Opus Magnum
【おーぱす まぐなむ】
ジャンル
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パズル
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対応機種
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Windows Vista/7/8/10 Macintosh OS 10.9, or later Ubuntu 16.04+, SteamOS
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発売元
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Zachtronics
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発売日
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2017年12月8日
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定価
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2,050円(税込)
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判定
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良作
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ポイント
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Zachtronicsのパズルゲームの中ではかなり優しくとっつきやすい クリアは難しくないが最適化要素は健在 作成した機関のアニメーションはGIF出力可能
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概要
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『SpaceChem』、『TIS-100』、『SHENZHEN I/O』等のクリエイターであるZachtronicsが送るオープンエンドのパズルゲーム。
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プレイヤーは錬金術の処理を行うための機械を設計し、決められた生成物を完成させることが求められる。
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錬金術、機械等の単語が飛び交うもののやるべきことは用意された試薬を特定の形につなぎ合わせたり、変化させたりして目標となる生成物を作成することである。元素などの知識は特に必要なく、Zachtronicsを知っているプレイヤーにとっては当たり前かもしれないが、どちらかというとプログラミングに近いシステムである。
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機械を設計する設計パートと、その機械を実際に動作させる実行パートに分かれる。実行パートで完成品を規定回数作成すればステージクリアとなる。
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クリアした際には当該機械の動作をアニメーションとしてGIFに書き出すことが可能となり、他者に共有することができる。
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クリア時の記録として「サイクル」「コスト」「エリア」が記録され、他者の記録と比較することが可能。
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Steamワークショップに対応しており、問題の作成や、ほかのプレイヤーが作った問題に挑むことも出来る。
ルール
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機械はエリア単位で構成されており、エリアにアームなどの部品をおくことができる。
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一部を除く部品にはコストが設定されており、機械に当該部品を置くとその分コストが上がるが、おける数に制限はない。
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機械の肝になるのはアームであり、このアームを動かすことで元素を運んでいくことになる。このアームは1サイクルにつきいずれかの命令を1つ実行させることが出来る。
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複数のアームを設置した場合は1つのアームごとにサイクルごとの命令を実行させることが出来る。この組み合わせによって完成品の作成を目指す。
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部品は1つのエリアに1つのみおくことが出来る。アームについては設置したエリアが軸となり、軸については他のアームの軸と重なってはいけないが、軸以外の部分(アーム、グリッパー)同士が重なることには問題がない。
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完成品を作り上げ、完成品の納品場所(自分で設定)に設置することが目標である。ただし、1つだけ設置すればいいというわけでなく、原則として6回設置することが求められる。
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したがって、プレイヤーに求められるのは反復継続して当該完成品が作成される機械の設計である。
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ゲームは設計パートと実行パートに分かれる。実行パートに入ると、プレイヤーがアームに設定した命令を1サイクルごとに実行していく。なお、実行パートの動作中に設計等を行うことは出来ない。
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以下の状態になるとエラーとなり当該エラーが生じた旨のメッセージが表示され実行パートが停止される。
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元素同士が同じエリアに移動し、あるいはアームで動かす際に衝突した
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アームの先端やグリッパーが別のアームの軸エリアに移動した
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1つの元素に別々の動きをさせようとした(2つのアームで違う方向に動かす、等)
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クリア時にサイクル、コスト、エリアが記録として残るがクリアするだけであればどれだけ時間がかかっても、どれだけコストがかかっても問題はない。
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サイクルは上述の通り、1命令を実行できる時間であるため命令を実行した総数となる。当然だが、複数のアームを同時に動かした(同じサイクルで動かした)場合は1サイクルである。
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コストは設置した部品のコストの合計によって決まる。
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エリアはやや複雑だが、実際に機械を動作させたエリアの合計である。部品等を設置した場所はもちろんのことだが、アームで移動させる際の軌跡に含まれるエリアも加算される。
元素の種類
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元素の種類は記号と色によって表される。具体的な元素の種類や名前を覚える必要はないが、それぞれの元素の性質は覚えておいた方がいい(ただし、設計パートでいつでも参照できる)。
四大元素
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空気、土、火、水の4つが該当する。
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石灰化の象形文字によって中性塩に変化する。
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複製の象形文字によって中性塩を四大元素に変化させる。
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三重結合の象形文字によって火のみ通常の結合と異なり、三重結合を形成できる。
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結合(真髄)の象形文字によって四大元素を1つずつ用いて真髄を生成する。
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分解の象形文字によって真髄から各四大元素を生成する。
中性塩
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石灰化の象形文字によって四大元素から変化する。
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複製の象形文字によって四大元素に変化させる。
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アニミズマスの象形文字によって中性塩2つから生命と死を生成する。
生命・死
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基本的には表裏一体であり、最初の試薬として用意される場合を除けば、どちらか一方を生成すれば他方も生成される。
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双方を使う場面も多いが、そうでない場合不要な方は基本的には処分の象形文字を使って処分することになる。
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アニミズマスの象形文字によって中性塩2つから生命と死を生成する。
金属
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鉛、錫、鉄、銅、銀、金、水銀がこれにあたる。水銀のみやや特殊な位置づけ。
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水銀を除いた金属は鉛<錫<鉄<銅<銀<金の上下関係を持っている。
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基本的に金属が試薬として登場する場合は下記の方法によって上位の金属に変化させることが求められる。
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投影の象形文字によって水銀1つを用いて水銀を除く金属を1段階上の金属に変化させる。
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精製の象形文字によって水銀を除く同一金属2つを用いて1段階上の金属1つを生成する。
真髄
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結合の象形文字によって四大元素を1つずつ用いて真髄を生成する。
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分解の象形文字によって真髄から各四大元素を生成する。
アームの命令
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1つのアームは1サイクルにつき以下のいずれかの命令を実行させることができる。ただし、何も命令を行わない待機サイクルを作ることも出来る。
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ピボットの回転(左or右)……アームがつかんでいる元素を60度(1/6)左または右に回転する。
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拡張or格納……伸縮アームのみ。アームを1マス伸ばすor縮める。ただし、1~3マスの範囲に限る。この命令が実行できなかった場合でもエラーにはならず無視されるのみである。
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回転(左or右)……アームを60度(1/6)左または右に回転する。
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グラブ……当該アームのグリッパーを閉じ、グリッパーのあるエリアの元素をつかむ。複数のグリッパーを持つアームの場合、すべてのグリッパーを閉じる。
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ドロップ……当該アームのグリッパーを開き、グリッパーの持っている元素を置く。複数のグリッパーを持つアームの場合、すべてのグリッパーを開く。
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移動(負or正)……トラック上のアームの場合、軸を負または正の方向に移動させる。移動できなかった場合でもエラーにはならず無視されるのみである。
象形文字
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象形文字を機械に設置することによって象形文字の上にある元素の状態を変化させることができる。
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原則として「置くと」と書かれているもの以外はグリッパーで捕まれた状態の元素に対しても効果が及ぶ。
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結合/多重結合……2つの元素を結合する。多重結合の場合であれば最大3つの元素を同時に結合できる。
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非結合……2つの元素の結合を外す。
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三重結合……火の元素に限り三重結合を施す。
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石灰化……四大元素を中性塩に変化させる。
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複製……中性塩を他方にある四大元素と同じものに変化させる。
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投影……水銀を置くと他方にある金属を1つ上位のものに変化させる。
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精製……同一の金属2つを置くと1つ上位の金属を生成する。
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アニミズマス……中性塩2つを置くと生命と死をそれぞれ生成する。
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処分……置くと、その元素を消し去る。
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結合(真髄)……各四大元素を置くと真髄を生成する。
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分解……真髄を置くと各四大元素をそれぞれ生成する。
評価点
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初心者にもとっつきやすい
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プレイヤーの目的としては試薬を用いて生成物を作り出すことであるが、その他の制約は一切無い。エリアも無制限、アーム等の設置もやり放題なのでやり方は無限大にある。
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コスト等の概念もあり、特に中盤以降はコストを気にしないといけないようなストーリー展開ではあるものの、実際に作成する上では高コストの機械を作っても何の問題もない。
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したがって、クリアを目指すだけならエリア、コスト、サイクルのいずれも気にせず機械を作っても良い。
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また、旧作と比較すればプログラミング知識などがなくとも問題なく、パズル全体としてみるならば別だが、Zachtronicsの作品の中ではかなり易しい部類。
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美麗なグラフィックと滑らかな機械動作
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元素やアームなども美麗に表現されており、アニメーションもそれらが滑らかに動くものとなっている。
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自分が想定した命令通りに動いた機械を眺めるだけでも楽しめる出来となっている。
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アニメーションはGIFアニメとして書き出すことが出来る。GIFアニメはループ箇所を考慮して書き出されるため、他者に見せるのにも最適である。
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ワークショップを利用して問題の作成や追加が出来る
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本作ではワークショップに対応しており、自身で問題を追加したり、作成したりできる。
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これにより、本編をクリアした後も世界中のプレイヤーが作った問題に挑戦したり、自ら問題を作って投稿したりと長く遊べるようになっている。
賛否両論点
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パズルとしての制約がない
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上述の通り本作ではパズルを解く上での制約は基本的にはない。それが初心者にとっつきやすいという評価を生んでいるのは確かだが、いざプレイを進めていくとパズルとして物足りなくなることもある。
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クリアとしての制限として「サイクル100以内でクリア」や「45エリア以下でクリア」といった制限がないのは上述の通りであるし、ゲーム内で一定以上の評価をおさめることで得られる要素もない。
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一応、パズルクリア後には他者の記録との比較が出来るため、更にサイクルを減らす、とかコンパクトにする、といった目標を自ら掲げるのであればひたすらやりこむことが出来るのは旧作と同様である。
問題点
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機械の総合評価がない
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上述の通り、本作では「サイクル」「コスト」「エリア」の3つの評価項目があり、プレイヤーが達成したこれらの評価は他者との比較として表示される。
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しかしながら、これらの評価項目はいずれも最高記録が記録される仕様であり、1つの機械で達成した総合評価、といったものはない。
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基本的にサイクルで良い記録を出そうとするとコストやエリアは犠牲になる。コストとエリアはある程度の両立が出来る場面もあるものの、基本的にはどれもトレードオフの関係になる。
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従って記録を狙う際には「金は湯水のごとく使い、エリアも際限なく使うが、とにかくサイクルを切り詰める」とか「ものすごく遅いが、超コンパクトで低コスト」といった現実離れした方向性の機械を作ることになり、どれも平均よりは良いくらい、といったものはあまり作る意味が無いものとなってしまう。
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シグマーの庭園
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本作ではおまけ要素としてソリティアのようなルールのミニゲーム「シグマーの庭園」が用意されている。これはクリアせずとも構わないのだが、クリアすることでサイドストーリーが展開され、また本作における実績の達成条件にもなっている。
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しかしながら、そのサイドストーリーの展開条件(実績の達成条件も同じ)が25回、50回、75回、100回クリアとなっており、最後まで解放するにはおまけ要素にもかかわらず100回のクリアが求められる。
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実績だけならまだしもサイドストーリーにもなっているため、ストーリーが気になるならばやらざるを得ないのが難点。
総評
ニッチなパズルゲームをリリースすることが多いZachtronicsの作品の中では非常に取っつきやすいパズルゲームとなっている。
実際、制約も少なくクリアするだけであればそれほど難しくない。一方で、最適化を目指して切り詰めようとすると際限なくはまってしまうゲームバランスにもなっている。
惜しむらくは最適化を目指すための動機付けが弱いことであるが、クリアできずに投げてしまう可能性を考えれば致し方ないところでもあろう。
万人受けする作品とまではいえないが、Zachtronicsの作品としては初心者向きであるため、同シリーズの作品に興味があるなら入門編としてもおすすめである。
余談
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SteamにおいてZachtronicsリリースの作品の中では珍しく日本語に対応している。
最終更新:2020年03月07日 17:24