注意:ここではオリジナル版のDSタイトル『世界はあたしでまわってる』と、移植版であるPSPタイトル『世界はあたしでまわってる 光と闇のプリンセス』の両方を紹介する。
世界はあたしでまわってる
【せかいはあたしでまわってる】
ジャンル
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あたしのためのRPG
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対応機種
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ニンテンドーDS プレイステーション・ポータブル
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メディア
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【DS】512MbitDSカード 【PSP】UMD1枚
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発売・開発元
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【DS】グローバル・A・エンタテインメント 【PSP】GAE
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発売日
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【DS】2008年6月12日 【PSP】2009年7月9日
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定価
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5,040円(税5%込)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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なし
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ポイント
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「わがままシステム」など独自のシステムが特徴 ゲーム初心者にもとっつきやすい難易度 作業感やボリューム不足などゲーム面の欠点が多い アンジェラがかわいいと思えるかが評価の分かれ目
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概要よ☆
大金持ちのお嬢様に生まれた主人公のアンジェラが一目惚れした冒険者を振り向かせるため、自慢のわがままを駆使してさまざまな難問をクリアしていくというRPG。
略称はPSP版の主題歌名から『あたまわる』が定着している。
メーカーが『大奥記』と同じという理由で、クソゲー扱いされることがあるが、断じてそんなことはない。
『ダンジョンメーカー 魔法のシャベルと小さな勇者』の続編的な位置付けにあたり、前作の欠点はある程度改善されている。
特徴・評価点よ☆
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主人公のアンジェラがかわいい。とってもかわいい。
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このゲームの面白さの八割方は、彼女の可愛らしさにあると言っても過言ではない。
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わがままキャラではあるが、相手に悪意を持って接することがなく(文句は言うが)、わがままを押し通すための努力はするし、どこまでもポジティブシンキングで、何より自分のことが良く分かっているので嫌味たらしさは全くない。
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世間知らずでもあり、それが発揮されるボスとの会話シーンも秀逸。
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最初から強い魅力を持っている上に、成長物語にもなっていて、その変化を見るのも楽しい。もちろん成長しても魅力が損なわれる事はなく、微笑ましい気分になってくる。後半ストーリーの盛り上がりもかなりのもの。
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テンプレのわがまま・ツンデレキャラとは一味も二味も違い、「傍若無人なキャラ・わがままなキャラは嫌い」と言う人でも好きになれる、新しい魅力を持ったキャラである。
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アンジェラを取り巻くキャラも負けじとなかなかアクが強く、アンジェラの魅力を引き立てる。
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秀逸なイベントテキスト
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本作のテキストは勢い重視で短い文章をテンポよくつなげていく形式になっている。難しい言い回しもなく意味がすんなり頭に入ってくるため読んでいて気持ちが良い。
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アンジェラと町人がスピーディなコントのような掛け合いを繰り広げ、ツッコミのタイミングも完璧。お互いが相手の無茶振りに対して一言で抜群の切り返しを見せるので思わず笑いを誘う。
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アンジェラの言葉には「カギ、ちょうだい☆」とだいたい星マークがつく。アンジェラの個性と世界観を引き立たせる良いアクセントになっている。
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ことあるごとに同じ展開やセリフが「お約束」として何度も繰り返される。プレイヤーからすればいつものパターンだと瞬時に気付くことができ安心の笑いにもつながってくる。
ダチョウ倶楽部さながら。
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WPがあるかぎりRPG的に無茶ができる「わがままシステム」
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敵が強いなら「あたしが先よ!」で先制をとり、「あんたは動くな!」で動きを止めれば楽に戦える。それでも苦戦するなら「魔物のレベル変えたーい」でレベルを下げてしまえばいい。それでもダメならレベル上げだが、「もっと経験値ちょうだい」で経験値を増やし、「ビンボーは嫌いよ」や「もっとアイテム出してよ」で収入を増やして装備をそろえ、宿屋で食事しまくれば短時間で強くなれる。
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逆に敵と戦うのがめんどくさいなら「あんたらじゃまよ」で追い払える。
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万一敗北した場合ペナルティとして所持金かその日稼いだ経験値の半分を失うが、「どっちもイヤ」の一言でペナルティそのものを回避できる。
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クエストクリアのために倒さなければならない敵や、集めなければいけないアイテムが出る地形が遠くにある場合(または存在しない場合)、「地形が気に入らない」で街の隣にその地形を作ってしまえばいい。
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クエストそのものがめんどくさいなら「クエストめんどくさーい」でクリアしたことにしてしまえばいい。
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イベントでもWPを消費してわがままが言える場面がある。武器屋でないはずの新製品を出させたり、存在しないはずのアイテムを足元から掘り出したり。もう滅茶苦茶ではあるが、とてもゲーム初心者には優しく遊びやすいシステムである。
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基本的にわがままを使うこと前提のゲームバランスなためかバランスブレイカーなわがままはほとんどなく、わがままを多用したからといって良くも悪くもヌルゲーにはなりにくい。逆にわがまま使用禁止といった縛りプレイは非常に難しい。
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仲間のペットであるミミックスライムの成長システムや魔法習得システムなど、他にも独特のシステムも存在する。
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アンジェラは、覚えたい魔法を敵から数回受けたあとにレベルアップする事で魔法を習得する、と言う独自のシステムを持っている(一部魔法はイベントで習得)。
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ただし、アンジェラが「魔法とか面倒くさい」と言う理由で、実際に魔法を使っているのはペットのオウム・パロちゃんだが。
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ミミックスライムにはレベルという概念がなく、倒した敵の身体の一部をモノマネすることによって、その敵の能力を得て強くなる。当然強い敵を吸収するほど強くなるため、わがまま「魔物のレベル変えたーい」でレベルを上げる意味も出てくる。
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宿屋に泊まるとき、有料で食事をとることができ、とった食事によって主人公のステータスが上がる。
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1ボタンで回復専用のメニューを開けるなど、インターフェースも地味に親切。ゲームのテンポも早く、サクサク進めることができる。
『光と闇のプリンセス』よ☆
PSP版追加要素
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特定の地点で、成長率が高い「光のアンジェラ」かわがまま特化型の「闇のアンジェラ」かを選べるようになった。
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その他にもボイスが追加されたり、タイトル画面で主題歌が流れるようになったり、新キャラクターが追加されたりした。
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難易度もDS版から調整されていてクエストの内容やわがままポイントの消費が変更されている。
賛否両論点(ふむ)
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登場人物のコミュニケーションの少なさ
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メインの登場人物はほとんどが裏方でアンジェラと直接絡むことはない。
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ライバルとして大きく関係する新キャラクターも出てくるが、章の途中から完全に出なくなる。入れ替わりで別の人物が登場するがぽっと出た感が強い。ゲーム全体のストーリーとしてみるとまとまりが薄くて散漫な印象を受ける。
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ただしその分アンジェラに執拗に絡んでくるキャラもいないので、アンジェラ主体のストーリーとしては常に一貫していてよくできている。話が変な方向に向かうこともないため全体的なテンポは良い。
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ゲームバランス
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全体的に低めの難易度でさくさく進めることができる。
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わがままシステムでごり押し前提の難易度になっているのに加えて、ステータスアップの食事効果が永続でドーピングもやりたい放題なので、本気で楽をしようと思えばいくらでも楽ができる。
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ボス戦は行動パターンにギミックのあるのものが少なく、毎回同じ動き方と勝ち方になりがちで戦術性が薄い。だいたい「あんたは動くな!」のわがままを連打するだけで終わってしまう。
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強いボスもいるが単純にステータスの高さでつまずいてしまうことが多い。味方の攻撃力が低いとダメージがほとんど通らない。これもあらかじめ「魔物のレベル変えたーい」を使うだけで済んでしまう。
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PSP版は、闇のアンジェラの方があまりに有利すぎて、光のアンジェラを選ぶ意味がほとんどない。闇のアンジェラしか使えないわがままに強力なものが多く、欠点の成長率の低さも食事で補えてしまうため。
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特に凶悪なのが、敵のHPを半分にする「あんたら半分でいいわよ」で、他のわがままと同じくラスボスにも有効。このわがままはPSP版で追加されたものだが、おかげで低い難度がさらに下がっている。このゲームらしいとは言えるが。
問題点(けっ)
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全編に渡ってマンネリ感漂う作業ゲーぶり。
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最初こそわがままシステムが斬新だが、最後まで基本的に代わり映えしないので、戦闘やダンジョン探索は途中で飽きる。
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村や町で頼まれるクエストは基本的に「特定のアイテムを一定数集める」「特定の敵を一定数倒す」「ダンジョン奥のボスを倒す」の3種類だけ。
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ダンジョンにはギミックがほとんどなく、後半になると「ただ敵が無駄に多いだけ」と言うダンジョンが頻発する。
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ダンジョンには目に見えない壁があちこちにあり、広さ以上の複雑さを生み出すのに一役買ってはいるが、その引っ掛かりの多さとエンカウント率の高さによってストレスが溜まることの方が多い。
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食事システムは、最初の地方の安宿に泊り、安い料理をひたすら食べ続けるのがもっとも効率的。
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とにかく面倒な、しかし簡単な作業の末、バランスを崩すほどに強くなれてしまう。
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お金の使い道が少ない。
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基本的に装備品やアイテムの類は店で買わずとも、ダンジョン内の宝箱や敵からドロップするアイテムで十分間に合う。宿屋の利用も無料なため、お金の使いどころは宿屋の食事代くらいしかない。上述のように余ったお金で食事をしてステータスを底上げしまくることで攻略上詰まる場面はほぼ無くなる。
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一応ラストダンジョン攻略時には数十万コイン単位の装備品が店売りされるようになるが、性能的に大したことがないばかりかそれと同等クラスの装備品がラストダンジョンで宝箱から普通に手に入る。そうでなくともその分のお金でステータスを底上げした方が良いのは言うまでもない。
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ボリューム不足。20時間程度でクリアできてしまい、やりこみ要素やクリア後のお楽しみ等もほとんど存在しない。
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戦闘に加わるパーティがアンジェラとミミックスライムの2人だけとやや寂しい。
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そのミミックスライムも、序盤こそアンジェラよりも頼りになるが、中盤以降は決定力不足に陥り、最終的には補助役に納まってしまう。
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モンスター辞典、アイテム辞典などがあるが、取り返しのつかない要素がかなり多い(特にアイテム)。集める楽しみも特典もないのでモチベーションにはなりにくい。
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最後の冒険場所である「カオスフィールド」に入ると最早クリアしても戻ることができない。さらにエンディング後にもセーブでき、セーブしてしまうともうエンディングを見る事しか出来ない。
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このため、セーブデータを別に用意しておかないとそれ以前の要素は一切取り返しがつかなくなる。特に食事については上述の通り最初のエリアの宿屋で行うのがもっとも効率が良く、カオスフィールドの宿屋では高額な上に効率の悪い料理しか入手できないため攻略にあたって大幅な不利を被ることになる。一応最後の町に入る前にはそれらしき警告は出るが、不親切ではある。
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なおこの最後の冒険場所以外でも、全ての町で初見のエリアに入るとその町のクエストを攻略するまでは全体マップに出られなくなる。基本的に必要なものは全て攻略中の町で揃うので詰むことはないが、上述の食事の効率を考えると常に気を遣うことにはなる。
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究極の魔法が微妙
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あればラスボス戦で使うかどうかくらいで、そもそもゲームの難易度が低い本作ではなくてもなんとかなってしまう。
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終盤にまったく同じ効果をもつ消費アイテムが店で購入可能になってしまうのも悲しい。この魔法はとあるキャラが自分の力を代償にアンジェラに授けてくれたものなのだが……無駄死にか。
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終始お気楽で明るい世界観の『あたまわる』で、ここだけはちょっと寂しいシーンになる。最後の最後で少しフォローが入るのが救いか。
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アンジェラの可愛さがほぼ全てなので、彼女に馴染めないとただの凡ゲー・クソゲーになる。
総評よ☆
独特な個性とゲームデザインで手に取るまでは躊躇するものの、実際に遊んでみることで初めて良さがわかってくるタイプのゲーム。
基本的にマンネリ感漂う作業ゲーであり、わがままシステムも斬新ではあるがバリエーションが少ないため、単体のゲームとしては欠点が多い。
しかし、それを補って余りある程にキャラクターに魅力が溢れており、主人公・アンジェラの可愛さに惹かれたプレイヤーは少なくない。
秀逸なテキストを読む為に、作業ゲーと分かっていながらプレイしたくなる魅力がある、そんなゲームとなっている。
余談ちょうだい☆
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DS版とPSP版はパッケージが全く異なり、前者はアンジェラの表情がいかにもわがままお嬢様な感じだが、後者は気高さを残しつつもマイルドになった。
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SIMPLEシリーズのケータイ向けシリーズ、SIMPLEシリーズDXにおいて同名のタイトルが存在している。525円(税5%込)。
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なお、システムは本作のわがままシステムやターンバトルを『クロニクルオブダンジョンメーカー』シリーズとくっつけたような感じ(ダンジョンを自分で作る)である。
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実は続編とも言えるスマホ向けアプリ『爆ムズパズル ~世界はあたしでまわってる~』がリリースされている。こちらは無料でできるのでぜひ。
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ボイス付き+時間帯で変わるタイトル画面セリフ(各時間複数セリフあり)、ステージクリアで読める4コマ等かなり豪華な造り。
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ただし現在はApp StoreやGoogle Playでの配信が終了している。APKPureなどで探せばダウンロード可能だが自己責任で。
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この作品に限らず、GAEのゲームはキャラクターの魅力が強い物が多い。例えばPSPの『注文しようぜ!俺たちの世界』や、3DSの『びっくり!とびだす!魔法のペン』などでも、イキイキと動くキャラクター達を見ることができる。
最終更新:2023年11月16日 12:42