奇々怪界 怒涛編
【ききかいかい どとうへん】
ジャンル
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アクションシューティング
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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タイトー
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開発元
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WORKSS
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発売日
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パッケージ版:1987年8月28日/書き換え開始日:1987年10月16日
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定価
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3,800円(税別) (書き換えは500円)
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判定
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劣化ゲー
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シリーズファンから不評
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ポイント
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独自の要素を盛り込んだ結果、別物に 接近戦メインになり爽快感低下 不親切すぎる謎解きとシステム 雰囲気だけは原作譲り
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奇々怪界シリーズ
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概要
86年にリリースされた業務用アクションシューティング『奇々怪界』のファミコン版。
純然たるアクションシューティングだったAC版に対して、アクションRPG的なアレンジを施されている。
ストーリー
時は現代。豊かな時代に終わりを告げるかのように、吹き荒れる不況の嵐。
人々はまたも福の神々の元へと救いを求めたが、時すでに遅し。七福神たちは、奇妙な妖怪たちによって連れ去られた後だった。
荒涼とした廃墟のかなたから、伝説の少女「小夜」が、もう一人の救世主「美紀」を連れ、いま甦る……。
(説明書より抜粋)
ゲーム内容
本作は面クリア型ではなく、地続きのフィールドで構成された広大な1枚絵のマップのどこかに封じ込められた七福神を1人ずつ探し出し、ボスを倒して救出していく。
ライフ制の導入、お店でのアイテム購入など、前述の通りアクションRPG的な要素が多く付加されている。
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ライフ制
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小夜ちゃんが敵と接触するとライフが減り、0になるとゲームオーバー。また、特定の敵の攻撃を受けると毒に冒され、何もしなくてもライフが徐々に減っていく。
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ゲームオーバー後は、タイトル画面からコンティニューを選ぶと初期状態で最初期スタート地点から、もしくは最後にセーブした地点から入手したアイテムを保持した状態での再開となる。
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ライフはおにぎりの数で表わされ、最大で6個。六角堂内部のお店で回復アイテムのおにぎりを購入することにより回復できる。
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おにぎりはスピードアップアイテムも兼ねており、取得ごとに移動スピードが上がり、ダメージを受けるごとに低下する。
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お札の通貨制度
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本作ではアイテムの購入や関所の通行にお金がかかるようになっており、お札が通貨の役割も兼ねている。
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お札は敵を倒すことで増加し最大999枚までストック可能。
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六角堂のお店
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接近時にろくろ首「おげいちゃん」が飛び出してくる六角堂は、本作ではお店及びセーブポイントの役割を兼ねている。
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おげいちゃんを倒すと六角堂の扉が開いて中に入れるようになり、通貨代わりのお札を支払うことで、アイテム購入によるキャラ強化及びセーブを行える。
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2Pプレイ
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本作は、ソフト発売時にCMでタイアップしたアイドル「伊藤美紀」をモデルにしたキャラクター「美紀ちゃん」が2Pキャラクターとして用意されている。
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ただし、「セレクトボタンをおして操作キャラを切り替える」だけなので本来の意味での2Pプレイはできず、小夜ちゃん使用時に危機に陥った時に緊急回避的にキャラを切り替えるといった使い方しかできない。
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お札探しのボーナス面
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七福神救出後にボーナス面が挿入され、雲の上に隠されたお札を探して集めていく。実はこのステージは歩ける場所が設定されており、踏み外すと落ちてしまいそこで終了となる。
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制限時間制
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本作ではゲーム内で経過時間が計測されており、時間経過とともに日付が加算されていく。(日付はセレクトボタンで確認可能)
七福神が全消失した翌日の1月8日の12時から始まって、1月31日の12時までの間に全面クリアしなければならず、間に合わなかった場合はタイムオーバーでゲームが強制終了となる。(ゲーム内の1分=現実時間の1秒で、ゲーム内の1日が24分。つまりリアル換算で約143時間が猶予時間となる。)
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セーブ後にロードもしくはゲームオーバーになった後にコンティニューすると日付が7日間進む。
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残り日数が5日あたり切ったところでゲームオーバーになった場合、コンティニュー項目が表示されずそのまま強制終了となる。
問題点
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接近戦メインになったゲーム性
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上述の通り、お札が有限制になった影響で後先ホイホイ考えずにお札を打ちまくるわけにもいかず、必然的にお祓い棒による接近戦がメインになって爽快感に欠けてしまう。
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ボス戦でも普通に弾切れを起こしてしまうため、十分にお札を蓄えつつ温存して進む必要がある。
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この仕様上、AC版と異なってボス戦から逃げることが可能であり、態勢を立て直してから再戦を挑むことが可能になっている。
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一部、敵を倒すことでお札を入手することが可能で、一部の敵から大量に稼げる、特定の石畳の上でお祓い棒を規定回数ふるとお札が出現するなどの救済措置はある。
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ライフ減少に伴う移動スピードの低下
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毒によるダメージは道端にある灯篭をお祓いすることでしか治せないのだが、灯篭の場所がわからないとたどり着く前に死んでしまう。ストック可能な回復アイテムが無いのも不親切。
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マップが広大で迷いやすい
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似たような景色が続いていくこともあって分かり難い。マップは存在しないので迷いたくなければ自分でマッピングが必要。
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マップの広さに対して敵の配置がまばらであり、その影響でマップがスカスカしていて密度が薄い。
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画質が今一つ良くない
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スクロールに合わせて画像が欠けたり、時々色がおかしくなったりする。
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謎解きの難易度が高く、ヒントがほぼ無いため不親切
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最終ステージに突入するためのルートを開く際、ある場所であるアクションを50回ほど取らなければならないのだが、それについてもノーヒント。
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被弾時のリアクションが無いため、ダメージを受けていることが分かり難い。
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一部マップ移動時にミスしやすい
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動く足場を経由して渡る水面エリアが存在し水中に落下するとミスとなるが、判定がやたらと厳しく数ドット位置がずれただけでミスになってしまう。
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タイムオーバー時のバグ
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前述のとおり、1月31日までが期限だが、なぜか32日にまで日付が進む。そしてゲームオーバーになった後はコンティニュー項目が表示されるものの、コンティニューを選ぶとフリーズしてしまう。
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ボーナスステージが遊ばせる気がない仕様
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上記の通り歩けるルートは決まっているが、雲の上ということでか歩ける場所と落ちる場所の見分けは全くつかない。さらに道幅も狭く、数歩歩いただけで落下してしまいお札の一枚も取れず終了になりやすい。ボーナスステージにしても厳しすぎてあまりにも存在意義が感じられない。
評価点
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AC版との違いが目立ち、移植物としての色眼鏡抜きで見ても粗が多く不親切な部分も目に付くが、ゲームとして破綻しきっているわけでもなく、別物と割り切ればそこそこ遊べる範疇には収まっている。
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奇々怪界のかわいくもおどろおどろしい雰囲気と、FCのチープなグラフィックとサウンドがマッチしている。
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キャラクターもFCのドットでかわいらしさそのままに描かれており、メインBGMも原曲の雰囲気を損ねていない。
総評
80年代当時はまだファミコンとアーケードのハードスペック上の壁は高く、多くの作品がアレンジ移植か完全移植を目指して結果的に劣化移植となり評判を落としてしまうことが多かった。
待望の家庭用ハード移植の一番手ということもあり、本作も前評判や期待が高く、メーカー自身も様々なグッズやアイドルとのタイアップ等のメディア展開を図ってFC移植に対する期待を盛り上げていたのだが、やはり同様の経緯を辿ってしまった。
全体的に粗削りでゲームとして未完成と思える箇所が多く、特にお札が有限制という仕様上、どうしても付きまとう弾切れへの懸念が足を引っ張ってしまったところが痛い。お札が通常通り無制限であれば、まだ評価は違っていたかもしれない。
余談
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本作は、AC版開発後期から並行して開発が始まり後にお蔵入りになったROMカセット向けオリジナル作『東京奇々怪界』をベースにしており、AC版で没になった様々なアイデアが活かされているという。
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このROMカセットはAC版のマップをベースに追加マップを挿入した形になる予定だったが諸般の事情で開発中止になり、後にディスク向けに再開発が始まったという経緯があった。
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この際、開発はタイトー内製からAC版のPCE版移植を担当したビッツラボラトリーの前身であるWORKSSに引き継がれている。
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86年のAC版稼動後、他機種移植一番手となる本作ディスク版の発売時に様々なグッズ展開や上述の伊藤美紀とのタイアップ等のメディア展開が盛んに行われており、作品の知名度が幅広く知れ渡るきっかけとなった。
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CMソングは彼女の2ndシングル『哀愁ピュセル』が起用され、タイトル画面BGMは同曲のカップリングでゲームソングとして制作された『小夜(リトルナイト)カーニバル』が使用された(ゲームBGMを担当したOGR氏の作曲)。
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七福神のうち「福禄寿」と「寿老人」の2人は、AC版から見た目と名前がそれぞれ逆になっている。
現在でもこの2人はよく混同される。
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AC版のキャストロールでは「頭部が長く扇子を開いてる方が福禄寿」「帽子を被り杖を突いてる方が寿老人」だった。どちらが制作側の本来の意図だったのか……。
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本作付属のごりやくスタンプや、徳間書店出版の攻略本のキャラ紹介でもFC版に準じた名前になっている。
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本作から登場した「美紀ちゃん」は、後にタイトーキャラクターが数多く登場するパズルゲーム『ぽっぷんぽっぷ』で同様に小夜ちゃんの2Pキャラクターとして登場している。
最終更新:2023年11月19日 15:54