NEEDY GIRL OVERDOSE

【にーでぃがーる おーばーどーず】

ジャンル マルチエンディングADV(シミュレーション)
Switch版
対応機種 Windows/Mac OS(Steam)
Nintendo Switch
発売元 WSS playground
開発元 WSS playground
xemono
発売日 【Steam】2022年1月21日
【Switch】2022年10月27日
定価 【Steam】1,680円(税込)
【SwitchDL版】2,640円
【Switchパッケージ版】4,378円(税込)
レーティング 【Switch】CERO:D(17歳以上対象)
判定 良作
ポイント メンヘラの女の子を人気配信者に育てる育成ADV
ありとあらゆる当時のネットミームが豊富
あめちゃんのキャラクター性は賛否


概要

株式会社ワイソーシリアスのゲームレーベルWSS playgroundからSteamでリリースされた承認欲求強めな女の子を人気動画配信者に育て上げるという育成アドベンチャー。
本作は『承認欲求女子図鑑 ~SNSで出会ったヤバい女子たち~』の著者でもある、フリーライターのにゃるら氏が企画・シナリオを担当している。
2020年秋に行われた「Indie Live Expo II」で情報が初出しされ、2回の延期を経て、2022年1月に発売された。
Steamストアでは「マルチエンディングADV」とあるように、20を超えるエンディングが用意されている。
なお、実際にはアドベンチャーゲームというより育成シミュレーションゲームに近い。


特徴

  • 登場人物
    • 「あめちゃん」
      • 本作のヒロインである、承認欲求が強めの女の子。顔だけは良いという設定。
    • 「超絶最かわ天使ちゃん」
      • インターネットエンジェルとしてあめちゃんが配信時に仮装する姿。通称「超てんちゃん」。
    • 「ピ」
      • プレイヤーであり、ヒロインの恋人。名前は「彼ピ(彼氏の意味)」のピでもあり、プロデューサーとしての「P」でもあるという意味が込められている。
  • ゲームの流れ
    • 1日は昼・夕方・夜の三段階に分けられており、時間帯ごとに行動をすることができる。
    • 何かしらの行動をすると、時間が進む。行動の中には2回分の時間を消費するものもある。また「配信」は夜にしか行えない。
    • 行動を行うことで、ヒロインのステータスに変化が起こる。また、行動によっては配信のネタを見つけることができる。
    • 期限はDAY30までの1か月が期限であり、それまでにフォロワーをできるだけ増やしていくことがゲームの目的。
      • 他には、DAY10までにも期限があり、それまでに一定数以上のフォロワーを達成できていないと、ゲームオーバーとなってしまう。
    • DAY30への到達は数時間から半日のプレイで事足りる。ただしマルチエンディングなのですべてのエンディングをコンプリートするなら結構なやりこみが必要となる。
  • ステータス
    • フォロワー
      • フォローされている数。基本的に配信でこの数字を増やしていくのが目的となる。
    • ストレス
      • 精神状態を表す数値。基本的に配信を行うと、ストレスが溜まる。
    • 好感度
      • 「ピ」に対する好感度。0になるとゲームオーバーになるので、高ければ高いほど良い…というわけでもなく、数値が100になると過度の依存状態になりゲームオーバーになる。
    • やみ度
      • 「闇度」であり「病み度」。この数値は主にエンディングの分岐に影響する。
  • UI
    • 本作は、「ピ」が使っているWindowsPCのデスクトップ画面を模したUIに統一されており、実際にデスクトップ画面上にあるアイコンをクリックすることがコマンド選択の代わりとなっている。
    • 配信時の動画サイトのブラウザ画面、SNSの画面、メッセンジャーアプリの画面なども、「デスクトップ画面上にある」という形で忠実に演出される。

評価点

  • オリジナリティー溢れるコンセプト
    • メンヘラの女の子の承認欲求を満たすために、人気動画配信者に育て上げるというゲームは、間違いなく本作が史上初であろう。
    • ヒロインである、あめちゃんの言動も(好ましく思うかはどうかは人によるが)メンヘラオタクっぽい痛々しさが滲み出ており、妙なリアリティーがある。
    • 人によっては「下手な恋愛シミュレーションよりも、恋愛シミュレーションしている」との評価も。
    • ゲームタイトルにある通り、薬のオーバードーズ(過剰摂取)もすることが可能で、それによりパラメータを文字通りドーピングできる。しかもこの際の演出が妙に凝っている。
      • ゲームの進め方次第では名前こそぼかしているが、明らかに違法な薬物に手を出すこともできる。もちろん現実ではダメ。ゼッタイ。
  • インターネット・動画配信者を題材としているだけあって、ネットネタが豊富。
    • 解説動画に超てんちゃんのゆっくりが登場したり、匿名掲示板に超てんちゃんのAA(アスキーアート)を書き込めたりと、普段からネットに触れている人であれば、ニヤリとできる小ネタが満載。
  • 豊富なエンディングの数々
    • プレイヤーの選択やステータスによって、様々なエンディングへと分岐する。エンディングは全部で21個*1と豊富なので、全てのエンドをコンプリートしようとすると、かなりのボリュームになる。
    • ちなみに、何かしらのエンディングに到達するごとに、募集した本作のファンアートが開放されていく。
  • ドット絵で描かれた可愛らしくも丁寧なグラフィック
    • グラフィック面は親しみやすいドット絵でありながら、細部まで作り込まれている。
      • 配信時のアニメーションなど、配信のテーマごとに固有のグラフィックが用意されており、よく出来ている。
    • 色使いもピンクや水色を基調としたユニコーンカラーで描かれており、可愛らしい。
  • BGMも評価が高い
    • Aiobahn氏の手掛けるBGMも、本作のコンセプトや場面ごとの状況にマッチしており、評価が高い。
    • KOTOKO氏が歌う主題歌『INTERNET OVERDOSE』も好評。ゲーム内でも特定条件を満たせばMVが視聴できる。
    • サントラはSteamで別途配信のほかAmazon MusicやApple Music、Spotifyなどのサブスクリプションサービス配信もされており、 アナログレコードサントラの限定発売も決定している*2

賛否両論点

  • 一部のネタがやや古い、もしくはマニアック
    • 2022年にリリースされた本作であるが、2000年代かそれ以前のサブカルネタやパロディネタが多いため、若い世代の人からすると、せっかく仕込まれたネタが理解できない可能性もある。
      • 例を挙げると、既に死語となっている2ch用語が使われている、作中に出てくるゲームのコントローラーがドリームキャスト、本作を起動する際の演出が昔のWindows風、等々…。
      • 他にも作中で実況するゲームが、女の子3人が心霊スポットを探索するホラーゲームだったり、伝説となった鬱電波ゲーだったりと、90年代後半以降生まれの人からすると、ややマニアック。
      • 余談だが、発売前に公開された主題歌MVにも、その鬱電波ゲーのパロディ演出が入っている。
    • 裏を返せば世代がピッタリ合うのであれば、とことん刺さるネタと言えるであろう。
      • また、全てのネタが古臭いというわけでもなく、2010年代のパロディネタ・ネットスラングもそこそこあるため、「本作のネタに全くついていけない」という可能性は低いと思われる。
  • ヒロインの言動・行動
    • 「そういうコンセプト」として受け入れられるかどうかにもよるが、本作のヒロインのあめちゃんは、中々のメンヘラであり、(プレイヤーの選択も多少影響するのだが)勝手な行動をしたり、わがままな発言をしたりする。
    • 「配信したくない」と言い出し配信できない……なんてものはまだしも、「自傷行為をするミニゲームが唐突に始まる」といった、人によってはドン引きするような行動をすることもある。
    • 他にもメッセンジャーアプリのチャットを未読のままにしていると怒られ、繰り返しているとゲームオーバー、なんてことも。
    • ゲームシステムとしても一人のキャラクターとしても、色々な意味で「面倒臭い」あめちゃんであるが、それが本作の個性であり、生動感が感じられる部分でもある。
  • 薬物の取り扱いについて
    • 作中での薬物の接種描写について、「タメになった」「(演出が)面白い」と評される一方で「軽く扱っている」「海外では危険」「乱用の助長にならないか?」と意見が分かれている。
      • 薬物乱用の危険性が描写されていないどころか、特定の配信をするためにオーバードーズが必須だったり、薬物を乱用することで到達できるエンディングもあるなど、薬物の使用を暗に助長するような描写となっている。他にも作中で登場する薬物が実在する薬の捩りになっているため、容易に元ネタを推察できる。
      • ゲーム起動時に表示される注意文にもあるが、あくまでフィクションとして割り切れるかどうかにもよるだろう。また、好意的に解釈すれば現実の薬物乱用に対する問題提起や風刺とも受け取れる。
    • コンシューマ機では流石にマズかったのか、後発のSwitch版では「おくすり」コマンドは「まほう」コマンドに差し替えられ、薬の種類も「まほうの〇〇(お菓子)」へと変更された(Steam版では変わりなし)。

問題点

  • 配信時のコメント選択が間違えやすい
    • 配信時には、色付きコメントを読み上げたり、アンチコメントを削除することでストレスを減少させることができる。
    • しかし、コメントがどんどん流れてくる仕様上、削除しようと思ったコメントの次のコメントを間違えて削除してしまうことが割と多い。
      • 一応コメントにカーソルを合わせることで、時間がゆっくりになるが、それでも間違えやすい。
    • とはいえ、コメント削除で減るストレスは一つにつき1と少なく、そもそもアンチ以外のコメントを削除しても、特にペナルティなどはないので、適当に削除しても問題はない。
      • ついでに言うと周回プレイを重ねていくうちに、一度見た配信はスキップすることになるので、配信中のコメントの選択自体、雰囲気作り程度の要素である。
    • アップデートにより、発売当初よりはコメント選択をしやすく改善はされている。
  • 一部エンディングの到達難易度が高い
    • 通常エンディングの一つ「Enchantment Fire」は、エンディングへ分岐する選択肢の発生条件がランダムとかなり厄介なもの。
      • 全ての通常エンディングに到達することで見られる隠しエンディングにたどり着くには、避けては通れないので、かなり面倒。
    • 中でも隠しエンディングとなる「Happy End World」は、ネタバレなしで到達するには非常に厳しい条件となっている。
      • 一応、通常エンディングの一つ「(Un)Happy End World」に到達すると、隠しエンディングのヒントを見られるが、それでもかなり厳しい。

総評

メンヘラの女の子を人気動画配信者に育て上げる異色の育成シミュレーションゲーム。
豊富なインターネットネタはもちろんのこと、現代のネットの闇を描いている部分やメンヘラな性格のヒロインも、本作特有の個性として異彩を放っている。
そもそものコンセプト上、かなり人を選ぶ内容であり、あえてプレイヤーの不快感を煽るようなセンシティブな演出が多々含まれていることには注意が必要である。
しかし、育成シミュレーションとしての完成度は高いので、毒の強めな作風に耐性があるならば、購入を検討してもらいたい。

公式が言うには本作のテーマは「 承認欲求とそれによる 破滅 、ただし 破滅が不幸とは限らない 上に承認欲求を抑えても幸せとも限らない」
あめちゃんの破滅のその先を追いかけてみるのも悪くはない…と思える方はどうぞ。


余談

  • 当初は2021年の初春の内のリリースを予定していたが延期。その後、2021年6月のリリースを予定していたが、直前になって2度目の延期が行われた。
    • 2度目の延期した理由についてはにゃるら氏曰く「期待に応えるためにもっと凄い内容にしたかった(要約)」とのこと。
  • 企画・シナリオを担当したにゃるら氏は『さよならを教えて』『serial experiments lain』などの鬱ゲー・電波ゲーが好きであり、本作もそれらの作品群の影響を強く受けている。
    • 作中で実況するゲームやあめちゃんの本名などは上記の作品が元ネタとなっている。
  • 本作は日・英・中の三か国語に対応している。
    • 海外版タイトルは、英語圏では『NEEDY STREAMER OVERLOAD』、中国語タイトルは『主播女孩重度依赖』となっている。*3
    • 後のアップデートによって、韓国語も追加された。
  • 売上は好調で発売から僅か一週間で全世界の売上が10万本を突破している。
    • 前述の三か国語対応もあるが、発売前から本作の情報を発信していた「Indie Live Expo」が日・英・中の三か国語で配信されており、事前の認知度と注目度が高かったことに加え、「動画配信者」という実況プレイ映えしやすい題材で、発売直後から多くの動画配信者による実況プレイが行われたことも関係していると思われる。
    • 2022年6月24日には世界累計販売数が50万本を突破していることが発表された。(参考リンク)
    • 2023年1月23日には開発インタビュー公開とともに、75万本突破が発表された。(参考リンク)
    • 2023年6月30日にはついに世界累計販売数が100万本を突破。(参考リンク)
      • 同年の7月7日にYoutubeでてんしちゃん誕生日配信と同時に小説や展示会などのメディア展開を発表。
      • しかも『東方Project』原作者のZUN氏、『ダンガンロンパ』等のクリエイターを務める小高和剛氏、上述の『serial experiments lain』主人公の岩倉玲音から祝いのメッセージが送られた。
    • 2023年8月25日に行われた「CEDEC 2023」の最終日において世界累計販売数が120万本突破していることが発表され、そのうち半数を超える51%は中国からの購入であることも明かされた。(参考リンク)
  • 音ゲー『Muse Dash』とコラボしており、本作の主題歌『INTERNET OVERDOSE』が配信された。

その後の展開

  • 2022年5月21日に行われた「Indie Live Expo 2022」において、Nintendo Switch版が発表され2022年10月27日に発売。
    • Switch版でエンディングや会話とクソリプがいくつか追加され、steam版にも無料アップデートで追加された。
    • 「おくすり」「えっち」等のいくつかの表現が修正された以外は大筋は変わらない。「お菓子」を食べてトリップするのも変わらない

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最終更新:2023年09月04日 07:37

*1 厳密にはこの21個とは別に隠しエンディングが2個存在する。

*2 ジャケ写のデザインがYMOの1stアルバムのパロディなのはご愛嬌。

*3 当初は日本版と同じタイトルだったが2021年11月に日本国外向けタイトルを変更していたことがSteamDBの更新履歴から判明。タイトル変更の理由について公式からのアナウンスは現在もされていない。