提督の決断III
【ていとくのけつだんすりー】
ジャンル
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ウォーシミュレーション
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対応機種
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PC-9801、Windows 3.1、Windows 95~Me、 セガサターン、プレイステーション
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発売・開発元
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光栄
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発売日
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【PC98】1996年 【PS】1997年3月28日 【SS】1997年6月27日
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判定
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良作
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ポイント
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前作よりボリューム増加 会議廃止でテンポも改善
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提督の決断シリーズ I / II / III / IV
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コーエー歴史SLG作品
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概要
1996年に光栄(現・コーエーテクモゲームス)が製作・発売した歴史シミュレーションゲーム。
『提督の決断シリーズ』の第3作で、第二次世界大戦を扱ったWW2シリーズとしては第4作。
特徴
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プレイヤーは日本軍の連合艦隊司令長官、またはアメリカ軍の太平洋艦隊司令長官となって、海軍の指揮を執り勝利条件の達成をめざす。
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シナリオは7本で、内1本がキャンペーンシナリオ、6本がショートシナリオである。
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キャンペーンシナリオは、母港となりうる敵基地を全て占領、敵国艦船を全て沈める、敵国の国民生産力か国民士気を0にするとクリアとなる。
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ショートシナリオは、あらかじめ定められた勝利条件を達成するとクリアとなる。
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パワーアップキット版ではショートシナリオ7本と架空シナリオ(キャンペーンシナリオ)7本が追加されている。
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戦闘画面は初代同様HEX戦だが、空中・水上・海中の3層表示になり高度の概念が加わった。
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コンシューマー版では空中・水上海中の2層表示になっている。
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制海権の概念が追加され、海域ごとに制海権が設定されている。
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自軍が制海権を握っている場合は自軍基地への補給スピードが上昇するが、敵に制海権を握られている場合は補給スピードが減少してしまう。
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制海権は、該当海域に存在する航空機、艦船、および本作で追加された海防艦の数に大きく影響される。
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1つの艦隊につき最大8隻の艦船と最大6隻(Windows版では8隻)の輸送船で編成される戦隊を4つまで編成できる。
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つまり、1つの艦隊として編成できるのは最大32隻の艦船と最大24隻の輸送船となる。
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また、戦隊は決められたマス内なら自由に艦船を配置できる。
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司令官も戦隊1つにつき1名任命可能になった。過去作では艦隊1つにつき1名のみだった。
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基地への補給は前作までは任意でプレイヤーが行なっていたが、本作では基地ごとに設定された「理想値」に基づいて自動で行われる。
評価点
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前作よりボリュームが増加した。
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艦船の保有上限が前作の114隻から200隻に増えたため、前作では一部が登場しなかった日本海軍の艦船が一通り登場するようになった。
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艦隊の艦船数も最大32隻で、前々作の16隻・前作の8隻よりも多い。
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また、登場する航空機も増えた。
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新兵器の種類も前作より多くなり、対潜迫撃砲であるヘッジホッグなども登場する。
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新型艦船・航空機の設計・生産を行えるようになった。史実では計画のみで終ってしまった51cm砲搭戦艦などの生産も可能。
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じっくりと兵器開発や生産を進めた上で、多数の超大和型戦艦で構成された戦艦部隊や、搭載機数150機の超大型空母で構成された機動部隊の圧倒的な強さを楽しむ痛快さはシリーズ随一。
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登場国家もフランスやイタリアが再登場するなど前作より増えている。
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前作までは他国の降伏程度しかなかった歴史イベントが増えた。
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基地のマップも各基地ごとの固有マップに戻った。
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テンポが改善された。
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非常に面倒であった閣僚や陸軍を交えた会議が廃止された。
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前作まで会議で決定された作戦は、本作では提案された3つの案の中から選ぶシステムに変更された。
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失敗・無視しても特にペナルティはないが、作戦に成功すれば臨時予算をもらえる。
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また、基地の補給は自動的に行われるようになったため、煩わしかった手動での補給をしなくても済むようになった。
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プレイヤーは陸軍の人事や兵器の生産について指示を出せるようになり、自由度があがった。
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前作と違いショートシナリオで勝利条件を達成したあと通常シナリオに移行するかを選べるようになった。
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パワーアップキット版だと架空シナリオも遊べるようになるため、仮想戦記のような状況を楽しむことができる。
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中には初代経験者のトラウマが蘇るシナリオもあったりする。
問題点
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CPUの戦略がよくない。
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艦隊が基地空に空襲されることを考慮しないため、自軍基地の沖を悠々と通り過ぎていく。
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また、シナリオ開始時に編成されている艦隊を除いて、自軍の艦隊へ攻撃してこない。
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艦乗員の士気を維持するような戦略をとらないため、艦隊の士気は低い状態になる。
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何故かCPUはトラックや呉、ハワイやアメリカ西海岸のような重要拠点にも200機前後までしか航空機を配備しない。そのためこちらが航空戦力の集中さえ心がければ容易く制空権を奪う事が出来る。
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陸軍との衝突などといった要素が廃止された。
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テンポと自由度の向上に貢献したとはいえ史実再現度がやや低下し、また純粋なシミュレーションゲームとなってしまったために提督の決断ならではの独自性が薄れる事となってしまった。
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アメリカ大陸のマップは初代同様西海岸のみとなったため、前作のように東海岸のワシントン侵攻を楽しむことはできない。
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外交が非常に作りが粗い
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外交では外交資金の投入と石油・物資援助しか出来ない。外交資金の投入は友好度を上げ、石油・物資援助は生産力や工業力の低下を防ぎその国の降伏を先延ばしにする効果があるが、基本的に一般的なゲーム期間内に降伏するような弱体な国は元々支配領域が狭く、巨額の外交資金を投入して味方に付けた上でさらに支援してまで延命させる意味があまり無い。
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ドイツと英国の二国は同盟を結べば技術提供で援助してくれ、また条件を満たせば艦隊や航空機を援軍として送ってくれる。日本でプレイする場合、手間のかかるインド方面の攻略を省略出来ると言う利点もある。しかし本来は第二次世界大戦の主役である両国が太平洋の戦況に応じて連合国や枢軸国側に寝返ると言うのは史実に即して考えればかなり違和感があると言わざるを得ない。
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敢えて積極的に外交を行って混沌とした世界情勢を作る事も一つの楽しみ方かも知れない。外交で頑張れば中国の基地に配備されたアメリカ軍の戦闘機を日本で運用したりする事も出来る。
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潜水艦の大幅弱体化
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前作の反省を受けてか今作では潜水艦が非常に不遇。
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攻撃範囲が非常に狭い上に潜望鏡深度に姿を晒さなくては魚雷攻撃が出来ず、一度発見されると機動力のある駆逐艦に真上や後方の死角から一方的に爆雷で攻撃される事になる。また、ソナーを搭載した艦船に隣接されると無条件で確実に発見されてしまう。さらに魚雷の攻撃力もかなり控えめ。
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通商破壊にも投入できるが本作では基地輸送船を多少沈めても目立った効果は出辛い上に、海防艦の攻撃によって返り討ちにされる事も多い。
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よほど強力な新型潜水艦を設計して大量配備すれば戦果を挙げる事も可能だが、どちらにせよ史実における潜水艦の活躍を再現できているとは言い難い。
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一部ショートシナリオのバランスがシビア
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史実に即している、と言えば仕方ないのだが日本軍後半のショートシナリオは普通にプレイした場合どれもクリアが難しい。
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防衛目的のシナリオは目的となる基地が陥落した時点でシナリオが終了してしまうのだが、アメリカ軍の圧倒的航空兵力によって低難度でも救援する余地も無く陥落してしまう事がほとんど。
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クリアするためにはシステムの穴を突いた攻略テクニックがほぼ必須であり、シミュレーションゲームのシナリオとして見た場合、バランスに問題がある。
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航空機性能に関して一部データやバランスがおかしい。
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航空機には「爆撃力」と言う数値が設定されているが、実際には戦略爆撃を除き1であろうと99であろうと爆撃の効果はほぼ変化しない。そのため、純粋に効率だけを見るなら艦上戦闘爆撃機が生産可能になれば、艦上爆撃機を生産する必要が無くなってしまう。
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史実では大型の夜間戦闘機であり格闘戦は苦手であったはずの月光が何故か全てにおいて非常に強い。素の状態でも零戦21型や32型、鍾馗や屠龍を凌駕する戦闘能力を誇る上、オプションが充実しているため、これを外して戦闘能力に割り振れば同世代機は無論、次世代機すら圧倒できる万能戦闘爆撃機が完成してしまう。
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零戦52型の防御力の数字がヘルキャットやサンダーボルトよりも高い。零戦が同世代の米軍機と比べて防御性能の点で劣っていた事は最早一般常識なのだが…
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史実で戦闘爆撃機として運用されたオーストラリアのCA-12ブーメランに何故か爆撃能力が無い。
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軍人の能力に違和感が多い。
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史実の軍人の能力にはある程度主観が入るため当然ながら絶対的な数値を定める事は難しいのだが、それを差し引いてもゲーム内で閲覧できる経歴では明らかに高く評価されている軍人が低い能力になっているなど、適当に数値を決めた感が強い。
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もっともこのゲームではランダムで軍人の能力を変更できる+ある程度の割り振りが出来るためプレイヤーが理想とするステータスに変更する事は難しくない。
総評
前作よりボリュームが増加し、テンポや自由度も改善されたため、遊び易い海戦シミュレーションゲームとなった。
本格的な海戦を気軽に楽しみたい人ならお勧めできるだろう。
余談
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本作は中国にある光栄の子会社で中国語版の下請け開発が行われていたが、当時の日中関係に端を発する根深い問題から、開発のボイコットが行われるなど大問題になってしまった。
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元々外国から委託された製品については製造前に内容を中国当局に届け出るという規則になっていた事と重なり、最終的に「日本の軍国主義を美化するソフトを無許可で製造した」として光栄の子会社が罰金刑を科せられた。
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最も中国当局は「旧日本軍の勝つゲームは認められない」と主張していたため、許可を要請したところで許可を得られた可能性は皆無と思われる。
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日中双方のメディアでも取り上げられ、これらが本シリーズの展開に致命的な打撃を与える事となってしまう……。
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そのため、現在では新作どころか移植すら発売されておらず、シリーズ自体ほとんど音沙汰がない状態になっている。
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こういった経緯があるためか、本作はシリーズで唯一海外で発売されていない。
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本作を含む過去作すべてで、駆逐艦秋雲が夕雲型扱いになっている。現在は陽炎型とされている。
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夕雲型は陽炎型の発展型であるため、当時基準で観るならそれほど問題があるわけでもない。
最終更新:2023年02月11日 06:07