首都高バトル01

【しゅとこうばとるぜろわん】

ジャンル レースゲーム
対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売・開発元 元気
発売日 2003年7月24日
定価 7,140円(税5%込)
プレイ人数 1~2人
レーティング CERO:全年齢対象
周辺機器 GT-FORCE対応
廉価版 PlayStation 2 the Best
2004年9月16日/2,800円(税5%込)
判定 良作
ポイント 新エリア「大阪」「名古屋」登場
完全に一新された内容
レーザー計測を駆使したコース造形
リアル路線に変革した挙動
非常に高い自由度を誇るカスタマイズ
ボス戦の凶悪な難易度
シリーズ一の大ボリューム
一新した故に以後も引き摺る弊害も
首都高バトルシリーズ


概要

『首都高バトル』シリーズの1つであり、『首都高バトル0』の続編にあたる。
プレイヤーは首都高などを走り、同じく走っているライバル達を倒していくことでエリア完全制覇を目指す。

基本的な進行やシステムについては『首都高バトル(DC)』の記事を参照のこと。
前作から約2年の年月を経てあらゆる面でパワーアップが図られている。
今作で取り入れられた様々な要素は後の『首都高バトル』シリーズや同社の別のレースゲームに大きく影響を与え、元気のレースゲームについて語られる時には今もなお話題に挙がることが多い。


特徴

走行エリアの大幅な拡張

  • 首都高バトル』の名を持ちながら、大阪名古屋も走行できるようになった。
    • 大阪エリアでは阪神高速道路*1を、名古屋エリアでは名古屋高速道路*2と東名阪自動車道*3をそれぞれ走ることができる。構造こそ単純だが、おまけとは到底言えない出来栄え。
    • ちなみに大阪エリアでは一般道を走る区間がわずかながら存在し、信号機やコンビニらしき建物など下道らしい風景の中を走り抜けていくこととなる。
  • 首都高エリアは八重洲線が廃止されてしまったものの、従来のコースに加え横羽線・湾岸線に接続する横浜環状線が新たに加わり、結果的にボリュームアップされている。
  • もちろんこれまで通り(各地域ごとの)コースはシームレスで全域を走ることができる。バトル開始は任意のためその気になればドライブゲームとして遊べなくもない。
  • コースを作製するにあたって全エリアで航空写真、レーザー計測によるデータが駆使され、勾配やカーブの半径などを含めたコースの造形が実際の道路にかなり忠実になった。
    • 路面のうねりや細かなギャップも増えており、ハードなチューニングを施したマシン程、予期せぬ荷重喪失に注意しなければならない。車体と道幅とのサイズ比も見直されており、車と車の合間を縫って走るということが難しくなっている。

実在車両の収録

  • 本作より、元気製のレースゲームも正式に各メーカーからライセンスを取得して実車を収録するようになった。トヨタ、日産といった国内メーカーはもちろん、メルセデス・ベンツやフォードといった海外メーカーの車種も登場する。
    • またホイールも実在メーカーの協力を得て実際のデザインのホイールへ変更できるように。エアロも明言こそされていないものの、わかる人にはパッと見でどこのショップのものか分かるようなデザインが増えた。
    • 下手にマシンの見た目を誤魔化す必要が無くなったため、これまで以上に没入感が得られる一方、これによって弊害も発生してしまった。詳しくは後述。

全体的な挙動やゲームシステムの調整

  • 内外共に車を取り巻く挙動が新たに作り直され、全体的によりリアル方面を向いた挙動になった。
  • 車両の動きはより重くシビアなものとなり、方向性は『グランツーリスモ』シリーズに近いものとなっている。路面をグリップする感覚や下り坂で車体が浮くような感覚は現実で得られるものに一層近付いており、相対的に難易度は上がった。
  • 前作に存在した「TRIPメーターの距離に応じて性能がダウンする」という仕様は、水温計・油温計という形で視覚化、再調整が施された。
    • 水温・油温はアクセルを踏んでいる時間に応じて上昇、ある程度の温度になると明確にエンジン性能が下がり始める。特に後者は車の挙動にも悪影響を及ぼす。
    • この時、高温になりすぎるとオーバーヒートしマフラーから白煙が噴き出すが、そのまま走り続けてもエンジンブロー等のマシントラブルが起こる事は無い。
      • 冷却系とエンジンのバランスにもよるが、ターボ車でスクランブルブースト使用中、エンジンを高回転域で回している時の温度上昇が著しい。また、バトル中はフリーラン時と比べ、同じような乗り方でも温度が上昇しやすく、かつ低下しづらくなる。
    • 同様にして、TRIPメーターに応じたタイヤグリップの劣化も前作に引き続き存在。実車とは異なり、タイヤは最大のグリップを発揮した状態からスタートし、距離に応じて劣化していく。
    • タイヤのグレードにもよるが、おおよそ走行距離30km前半までは高いグリップ力を維持するが、40kmを超えたあたりからマシンがふらつき出し、50kmを超えると走行に支障をきたすレベルの強いオーバーステアに悩まされるようになる。
  • 対外的な要素として天候システムが導入され、雨や雪の日にも走れるようになった。
    • 当然悪天候の日はグリップ力が落ちスリップしやすくなっているので注意して走らなくてはならないが、先述の水温・油温が上がりにくくなるといったメリットもある。
    • ちなみに、雪やみぞれの場合も見た目以外は雨の日と同じで、積もることはない。代わりに雨の日は「豪雨」が混じることがあり、雨や稲光による視界のさらなる悪化や一層グリップ力が低下することがある。
  • 新たな要素として、ピットエリアが登場。ピットエリアは実際の高速道路でICやSA、JCTなどのある位置に設けられており、フリーラン中に進行分岐と同じ要領で自発的に入るようになっている。
    • パーツの付け替えこそできないものの、セッティングの調整ができるほか、上記の水温・油温がリセットされる効果もある。ただし、ピットとは言っても「タイヤを履き替えて劣化をリセットする」ことはできず、クリーンコンディションを維持し続けるのは不可能。
    • また、ピットを出る際にルート変更*4を行えるようになった。さらにピットエリアに入ることでコース上のライバルが一新され、まだ倒していないライバルが近くに再配置されるため、その目的で入るのもアリ。
  • バトルの導入にも手が入っており、SPバトルで2人を同時に相手にしたり、勝ったと思いきや連戦で戦う場面があったりとバリエーションに富んだものになっている。
    • しかし、実際に使用した場面や詳細なルールの部分のせいで不評を買ってしまっている。これも詳しくは後述する。

評価点

シリーズ最大級のボリューム

  • 最大の要因はなんといっても大阪と名古屋エリアの追加だろう。ただ走れる場所が増えただけではなく、それによって各エリアにライバルが新たに登場、ストーリーにも絡んでくるなど、新規要素が上手く活用されている。
    • 前作で登場した一部のライバル達は首都高エリアから他のエリアに拠点を移して活動している。
  • 前作の『首都高バトル0』から走行エリアの総延長は180kmから340kmに、ライバル数も400人から600人に増え、これらはいずれもシリーズ最大の数字を誇る。
  • シリーズ最大のボリュームを誇りながらコースの再現度や車のモデリングの質は、先述のレーザー計測やメーカー公認などの影響か、これまでよりも上昇している。
    • 特にコースの再現度は別格で、実際に運転練習になるとの声も上がるほど精巧に再現されている。

カスタマイズ要素が大幅に強化された

  • 最たるものがエアロパーツ。前作『0』ではデザインごとに性能差があり、自分好みの車でプレイし続けることが難しかったが、本作はデザインにかかわらずパーツすべての性能が一律で、好みで改造しやすくなっている。
    • エアロパーツを購入する際には素材を選ぶ事も可能。素材は「FRP」「ウレタン or C-FRP*5」「ドライカーボン」の3種類で、順にパーツの値段が高くなっていくが、その分パーツ重量が軽くなる。
    • ドライカーボンを選択すれば、元々の車重よりも軽くすることもできるため、とりあえず見た目優先でFRPを装備するか、実用性も加味してカーボンを選ぶか、お財布と相談しながら決めることができる。
    • ドライカーボン素材は着色の有無も選択できる。着色なしを選択するとわずかながら更に軽くなるが、色が黒一色固定となり後述するペイント機能によるデザインや車体カラーが反映されなくなる*6
  • 共通の要素としてはボディの光反射率やウィンドウの色と透過率、ナンバープレートの位置(取り外しも可能)、ウィンカーやフロントライト・ブレーキランプの色など前作よりカスタマイズできる箇所が大幅に増加している。
    • セッティングにおいても、キャンバーやトー、リアスポイラーによるダウンフォースの強さなど設定できる項目が増え、より自分好みのセッティングに詰めることが可能になった。
    • また、今作では遂にペイント機能が搭載された。自分だけのペイントカーや痛車を作れるようになり、動画サイトなどには凝ったペイントの車での走行動画や愛車紹介動画が投稿されている。
  • より実用的なカスタム要素として、走行距離が2000kmに達した車はエンジン換装が可能になる。NAとターボ、レシプロとロータリーを積み替えることも自由自在。
    • 換装できるエンジンはいずれもフルチューン仕様のコンプリートエンジンであり、理論上はどんな車両でも実戦に堪えうるだけの性能を得られる。とはいえ、もともとパワーの出る車種の場合は、かえって性能が落ちる組み合わせも出てくる。
    • 搭載できるエンジンに車種による制限はないため、「V8エンジン搭載の軽自動車」のように現実ではあり得ないようなネタ車両を作ることも可能。

上手く調和のとれた操作バランス

  • 中途半端と言えばそれまでだが、本作の操作性自体は、操縦難度の塩梅が良い具合に収まっており、「高速道路」というステージに良く合った感覚を持っている。
    • 歴代シリーズの様に爽快感重視ではないが、その分、ハイパワーなマシンを自分の腕でねじ伏せ、足りない所は足回りのセッティングを煮詰めて手懐けていく楽しみを十二分に感じられる。
    • 最初の内はまるで曲がらなかったマシンがセッティングを調整し、腕を磨いていく事で思い通りのラインに乗るようになった時の満足感はひとしお。愛車への愛着もわきやすい。
    • セッティングの内容も、ある程度分かれつつもわかりやすさを重視しており、専門的な言い回しと効果を、かみ砕いた言い回しでキッチリ分けて説明してくれるため、あまり車に詳しくない人でもセットを出すのは難しくない。

相も変わらず個性にあふれるライバル達

  • シリーズお馴染みの皆勤賞キャラや新登場のライバルはもちろんのこと、ゲーム・車雑誌のメンバーが集まったチームや、当時元気がスポンサードについていた現役レーサーなども登場する*7*8
    • ライバルを倒すとそのライバルの情報を見られるようになるが、その情報からはライバルを取り巻く様々な環境や心境が見えてくる。
    • 前作から引き続き登場しているライバル達も、月日が経って身を置く状況が変わっていることが分かり、従来からのプレイヤーをニヤリとさせる。無論、シリーズ未経験でも、その膨大な設定を眺めているだけで楽しめる。
    • ライバルを倒す前にも一部の情報を見ることができるが、そのライバルを倒すのに重要なヒントが書かれている場合もあり、決して単なるオマケ要素というわけではない。

「KEEP GARAGE」の復活

  • 車両・所持金・ショップの開放状況を引継いで2周目をプレイできるモード。DC版『2』以来の実装となる。
    • さらに本作のKEEP GARAGEは、無条件でエンジン換装が可能になる特典付きである。
    • 解放条件はやや厳しいものの、解放できる条件を鑑みれば資金もたっぷりな上、序盤から強力な車を使ってラスボスの設定さながらの無双プレイで進めていくということも可能。

賛否両論点

全体的に様変わりし過ぎたシステム

  • グラフィック・システム・BGMなど、世界観やライバル以外のほぼ全てが、前作までと比べて大きく様変わりした。設定上は合法レースになったもののストーリーはむしろ前作よりもアンダーグラウンドな雰囲気を押し出している。
    • 新しい…というよりも、これ以降の作風から言って、「元気がやりたかった本来の『首都高バトル』」を生み出すことには成功したが、大きく変わってしまった雰囲気を受け入れがたい人もいる。
    • 同様にして、本作ではボス戦において派手な演出がつくようになったため、これに拒絶反応を示す意見もチラホラ。
      • 「ライバルの車からオーラが出る」というオーソドックスな物から、相手によっては「画面にエフェクトがかかる」、雨天時にバトルすると「血の雨が降る」など。
    • 雰囲気以外にも、前作までのゲームとしての気持ち良さが追求されていた挙動からリアル指向の挙動へ方向転換したことについて「首都高バトルに挙動のリアルさはそこまで求められているのか?」と評する声もある。
    • BGMは本作ではエリアごとに決められており、前作までのようにランダムに流れるわけではないが、いずれもクオリティは高く、エリアごとに音楽ジャンルが異なるというこだわりもある。
      • 首都高ならハードロック系、名古屋ならユーロビート/ダンスミュージック系、阪神ならパンクロック系といった感じ。そしてこれらはフリー走行時は勿論、チーム戦ならザコライバルやリーダー、そしてワンダラー、果てはリプレイ時にまでそれぞれ異なるBGMが用意されている。
      • ボス戦はどのエリアでも同じBGMであるが、オーケストラ調であり良い感じに緊迫感をあおる。
  • レビューなどで「異様に車が滑る」という意見も散見される。基本的にかなりアンダーステア気味な本作だが、400ps以上になると軽いパワースライドが発生しやすいこと、路面のギャップで瞬間的にグリップを失うことなどが原因と思われる。
    • もっとも、現実における400psでのパワースライドは何らおかしなことではなく、これをどう抑え込むかが、ドライバーとチューナーの腕の見せどころではある。
    • 加えて、本作における400psはミドルパワー程度のものであり、ストーリー後半のライバルはこれくらいのパワーが普通になる。挙動が実車寄りになったが故のことだろう。
      • もともと、『首都高バトル』シリーズのFF車は「曲がらない・加速が鈍い」の短所が強調されていたが、リアル寄りの挙動となった弊害でその短所がさらに強烈に出るようになっている。

SPバトルの仕様変更

  • SPバトル時に車1台分程度しか距離が開いていなかったり、壁に車を軽く擦る程度ならSPが減らなくなった。
    • SPがほぼ『0』のときでも同様であり、そこから勝敗をつけるには大きく差を開けるか車を強くぶつけるかなど、決定的なアクションが必要となった。
      • 前作ではちょっとでも前に出ていればいずれ相手のSPが0になり勝利することが出来たが、今作では先行した後はブロックを徹底し、粘り勝ちするという戦法では簡単に勝てないようになった。
    • 自分相手関係なく、土壇場からでも逆転できる可能性は上がっているが、今作に限らず『首都高バトル』シリーズが、自車とライバル車のスペック差が大きくある程度ブロックを駆使していかないと勝つのが厳しいというゲームバランスであるため、「どんな手を使ってでも相手のSPを先に0にすれば勝ちは勝ち」という理念の下行われるブロック戦法とは相性が悪かった。
    • 接触時のSP減少をオフにすることは不可能であり、バトル中は常にライバルの車だけでなく壁やサポートカーにも注意しなければならない。特に本作は主観視点の見た目と車の当たり判定に若干差異があるため、サポートカーのギリギリを抜けるのは危険。
  • 「WANDERER」の出現条件について
    • WANDERERとは、特定の条件を満たさないとバトルできないライバル。前作までは条件を満たすためにかなりの手間を食うことが多く、評判が悪かった。
    • 今作では前作のように所持金3億CPと言った条件が緩和*9されるなどして大きく改善されたものの、「首都高エリアの全てのピットエリアに入ると出現」「阪神エリアを20日以上連続で走ると出現」「経過日数がゾロ目の時にのみ出現(すなわち111日目以降はチャンスを逃すと111日毎にしか挑戦できない)」など、依然として条件が厳しいライバルはいる。
    • また、「経過日数に3のつく日にのみ出現し、日をまたいで3回挑戦し直さないとバトルできない*10」「字光式ナンバーを装備すると出現*11」「経過日数の数字を一桁ずつにばらして足し、合計の下一桁が9になる日に出現」「サウンドコンフィングのBGMボリューム最大」といった、作中のヒントだけでは条件がまるで分からないライバルがいるためか前作よりもある意味タチが悪い。

問題点

車両ライセンス化の悪影響

  • 選択できる車種が大幅に減少。前作の134車種に対し、今作は77車種しか登場しない(いずれもカスタムカーを除く)。しかも、ホンダ車が一切収録されていない。
    • 首都高をサーキットとして開放されたという設定にして、コース中を走る一般車を「OFFICIAL CAR」と書かれた黄色いバン一種類のみにしたのも各車メーカーから使用許可を得る為の苦肉の策である。
    • 一方、この設定を積極的にオープンにしていなかったために、結局ホンダ車の収録も叶わないという、中途半端な結果も招いてしまった。
    • そのような代償もあって、一般の道でレースバトルをしているという感じが前作までに比べて薄れてしまった。賛否両論点で述べられた「大きく変わった雰囲気」の主な要因の1つでもある。
    • エアロパーツの選択肢が前作と比べかなり少なく、ライセンスの厳しい外国車を中心に変更不可能な車種も目立つ。ホイールについても実在メーカーの物となった故か「表面処理・色の変更」が不可能になっている。
      • ゲンバラ*12車に至ってはチューニングどころか、ペイントなどのドレスアップも不可能。
    • さらに、本作は「ライバルの人数が増えたのに車両が減っている」ため、前述したホイールやエアロパーツの問題と併せ「どのライバルも似たような車に乗っている」という批判も上がっている。
      • ただし、あくまで前作より劣るというだけで、この時代のカスタマイズ機能としてはこれでもまだ優秀な方である。同じ元気の作品でも、同時期にリリースされた『街道バトル』シリーズではフルエアロ1種のみ、部位ごとの取捨選択もできないという有様である。
+ 他にはこのような点も、一部ユーザーからは権利問題ではないかと言われる。
  • 『湾岸MIDNIGHT』のパロディである「???」「ZERO」や、『頭文字D』のパロディキャラ「イナズマシフトの拓也」に加え、『よろしくメカドック』のオマージュとされる「白いカリスマ」といったライバルが本作では削除、あるいは車種変更の憂き目に遭っている。
    • 「???」については「『湾岸ミッドナイト』のゲームも作れたしもういいだろう、というスタッフの意見があった」と攻略本のインタビューで語られており、権利に関する話題は一切出てきていない。
    • また、上に挙げたライバル以外にもパロディありきのライバルは存在しており*13権利問題という指摘自体が的外れ、とも取れる。本当に権利問題であれば、本シリーズはとっくに消滅しているだろう。
      • なお、後発のPSP版および『X』において「???」は愛車ともども復活。開発方針の紆余曲折によるものか、ユーザーの要望によるものかは不明である。
      • また「白いカリスマ」についても後発作で再登場を果たしており、「イナズマシフトの拓也」がAE86以外の車種に乗ったのも本作限りである。

CPUの挙動や強さがちぐはぐ

  • 簡単に言うと「普段の操作には雑な部分もありそこまで強くはないが、プレイヤーに距離を離されると補正がかかって物凄い速度で迫ってくる」といった感じ。
    • 「カーブではアウトに大きく膨らみ、アウト側にサポートカーがいてもイン側へ入ろうとせずにそのまま追突する」「分岐点で先行しているプレイヤーが進んだ方にCPU車がついていこうとしない*14」など、前作まででは起こりにくかった現象が今作では異様に起こりやすくなっている。
      • 後者については違う道にCPUを進ませないために、分岐点で急な操作を要求しないように自然に走れば大体解消できるが、それでも無視して別分岐へ突っ込むことがある。
      • また、分岐点では一々後続車に気を使う必要があるなど、そもそも先行車が選択権を持つというアドバンテージがまるで感じられないという残念な指摘も多数。
  • 一方、一旦プレイヤーに差を大きく広げられると、強烈なブーストがかかり凄まじい勢いでプレイヤーのすぐ後ろにまで迫る。今までのシリーズでもブースト補正はあったが今作はより強力になっている。
    • 自車のスペックが相手を大きく上回っていてもこの仕様によって差を縮められ、緊張感が損なわれないようにされているのだが、あまりに露骨な補正がプレイヤーを萎えさせるという意見も多い。プレイヤーに根性補正などはないだけに猶更である。
  • これらを総合するとライバルがさも当たり前のように壁走りをし、抜かされると凄まじいブーストで追ってくるが、プレイヤーに同様の要素はなく、ライバルの理不尽なオーバーテイク、意味不明な自爆がとてつもなく多い。
    • ボス戦に関してはまともな競争で決着する方が少なく、大概は「早々に相手がカッ飛んでいく → 引き離し掛けるもコーナーで盛大に自爆 → プレイヤーが追い越して引き離す → 謎の加速で一気に追い上げるがSPゲージが切れる」という何とも間の抜けた結末を迎えることが多い。
    • この仕様により、ライバルの挙動にある程度個性が見られた前作と違い、今作ではただストレートが速い遅いかの差で、無個性化してしまった。

第2部の各エリアのボスの難易度があまりにも高すぎる

  • どのエリアのラスボスも車のスペックが高く普通に倒すのも難しいのに、阪神エリアと名古屋エリアでは「1vs2バトル」や「連続バトル」を要求され、高難易度に拍車がかかっている。
    • 「1vs2バトル」は、その名の通り2人のライバルと同時にバトルするもの。2人を一度に倒さなければ勝利したことにはならない*15
    • ライバルによっては「最初は通常の1vs1バトルだが、ライバルのSPが一定以上削られるともう1人が現れて仕切りなおし」となり、このときライバルのSPは完全に回復するが、プレイヤーのSPは少ししか回復しない。
      • 勝負を仕掛けた時点で「1vs2バトル」に突入する同時式は、上手く行けば1戦分の負担で2人を倒せるとも見れるが、乱入式「1vs2バトル」だと2戦分の負担がのしかかる。
    • 「連続バトル」は、一度のバトルで複数人のライバルを倒さなければならない。ライバルのSPを削り切るとバトル開始演出が入り、次のライバルとバトル…という流れを繰り返し、既定の人数を倒した時点で初めて勝利となる。
    • 最後のライバルを倒せなければまた1人目からやり直しである。しかも、対戦相手が変わってもプレイヤーのSPは半分までしか回復しない。
    • 名古屋エリアでは3連続バトルが、阪神エリアに至っては1vs2バトル(乱入式)と3連続バトルが待ち受ける。なお、負け数0に拘る場合、どちらのエリアも6人のライバルを一度に倒さなければならない*16もちろんタイヤの劣化や水温・油温上昇も引き継いだまま。先に進めば進むほど、マシンコンディションに悩まされることになる。
    • 首都高エリアは上記の仕様こそ無いが、何人ものライバルが連続してバトルを挑んで来る。こちらは通常のバトルと同様、負けたらそのライバルからやり直せばよいだけだが、負けたくない場合は最大5連戦しなければならない。
      • 前作でも連戦になるような場面はあったのだが、対戦が終わった後に直接ガレージに戻れたためにノーペナルティで連戦を避けられ、万全の状態で挑むことができた。
      • 今作では直接ガレージに戻ることができず、連戦を回避するにはリタイヤするなどしてわざと負けるか、わざと別の分岐に進入してドローするしかない*17
    • プレイヤーが一方的に不利になるようなシステムが使われている上、名古屋も阪神もそれを増長させるダラダラと続く直線が主体のステージとなっていることで、異常なまでに難易度が上がっている。
    • このため、コーナーが多く、1vs2バトルも連続バトルも起きない首都高エリアのボスに対し「(相対的に)簡単だった」という感想を持つ人も少なくない。

最高速の伸びが不自然に止まる車種がある

  • 代表的な車種は「日産 スカイラインGT-R(R32,R33,R34)」「三菱 GTO」「トヨタ チェイサー」など。
    • ちなみに本作では、上記の仕様とは無関係にスピードリミッターが設定されており、どんな車種にどんなチューニング・セッティングを施しても370㎞/h以上のスピードは出ない。これはライバルについても同様である。

煩雑なガレージの仕様

  • ペイント機能やカスタマイズ機能の強化等で車1台に使うデータのサイズが大きく増えた影響か、ガレージに保有できる車の台数は5台と少ない。5台以上車を保有するには「サブガレージ」を作成する必要がある。
    • ただし、サブガレージを作成しても、追加で保有できるのはたった15台。その上作成するとセーブデータのサイズが1000KB以上も増えてしまう。
    • PS2の純正メモリーカードは容量がたった8MBしかないため、非常に大きな負担となる。また、サブガレージに登録した車を使用するには、いちいちロード・セーブを行いメインガレージの車と入れ替えるという面倒な作業が必要になる。
    • 重大なバグも存在しており、突然サブガレージが読み込み不能となり、中に入れていた車が全て消えてしまうという事例が何件も報告されている。
      • PS2の内蔵時計の同期が取れていない、長時間プレイし続けると読み込み・書き込みに不具合が生じる、メモリーカードを2枚利用してサブガレージを2つ作ると、次のセーブデータのロード時に一発アウトなど…。
      • これも諸説あるが、3時間以上の長時間プレイでは起こる可能性が高いとのこと。

ペイントツールの使い勝手が悪い

  • せっかく追加されたペイントツールだったが、テクスチャの解像度が粗いため、ペイントを綺麗に表現するには技術がいる。また、ツールの操作性そのものの悪さや中途半端な機能から「面倒でほとんど使わなかった」という人もいるだろう。
    • ステッカーを貼る際もこのペイントツールを使って自分で配置を決めることになる*18のだが、プレイヤーに配置のセンスが無いとあまりカッコよくならない上、低めの解像度が災いしデザインが潰れてしまうということも多い。
    • オーバーフェンダーはテクスチャが左右共有なので左右非対称のロゴを入れられないため、レーシングカーのレプリカをペイントするには思わぬ弊害となる。

総評

約2年の月日を経て確かなパワーアップをして『首都高バトル』が帰ってきた。
これまでのシリーズの要素を合わせながら、2つのエリアの追加、グラフィックや挙動の一新など大胆なことにも挑戦した結果は、ユーザーからは概ね高い評価を得て受け入れられている。
今までの『首都高バトル』シリーズの雰囲気からは大きく変わり一部理不尽とも言える要素はあるものの、それでも「意欲作」という評価にとどまらず「シリーズでトップを争う傑作」と呼ぶ声も多い。

なお、本作は各種動画サイトなどで取り上げられることで段々と入手しづらくなっているので、気になるなら早めにプレイしてみるのをお勧めする。


余談

  • 没データとして、いくつか本編には登場しない車種があった。
    • 例えば「プジョー」の「206」と「406」や、「RUF」の「964RCT」など。
    • プジョーに関しては車に関するロゴや説明文まで完成されていた*19のにボツになってしまったのが悔やまれる。
  • また、かつての「東京ゲームショウ2002」に本作のプロトタイプが出展されていたのだが、その時点ではRUFブランドの車種が収録されていたので、製品化されるにあたって何らかの事情で「ゲンバラ」ブランドに変更され、本編に未収録となったのだろう(参照1参照2)。
    • メーカーの変更は仕方ない部分ではあるし、ゲンバラのコンプリートカーも充分に魅力的でカッコイイのだが、「問題点」でも述べたように、カスタマイズが一切できないのは残念な点である。せめてペイント関連のカスタムくらいはできるようにしてほしかったものである。
  • 海外でも『Tokyo Extreme Racer 3』として発売されているが、ローカライズで致命的なミスを生み出してしまった。
    • 海外版では過去作同様、ゲーム内通貨であるCPのレートが1/100になるように変更されているのだが、ワンダラーのうち一定の所持金を要求する者に必要なCPの数値だけが、設定ミスにより日本版基準のままとなっている。
    • これにより日本版より実質100倍のCPを要求されるうえ、その要求額は1/100にされた所持金の保有上限を超えているのでそもそもその額まで貯めることすら不可能。そのワンダラーを倒すことも叶わず、結果ラスボスである「不明」も登場しなくなるので、事実上クリア不可となっている。
      • この問題を回避してなんとかゲームをクリアする為には、チートコードを使用するか有志が作成したパッチを適用する必要があるようだ。

その後の展開

  • 次回作『X』は「首都高」部分の拡張と車内のドレスアップという拘りを見せた一方で、単純な要求技術の向上や車内視点の追加が災いし、使用できるのはカスタムカー含め僅か14車種、湾岸・横羽・横浜環状エリアの削除など、ボリュームに大きな問題を残してしまった。それ以降はコンシューマにおける開発は停止し、スマホ版も知名度が上がらないまま早々に終了。今後の続編はもはや絶望的か、ともいえる状況であった。
  • それから2024年8月、コンシューマ版から数えると約18年ぶりとなる首都高バトルシリーズの新作を、Steam向けに2025年にリリースする事を発表した。(参照)
    • それに伴い、YouTube上の公式アカウントにてティザー映像や、収録予定の車種、そして実際のプレイ動画なども投稿された。同年12月に投稿された動画では、本作『01』のアレンジ音楽が使用されていることも判明している。(参照)
  • 2025年1月23日より早期アクセスを開始。公式曰く「約4か月程度は早期アクセスを通して様々な改善を行い、ゲームの体験を向上させることを計画していく」とのこと。
最終更新:2025年02月28日 10:51

*1 1号環状線、15号堺線、4号湾岸線の区間。

*2 都心環状線、1号楠線、5号万場線の区間。

*3 名古屋西JCT~楠JCTの区間。現在は名古屋第二環状自動車道に名称変更されている。

*4 例えば首都高・新環状線のピットエリアでは右回り(C1外回り方面)・左回り(C1内回り方面)を選択できる。

*5 部位によって素材が異なる。

*6 反射率のみ反映される。

*7 プロレーサーの谷口 信輝氏と織戸 学氏の両名は本人名義で収録されており、それぞれ使用するS15、JZA80は、見た目こそ変わったが2018年現在も両氏の愛車のままである。

*8 ちなみに、両氏の師匠筋にあたり「ドリキン」の愛称で世界的な人気を誇る土屋 圭市氏もパロディキャラが収録されている。土屋氏は最初期の首都高バトルシリーズのアドバイザーだったが、諸事情ありアトラスの『峠MAX』シリーズの方のアドバイザーに就任していた。

*9 今作では最大1億CPの1人のみ。

*10 ただし、バグで何回バトルを仕掛けても拒否されたり、3回会わなくても挑戦を受けてくることがある。

*11 ナンバーのひらがなを「ろ」にすると字光式になるが、そのことに関する説明はゲーム中にはない。

*12 ポルシェのチューニングカーメーカー。他には「RUF」「9ff」などがある。

*13 やはり『頭文字D』のパロディとされる「白銀の貴公子」「コーナリングアーティスト」や、あからさまに『機動戦士ガンダム』をパロディした「紅の悪魔」など。

*14 本シリーズでは先行している車が分岐点で進む道の選択権を持ち、後続の車がその道と違う道へ進んでしまうとドローとなる。

*15 勝敗数の換算は別個に行われている。

*16 阪神エリアは一つのチームのメンバーが次々と勝負を仕掛けてくる。名古屋エリアは「最後のチームのザコ → リーダー → 大ボス → エリアボスのチーム3名と連続バトル」。

*17 リザルト画面のまま放置することで水温と油温は下げられるが、タイヤの劣化は余計に進行する。

*18 前作ではステッカーを選べば自動で配置された。デザインの自作はできないが、フロントガラス上部にはバナー形式のステッカーが貼られるなど、凝ったドレスアップをしてくれた。

*19 特に「406」はエアロパーツまで作られており、某タクシー映画風のものも選べるという作り込みようであった。さすがに「206」は一部モデリングが未完成のままであるが…。