戦国絵札遊戯 不如帰-HOTOTOGISU-乱
【せんごくえふだゆうぎ ほととぎす らん】
ジャンル
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カードゲーム
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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発売元
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アイレムソフトウェアエンジニアリング
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開発元
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イングローブ
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発売日
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2008年11月13日
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定価
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4,800円(税別)
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判定
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なし
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ポイント
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トレーディングカードゲームとしては佳作 コンピュータートレーディングカードゲームとしては駄作 「あのゲームが失敗した理由」に掲載
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概要
戦国時代を舞台としたトレーディングカードゲーム。『マジック・ザ・ギャザリング』(以下MTG)日本王者がルール作成に関わっている。また、多数のプロイラストレーター参加によるオリジナルイラストも売り。
タイトルはアイレムがファミコン向けに過去に発売した戦国SLGから取られているが、戦国時代を舞台にしていること以外は本作と全く接点がない。アイレムの作品は根強いファンを持っていたものの、内容が違い過ぎることに反発を受けてか、こちらの作品の主な購買層とはならなかった。
評価点
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トレーディングカードゲームとしての骨子はしっかりしている。
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単純に相手の総大将を倒す以外に勝つ手段があり、それに対するデッキも構築可能である。
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魔法カード(インスタントやソーサリー)に類するカードも豊富で、結構使い勝手はよい。
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一方で、MTGが手本としたとするコズミック・エンカウンターシステム、つまり「カードの能力が本来のルールを超越する」原則が上手く理解されなかったと制作者は自己評価している。
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超豪華人気イラストレーター陣が手がける、美麗な武将カード。
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『ウィザードリィ』の末弥純を筆頭に、三国志大戦等でお馴染みの風間雷太、音楽ナスカ、陸原一樹、戸橋ことみ、RARE ENGINE。本家MTGでもイラストを手がけた一徳氏。さらに戦国武将系のムックや雑誌で馴染みの仙田聡。期待されるイラストの需要に沿って寺田克也(渋い方面担当)、藤真拓哉(萌え担当)も起用。追加ダウンロードコンテンツ(無料)ではF.S氏が書いた女版上杉謙信なんてのもある。
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基本的にイラストレーターにデザインをある程度委任しているため、中にはオリジナリティあふれるモノも。ライダースーツに身を包んだ風魔小太郎とか、ゴーグルをした山内一豊とか、「古銭ビキニ」という新ジャンルの急先鋒になった井伊直虎とか。おっぱい星人を満足させる腰元もいっぱいいる。
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これらはイラストビューでちょうどPSPの画面の大きさ(ゲーム使用中より大きく)で表示される。実際「このサイズでカードを見る」ことからPSPというハードを選んだという。この面は大正解である。
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戦国時代をテーマにする他作品(『戦国無双』『戦国BASARA』『戦国IXA』『戦国大戦』など)ではあまり取り上げられないマイナーな大名・武将も収録されている事も。
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もっとも肝心のゲーム内容の難から、攻略本が画集扱い(実際、大半のページが画像付きのカード解説である。)になってしまうのは褒めるべきか否か。
問題点
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シングルプレイによるストーリーモードをクリアすることでカードを増やすシステムだが、対COM戦は面白くない。
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全体的に頭が宜しくなく、単調になりがち。一方で、高コスト武将が得意な立地に引きこもると手が付けられなくなることが。
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一応、金銭を消費することで相手のデッキを「偵察」して、そのカードを入手可能な状態に出来る(1枚ごとに金かかる)……のだが、正直まだるっこしい。というか、試合が終わると相手が使ったカードを購入可能になるため、さっさと勝った方が早い。
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ゲームのシステム自体が地味。
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フィールドが狭い(縦5マス横5マス)為、戦術の幅が限られる。
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高コストの札をメインにした力押しのみでほぼ押し切れる。
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伝令(いわゆる装備する魔法カード類)の装備が面倒。「マスを跨いで装備する」ことをしないため、武将が複数並んでいる列の一番前の武将に装備させようとすると、一番後ろの武将に装備される。
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一部カードの効果がわかりにくい。とくに『酒乱の悪癖』の解説文は、直感的に書かれているとは言い難い。
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基本的にデッキを練るところに力が注がれる。一ターンに武将を一体しか動かせないため、相手の行動の読み合いという、将棋チックで地味な戦略眼が必要。また、MTGと違って手札領域と戦場以外のゾーンが存在せず、別な領域を互いに移動させることによって成立させるコンボなどが出来ない。
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やってみると分かるが、兎に角地味。
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マイナーな大名は仕方ないにしろある程度知名度のある大名の家臣の人選に疑問を感じざるを得ない大名がある。
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全般
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伊達政宗・武田勝頼・上杉景勝などれっきとした大名の一門を在野武将にしたのはどうなんだ。特に伊達政宗は伊達家の代表的存在なのに。
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南部家
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大名がなぜか南部晴政ではなく南部信直。普通は前者だろうに…
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本願寺家
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「みんなお坊さんしかいない」って事で在野武将になっている。本願寺勢力にはちゃんと武家勢力も傘下にいるし、支配領域もちゃんと存在するわけで。
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朝倉家
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家臣が朝倉宗滴や朝倉景健など本来の家臣を差し置いて史実ではほとんど従えていなかった明智光秀。
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三好家
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長宗我部家
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家臣が香宗我部親泰や長宗我部信親ではなくややマイナーであろう吉良親貞と福留親政。
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そのくせ知名度のある大名の家臣は碌に揃ってないにもかかわらず、マイナーな大名の家臣は無難な人選だったりする。
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はっきり言ってシナリオがお粗末。
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大名ごとの扱いの差が激しすぎる。中にはろくに当該人物を調べてないようなものもある。
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史実どおりならば史実どおり、仮想ならば仮想で統一すべきなのだが。
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どう見ても投げっぱなしな終わり方に見えるものがちらほら存在する。
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全5戦勝ち抜いても最後は死亡で終わったり、史実では小領主どまりの人物が天下を取ったりばらつきがひどい。
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天下取り設定のシナリオではなぜか最後が脈絡もなく関が原。なぜそうなるのかがまったく説明されていない。
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こんなのを全国の大名ごとにやるのは、勇気と時間と手間と労力がいる。
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戦国時代の話に詳しくない人間でも筋立ての仕方がおかしいと分かるレベルである。
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ナレーションにて誤読がやたらに多い。ベテラン声優なのに。
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既にデッキがある状態ですらプレイ開始まで時間がかかるテンポの悪さ。
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トレーディングカードゲームらしさは出ているが家庭用ゲームとしては問題。
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対人対戦はなかなか面白いという評価
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しかし、無線LANによるアドホックモードでの対戦のみ。近場に同じゲームを持っている人間がいなければ意味がない。
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売り上げが悲惨なことになっていたため、どの道相手探しは厳しくはある。
総評
ファミ通の特集「あのゲームが失敗した理由」に取り上げられたが、クソゲーとして断言し切れるかは微妙な出来だった。
評価点でかかれているようにプレイヤーが感じる実際の問題と製作者の認識が大きくずれている。
全体的に見ると遊べない部分はないし致命的なバグを抱えておらずむしろ、どうしてこのタイトルで出したと言いたくなるゲーム。
もう少しコンピューターゲームとしての視点で練りこまれていればという代物である。
余談
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ファミコン初期の同名作品にはいまだに根強いファンがいるため続編だと思っていたファンの反発を招いた。
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なお、そちらのほうは『戦国Spirits』というタイトルで当時のスタッフによる続編が出た。アイレムではないが。
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しかし、その結果出た作品はまごう事なきクソゲーであったためファンを絶望させた。
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本作には当時の『不如帰』スタッフは全く関わっていない。
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ファミ通の記事ではどうも作品を理解されなかった。という感じで問題点を真摯に考察しようとしていない。
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2010年9月9日に続編として『戦国絵札遊戯 不如帰 大乱』が発売された。
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本作の問題点を一部解消しようとしたところはあるものの、それゆえにかえって対COM戦は酷い出来になってしまっている。
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追加のDL購入カードがアンロック方式であり、課金しなければナンバリングカードをコンプリートできない仕様が問題視された。
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しかも課金していなくてもその一部のカードをCOMは普通に使ってくる。その中には戦闘開始時に相手の兵力を下げるかなり強力な永続仕様可能カードも含まれている。
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ただし、前作に比べてロードが短くなり操作は快適になった。また発売後のアップデートによりバグの修正や一部強力なカードに下方修正が施され、インフラストラクチャーモードの導入と合わせてより対人戦を楽しめる環境に仕上がっている。
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初期段階ではマシンが落ちるレベルのバグが山積みのため、アップデートは必ず行わないといけないが。
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発売に際し不如帰との混合サントラが発売されている。
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その後、2018年4月になってアイレムのゲーム部門スタッフが独立したグランゼーラから新作『不如帰 大乱 -1553 竜虎相搏つ-』(Switch)が配信開始された。
最終更新:2024年07月04日 11:31