ダブルドラゴン アドバンス
【だぶるどらごんあどばんす】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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メディア
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32MbitROMカートリッジ
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発売元
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アトラス
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開発元
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パオン S-NEO ミリオン(ライセンス提供)
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発売日
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2004年3月5日
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定価
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4,800円(税別)
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廉価版
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ベストプライス:2004年11月26日/2,800円
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判定
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良作
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ダブルドラゴンシリーズ
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概要
アーケード版『ダブルドラゴン』をベースに、ファミコン版の1作目や『ダブルドラゴンII』、スーパーファミコン作品『リターン・オブ・ダブルドラゴン』の要素を組み込んでいる。
さらにグラフィックを一新し、新技や新ステージ、新たな敵キャラクターを加えたダブルドラゴン史上最高傑作。
本作を手がけたプロデューサーである海老沼氏はオリジナルのスタッフではないものの、曰く「ダブルドラゴンを作りたくてテクノスジャパンに入社した」と言うほどのダブルドラゴンファンであり、原作へのリスペクトが凄まじい。
特徴
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概要のとおり、アクションは基本的にアーケード版『I』をベースにしているものの様々なシリーズの要素が詰め込まれており、あらゆる作品の技が使用できる。
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『I』からは「ヘッドバット」や「肘打ち」、『II』からは「龍尾嵐風脚」、FC版『II』からは「天殺龍神拳」「爆魔龍神脚」、『リターン・オブ・ダブルドラゴン』からはジャンプ中の「急降下キック」や「バックソバット」、ガードによる「パンチキャッチスルー」とまんべんなく技が採用されている。
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A+Bボタンのニーダウン(しゃがみ)中は敵が一切攻撃してこない上「天殺龍神拳」(ニーダウン中Aで発動する強力なダッシュアッパー)の間合いに勝手に集まってくれる為あまりに強力すぎる点がやや問題があるが、アーケード版の肘打ちくらいのノリで楽しめるためむしろプラス。
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ただし、空振ると隙が生まれる上にアボボのハンマーパンチ、スティーブのラッシュ攻撃等には一方的に打ち負けるので肘打ちほどの超性能ではない。あくまで威力が高く当たりやすい攻撃という範疇に収まっている。(出典のFC版「ダブルドラゴン2」でも非常に強い技であったので原作リスペクトともとれる)
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同様に「龍尾嵐風脚」(ジャンプ回転蹴り)も判定が強く、ほぼガードされない強力な技となっている為、危機的状況を打開しやすい。こちらも多くのシリーズで採用されている上に本作においても双裁拳の代表技と明言されているので意図的に強く調整されているものとみられる。
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ダッシュ攻撃や馬乗りパンチなどアーケード版『熱血硬派くにおくん』(あるいはFC版『ダブルドラゴン』)の流れや、ダウンした相手にストンピングをかますアクションは『コンバットライブス』をも汲み入れた技体系となり、まさにテクノスジャパンのベルトスクロールアクションの集大成とも言える。
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浮いた敵に対する追撃要素も取り入れ、爽快感も激増。また掴み膝蹴り3発目↑同時入力でFC版の蹴り上げが発動するなど、ファンを思わずニヤリとさせる仕掛けが心憎い。大技による豪快なスタイルだけでなく、じっくりと泥臭く撲殺するスタイルでも楽しめる、非常に懐の深い体系を実現している。
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「爆魔龍神脚(強力な飛び膝蹴り)」は単体で使うと隙が大きい技だが、「天殺龍神拳」で敵を打ち上げた直後に使う事で落ちてきた敵をまとめて吹き飛ばす事が出来る。どちらも威力が高いので組み合わせると強力なコンボとなる。
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アボボやチンといった巨大キャラでも掴んで投げる事が出来るようになった。これにより爽快感が増し、テンポも良くなっている。
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それまでの作品ではタイマンでも圧倒される敵キャラが多数いたが、本作ではタイマンならば全ての敵を圧倒できる。それほどまでにプレイヤーの性能が高くなっている。
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新規書き下ろしグラフィックはかなり『北斗の拳』を意識している模様。
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プレイヤーキャラクターのモーションは原作以上にブルース・リーをリスペクトしており、非常にかっこよい。
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本編の他には1人で2体のキャラクターを操作する「一人ダブルドラゴンゲーム」と体力が続く限り敵を倒し続ける「サバイバルゲーム」がある。
ちなみに「サバイバルゲーム」は1人プレイ専用なので、ジミーは使用できない。
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「一人ダブルドラゴン」はセレクトボタンでビリーとジミーの操作権を変えるという仕様であり、操作していない方は棒立ちとなり、一方的に攻撃される。
しかしながら巧みに操作を切り替える事で片方のキャラクターを囮にしたり、2人がかりのコンボを決める事も出来る。
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一方でそれ以外の部分は変更なし、かつプレイヤー同士の当たり判定もあるので1人プレイ以上に難しい上級者向けモードとなっている。
評価点
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追加ステージが4つ加わり、全部で8ステージになった。BGMもかつての名曲を良アレンジして使われている。
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ステージ3と4は『リターン・オブ・ダブルドラゴン』の中華街面とトラック面からインスパイアを受けた面で、ステージ6はファミコン版1の洞窟面からインスパイアを受けた面。ステージ7は『ダブルドラゴンII』の要塞ステージをアレンジした面で、BGMも同ステージのものになっている。
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アーケード版の武器アイテムに加えて、『ダブルドラゴンII』の「チェーンハンマー」、『リターン・オブ・ダブルドラゴン』の「ヌンチャク」、新アイテムの「アックス」と「ダブルカリスティック」が追加された。
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「ヌンチャク」の使い勝手は『リターン・オブ・ダブルドラゴン』に似ており、リーチが広く、攻撃速度も速いのであらゆる敵を一方的に完封してしまえるほどに強い。
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アックスなどの隙が大きい武器もあるが、いずれもリーチや威力の面で優れており、それまでのシリーズで見られた死に武器はない。間違って拾ったとしても任意に捨てる事も可能なのでストレスは少ない。
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武器を持っている状態でも蹴りは使用可能。隙が少なくかつ一撃で相手が怯むので、蹴りを入れた後に攻撃すればどんな武器でも確実に当てられる。
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落ちている武器を持ち替えるアクションが廃止されており、拾った武器は攻撃を受けて落とすか、ガードボタンで自ら捨てる以外では持ち替えたりしない。この為、武器が大量に落ちているような場所で戦っても不意に武器を広って隙を作ってしまう事が無くなっている。
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敵キャラクターの追加。
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『ダブルドラゴンII』から再生怪人「ブルノフ」と中華系棒術使い「チン」、『リターン・オブ・ダブルドラゴン』からマーシャルアーツ使い「スティーブ」が追加。さらにファミコン版『ダブルドラゴンII』の最終ボスからインスパイアを受けた拳法家軍団「五虎将」がステージ7のボスとして登場する。
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このうち「五虎将」の設定がFC版『II』から大きくバージョンアップされた。まず原作では対戦前も倒した後も名前が語られず、「謎の格闘家」と書かれるのみだった者にレイモンドと名前が与えられた。FC版『II』の冒頭のマリアン殺害が無くなったので、両者の対決は(相手がウィリーに荷担しているとは言え)純粋に武術家同士の正々堂々の戦いに設定変更。マリアンが死んでいないので、対戦後に唐突にマリアンが生き返るというFC版『II』の超展開も消滅。「こんな形で会いたくは無かった」と事切れるレイモンドの死がウィリーへの怒りを燃え上がらせ、最終決戦に繋がっていく熱い展開になっている。ステージ7の全体を通してFC版『II』の最終ステージをそのまま展開しており、直接対決のBGM「Fight of Fate」はシリーズ屈指の名曲である。
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本作の新規キャラクターとしてステージ3のボスの中華系拳法家コンビ「ハン・ユンフー&ウォン・ガーリョン」とステージ4のボスの勘違い侍「キクチヨ」が加わった。
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キクチヨは真剣を持っている場合があり、斬られると一撃死する。大振りなので回避は容易だが、アーケード版『くにおくん』の雑魚ヤクザのドス攻撃のような緊張感が味わえる。
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ステージボスを倒した後やエンディングにデモ専用のイラストが追加された。
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これによって、アーケード版では解りづらかったストーリーが理解できるようになり、本作で追加された敵キャラクターもストーリーにうまく組み込まれるようになった。
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BGMの選曲やアレンジはファンをうならせる納得の仕事。特にラストステージ直前の面で流れるファミコン版『II』最終面のBGMアレンジは至高の一品。
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シリーズの問題点を修正しつつ良い部分だけを集約したバランス
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シリーズ通しての問題点となりやすかった処理落ちは完全に解消。非常にスムーズに遊べる。
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賢すぎる敵のAIも調整されており、全体的にガードが甘く、ある程度ならば強引に押し切る事も出来る。難易度設定を上げる事でアーケード版並に手ごわくする事もできる。
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トラップの難易度も予兆動作が挟まるなどでマイルドに調整されており、初見でも気を付ければ回避可能になっている。
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性能が低く使いづらい死にアクションはほぼない。あらゆるアクションの性能が高く、様々な戦い方を愉しめる。
問題点
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コンティニューは有限制なので、ベルトスクロール初心者には少々キツいものがある。
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一応、オプションで残機やコンティニューの回数を増やしたり、裏技でコンティニュー回数の最大値を増やすことが出来るが、無限にはならない。
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50,000点ごとのスコアエクステンドも存在するので、これまでの作品に比べると遊びやすくはなっている。
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アーケード版『ダブルドラゴン』に登場した敵「ジェフ」と武器「段ボール」は削除された。
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「段ボール」に関してはアーケード版のデザインでは強そうに見えないので仕方ないが、せっかくの良リメイク作品に出演できなかった「ジェフ」は非常に惜しい。韓国製のリメイク作品『ワンダー・オブ・ザ・ドラゴン』ではリー兄弟の同門という設定を与えられ、中ボスとして登場しているが、そちらはゲームの出来は良くない……。
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追加された敵「スティーブ」がステージボスでもないのに強すぎる。
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パンチやキックのリーチが長い上に攻撃判定が強い。時折、強烈なラッシュ攻撃をしてくることもある。これを挟まれる形で受けると一気にライフがなくなる。
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ステージ4のトラックの上ではスティーブが大量に出現する上にトラックから落とされると一撃死なので、うまく対処できなければ次々と残機を失う事になる。
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一応、ラッシュ攻撃にも予兆があり、また使用後にネクタイを締め直す動作で大きな隙が生まれるために落ち着けば十分に対処が可能。
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アーケード版では最終面まで通用した肘打ちが、ステージ2以降に登場するこの敵に対しては返り討ちを食らうハメになる。
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ステージ6の難易度
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ステージ6の洞窟では落ちると一撃死の水場がいたる所にあり、少しでも吹き飛ばされると簡単に落ちてしまう。加えてこのステージのみ、敵を全滅させた後の制限時間が回復が行われないので、通常のプレイではタイムオーバーによるミスがほぼ確実に起こってしまう。
総評
歴代シリーズの要素を合わせて一作に昇華させた、まさにダブドラの集大成、決定版、完成版と言えるシリーズ最高傑作。
アクション、グラフィック、ストーリー、BGMの全てにおいて高水準で再構成された、リメイク作品の鑑と言える作品である。
余談
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製作する際、アドバイザーとして参加していた「くにおくん」こと滝邦夫・元テクノスジャパン社長が「『ストII』みたいなコマンドを入れろ」等の無茶な要求を突きつけたがプロデューサーが「そんなものダブルドラゴンに相応しくありません」と言い切って全部突っぱねた。
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本作は「海外での販売価格を抑えるため」という理由によりアドバンスのソフトとしては最低限レベルの32Mという容量に抑えられてしまっている。(当時のアドバンスのアクションゲームの容量は64~256Mが主流)
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しかしながら、出来上がった作品をプレイした「くにおくん」は「お前、いい仕事したな」とプロデューサーを褒め称えたという。
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GBA版は廉価版や海外版も含めてプレミアソフトとなっている。
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同名タイトルの移植版がNintendo Switch/プレイステーション4/Xbox One/Steamで2023年11月9日に配信。
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海外版も収録されており、音源がクリアになったクオリティーアップ版、1台で2人同時プレイも可能となり、入手難易度のハードルが下がった。
最終更新:2024年01月05日 09:40