チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮
【ちょこぼのふしぎなだんじょん ときわすれのめいきゅう】
ジャンル
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ダンジョンRPG
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対応機種
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Wii
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発売元
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スクウェア・エニックス
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開発元
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スクウェア・エニックス ハ・ン・ド JOE DOWN(音楽アレンジ)
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発売日
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2007年12月31日
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定価
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6,800円
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判定
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良作
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ポイント
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約10年振りの新世代の「チョコボの不思議なダンジョン」 「ジョブ」や制限ダンジョンなどの新要素の追加 良質なFFシリーズの音楽アレンジも継続 ロードや一部声優等などの細かい不満はあり
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ファイナルファンタジーシリーズリンク
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不思議のダンジョンシリーズリンク
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概要
チョコボシリーズ生誕10周年を記念して発売された、チョコボの不思議なダンジョンシリーズ最新作。
ジョブチェンジや制限ダンジョンなどのシステム、新しいダンジョンをクリアする度に町の機能が取り戻され、人々の記憶が蘇っていくシナリオなどの新要素など意欲的な作品として仕上がっている。
シリーズとしては『チョコボの不思議なダンジョン2』以降約9年ぶりの作品となるが、本作は前年の『チョコボと魔法の絵本』が予想外の好評を博したことから、過去作のスタッフではなく『魔法の絵本』シリーズを製作した製作会社「ハ・ン・ド」が中心となって開発する形となっている。
そういった経緯から、『2』までのシリーズとは趣が異なる面もやや多い。
後に追加要素やバランス調整を施されニンテンドーDSに移植された。
あらすじ
トレジャーハンターのシドとチョコボは旅の途中『時忘れの町』に立ち寄る。
そこでは忘れることによって人は幸せになれると信じられており、時計塔の鐘が鳴る度に住民の記憶が失われてしまう町だった。
その話に疑問を抱くシドとチョコボ、二人は町の住民たちの考えに反対するシロマや謎の少年ラファエロと協力して、
人々の記憶が封じ込められたダンジョンを解き、住民たちの記憶を取り戻していく。
評価点
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グラフィックの進化
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PSであった前作『2』からWIIへとハードが移行したため、グラフィックはそれに応じて順当に進化した。
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『チョコボの魔法の絵本』シリーズのキャラクターデザインを踏襲しているためキャラクターの雰囲気も変化したが、元が絵本の挿絵調のような柔らかいタッチで書かれていることもあり、シリーズの世界観を崩していない。
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シナリオが今までのシリーズ以上に練られている。世界観にあわせて絵本のような話になっている。
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町の住人の記憶が戻ったり、ダンジョンの中で人々の記憶の一端を垣間見るたびに「この町にいったい何があったのか」ということが徐々に明かされ、推測が楽しめる構造はよくできている。
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チュートリアルが親切。
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「○○ヒーローX」と名乗るモーグリ達やシドがダンジョンの動き方からミニゲームの仕方までこのゲームのあらゆることを教えてくれる。基本的な部分はダンジョンの途中で必ず教えてくれるので、ぶっちゃけ説明書全く読まなくても大丈夫。
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また、死ぬとシロマからアドバイスをもらえる(もっとも、何度も死んでいると最終的には運で片付けられてしまうが)。
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FFシリーズお馴染みのシステム「ジョブチェンジ」の導入。
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デザインや特技の内容も過去のFFシリーズを意識しており、チョコボを着せ替える楽しみ方もできる。
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音楽の質が高い。
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オープニングテーマとタイトル画面の曲以外は全て過去のファイナルファンタジーシリーズの名曲のアレンジ。
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こういったアレンジ曲は「ゲームの内容と合わない」「下手なアレンジを加えたせいで曲の持ち味が劣化してしまっている」などの理由で叩かれがちだが、驚くべきことにゲームの内容に沿ったアレンジと曲そのものの持ち味の生かし方を両立させており、批判はほとんどなくかなりの好評。
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アレンジを担当したのは、札幌の音楽スタジオ「JOE DOWN」に所属する高橋雄蔵。「原作のイメージを壊さず、かつ『誰も聴いた事がない新しいファイナルファンタジーサウンド』を目指した」(オリジナルサウンドトラックのライナーノーツより)、その抱負は伊達ではなく非常に素晴らしいアレンジになっている。
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サントラのライナーノーツで、原曲を作曲した植松伸夫は「ある意味『ファイナルファンタジーのベスト盤』」「素晴らしいアレンジ」と誉めている。
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しかも曲の使い方も上手い。水のダンジョンでFF5の水のクリスタルのあるダンジョンの曲を使ったり、ラスト直前の非常に盛り上がる場面でFFシリーズ屈指の人気曲『ビッグブリッヂの死闘』を使ったりと、音楽方面の演出はぬきんでている。
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また、とある制限ダンジョンをクリアすると町の酒場でサウンドモードが利用できるのも嬉しい限り。
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これらの事から、ゲームよりサントラのほうが売れるという前代未聞の事態を引き起こし、買った人間がなかなか手離さない程のFF最高クラスのアレンジ集という評価を得ている。
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チョコボのモーションやデザインが可愛らしい
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町の特定の場所に行けば、ブランコに乗ったりシーソーをしたり、池を泳いだりしっぽにルアーをつけて釣りをしたりするのだが、その動きが柔らかく愛くるしいと評判。チョコボ好きにはたまらない。
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手ごたえのある制限ダンジョン
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本編はぬるいが、町の人一人一人の記憶をテーマにした制限ダンジョンはレベルが1から始まる、道具を持ち込めないなどの仕様で難易度は高め。クリア後に出る「ダンジョンヒーローXの挑戦」などは上級者向けである。これによりやり込んだプレイヤーなども満足できるようになっている。
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それぞれのダンジョンは「終始視界が狭い」「ボス敵しか出ない」など個性豊かな内容。クリアすると町の施設が増える、新しいジョブが手に入るなどご褒美も大きい。
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声優は全体的に高レベル
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特に大塚明夫氏が演じる黒チョコボはかなりの名演で、チョコボ系のキャラとは思えないほど渋かっこいいと評判。
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ミニゲームもかなり出来がいい。
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特に『魔法の絵本』シリーズから引き続いて登場したカードゲーム「ポップアップデュエル」は、カードの全体数が少ないながらも本格的なものとなっている。通信機能を利用した対戦もできる。
問題点
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全体的に子供向けを意識したようなシンプルなシナリオなので、重厚で意外性のあるストーリーを期待していると拍子抜けする。
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ジョブの一つ、学者が強すぎる。
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未識別アイテムの鑑定、マップの未探索部分や罠、敵の位置表示、アイテムの効果増大など補助効果の強いアビリティばかり。おまけに回復技まで使え、パラメータ的にも悪くない。
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チョコボのモーションやデザインは、可愛らしい一方で「動きがすっとろい」「緊迫感が殺げる」などの意見も一部ある。
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制限ダンジョンの難易度のばらつきが大きく、シナリオ上絶対にクリアしなければならないダンジョンは易しいものが多く、その一方でHPが1になるダンジョンなど、運ゲーと化しているものもある。
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主にダンジョン周りのギミックが『2』から大きく減少している。
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薬系アイテムが汲める泉、リサイクルボックス、合成釜などがない。
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壁が破壊できなくなった。
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ダンジョンに仲間を連れて行けない。
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泥棒の仕様が変更されて、以前のような工夫を凝らした頭脳プレイができなくなった。
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トラップの種類が大幅に減少。
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敵に空瓶を投げつけて倒すと入手でき、合成などで役立ったエキスの廃止。
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一部の操作性について
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ダッシュができない。
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キャラの向きを固定しながら移動ができないので斜め移動がしにくい。(慣れれば問題ない程度だが)
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メインダンジョンがぬるい
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10階ごとにチェックポイントがあり、一度ダンジョンから出ても次回からその階からプレイできる。
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階段からいつでもダンジョンを脱出できる。
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回復アイテムが手に入れやすい
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装備品やアイテムが持ち込める上、そのダンジョンの時点の最強装備がダンジョン内の店で売っている。強化も楽。
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死んでも装備品は残る。
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とはいえ、元々難易度を低めに抑えた結果ライトユーザーに受け入れられ、風来のシレンなどの難易度が高めのローグライクゲームと差別化されているシリーズなので、コンセプトの追求を進めたと見れば自然なことである。
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シナリオの比重が『チョコボの不思議なダンジョン2』より高くなり、スクウェアらしくムービーもどんどん取り入れているため、ゲームのメインであるはずのダンジョンがおざなりになっているのではという声もある。
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もっとも、その『2』は、ダンジョンをメインに置きすぎてライトユーザーからの評価が芳しくなかったのを振り返ると、今作のシナリオ・ムービー・ダンジョンのバランスはWiiの購買層を的確に捉えたものと見ることはできる。
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ロードがやや長め。
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とはいえ、特に長いのはダンジョンに入る時ぐらいで、攻略中はテンポを損なうことはほとんどなく、Wiiにしては長いといった程度。
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声優が豪華ではあるが、一部の声優は賛否両論。
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メインヒロインであるシロマ役の平野綾氏は快活なキャラ向きの声質であるため、元気さはあるとは言え清廉さが特徴のシロマを演じたことには批判意見も見られる。
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重要キャラクターであるラファエロ役はシンガーソングライターの川嶋あい氏が演じているが、やはり本職の声優でないこともあって棒読みが著しい。
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そもそも、やや牧歌的な雰囲気を持ち主人公を話者として描かない「ドラクエ型」の作品であるチョコボシリーズと、声優付きのボイスは若干ミスマッチな感もある。シドなど他のメインキャラクターも、ボイスを付けたことが評価されているキャラクターは多くない。
総評
Wii初のシリーズタイトルであり多くの初心者ユーザーをターゲットにし、絵本的な甘めの世界観や低い難易度によって好評を得た。
甘いメインダンジョンでは手ごたえがないと感じる人も制限ダンジョンなどで楽しめるように配慮され、全体的にバランスの取れたゲームといえる。
シドとチョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮DS+
【しどとちょこぼのふしぎなだんじょん ときわすれのめいきゅうでぃーえすぷらす】
ジャンル
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ダンジョンRPG
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対応機種
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ニンテンドーDS
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発売元
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スクウェア・エニックス
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開発元
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スクウェア・エニックス ハ・ン・ド JOE DOWN(音楽アレンジ)
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発売日
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2008年10月30日
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定価
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5,040円
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判定
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良作
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概要(DS+)
Wiiで発売された『チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮』の移植作。携帯機であるため手軽に遊べ、新たな追加要素もある。
本文では、主にWii版との相違に着目して記す。作品そのものの概要に関してはWii版の記事を参考のこと。
追加要素(DS+)
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「シドベンチャー」の追加
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原作で重要なポジションにあり、操作キャラや仲間キャラになりそうでならなかった登場人物、「シド」が主人公として操作できるダンジョンが追加された。
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シドベンチャーでは「通常攻撃が飛び道具」「毎回レベル1からスタート」「アイテムを蹴ることができない」「合成ではなく、改造で武器を強くする」といった特徴があり、チョコボとは一味違ったプレイが楽しめる。
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残念ながらシドでプレイすることができるのは専用ダンジョン1つのみであるが、99階まである上にボスキャラも用意されているので、ボリュームは十分ある。
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新ジョブ「赤魔導師」「ヒーローX」の追加。
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「赤魔導師」はFFシリーズユーザーにはおなじみの、攻守両方の魔法が使えるバランス魔導師。赤魔導師にしか扱えない強力な魔法も存在する。
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「ヒーローX」は本作の登場人物の一人になぞらえて作られたジョブ。ステータスは平均的だが、一風変わった特技を多く覚える。
その他の特徴(DS+)
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ゲームバランスの調整
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Wii版ではその難易度の低さが指摘されていたが、本作では徹底的に練り直され、全体的に難易度が上がった。
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町にある一部の施設が消滅したり、仕様が変更された。特に鍛冶屋では連続で武器を鍛えることができなくなり、武器の強化が難しくなった。
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アビリティを覚える順番やSP消費量が見直された。
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一度通過すると次からそのフロアまでスキップできる「チェックポイント」が少なくなった。
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敵のステータスや、使用してくる特技が調整された。特にボスキャラが顕著で、生半可な準備ではあっという間にやられてしまうほど。
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また、それでも満足のいかない人向けに「ハードモード」が用意されている。
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ハードモードでは「ダンジョンで倒れると全アイテム消滅(ノーマルでは装備品のみ残る)」「敵の全ステータスが上がる」「体力の自動回復が遅くなる」「自分より弱い敵から得られる経験値が少なくなる」などの特徴がある。ノーマルモードと比較してもかなり難易度が上がるので、『風来のシレン』ユーザーのようなコア層でも楽しめる難易度になる。
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ユーザビリティの向上
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Wii版ではできなかったダッシュができるようになった。
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よく使うアイテムやアビリティを登録しておき、メニューを開かずにワンボタンで発動できる「ショートカット」機能が追加された。
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ボイスのオン/オフが選択できるようになった
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その他細かい点でもプレイが快適になるように調整されている
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イベントがムービーではなくなった
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Wii版ではムービーで行われたイベントが、通常のゲーム画面のみ(随所で一枚絵が挿入)で行われるようになった。
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その影響か、大まかなストーリーの流れはWii版と一緒であるが、部分的にWii版と異なるイベントが発生する。
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なお、それに際してボイスはすべて録り直したとのこと。
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据え置き機からの移植とは思えないほどボイスが多く、非常によくしゃべる。
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声優が変更された
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Wii版で批判の強かった、ラファエロ役の声優は交代。製作者いわく意図的な人選であったとのことだが、移植に際して沢城みゆき氏に変更された。
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前作で好評であったミニゲーム「ポップアップデュエル」が続投。Wi-Fi通信対戦はもちろん、姉妹作『チョコボと魔法の絵本』との通信も可能。
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試練のダンジョン。基本的にはWii版の制限ダンジョンと同じものであるが…
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いくつかのステージの仕様が変更。
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力押しで進めるものが多かったWii版に比べ、よりパズル的要素が強くなっており、アビリティやアイテムを駆使する必要がある。
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一度クリアした後、再度挑戦するとレベルとジョブレベルを自由に設定できる。
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ステージをクリアした時のレベルとジョブレベルの最低値が記録されるので、やりこみ要素として楽しめるようになった。
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「不思議なダンジョン」の追加
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ローグライクファン待望の「持ち込み無し&レベル1で開始」のダンジョンが追加された。
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フロア数は50階と短いながらも、他のダンジョンでは味わえない「毎回がゼロからスタートの冒険」を楽しめる。
問題点(DS+)
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グラフィックの劣化
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ハードの制約上仕方ないことだが、グラフィックは劣化している。
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Wii版ではフルポリゴンでひとつながりだった町が、部分的にポリゴン&イラストの移動画面から入りたいエリアを選択という形式に。
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ただし移動は楽なので、ユーザビリティという観点からは改良ともいえる。
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ダンジョンでは真上からの平面的な視点になった。落ちているアイテムはポリゴンではなくイラスト。また、チョコボの装備してる爪やクラなども反映されない。
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ただし、ローグライクでは立体的な視点は見づらいため嫌われる傾向があるので、一概には問題とは言えない。
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イベントが物足りない
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前述の通り、ハードの制約のためか演出が大幅に変わっている。エンディングなどは非常にあっさりと終わってしまい、Wii版と同じような出来を期待するとがっかりしてしまう。
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BGMが少ない
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Wii版のBGMはFFシリーズのBGMアレンジであり、非常に評判が良かった。本作も基本的にはWii版に準ずるのだが、容量の都合か一部のBGMが削除されてしまっている。
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逆に追加されたBGMもある(FF過去作アレンジ3曲+オリジナル曲)。
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物語中で唐突にチョコボとは別行動のシドベンチャーが割り込んでくるため、話のテンポを削いでしまっている。
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チョコボ側が盛り上がってきたところへシドの冒険が挿入されるので煩わしく感じられがち。相互の冒険は最終的にこそ合流するが、最初のうちは互いにまるで関連もない。
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そしてシド側もたいていは、「ようやくコツがつかめて楽しくなってきた」ところでチョコボの続きへ戻されてしまう。
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シドがやられたときはチョコボが救助したという扱いになるが、チョコボが倒れた時シドは助けてくれないというのも心象が悪い。
ストーリー上は明らかにチョコボの方が忙しいのだが、合間にシドの救助までさせられてるのか。
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似て異なる操作系や、持ち物が完全に独立していることも混乱の一因。
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互いのパートへ戻ってきたとき、以前に何をしようとしていたのか分からなくなる。預けるはずだったアイテムや合成素材を抱えたままダンジョンへ潜ってしまったり、逆に必要なアイテムを持っていなかったりといった事故も頻発する。
総評(DS+)
演出面は大幅なカットがあるものの、ゲーム性においてはWii版を遙かに凌ぎ、コアゲーマーでもそこそこ楽めるような設計になっている。
演出や画質、音質などを重視したい場合はWii版を、あくまでもゲームとして楽しみたいのであればDS版を選ぶと良いだろう。
その後の展開
wii版発売から12年後、本作をベースとしつつシナリオやシステムの調整・新要素を加えたリメイク版が「チョコボ不思議なダンジョン エブリバディ!」のタイトルでPS4・switch向けに発売された。
最終更新:2024年05月03日 09:29