DUNAMIS15
【でゅなみす ふぃふてぃーん】
| ジャンル | サスペンス・フィクションアドベンチャー |  
  
  
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| 対応機種 | プレイステーション3 Xbox 360
 プレイステーション・ポータブル
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| メディア | 【PS3】BD-ROM 【360】DVD-ROM
 【PSP】UMD 各1枚
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| 発売元 | 5pb. | 
| 開発元 | M2 (ツール・プログラム)、5pb. | 
| 発売日 | 【PS3/360】2011年9月15日 【PSP】2012年7月26日
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| 定価 | 通常版/限定版 【PS3/360】6,800円 / 8,800円
 【PSP】5,800円 / 7,800円(全て税別)
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| プレイ人数 | 1人 | 
| レーティング | CERO:D(17才以上対象) | 
| コンテンツアイコン | 犯罪 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 人間の「狂気」と「心の闇」に迫る物語 凄まじく豪華な声優陣
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| サスペンス・フィクションアドベンチャーシリーズ DUNAMIS15 / DISORDER6
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概要
5pb.とDivision ZEROが贈る新たなノベルアドベンチャーという触れ込みで発売された「サスペンス・フィクションアドベンチャー」第1弾。
本作のシナリオ担当の関涼子による同人誌『デュナミスの羊』を原案として製作された。ただし、内容は大きく異なる。
『Ever17 -the out of infinity-』などの『infinity』シリーズを連想させるようなゲームタイトルで、また、それらのシリーズと同じ市川和弘がプロデューサーを担当しているということでシリーズ同様に市川氏の個人ブランド「SDR Project」を冠して発売された。
しかし実際は同シリーズとはテーマや主眼に置いた要素が違い、大きく異なった作風となっている。ほぼ同時期にinfinityの新作『code_18』がサイバーフロントから発売されているが、こちらとも関係は無い。
PS3/360のマルチ発売。後に追加シナリオを足したPSP移植版が出ている。
特徴・システム
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一本道のノベルゲーム。選択肢は存在するが、即バッドエンドか後に影響しないものに限る。
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フローチャートは、横に一本道が表示され、バッドエンドとなるものは枝葉のような表示、合流するものは一本道を囲んだ台形で表示されるため、バッドエンドかなどがわかりやすい。
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テキスト中にリンクの形で表示されるTIPSにより用語の解説などにアクセスする。
 
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近未来。日本本島から遠く離れた学園島デュナミス・ベースの全寮制の学園に通う高校生たちを主人公とする。
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主人公たちは研究材料として生かされているクローンであるが、その事実を知らずに日々を送っている。
 
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章ごとに主人公の異なる「マルチサイトシステム」を採用している。
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何度も繰り返される限られた時間の中で変化していく若者たちの姿を描く、いわゆる「ループもの」。
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各章は同じ期間を描く内容であるが、これはそれぞれ別のループを取り上げたものである。
 
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PSP版のみクリア後におまけシナリオが追加される。
    
    
        | + | ネタバレ | 
「夜降ちの軌跡-Before one-」
本編の11年前のデュナミス・ベースを舞台に、物語の発端となった事件を描く。ある人物が復讐鬼と化す過程を描く内容であり、グロ要素こそあまり無いが鬱展開はてんこ盛り。
生徒達がクローンであると言う特性上、本編のメインキャラ達と同じ外見なのに性格も人物も違うクローン達が数人登場する。そしてそれらが狂っていくと言う、本編をクリアしたからこそきつくなる描写も。
「夜明けの地図-After all-」
本編の後日談。第四章の主人公だった陸七生が再び主人公を務め、彼の恋人の櫟井夏來をヒロインに据えている。
こちらはグロも鬱も皆無で、緊迫した展開こそあれど、未来への希望を感じさせる内容となっている。せっかくの後日談なのに本編の登場人物が少なめなのは残念。
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評価点
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人の狂気と心の闇に迫るシナリオ
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研究材料としてのクローンの物語。という主題ならではの陰惨な展開、登場人物の葛藤の数々。そしてそれを乗り越えていくことで成長していく若者たちの物語は見応えがある。
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序盤では卒業に向けての将来の夢や恋を語りながら、高校3年の最後を過ごす内容となっており、楽しそうに描写されている。しかし、このことにより、じわじわと不穏な空気を感じてからの絶望へと落差を感じさせる。
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一方、終盤は繰り返し陰惨で残虐な終わりを迎えてから新しい展開により一筋の希望が見えてくる内容となっており、落差により盛り上がる。
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ただし、テーマがテーマなだけにグロと鬱描写満載の人を選ぶ内容である事も間違い無い。詳細は後述。
 
 
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声優の熱演
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第一章の主人公にしてメイン主人公である高槻東吾役に東地宏樹氏。メインヒロインで最後の主人公である世津茅早役に茅原実里氏。その他にも島本須美氏や丹下桜氏と言った大手の声優が名を連ねており、その熱演は物語を大いに盛り上げる。
 
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良質なBGM
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旧KID、5pb.作品でお馴染みの阿保剛氏によるBGMは安定の高評価。
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タイトル画面の音楽や効果音は陰惨な展開でも心が休まる。
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特に「To the Core」や「Shining of hope」などはシーンの演出と合致している。
 
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同じような展開が続くループものであるが、章ごとに主人公が変わることで対処している。
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また、内面の描写がされることで、それまでの印象が大きく変わるなどの演出として効果がある。
 
賛否両論点
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クローンの取扱いと舞台設定
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ヒトクローンの存在については秘匿されており、一般市民はまったく知らない。実験者たちはヒトクローンを「実験動物」として扱い差別している。一方、ある出来事により、世界住人は遺伝的に問題を抱えるようになっており、「健康」であるのはクローンのみとなっている。
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ヒトクローンについての問題提起がされており考えさせられたという評価がある一方、後述の「科学設定」により問題提起が不十分とも考えられる。
 
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また、序盤から学校の歴史の授業でその出来事が取り上げられており、また、クローンだけが健康優良であることも言及されている。情報のシャットアウトされた外の世界が授業そのままというのは意外性に欠ける。
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エピローグで外の世界への働きかけはされるが、働きかけが始まった程度で終わっているため、詳細は書かれない。
 
 
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内容の過激さ
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まるで「グロテスク描写を含むアダルトゲームをコンシューマーに移植、一部描写をカットした」ようである。
 
    
    
        | + | ネタバレ注意 | 
あるキャラクターが3・4回にわたるループごとに望まない性交渉をさせられ、茫然自失となる(いわゆるレイプ目)。また、性交渉後に別の人に告白され、「次のループで告白されたら、きれいなままの私でいられたのに!!」という内容のことをヒステリックに叫ぶ。
 
主人公たちクローンは実験材料で、まさしく「子供を産む器械」として扱われていることが判明する。また、主人公たちが「精液」や「子宮」などの直接的な単語を使わなくても済む話で露骨に使う。
狂気にさいなまれた主人公たちによる鉄パイプやチェーンソーでの他の生徒の虐殺。また、登場人物の1人が解剖されるシーンの描写や、その後の血だらけの状態で死体袋に入れられたものを開けて見ることになるなどのグロ鬱展開も。
 
特に中盤にエグイ描写が集中しており、そこでゲームをやめる人も多かったと思われる。
主人公たちがクローンであるということで人間の中にはひどく差別的な扱いをする者がいる。
主人公たちは人間側に陰で「羊(シープ)」(迷える子羊・つまり人間側は「神」)と呼ばれており、「物」としてもてあそんだり、「処分」する描写が続く。
これらの展開は大抵、ループによって「無かった事」になり、一度死亡したキャラも何事も無かったように再登場するのだが、それが分かっていても表現力の高さ故に精神的に来る。
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ルートの仕様
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周回した記憶は敵味方含め全員におぼろげながらも引き継がれる。
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しかし主人公全員で周回していることを確認しあう展開がなしに、後半になって唐突に全員が周回に気づいた前提で会話を進めるようになる。ここで少々プレイヤーは置いてきぼりになる。
 
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男性主人公たちが乙女ゲーチックとの意見がある。
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誰に対しても人当たりがいいが二面性のあるチャラ男(陸七生)やことあるごとに「ダルい」とつぶやき粗野な言動だが仲間たちには人気のあるドデカ健康優良日本男児(高槻東吾)など。
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高槻東吾は序盤の主人公であり、そのキャラクターにも賛否が分かれている。
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本作は原案担当者が女性である為、男性キャラの描写がその方面に寄ったとも考えられる。
 
問題点
シナリオ面での問題
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科学設定の詰めの甘さ
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本作は科学を売りにしている訳ではないとは言え、説得力のある科学考証を求めるプレイヤーには気になる点が多々存在する。
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クローンをまるごと作ったり遺伝子操作できるほどの技術力があるにもかかわらず、必要な臓器のみの作成などはしない。今日でも、再生医療の研究はされており、それの延長線上にあるとは思えない。
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フィクションなので架空の設定でも良いのだが、それについての言及はない。
 
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終盤の唐突なオカルト
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一番の目玉となるはずのループの理由がオカルト的な都合のよいものとなっている。また、作品で納得のいく説明も一切されていない。
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それまでの出来事については一応科学的に説明できる現実的な展開だった為、かなり唐突感がある。伏線がないわけではないがかなり弱く、明かされた後でも疑問を抱く内容。
    
    
        | + | ネタバレ注意 | 
デュナミス・ベースでの出来事を憂える霊により、ループが引き起こされていたというもの。「霊の力」には限界があり、それ以上ループできなくなったところで一定の解決がされてエンディング。
霊の存在を認めるにしても、どうして一介の霊にそのような大業ができるかについての説明はない。
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キャラクターの心の闇
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主人公たちとその仲間のうち3人に精神的な問題がある。
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うち二人はループ回数を重ねるにつれて精神的に成長していく。また、その片方は2章で「主人公が切り替わって内面が描写されるようになりこれまでのプレイヤーの好印象が一転して悪い印象となる」などのトリックでも活用されている。
 
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しかし、残りの1人に関しては終盤までほぼ伏線が張られておらず唐突であり、またその設定が必要であるのか疑問を抱くような内容となっていた。
    
    
        | + | ネタバレ注意 | 
普段からおとなしくしているが実は殺人鬼で、いじめからの逃避のために殺人を繰り返していたが、恩人に諭され「理由がわからないけど言われたから殺人はやめ」ているという過去を持つ。終盤になって「他の動物や植物は殺すのに、人を殺してダメな理由がわからない。だから、衝動に基づき殺す」という内容を話す。そして、その恩人が死亡するのだが、エピローグで再び殺人をやめても「人を殺してダメな理由がまだわからないでもダメだと言われたからとりあえずやめる」という内容を話す。精神的に全く成長していない。
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シナリオは基本的に一本道
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選択肢はあるがシナリオを分岐させるものではなく、「間違えた選択肢を選んでバッドエンドで即死」「その後の会話内容が少し変わる」の二パターンのみ。エンディングも一種類。
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即死バッドエンドは、例えば「もがく」or「諦める」の2択というような、みえみえな分岐になっているものが多数あり、水増し感がある。
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その後の会話内容が少し変わる場合は、その両方のルートにTIPSがある場合があり、TIPSを回収するためにはその両方のルートを通る必要がある。
 
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一応、選んだ選択肢によってTIPSが追加される事はある。
 
公式が最大のネタバレ
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公式サイトやパッケージ、オープニングムービーなどでネタバレが満載。
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科学アドベンチャーシリーズもネタバレが多い事で有名だが、本作はそれ以上。
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あるキャラクターについては末路となるCGがモロに載っている。
 
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一方で、説明書のストーリー説明の後半部分は実際と異なる。
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このストーリーは原案となった同人誌のもので、本作はまったく展開が違う。
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PSP版では修正された。
 
その他
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ビジュアルとテキストの乖離
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異常気象で暑いと言っている割には立ち絵はブレザーまでしっかり着込んでいたり、中にはさらにパーカーまで着ている者もいる。
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生徒がまばらでガラガラのカフェの背景絵で「見るも無残なほどごったがえしていた。」と説明する。
 
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音量の問題
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個別の音量調整はできず、声の低いキャラクターはイヤホンをしないと聞き取りづらい。女性の叫び声なども多いため、音量を上げてのプレイは難しい。
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PSP版の追加シナリオでは聞き取りやすく調整されたが、本編はそのまま。
 
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ボリューム
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普通に読み進めても20時間前後でクリア出来てしまう。分岐やマルチエンドが無いので、他のADVに比べるとボリューム不足感がある。
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その分テンポよく遊べるという利点もあるのだが。
 
総評
ゲームならではのトリックを駆使した傑作との評価を得た『Ever17』などのinfinityシリーズを連想させるようなゲームタイトルであること。
残虐で陰惨な描写が多いながら評価されている『CHAOS;HEAD』に始まり、空想科学としての設定を詰め、ほぼ矛盾が生じずにまとめた名作『Steins;Gate』で有名となった科学アドベンチャーシリーズ。
それを生み出した5pb.の新しい作品ということで、それらシリーズのような内容を期待するプレイヤーも多かった。
 しかし、実際はそれらのシリーズとはテーマ自体が異なる作品である。『infinity』のような秀逸なトリックや科学アドベンチャーのような説得力のある科学考証を期待すると肩透かしを食らう可能性が極めて高い。事実、当初はそうした評価も散見された。
 また、「サスペンス・フィクション」の肩書きは伊達ではなく、クローンであるが故の人間側の扱いや狂気、キャラクター達の心の闇、エログロ鬱展開とエグイ描写が多いのも人を選ぶ。
 突き詰めた設定ではなく、登場人物の心情を読み取り、そこからどう動いて行くのか、どう乗り越えて行くのかに重点が置かれていると言える。登場人物に感情移入できるかどうか、そしてグロ鬱展開に耐性があるかで評価が変わってくるだろう。
余談
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後に本編の最終章を描くノベライズ版も発売。ゲームではヒロインの茅早の視点で描いていたが、こちらではメイン主人公の東吾の視点で描かれている。
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また、前述の『デュナミスの羊』も同時収録されている。
 
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歌手5人、いずれもソロによる歌が8曲もある。
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キャラクターのイメージソングというわけではない。
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エピローグのバックで流れる曲の歌い手は『Steins;Gate』でヒロインを務めた今井麻美。ただし、声優としては出演していない。
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ちなみに今井氏は次回作でもED曲を担当し、声優としても参加している。
 
 
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2013年にはサスペンス・フィクション第2弾として『DISORDER6』が発売された。
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本作の登場人物である妹尾が登場するのだが、本作との関連性ははっきりしていない。
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こちらはシナリオ自体の評価も低く、本作と比較しても一作品としても全体的に残念な仕上がりとなってしまっている。
 
最終更新:2021年12月06日 15:00