デュープリズム
【でゅーぷりずむ】
ジャンル
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アクションRPG
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 裏を見る
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対応機種
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プレイステーション
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発売・開発元
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スクウェア
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発売日
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1999年10月14日
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定価
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5,800円
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廉価版
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PS one Books:2002年2月21日/2,625円 レジェンダリーヒッツ:2007年1月25日/1,575円
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配信
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ゲームアーカイブス:2010年6月10日/600円
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判定
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良作
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ポイント
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サクサク進む3DアクションRPG 初代PSの隠れた名作として名高い 魅力的で個性的なキャラクターの数々に定評あり 登場人物の意外な一面が見られる2周目もミソ 時代相応の操作性は賛否あり
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ストーリー
どんな望みもかなえ、どんな奇跡も起こす、古代文明のマジックアイテム「遺産」。
それは今でも、世界各地に埋もれている…。
カローナの街とその周辺にも「遺産」の噂があった。
船が港に着き、噂を聞きつけた冒険者たちが降り立ってゆく。
その中に、さみしそうな少年「ルウ」、わがままな少女「ミント」もいた。
はたして遺産は見つかるのか…。それは何に使われるのか…。
概要
スクウェアによる3DアクションRPG。主人公は二人。そのどちらかを選択してプレイ開始。町とダンジョンを行き来し、遺産をめぐる物語が進行していく。
おもなアクションは、移動、ジャンプ、通常攻撃、特殊攻撃、とシンプル。
ルウは、倒したモンスターに変身する能力を持ち、ミントは、多種多様な魔法を使うことができる。
主人公によって動作が異なるため、同じ敵・ダンジョンであっても攻略法は変わってくる。
評価点
物語・キャラクター
町はひとつ、登場人物も20人程度。シナリオもとてもオーソドックス。
目的があり、足がかりがあり、出会いがあり、ピンチがあり、共闘し…最終的に世界の命運がかかってくるという王道の筋立てである。
しかしその物語の描き方が濃厚かつユニークであり、ユーザーに深く印象づけた。
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各周プレイ開始時に、ルウとミント、二人の主人公から一人を選ぶ。二人はそれぞれの過去と価値観で、同じ事件へ挑んでいく。
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ルウは、いわくありげで素朴な少年。死んだ恋人を生き返らせるために遺産の力を求めている。恋人の命を奪った宿敵との戦い、自身に関する葛藤などが話の核になる。どちらかといえばシリアス・真面目な展開。
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ミントは、自堕落な生活のため国を追放された元王女。国や妹を見返すため、遺産の力で世界征服しようと考えている。掛け合いがユーモアとおふざけに満ちている、コミカルな展開。
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無論、シリアスorコミカル一辺倒という事は無く、ルウ編にもギャグイベントが、ミント編にもシリアスな展開がほどよく盛り込まれている。
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「最終的に世界の命運がかかってくる」とはいうものの、それはそれとして、主人公はあくまでも「自分の目的のために」行動する。ゲームらしくないタイプの王道さで、一本筋の通った、当時としては珍しいつくり。
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二編は「ひとつの話の別視点・同じ時間軸」ではなく「パラレルワールド・別の時間軸」。主人公によって内容が大きく異なる。
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大筋の流れや向かうダンジョンはほぼ同じなのだが、シナリオのノリ・方向性が全く違う。ルウ編は、身寄りのない彼のひたむきさ、一途さが原動力になって道が切り開かれていく。ミント編は、徹頭徹尾「世界征服」をわめき続ける彼女の豪放磊落さが原動力になって状況がうねっていく。
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つまり『同一シナリオによる物語を、異なる主人公により全く違うテイストで楽しめる2本分お得な作品』と言えばわかりやすいだろうか。
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尚、選択しなかった主人公もサブ主人公・パートナー的存在として登場し、序盤からラストまでしっかり本筋に絡んでくる。
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登場人物の背景とファンシーな雰囲気は共通しているが、かたや伝奇小説風、かたやドタバタ熱血風といった感じで、選んだ主人公によってシナリオのテイストが180度さまがわりする。
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例えば、一方では冷徹・卑怯に見える敵役がもう一方では人間味が掘り下げられていたり、一方で硬派な兄貴分に見えるキャラがもう一方では言動を突っ込まれ口車に乗せられていたり、一方では理性的なリーダーに見えるキャラがもう一方ではプライドが高く陰険だったりする。
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一方のシナリオをクリアすると、続いてもう一方のシナリオをプレイする事になる。同一データで両方のシナリオをクリアすると後日談的なエピローグが入り、完全クリアとなる。
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その後はステータスを引き継いだ2周目(強くてニューゲーム)をプレイできるようになる。1周目で逃したアイテムやサブイベントを補完したり、更なる成長を行うことができたりと有難い配慮。
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2編のどちらもそれぞれに涙あり笑いあり、お約束ありイロモノあり、そして燃えるような熱い展開もありで、綺麗に決着する。
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ミント編は明かされない謎が少なくないが、ルウ編はよりストーリーの核心に迫る内容であり、後日談のエピローグもルウ編側のエンディングから続いている。
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「ミント編→ルウ編」の順番でプレイした場合、2本目のシナリオで物語の全容が明らかになる という形になるため、2編ある物語の楽しみ方としては自然ではある。
一方で「ルウ編→ミント編」とプレイした場合、生真面目なルウが手を焼いた相手を大胆不敵なミントが翻弄したり、ルウ編では因縁が深かった相手を何も知らないミントが豪快なノリでぶっ飛ばしたり…といった「シリアスな方の展開や物語の全容を既に知っているからこそ面白さが引き立つポイント」が多数存在するという楽しみがある。
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このため、どちらの順番でプレイした方が楽しめるかについてはプレイヤーの好みによるところが大きい。
話の大筋が変わらない以上、展開そのものの新鮮味は2本目のシナリオではどうしても多少薄れてしまう点も踏まえ、どちらが自分に合っているかを考えた上でプレイを始めることが望ましい。
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主人公から脇役まで、どのキャラも個性的で人気が高い。
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ベタな展開も見られるが、両主人公でのプレイを合わせると、敵・味方を問わず主要キャラクターに満遍なく出番や見せ場が用意されている。
その他
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きらびやかで幻想的、かつゆるやかなBGMの評価も高い。
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メインテーマは本作を象徴する一曲でとくに好評。本作の体験版が『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』に付属されていたからか「『デュープリズム』を知らないのに、なぜかこの曲は憶えている」という人もちらほら。
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グラフィックは標準的な出来だが、頭身低めのかわいらしいデザインと色使いで、PS1ならではの(いわゆる「ローポリ」な)味のある調和が取れている。
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キャラクターの動作も非常に生き生きとしており、単純なクオリティの良し悪しでは測れない完成度は現在でも見劣りはしない。
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表情の変化やボイスこそ無いものの、イベントシーンでのキャラの動きやカメラワークによる演出は非常に凝っており、ローポリでありながら決して侮れない優れた表現力と臨場感を実現している。
問題点
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主人公は二人いるが、それぞれシナリオは一本道。ミント編に魔法集めなどの寄り道が少しある程度。
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ボリュームは少なめ。寄り道の度合いにもよるが、主人公それぞれにつき初見でも10時間程度でエンディングに達する。
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強くてニューゲーム機能は存在するものの、主人公の力を試せるコンテンツは倒すたびに青天井に強化されていくとあるキャラとの戦闘程度。2周目以降の追加要素も存在しない。
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ダンジョン以外の施設は基本的に拠点となるカローナの街ひとつだけ。広さもそれほど大きくない。
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サブイベントも少ない上に内容のボリュームも乏しく、発生条件や発生タイミングがやけにシビアなものも多い。
本作は主要キャラ以外の街の住民はメインシナリオにはほとんど関わってこないこともあり、かなり注意深く住民に話しかけながら進めない限りは住民に愛着が湧きづらい。
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シナリオの進行に応じて住民のセリフは細かく変わるため、テキストのボリューム自体はそこそこ。
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お金の重要性が薄め。
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ショップで装備品を買ってステータスを強化することができるが、シナリオの進行に応じて攻撃力・防御力アップの2種類の装備品が追加されていくだけなので選択肢や面白味は無い。
普通に敵を倒しながら攻略していればダンジョンクリア時には新商品を2種類とも買える額までお金が貯まっているバランスなので、やや空気気味なシステム。
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教会に寄付をすることでコンティニュー用のコインを貰うこともできるが、最も少額の1,000Gの寄付をするだけで最安価のコインが10枚も貰えてしまう。
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高額の寄付をすると復活時に多少のメリットがある高級なコインを貰えたりもするが、価格に対してメリットが全く見合っていないためほぼ存在意義が無い。
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本作でまとまったお金が必要になる場面はドーピングアイテムの購入時くらいだが、こちらは利用しなくても問題なくクリアできるためやり込みの範疇。
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ミニゲームやボスバトルでの報酬が(イベントアイテム以外に)ほぼコインのみ。コインは先述のように教会でいくらでも手に入る消耗品のため、苦労の割りには報酬が安上がりという気分になる。
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必須ではないバトルミニゲームなどは、ミニゲーム自体が面白いためコインはおまけと考えればいいのだが、後述のトラウマ級難易度「ポプルプルル人のミニゲーム」の報酬がブロンズコイン(一番安い)かシルバーコイン(特に高級品でもない)であった時は、初見プレイヤーはひっくり返るだろう。(しかもボーダーをクリアしなければ「報酬なし」もありえる)
賛否両論点
本作のアクションについて、プレイヤーの評価が極端に分かれることがある。
「操作が簡単・楽しい」「操作が困難・辛い」といった真逆の感想もしばしば。
なぜこうなるのかというと…
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ハード・環境
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当時はPS1のアナログコントローラー(デュアルショック)が出てから、まだあまり普及していない時期だった。本作の場合、アナログスティックを使えばキャラをなめらかに移動させられるが、方向キーではわずかに難が出る。初速の鈍さが入力の体感とずれるなど。
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アクション性。旧来の2D見下ろし型アクションRPGとは違う、3Dならではの長所や短所がある
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『ブレイヴフェンサー 武蔵伝』と同様、3Dアクションについてのノウハウが溜まっていないころの作品。慣れるまでは遠近感や間合いがわかりづらいかも。
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狭い足場をジャンプで渡っていく場面が多め。失敗して戻ってきてまた失敗、となったりもするので印象に残りやすい。
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2000年代中盤・PS2以降のゲームでは「武器を振ると(その判定や範囲を示す)軌跡も出す」「キャラの動きとカメラを連動させすぎない」「モーションの重み(タメやヌキ)を誇張して伝える」など、プレイしやすくする工夫が当たり前になってゆく。しかし本作ではそうした発想がまだこなれておらず、操作性にクセがある。
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もっともこれは本作だけの話ではなく、PS1・SSの3Dアクションゲームによく見られた、時期的な現象なのだが。
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戦闘・成長
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本作にはレベルの概念が無く、ダメージを受ければ受けるほど最大HPが、技を使えば使うほど最大MPが増える、という成長システム。このためあまりにもサクサク進んでしまうと、成長しそびれて、シビアになってくる。
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アクションゲームが得意な人はダメージをあまり受けずに戦ったり、ムダな戦闘をうまく避けて進んでしまうので、かえって重要な場面でHP不足に陥りやすい。
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ボス戦についてのヒントや導線が少なめ。攻略情報を見ないのであれば、自分で試行錯誤し、弱点・解法を見つけ出さなければならない。特定のタイミングでしかダメージを受け付けないボスが多いうえ、主人公にガードや緊急回避の動作がないため、攻略法がわかるまでは攻撃も回避もできずボロ負けしがち。わかってしまえば適度なバランス。
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みんなのトラウマ、メルのアトリエ
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序盤に訪れるメルのアトリエという施設にて、マリオ風2Dジャンプアクションのミニゲームを遊ぶことになるのだが、このミニゲームが作中屈指の高難度であり、多くのプレイヤーのトラウマとなった。
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2Dアクションなのに足場が奥行きのある3D描写、かつ立ち位置が奥行き方向の真ん中であるため足下の把握が直感的にいかない上、判定が「見たまま」であるため、1マスブロックや動く足場が壁となって立ちはだかる。
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特にブランコの様に動く足場が厳しく、足元の影を目安に着地するのがセオリーだが折り返しで一瞬静止するタイミングを狙わないと着地点がずれるうえ、傾いたブロックは判定が狭くなるので乗れた後に焦って前進すると行き過ぎて落ちるシビアさ。
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それまでの一般的な2Dアクションでは、判定がキャラチップ単位であるため見た目より足下に余裕があるのが普通である。そのため、見た目が1マスのブロックでも左右にキャラチップ分マージンがあり実質2~3ブロック並んでいるようなものなのだが、このゲームでは見たままの1マスしかない。しかもキャラを歩かせるとモーションの関係で「最低」0.5マス+α動くため、神経を使った微妙な操作が要求される。
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そんな場所にもかかわらず、当たると転落必至の敵が絶妙のタイミングで飛んでくるのだからたまった物ではない。(HPゲージは有効なので接触=即死ではないが、ジャンプ中に接触したらノックバックで大抵落ちるのでHPがいくらあっても余裕はない)
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演算により厳密に当たり判定を行えるようになったポリゴン時代のアクションには良くあった仕様であるが、特にこの時代のスクウェア作品は(床の見た目より大きい見えない床判定や、床側面に当たった時の引き上げ処理などの救済措置を作らず)判定をシビアにする傾向だった。
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失敗にペナルティなし・リトライは一瞬なためトライ&エラーも快適だが、それをしてなおトラウマイベントと言われる作りはお察しである。
…などの点が考えられる。
つまりゲームとプレイヤーとの相性によって、また3Dアクション黎明期ゆえのプレイヤー自身のゲーム体験の差異によって、
ストレス要因と良いアクセント、両極端などちらにもなる構造を持っている、ということ。
なおアクションに関して「楽しい」「辛い」のどちらを述べている人でも、
「クリアを諦めた」と述べているケースはめったにない。全体的な難易度は程よく調整されている。
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その他
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技(変身・魔法)の数が豊富で、それぞれ20以上ある。しかしあまり細かい使い分けが要求されるわけではない。実際のプレイで使う技は限られる。
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ただし選択肢が多いに越したことはないので、ある程度は好みで使っていけると考えればさほど欠点でもない。
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ルウの変身のために必要なアイテムであるモンスターのメダル(敵を倒すと確実にドロップする)は4つまで保持可能で、5つ目以降の入手時は古いものから順に削除されていく。
同時に持つことができる数が少ないため特定のモンスターを使い続けたい場合は不便だが、いかにやりくりするか(使い道に乏しい地雷メダルを避けて攻略に適した構成を保つか等)という面白さはある。
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HPがゼロになった際は先述の「コイン」を使うことで現在地点そばからのリトライを行うシステムなのだが、先述の通りコインの価格はタダ同然のため、デスペナルティはあって無いようなもの。
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被ダメージで最大HPが増える仕様も考えると、この辺りの緩めの調整はある程度意図的なものかとも思われるが。
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ちなみにコインを使わず、セーブ時点(街=ダンジョン突入前)からやり直すこともできるので、コインが無くなる=詰み、とは限らない。
総評
スクウェア全盛期を象徴する単品タイトルとして『アインハンダー』『ゼノギアス』『ベイグラントストーリー』と共によく名前が挙がる一本。
丁寧な作りが際立つ、隠れた名作。けして大作ではないが、個性的なキャラを核にきっちりまとめられており「この作品を忘れられない」といった声が根強い。
リメイクや続編の要望もよく聞かれるが、「あのままがいい。ヘタに変えてほしくない」という声もよく聞かれる。
当時の基準からしてハイレベルに完成されていた作品と言えるだろう。
余談
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タイトル名「デュープリズム」は「デュープ・リズム」と読まれがちだが、正しくは「Dew(=しずく)prism(=プリズム)」。その由来は作中で明かされる。
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発売に先駆け、『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』の初回販売のおまけディスク「SQUARE'S PREVIEW Vol.5」に本作の体験版も収録されていた。
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ゲームオーバー時の「死んじゃった。」のメッセージがやけに印象的。
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賛否両論…を通り越し、本作の味としてファンに語られているのが「ミントの飛び蹴り」。
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魔法という遠距離攻撃を持つミントだが、じつはジャンプ攻撃のキックが強い。威力や機動性に優れており使い勝手が良好。早めに「蹴り上げ」として出しても、遅めに「かかと落とし」ぎみに出しても当たる。魔法使いなのに蹴り連発、は誰もが通る道。
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キャラの人気もあいまって「ミント様に蹴られたい」と言い出す変態まで現れる始末。ちなみに彼女はシナリオ上、何度も強烈なドロップキックをかます。
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本作はなぜかスクウェアからぞんざいに扱われる傾向があった。
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開発が小規模だったとか、広告費が少なかったとか(いや同時期の他作品とかぶるから打てなかったんだとか)、同社の大作にくらべて売り上げや知名度がなかったとか……諸説あるが真偽は不明。
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開発したスクウェア第3プロダクションでは『クロノ・クロス』も開発中だった(作業スタッフは被っていない)。
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企画発案サイト「たのみこむ」で続編希望支持が最も多いゲーム作品。それもあってか、2010年以降になって本作を見る目が変わったと言う説もある。リメイクしたい作品は、との会話の流れで名前が出たりも。
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twitter等でのファンの声が功を奏し、『ファイナルファンタジーIX』に続いてゲームアーカイブス化が決定。
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本作のディレクター杉本浩二はこの決定にあたり「デュープリズムはとても小さなプロジェクトでした。当初は知名度が低かったにもかかわらず、10年経った今では多くの方に支持して頂き感謝しています。スタッフが全力を出しきった作品です。ミントとルウの2人の物語を、ハイクオリティなローポリゴンでお楽しみください。」とメッセージを寄せている。
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2010年6月に600円で販売開始された。興味を持っていた人はぜひ。
最終更新:2023年06月12日 16:10