首都高バトル0
【しゅとこうばとるぜろ】
ジャンル
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レースゲーム
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対応機種
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プレイステーション2
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メディア
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DVD-ROM 1枚
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発売・開発元
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元気
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発売日
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2001年3月15日
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定価
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6,800円(税別)
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プレイ人数
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1~2人
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レーティング
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CERO:12才以上対象
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対応周辺機器
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GT-FORCE Microsoft SideWinder Force Feedback Wheel USB
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廉価版
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PlayStation2 the Best
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初版
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2002年6月27日/3,000円(税別)
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再販版
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2005年2月24日/1,714円(税別)
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判定
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良作
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ポイント
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『首都高バトル2』が大部分のベース 一つの集大成的な仕上がり 異例のロングセラー
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首都高バトルシリーズ
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概要
元気の『首都高バトル』シリーズの一つであり、2000年にドリームキャストで発売された『首都高バトル2』の続編にあたる。
タイトルが『0 (ZERO)』なのは、前作発売後に続編のタイトルを社内アンケートで取ったときの意見を採用したことから。攻略本の開発者インタビューで「響きも良く、原点に帰るという意味合いも含めてこのタイトルとなった」と言及されている。
このタイトルが示すように、今作は『2』までの流れを引き継いだ集大成のような仕上がりになっている。
プレイヤーは一人の走り屋となって首都高を走るライバル達をSPバトルで倒していき、首都高完全制覇を目指す。
評価点
バリエーション豊かな収録車種
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収録車種数はシリーズ最大の165車種。前作で収録されていた車種は、すべて今作でも選択可能である。
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新たに今作ではランサーエボリューションVIIや2代目インプレッサ等の2000年以降の最新車の他、A70型スープラやランティス等の旧車、従来は海外版専用だった車が追加。
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一方で前作からモデリングが削除・他年式の流用となった車が極一部で出たが、前作で元ネタの実車とホイールが異なっていた車はより実車風に修正されている。
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最初から内外装と性能の大幅なチューンが施された特殊な車である「カスタムカー」も多数追加され、より個性的な見た目の車で運転する事も可能になった。
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各車両に用意された説明文の内容も充実しており、車両開発の経緯や優先してチューンするべき所(その車両の短所)も分かる。
前作の後に生産終了した車等、極一部の説明文は前作から手直しされているが、殆どのマイナーチェンジ車の説明文がマイナー前モデルとほぼ同じという点は相変わらずである。
多彩なライバル
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本シリーズの売りである個性的なライバルは今作でも健在。
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ゲーム制作に協力したパーツメーカー、実在のチューンメーカーのチームや著名人のライバル等も登場する。
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今作の全てのボスや一部の
WANDERER
(チームに所属しないライバル)は前述のカスタムカーに乗っており、特別な相手であることがより強調されている。
カスタムカーに乗っているライバルを倒すことで、そのカスタムカーが購入可能になる。
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特定のボスやWANDERERが操るカスタムカーは、その強烈な外見に何らかの元ネタがあるものもあり、その手のファンには堪らないだろう。
様々に変化するプレイヤーの通り名
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前作に引き続き、プレイヤーの通り名を判定するB.A.D.(Battle Ability Decision)システムが採用されている。
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プレイスタイルによって様々な通り名が付けられ、影響する要素は勝率や最高速度、リタイア回数や車・壁にぶつけた頻度など非常に多岐にわたる。
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通り名は"前半部分のフレーズ+後半部分のフレーズ"という構成になっており、例えば「悪夢の天使」や「奇蹟のゴースト」のような通り名がつく。
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リタイアばかりするなど悪い走りを続けているとそれを気づかせる単語が並んだり、敵を圧倒するような勝ちを重ねるとプレイヤーを恐れるような呼び名が付く。
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それ以外にも、車とステッカーの特定の組み合わせや特定の条件を満たすことで特殊な通り名になることもある。
バトルを魅力的に演出するリプレイ
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「リプレイ用の視点1つ+走行時と同じ視点」だった前作から、今作ではさらに3つのリプレイ用の視点が加わった。
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前作ではカメラワークのパターンが数種類しかなく、またカメラ切り替えのタイミングも特に工夫されていなかった。
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それに対して今作では地点ごとに専用のカメラワークが設定されていて、カメラワークの使い回しもかなり少なくなった。
また自車を追跡する構図だけではなく、建物をメインに映して自車がその脇を走るという風な構図もあったりと、全ての走行エリアのカメラワークが作り込まれている。
その結果、どこを走っていてもダイナミックなリプレイになるような作りになっている。
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デフォルト視点限定だが、ライバルとの距離が非常に近くなった時に、2台をアップで映すカメラが割り込んで接戦を上手く演出している。
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ただし、その視点になった場所によっては、壁や植え込みで視界を大きくさえぎられることがある。
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上記の通常視点の他に追加されたのは、バンパー視点、自車を様々な角度から映す視点、そして俯瞰視点。
俯瞰視点では速度メーターやアクセル・ブレーキ・ステアリングの入力表示もされる為、自分の走りを分析することができる。
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タイトル画面で放置することで見れるデモ走行でこのリプレイの視点を体験できるので是非一度は見ておきたい。
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『01』以降でも場所に応じた専用のカメラワークは引き続き用意されているが、今作ほどダイナミックなものにはなっていない。
新要素・LPS(Love Power System)
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前作までは「まずは最初に手に入る安くて非力な車をチューニング、資金を貯めて物語の進行とともに大パワーの車を購入してまたチューニング」という流れだった。
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今作でも大まかな流れは同じだが、走行距離が3000kmを越えた車はLPSが発動、その車限定で、すべてのチューニングパーツが購入可能になる。
チューンのメインとなるエンジン・マフラー・ボディチューンの最高レベルは、このLPSを発動しなければ購入できないが、そのぶん効果は非常に大きい。
その他
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BGMは新曲のほか、『首都高バトル』『2』のアレンジを多数収録
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首都高バトルシリーズでは数少ないボーカル曲「Let me go」もアレンジされ収録されている。
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前作をベースに更にリアルになった首都高
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前作では割愛されていた料金所が一部に追加され、コース脇のビルの数やそこに掲示されている広告も追加された。
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路肩に事故を起こした一般車や工事車両が止まっていたりオービスによる速度超過の罰金等、細かいながらも現実味を感じさせる演出が追加された。
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前作までの不評点の解消や利便性を向上させる要素の追加
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前作で多発していた処理落ちは大きく減った。
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前作ではバトル終了時にリプレイが強制的に流れていたが、今作では強制的に流れなくなった。すぐにフリーランなどへと移ることが可能となり、若干ながらテンポが改善した。
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フリーラン中にセッティングを変更できるようになり、セッティングを確かめることが即座にできるようになった。
問題点
前作と変わり映えがしないゲーム内容
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前作『2』からハードが変わり、移植版としての意味合いもあったのか、『2』と似通った部分が多い。
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今作の発売時期は『2』発売から9か月程度しか経っておらず、革新的な要素を取り入れるのは難しかったと思われる。
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首都高の走行エリアは前作と同じ。グラフィックについても、上記の料金所やビルの追加程度で大差はない。
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光の反射の表現などの影響で「前作の方が綺麗に見える」という意見もある。
CPU優位の難易度
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前作同様、ライバル車の走りには強力な補正がかかっており、スペック以上の速さを見せるライバルが当たり前のように登場する。
ブロックを徹底し、ライバルが事故を起こしてようやく勝てる…ということも多く、クリアまでのハードルは高い。
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補正の内容は前作と異なり、"コーナリングが苦手なAIの弱点をストレートの伸びで補う"という仕様になっている。
その為、コーナー勝負がメインの前半は操作技術次第でまだ何とかなるのだが、パワーがものをいう湾岸線・横羽線が解放される後半は厳しい戦いを強いられる。終盤のライバルと湾岸線でバトルしようとすれば、Aクラスの上位車種をLPSチューンしてようやく互角というほど。
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一部のライバルについてはブロックを駆使してくる。幸い、ブロックを使うライバルの多くは同時期に出てくる他のライバルに比べて遅いので、僅かな隙をついて一気に抜き去ってしまえば勝つのは易しめ。
問題だらけのLPS
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非力な車種でも長く乗り続けたいという要望から生まれたシステムだが、その役目を果たせているとはとても言えない。
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LPSチューンは確かに強力なのだが、結局は通常のチューンの延長でしかない。そのため、元々チューンの効果が低い車種ではLPSチューンの効果も知れており、大して攻略の役に立たない場合が多い。
結果として「非力な車をさっさと乗り捨て、できるだけ早く将来性のある車種に買い替える」という傾向が余計に強くなってしまった。
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また、走行距離3000kmという条件も、得られるメリットに対してあまりに厳しすぎる。
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日常的に実車を運転していれば大した数字に思えないかもしれないが、ゲーム内での3000kmという距離は途方もない長さである。
全チームの全メンバーを倒しても、総走行距離が3000Kmに届く事はまず有り得ないと言えば、いかに過酷な条件かお判り頂けるだろう。
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バトル後のデモンストレーション走行でも走行距離が加算されることを利用して、対戦終了後放置して距離を稼ぐという抜け道もあるのだが、それでも手間が掛かることには変わりがないうえ、ゲーム機本体に負担が掛かる手法であり、最悪の場合バグが発生して何もない空間に飛ばされて距離が加算されなくなるようになる。
WANDERERと闘う為の条件が厳しい
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WANDERERは特定の条件を満たしていないと首都高に現れなかったり、現れてもバトルを拒否して戦えないのだが、その条件が厳しいライバルが何人か存在する。
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例を挙げると「総走行距離5000km以上」「所持金3億CP以上」「25台以上車を所有」「ゲーム内日付で365日以上経過」など。
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今作のラスボスはWANDERER全員に勝利しないと出現しないため、完全制覇の大きな足止めを食らう一因となっている。
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これでも前作と比べれば遥かに簡単で現実的な条件になっているのだが、長い時間や手間を要することには変わりない。
やり込みに対して配慮が十分でない
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『2』や『01』にあるような「ガレージデータを引き継いで最初から」という周回プレイのシステムが存在しない。
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ラスボス撃破後の特典は、ラスボスの使用車両が購入可能になることだけ。勝利時のボーナスCPも存在しない。せめて『01』以降のようにボーナスCPもあれば良かったのだが…。
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前作から車種・LPSの追加、かつWANDERERの登場条件の緩和がなされただけに、このシステムは非常に痛いものとなっている。
薄すぎるオービスの存在感
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バトル中に特定の場所を一定の速度以上で通過すると赤いフラッシュが焚かれ、その日の走行を終えた際に速度超過分に応じた罰金を支払うというシステム。罰金以外のペナルティは無く、罰金自体も少額。
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オービスに引っかかるとリプレイにもそれが反映され、速度超過した際の写真が見られる。
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判定が行われるのは特定の車線を通った場合のみだが、どの車線が対象なのかは観測地点によってバラバラ。3車線のうち2車線が対象という地点もある。
設置場所についてのヒントは無く、オービスを避けるにはあらかじめ覚えておく必要がある。
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一定の確率でフィルム切れを起こしていてお咎めなし、という救済措置もある。また、一部カスタムカーは風圧でナンバープレートが隠れるように細工してあるので罰金の心配が一切無い。
…と、プレイヤーに有利になる要素もあるにはあるが、通常車のナンバープレート細工やオービスそのものをオフにするようなゲーム設定は無い。
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ただし、バトル中にしか判定されないという事もあってか、実際は「引っかかったらアンラッキー」程度のものでしかない。
プレイヤーにメリットが存在せず、ペナルティや演出としてもあまりに目立たない事から「何のために実装したのか」という意見もある。
もっとも、設置個所が多かったり罰金が高額だったりすれば、不快感や面倒臭さが勝ってしまい、それはそれで問題点になっていただろうが…。
保存可能なリプレイの個数が少なすぎる
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今作のリプレイは大変魅力的なものになったが、リプレイの保存は1つのメモリーカードに3つまでという制限がかかっている。
総評
前作までの成果をしっかりと引き継ぎ、またブラッシュアップさせて、一つの終着点にたどり着いたといえる。
次作『首都高バトル01』では多くの要素を作り替え雰囲気も大きく変わっているために、「0の方が好き」として依然今作を称賛するファンも多い。
決して完成度で劣っているわけではなく、プレイする価値の高い作品である。
余談
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今作はリリース当時、iモードサイトとの連動サービスが行われていた。
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PS2本体と特定機種の携帯電話を繋ぐと、1日1回限定の占いでオービスに引っかかりにくくなったり(悪い結果になることもある)、ナンバープレートの数字を使ったくじで多額のCPを貰える、さらには「無条件で全車種が購入可能になる」「走行距離に関係なくLPSが発動」などの豪華な特典を得る事もできた。
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今作で周回プレイが廃止されたのは、上記の特典を前提にしての事かもしれない。
仮にそうだとして、全プレイヤーが気軽に利用できたわけではないサービスに依存し、サービス終了時のフォローが(当時の環境では難しかったとはいえ)一切行われなかった点は問題と言える。
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『01』以降とは違ってゲーム中に登場する車を実車として登場させておらず権利関係が緩いためか、今作は廉価版を含めてかなりの期間出荷され続けた。
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公式ツイッターによると2013年12月11日に最後の出荷をした模様。ちなみに「『01』はその6年前に廃盤になっている」とも言及している。
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今作で用いられたグラフィックの一部は、2001年に同社が開発した『湾岸ミッドナイト』の他、2002年にはセガの『頭文字D Arcade Stage』に流用された。
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いずれも車とその外装パーツ(主にメーカー純正・系列会社系)のモデリングを流用、前者は首都高のグラフィックも流用している。
後者はもちろん元気の許可を受けての流用であり、スタッフロールのスペシャルサンクス欄には同社の名があった。
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両作とも各車・エアロメーカーから正式な許可を受けていた為、今作ではもじられていたディティール類を実物同様に手直しを行ったものが使用されている。
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『頭文字D Arcade Stage』では、今作とは年式が異なっていたAE86・S14前期型等はモデリング修正も行われている。
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いずれの作品も、2004年の『MAXIMUM TUNE』、2007年の『4』でメーカー独自のグラフィックに一新・統一された。
最終更新:2023年12月19日 20:05