | プレイステーション Windows 98~XP
 | 
| 発売・開発元 | カプコン | 
| 発売日 | 【PS】2000年4月27日 【Win】2003年5月30日
 | 
| 定価 | 【PS】5,800円 【Win】2,800円
 | 
| 廉価版 | PlayStation the Best:2002年9月12日/2,800円 Quality1980:2005年7月8日/1,886円(各税抜)
 | 
| 配信 | ゲームアーカイブス:2011年7月6日/600円 | 
| 判定 | 良作 | 
| ブレス オブ ファイアシリーズ | 
 
概要
『ブレス オブ ファイア』シリーズ第4作。
今作はリュウとフォウルの2人の主人公を交互に操作することでストーリーが進んでいく(フォウル編はほとんどイベントシーン扱いだが)。
竜の設定の大幅な変更や、中国や東南アジア、中東を思わせるエスニックかつオリエンタルな世界・文化など、これまでの作品とは大きく異なる雰囲気が特徴。
ストーリー
かつてヒトの手によって召喚され、役目を終えた後は「竜」となって世界を見守るうつろわざるもの――神――と呼ばれる存在がいる世界。そこには広大な泥の海によって隔てられた2つの大陸があった。
西の大陸を支配するフォウ帝国と、東の大陸で共存する諸国は長期にわたって戦争を続け、疲弊し、そして暫しの休戦を迎える。
一年後、戦場となった地を見舞うべく出立した東側連合の一国・ウィンディアの第一王女・エリーナが行方不明となる。
東の大陸の国々は、帝国を刺激することを避けるため、前線への大規模な調査部隊の派遣を渋り、満足に調査を進めなかった。
諸国の対応にしびれを切らしたエリーナの妹・ニーナは、エリーナとは相思相愛の幼馴染である 
虎人
族の族長・クレイと共に姉の捜索に向かうことを決める。
その道中、ニーナは記憶喪失の青年・リュウと出会い、行動を共にすることになる。
時を同じくして。数百年前に一人でフォウ帝国を起こし、復活を予言して眠りについた「竜」初代皇帝フォウルが目覚めた。
「復活した時、皇帝の座を明け渡してもらう」という盟約を果たすべく帝都へ向かおうとするフォウルだったが、時のフォウ帝国13代目皇帝ソーニルは皇帝の座と権力を手放す事を拒み、フォウルを抹殺すべく刺客を差し向け盟約を違える。
完全な覚醒を遂げていないフォウルは、帝国の刺客・呪術師ヨム将軍の召喚する使い魔に襲撃され、深手を負いながら逃走する。
物語はリュウとフォウル、2つの存在の足取りを交互に追う形で進行する。
「うつろうもの」たるヒトと、「うつろわざるもの」たる竜=神。その狭間にある2人がたどり着く結末とは……。
特徴・評価点
- 
コンボシステム
- 
連続で技を使用する場合、コンボが繋がり、無属性の物理攻撃に属性を付与したり、異なる属性の合成魔法が炸裂したり、同属性の技の威力を強化することが出来る。
- 
回復魔法にも反映されるため、弱い魔法も重ねがけすることで大きく体力を回復できる。
 
- 
スリック・ローテーション
- 
今作では戦闘中でも、実際に攻撃を行いダメージを受ける前衛と、「控え」となる後衛の交代ができる。
- 
3人分の行動を決定すると残りのメンバーが自動的に後衛となる。入れ替えにターンを食われたり、専用のコマンドを用いる煩わしさがない。
- 
後衛のキャラはターンごとに少しずつHP・AP・一部の状態異常が回復し、時間経過で攻撃力を上げる溜め技も決めやすくなる。最大MPが低いが非常に強力な魔法を使うマスターなど、このシステムを利用した戦術を立てることで真価を発揮するキャラもいる。
- 
後衛に下げることで発動する特殊能力も存在する。前述のコンボシステムと合わせることで戦術性が拡がり、低レベル攻略にも挑戦しやすい。
 
- 
エスニック風の世界・音楽
- 
元々ブレスシリーズは獣人種族が多いなどの独特の設定がウリだが、本作ではそれがさらに際立っている。このおかげではまる人はとことんはまる。
- 
音楽もそれに合わせた民族風の曲、不思議なメロディー、陰鬱な曲調などが多く、雰囲気を盛り上げている。
 
- 
魅力的なキャラクター
- 
キャラ造形と演出が上手く、ゲーム世界への更なる没入を誘う。
- 
シナリオ上で空気となるパーティメンバーがいない。シナリオ上の出番が過ぎたキャラも、キャンプ機能による会話を利用することで印象付けを忘れていない。能力面でもそれぞれに癖があり、交代システムと合わせることで存分に活躍させられる(癖を把握するまでは戸惑うキャラもいるが)。
- 
敵方や第三者的存在のキャラクターを含め、主人公たちと関わる面々には愛らしく、意地汚く、美しい存在が揃っている。
 
- 
シリーズおなじみのババデルやおまけ要素ながら前作のレイ&ティーポなどの過去作キャラも登場するのもファンには嬉しいところ。
- 
戦闘中におけるキャラクターボイスも健在。
 
- 
その他伝統の仕掛け
- 
妖精のコロニー、釣り、伝承師システムは相変わらず健在。いずれも前作、前々作と比べて微妙な差異ながら完成度を上げている。
- 
特に釣りはルアーや餌、水深に魚との駆け引きなど、兎にも角にも「本当に釣りをしている」と思わせる仕掛けが多く、シリーズ最高傑作と評されている。釣りコンに対応しているとは何事か。
- 
報酬やメリットも大きく、それでいて無理に遊ぶ必要もないバランスがとられているのもポイントが高い。後にこの釣りの部分だけが携帯アプリで配信された事からも完成度と人気がわかるはず。
 
- 
カプコンらしくドット絵はかなりの高品質。雑魚モンスターすらぬるぬる動く。クオリティの高いオープニングアニメも必見。
 
PS有数の「鬱ゲー」として
鬱ゲー談義となるとほぼ毎回名が出る本作。
ネタバレとなる部分が多いのであえて深く言及しないが、逆に言うとそれだけ深くまでストーリーに鬱要素が入り込んでいる。
- 
「虐殺・自己犠牲・拷問・生体兵器・報いの無い悪」。これでだいたいあってる。
- 
仲間と共にエリーナを追い求めるリュウ編と、一人孤独に逃避行を続けるフォウル編のギャップが大きい。リュウ編にも鬱になるイベントは多いのだが、それでもまだマシで(希望が無いイベントも多いが…)、ところどころにコミカルなシーンもある。対してフォウル編はひたすらフォウルが追い込まれる、「上げて落とす」展開の繰り返し。
- 
人の苦しみを砲弾とし、更に着弾地点一帯を何人たりとも生きられない「生き地獄」に変えてしまう兵器・呪砲は本作の鬱要素の代表的なものと言えるだろう。
- 
その「砲弾」が描かれるシーンの、「俺たちは今まで何のために戦ってきたのか」と言いたくなるような絶望感もポイント。
 
- 
バッドエンディングの演出もまた、一筋縄ではいかない。それまで積み上げたものを自らの手で崩壊させる壮絶な展開が待っている。
 
これらをフォローするコミカルなシーンも多く取り入れられているため、コテコテの鬱ゲーと身構えすぎると肩透かしを食うかもしれない。
どちらかというと、様々な要素が交じり合った先にある「良いも悪いも、なるようになる」という無常観こそが、本作の本質と言えるかもしれない。
問題は元々鬱要素をウリにしていたわけでも、鬱要素が主なテーマではないと思われる割に、その様な展開が余りにも目立つことだが…。
難点
- 
戦闘の単純さ
- 
RPGでコンボというシステムは目新しいのだが、さほど利用する機会がない。
 発動は確率で成功しても大したダメージ増がないため、最初から最後までおまけ程度の存在。単に強キャラを作るだけなら、終盤の二回攻撃武器で押しまくるだけになるだろう。
- 
どのようなコンボを発生させても「HIT数に比例して経験値や金にボーナスが加算される」などといったシステムは無い。
 
- 
キャラの格差も大きい。魔法キャラが使いにくく(狙われ率平等、火力微妙)、物理キャラを編成するにもただ攻撃力のみで決まりがち。
- 
味方が全滅するとゲームオーバーとなり、最後にセーブした箇所からのやり直しとなる事に変わりはない。
 
 
- 
シナリオ
- 
ストーリーの大筋が「人質救出」なのだが、その人質が序盤チラッとしか出てこず、肝心の鬱イベントがショッキングなだけで終わってしまう。
 
- 
細かいところに手が届いていないシステム
- 
視点操作関係の出来が悪い。常時クォータービューで進行するのだが、おかげでポリゴンの死角が多くなっておりストレスがたまる。
- 
基本的に90°ずつの4方向にしかカメラ変更ができず、高さも固定。全く動かせないマップもあり、主人公たちの姿を視認できない箇所が少なくない。
- 
序盤の街から迷いやすい迷路状の街で、イベント進行に合わせて「一歩でも逸れると街の外からやり直し」になる街外周を移動しなくてはいけないシーンも。
- 
ニーナの個人アクションで緩和が可能だが、それでも申し訳程度。また屋内では使用できない。
 
- 
戦闘終了後のリザルトが飛ばせない、コマンドのレスポンスが鈍い、長い攻撃ムービー(ボタンでカット出来るものもあるが、それでもカット可能タイミングまで微妙な待ち時間が発生する)など、少しずつテンポを削ぐ要素が積み重なっている。
 
- 
シリーズ伝統の多すぎるお使いイベント
- 
「○○をしよう」→「それには△△しなければいけないから□□へいきなさい」という展開がかなり多い。個別のストーリーは深く興味深いものが多いのに、その繋ぎがワンパターンなのが惜しまれる。
 
- 
多すぎるミニゲーム
- 
ほとんどがシナリオ進行上、プレイを強制されるものばかり。苦手な人にはただただキツイ。
- 
そもそもやりこみを考えずに遊んだ場合は20~25時間でクリアできる程度のボリュームなのに一部のイベントがカットされているのはどうしたことか…。少しでもミニゲームを減らせばこうした事態は起こらなかったのではないだろうか。
 
- 
低い難易度
- 
一部手ごわい敵はいるものの、シリーズの他作品と比べると難易度が全体的に低い。コンボシステムやスリック・ローテーションをあまり駆使しなくても充分突破できるバランスになっている。
- 
それらの要素をフル活用するとヌルさに一層拍車がかかる。
 
- 
序盤に回復アイテムを無限に入手できるポイントが存在することも難易度低下を後押ししている。
 
- 
その他
- 
終盤は物理攻撃に耐性を持つボスばかりが登場し、必然的に物理攻撃が使いづらくなる。
- 
制作中に容量が足りなくなり、一部のイベントがカットされることになった。問題はこの「一部のイベント」で、恐らくプレイヤーが最も断罪を望むであろう、とある存在がそのまま放置されるという何とも歯がゆい結末を迎えることになってしまっている。グッドエンディングもあっさりした描写にとどまる。
- 
とはいえこのことを「物事は常に丸く収まるとは限らない、本作の作風を逆に強調している」と評価する旨もある。
 
- 
PS初期版のみ、バグで『「保険』という攻撃力767の最強武器を入手できる。「-1ヒット」という通常ありえない特性が付いているためそのまま通常攻撃しても空振るのだが、これを装備して「スーパーコンボ」を発動し、わざと入力失敗して「スカ」を出すと、本来なら0ヒットとなるところが-1でオーバーフローを起こし、最大255ヒット連撃に変化する。元々の攻撃力の高さもあって、ほとんどの敵をこれだけで片付けることができてしまう。また、「ぶんどり」等のヒット数が関係ない技ではそのまま問題なく使えてしまう。
 
総評
「休戦の空白期」という時節の中、そこに渦巻く人のエゴと、取り返しのつかない痛手を受けながらも希望を捨てずに力強く生きようとあがく人々の交わり、そしてそれを遠くから見つめる超自然的な存在と、多くの要素が絡み合った深淵な物語が描かれている。
シリーズを通して「重い」展開が目立つ『BOF』だが、本作はその中でも際立っている。様々な面で強い癖が目立つが、それを恐れずにプレイする価値はある。
その他
- 
当時のゲーム雑誌『電撃PlayStation』との企画により、読者から公募されたアイテムが4種類採用されている。
- 
増刊号『電撃PlayStationD』の付録CD-ROMに収録された特別なセーブデータを使用することにより、「電撃屋」という公募アイテムを購入できる店へ行くことができた。
- 
雑誌付録限定だったので今となっては入手困難ではあるが、電撃屋で販売されているアイテムのほとんどは通常プレイでもゲームクリア後にほぼ同内容のラインナップのおまけショップが出現するため、クリア前に電撃屋に行ければ多少有利になるという程度。
- 
唯一、電撃屋でしか入手できない限定アイテムが1種だけあるが、該当アイテムは運次第で金が当たる「たからクジ」なので通常プレイ上は全く問題ない。
 
- 
アーカイブス版では一旦PS3を経由してセーブデータを変換してからでないと利用できない。また、Windows版には電撃屋は存在しない。
- 
また、本作に登場する竜を題材にした読者公募による小説を選定・掲載する企画も行われていた。
 
- 
ゲーム発売から8年後になって『うつろわざるもの~ブレス オブ ファイアIV~』(作・壱村仁)と題したコミカライズが行われた。
- 
内容はほぼゲームのシナリオ通りだが、エンディングがゲームでのバッドエンドルートとグッドエンドルートを上手く組み合わせた展開にアレンジされている。
- 
さらに、前述の「恐らくプレイヤーが最も断罪を望むであろう、悲劇の元凶である人物」に対して仲間キャラが彼の所業に対して怒りのパンチを叩き込んでぶっ飛ばすシーンが新たに追加されている。その人物はこの漫画でも死亡せず、吹っ飛ばされた後に原作ゲーム通りの言い訳をしながら逃亡するなど原作と展開が大きく変わるわけではないものの、原作ゲームでは殴る事すら出来なかった事を考えれば良いアレンジであろう。
- 
多少のアレンジが加わりつつも原作の雰囲気を壊さず、非常に希望に溢れた終わり方となったため、評価も上々。
 
- 
サウンドトラックに収録されている「ゆめのすこしあと」は、曲が終わったあと少し放置するとフォウルがこの曲の頭部分の替え歌を歌うボーナス(?)部分が収録されている。普通なら脱力するところだろうが、本編でフォウルが受けた扱いを考えると、また何とも言えない気持ちになれる。
- 
携帯アプリとして本作『IV』のスピンオフが何作がリリースされている。
- 
2025年4月25日にGOG.comで移植版が配信された。
最終更新:2025年04月27日 01:11