ぼくのなつやすみ
【ぼくのなつやすみ】
| ジャンル | アドベンチャー |  
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| 対応機種 | プレイステーション | 
| 発売元 | Sony Computer Entertainment | 
| 開発元 | ミレニアムキッチン アトリエドゥーブル
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| 発売日 | 2000年6月22日 | 
| 定価 | 6,090円 | 
| 廉価版 | PlayStation the Best 2001年6月14日/2,940円
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| 判定 | 良作 | 
| ぼくのなつやすみシリーズ 初代 (ポータブル) / 2 (ポータブル2) / 3 / 4
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| PlayStation Studios作品 | 
 
概要
舞台は1970年代。母親が臨月を迎えたため、親戚の家に預けられることになった小学三年生の「ボクくん」。
本作は「ボクくん」となったプレイヤーが、8月1日から31日までの1ヶ月間を田舎町「月夜野」で過ごす夏休みライフを描いている。
なお、キャラクターデザインはライオンから発売されているハンドソープ「キレイキレイ」のCMキャラでおなじみの上田三根子が担当している。
特徴・評価点
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プレイヤーは箱庭的に作られている月夜野を、ボクくんを操作することで自由に移動することができる。
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当初の行動範囲は親戚の家周辺に限られるが、ボクくんの行動で障害を取り除くことで段階的に広がっていく。
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移動範囲が広がって探検できる場所が広がっていくのはこの年頃の子どもにとっては何より楽しいことであろう。
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移動できる各エリアは自然が豊かな美しい背景が広がっており、プレイヤーの目を楽しませてくれる。
 
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日にちの概念と時間の概念が存在する。
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時間はエリアが切り替わると自動的に経過する仕組みとなっており、夕方になると周囲が赤く染まり、夕食の時間になるとおじさんが現れて家に連れ戻される。
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夕食後は再び自由時間になるが、あまり夜更かしをしていると強制的に眠ってしまい、翌日は寝坊して、ラジオ体操カードのスタンプがもらえなくなってしまう。
 
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プレイヤーは自由気ままななつやすみライフを送ることができる。
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ゲームに決まったシナリオは存在せず、プレイヤーが好きなように行動できる。
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あちこちにいる虫を網で捕まえて標本を作ったり、川や池で魚釣りをしたり、おじさんが作ってくれる凧を揚げて新しい凧を作ってもらうといったコレクション要素もあるし、クヌギの木にいるカブトムシやクワガタムシといった甲虫を捕まえて地元の子どもたちと虫相撲対決をするといったやり込み要素もある。
 
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月夜野にいる他の住民と仲良くなることで、様々なイベントも発生する。しかし、ゲーム的な「ノルマ」も存在しないため、それらの要素を進めるかどうかはプレイヤーの自由である。
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ただし当時のプレイヤーが昔に戻ることが出来たらという狙いで設計されている本作なので、イベント関連は純粋に夏休みをのんびり楽しむものばかりではなく、良い意味で切ないテイストのものもある。
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極端な話、特に何もしないで家でおばさんに甘えて時間を潰してるだけでも、月末になればゲームは終了する。
 
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一応エンディングは重要なイベントをいくつこなしたのかで5種類のランクがあるのだが、どれが正しいエンディングというわけでもないので、攻略に必死になるよりも、のんびりと子ども時代の夏休みを楽しむプレイスタイルが正解だろう。
 
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印象的なゲームデザイン
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子供時代を振り返るという30歳のプレイヤーの子供時代である1970年代を忠実に再現しており、ノスタルジックな雰囲気を追憶できる唯一無二のノスタルジックな世界観である。
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日本人なら誰でも知っている上田三根子のキャラクターデザインを利用したゲームデザインは最初こそ大きなインパクトを与えるが、ゲームの世界観は上田氏の温かで優しいキャラデザがぼくなつの世界観と非常にマッチしている。
 
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パラメーターや数字などを極力排除したゲームデザイン
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旧来の数字や得点でゲーム内容が左右されない独特なゲームデザインであり、純粋にゲームの世界観に没入できる。
 
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ゲームを盛り上げる主題歌。
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本作の主題歌は、1967年に発表された『この広い野原いっぱい』を大藤史氏がカバーしたもの。
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ゲームの雰囲気に絶妙にマッチしている他、歌詞の「この広い野原いっぱい咲く花を、一つ残らずあなたにあげる。赤いリボンの花束にして」は、ベストエンディングを迎えるための重要なヒントになっている。
 
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ナレーション
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ナレーションは大人になった主人公「ぼく」で、声優はたけし軍団の芸人・ダンカン氏である。本職の声優ではないものの、過度にうますぎず、リアルティのある声質が子供の頃を振り返るというゲーム感によくあって雰囲気作りに買っている。
 
賛否両論点
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空野家の長男
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ボクくんが居候する以前から空野家の長男は故人。この設定のため事情を知らないボクくんと家族の温度差など、ゲームにシリーズの中でも独特の切なさが加わっている。
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しかしシナリオ後半になると、吹っ切れたような描写もないままこういった設定が殆ど姿を現さなくなってしまうため、作風を重くしてまで無理に入れる必要もなかったのではないかという声も。
 
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フラグ管理の難しさ
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のんびり攻略する分には全く影響のない事だが、プレイヤーがゲーム中に起こった事件や謎の解決法を分かっているのにシステム上、ボクくんの方ではどう行動すればよいのか分からず時間だけが過ぎていく事態が起こる。
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例として、ニホンオオカミの幽霊を砂糖水でおびき寄せられるのではないか?、「あなあなぼぼん」の正体、ガッツくんに認められる方法などがある。
 
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こういった不便な所はボクくんの「子供」という設定に忠実ではあり、プレイヤーが自分の力で考える余地もある。また何度も繰り返すことでシステム上の解決法に気付ければ感動もひとしおだろうが、後述の時間経過の早さや時期限定なことも相まっていっそう不便に感じる可能性も高い。
 
問題点
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1周で多くのイベントを起こしにくい
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今作ではまだ時間経過の速度が変更できず、シリーズの中では特に早く1日が終了してしまう。
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捕獲した昆虫は自室に帰らないと図鑑に記録できず、虫かごが一杯になったら一度自室に帰るかプレイヤー視点で希少度の低い虫を逃がすかの対策が求められる。
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とある場所へ渡るための丸太を切り倒す作業がゲーム中にあるのだが、これを達成するのに10日前後要する。
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具体的には子供には重い斧を持ってきて、徐々に枯れた木を切りつけるというもの。
 1日に3回ほど切りつけるのだがそれ以降は斧を持てなくなってしまい、明日以降のトライを余儀なくされる。
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現実で考えるとそのくらいかかって当然なのだが、ボクくんの諦めの早いことや、どうして大人に頼んで木を切ってもらわないのかという事にイライラするプレイヤーも。
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ここでの問題もリアリティと快適性のコンフリクトが起きていると言える。
 
 
総評
本作のキモは、ゲームシステムの緻密さや背景設定ではなく、大人には懐かしく、子どもには目新しい、ノスタルジックな夏休みの雰囲気が味わえることだろう。
リアルタイムでこそないものの、従来のゲームのイメージにとらわれない世界観と自由気ままに遊べるそのゲーム性は後に世界中で大ヒットを記録する「どうぶつの森」シリーズの原型とも言える。
日本人なら誰でも心に残る「夏休み」を題材にした画期的な作品として10万本以上の売上となり、テレビ番組で取り上げられるなど大きな反響を呼んだ(参照)。
プロモーションの言葉通り、「大人になってしまったあなたにひと月かぎりの『なつやすみ』」を届けてくれる作品である。
余談
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本作には「8月32日」という有名なバグがある。これは、絵日記を見ているときにある動作をすることで強制的に翌日に進むという別のバグが最終日の8月31日の絵日記でも有効だったため、本来なら存在しない32日以降の日付に移行してしまうというものである。後述のPSP版ではこのバグは存在しない。
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無理矢理データを読み込んでいるため、キャラクター表示がおかしくなったりメッセージが文字化けするなど見た目にも異常な現象が生じ、動画サイトでも「ホラー映像だ」「終わらない夏休みだ」と話題になった。
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『不思議ナックルズ』などのサブカル系書籍でも取り上げられ、「呪いのゲーム」として扱われたことも。2010年の「8月32日」である9月1日には、制作者本人が、このバグについてTwitterで解説を行った(参照)。
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また、「死」を想起させる部分が僅かにあるため「主人公は既に亡くなっている」「過労死したSEが見た走馬灯」などと強引に解釈されることも度々あった。実際には「忙しくて夏休みも取れないSEが、子供の頃の楽しい夏休みを回想する」という話であり、そんな暗い物ではないのだが…。
 
移植
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2006年にはPSPにて『ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!』としてリメイク。開発はサワノ(現・アクリア)が担当。
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登場人物やイベントが追加されている。今から購入するならこちらがお勧め。
 
最終更新:2024年11月18日 06:04