ミッキーの東京ディズニーランド大冒険
【みっきーのとうきょうでぃずにーらんどだいぼうけん】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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12Mbitロムカセット
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開発元
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グラフィックリサーチ
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発売元
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トミー
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発売日
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1994年12月8日
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定価
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9,800円
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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風船を使ったアクション 東京デンジャーランド
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ディズニーシリーズリンク
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概要
言わずと知れたミッキーマウスを主人公としたアクションゲームの一作で、日本でのみ発売された作品。
SFCで発売されたミッキーのアクションゲームと言えば『ミッキーのマジカルアドベンチャー』が有名であり、本作もピートが悪役という点では共通しているが、本作はファンタジーな世界ではなくタイトルの通り、東京ディズニーランド(以下、TDL)を舞台としている。
風船を使った本作独自のシステムを駆使し、アクションステージと化したTDLのアトラクションを攻略していく。
あらすじ
東京ディズニーランドの休園日、ミッキーたちは遊びに来てくれるゲストの皆の為にショーの練習に励んでいました。
ところがある休園日にミッキーがいつものように練習に来ると、ショーのメンバーがいませんでした。
ただ1人残っていたミニーによると、ピートが「今日の練習は休みだ」と嘘をつき、皆を連れてアトラクションに遊びに行ってしまったそうです。
ミッキーは皆を連れ戻すため、ミニーに貰った風船とボンベを手に東京ディズニーランドの冒険に旅立つのでした。
システム
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本作では二種類の風船を使ったアクションが行える。
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Xボタンを押すとオレンジのガス風船を膨らませる。風船が膨らむとガスが抜けるまで空中を飛ぶ事ができる。また、方向キーを押しながらボタンを離すと、ジェットのように突進することができる。ただし、攻撃能力は無いので敵に突っ込むとダメージを受ける。
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斜め急降下で床に飛ぶとスライディングに移行、敵を倒したり、歩いて通れない狭い場所にも入れる。
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デモ実演にあった書斎の顔で、土台に対して横突進などの別解も可能である。
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Yボタンを押すと青い水風船に水を詰め、敵に投げつけて攻撃できる。詰める水が多いほど敵へのダメージも大きい。
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最大まで貯めた水風船は置くことも可能で、仕掛けたり、床のスイッチを固定したり、トランポリンとして使うこともでき、強風を防いだり、凍らせたり色々な使い道がある。この床置きを利用するギミックも存在する。
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ステージセレクトは存在せず、セーブデータの保存も無い。再開はパスワード方式を採用。
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パスワードはゲームオーバー画面とステージクリア画面で表示される。
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ゲーム開始前に難易度も選べるようになっており、そちらもパスワードに反映されている。
ステージ
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実際のTDLにあるテーマランドを巡り、そこにあるアトラクションのステージに挑戦していく。
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LEVEL1 カリブの海賊(アドベンチャーランド)
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実物はボート型のライドで巡るアトラクションだが、本作ではアトラクションの中に造られたカリブ海の世界を実際に冒険していく。
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最初のステージだけあって難易度は低い。ボスは海賊のキャプテンに扮したピート。
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LEVEL2 ビッグサンダー・マウンテン(ウエスタンランド)
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山道や鉱山を進んでいく。途中には人力のトロッコで進むシーンもある。
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「アトラクションが人力か!」と突っ込むなかれ。ボス戦ではちゃんと列車に乗り込む。ボスは機関士に扮したピート。
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LEVEL3 スプラッシュ・マウンテン(クリッターカントリー)
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洞窟から始まり、外に出ると丸太に乗って川を下っていく。勿論、アトラクション同様に急流下りのシーンもあり。
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ボスは木こりに扮したピートだがこちらからの攻撃が届かないので、別の方法で倒す事になる。
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LEVEL4 ホーンテッドマンション(ファンタジーランド)
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幽霊屋敷から謎を解いて脱出を目指す、これまでと一転して不気味なステージ。こちらもカリブの海賊同様、実物のようにライドに乗る事は無く、直接探索する。後半は屋敷の外に出る。
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トリッキーな仕掛けが増え、これまで以上に風船アクションを活用しなければならない。ボスは亡霊化したピート。
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LEVEL5 スペース・マウンテン(トゥモローランド)
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実物のようにエスカレーター→ドーム内→宇宙空間と進んでいく。SFらしく転送装置を使った移動もある。
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宇宙空間では実物同様にライドに乗るが、罠だらけの危険なコースなので気が抜けない。ボスは宇宙飛行士に扮したピート。
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LEVEL6 シンデレラ城ミステリーツアー(ファンタジーランド)
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シンデレラ城の地下を進む最終ステージ。最後だけあって難易度が高い。ラスボスは『コルドロン』の魔王ホーンド・キングに扮したピート。
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このアトラクションは嘗てTDL独自に運営されていたもの(2006年に終了)。ランドマークであるシンデレラ城が舞台だが、『シンデレラ』はなく『コルドロン』をモチーフとしたもので、「シンデレラ城の見学の最中、ホーンド・キングによってディズニーヴィラン達の潜む地下室に誘われていく」というショーだった。シンデレラ城にも拘わらずおどろおどろしいステージになっているのはこの為である。
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ワールドバザールはアクションステージに落とし込むのが難しかったか、説明書で紹介こそされているが登場しない。
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無論、発売当時のTDLが元になっているため、トゥーンタウンも存在しない。
評価点
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風船アクションは慣れが必要だが爽快感がある。
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ガス風船は使いこなせれば高速でスイスイと進んでいける。他のミッキー作品では味わえないスピード感が楽しめる。
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ミッキーは精緻に描き込まれており、歩く、走る、泳ぐ、トロッコ運転など色々な動作を見せる。更に地形の淵や坂道での動作も用意。
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待機モーションでは顎に手を当てて考え込んだり、画面正面を向いて笑う、ポーズを取る、など細かく用意されている。ちなみに「正面を向いて笑う」の動作はセレクトボタンを押せばいつでも可能というお遊び要素も。
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各アトラクションの再現度が高い。
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どのステージも元となったアトラクションの特徴を掴んでおり、雰囲気がよく伝わってくる。行った事のある人は「あ、これはあれか!」とピンと来てニヤリとし、行った事の無い人でも面白そうと思わせ、興味を抱かせる作りになっている。
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ビッグサンダー、スプラッシュ、スペースの三大マウンテンはライドに乗るシーンがしっかり用意されている。
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スプラッシュ・マウンテンでは茨に突っ込む演出も完備。
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ホーンテッドマンションではマダム・レオタが中ボスになると言った要素も。
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スペース・マウンテンは入り口のエスカレーターまでもばっちり再現。しかもただ再現するだけではなく、エスカレーターが途切れる、途中から逆に動くなど、アクションゲームならではの危険な仕掛けも。
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そしてエンディングではお馴染みの「Baroque Hoedown」をバックに絢爛なエレクトリカルパレードが流れる。エンディングのメッセージも相俟ってTDLに行きたくなる事請け合い。
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更に難易度HARDをクリアすると、城の上空で花火が次々と打ち上げられる演出も用意。
問題点
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対象年齢に見合わない無慈悲な難易度
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基本は子供向けに作られているはずなのだが、それにしては難易度が異様に高い。最初の方は簡単だが、ステージが進むにつれて難易度が跳ね上がっていく。正にゲストを殺す気満々のテーマパークである。
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風船による飛行を駆使するゲームデザインの関係上か、奈落が少なくない上に配置も嫌らしい。
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しかし風船アクションの独特の操作性は慣れるまで操作しづらく、慣れないうちは何度も落下死を経験する。
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ダメージを受けると飛行中だろうが突進中だろうが問答無用でそのまま垂直に落下するため、下に足場が無い場所での被弾は即死を意味する。しかしそういう場面こそ狙って攻撃やトラップが飛んで来る。
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そして慣れた頃には風船を使っても落ちる奈落が増え、やはり何度も落下死を経験する。
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後半になると「風船の浮遊する空気量を見極め、落下死しないタイミングで飛び降りる」「上に突進→落ちながら次の風船を膨らませてすかさず突進、を繰り返してひたすら上を目指す」などと言ったテクニックも要される。
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縦に広いステージも多いが、そういう所ほど下に足場があるのか確認しづらく、試しに降りてみたらそのまま奈落の底、なんて事もしばしば。
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EASYからして、ステージ内部は至る所が破損していたり、トゲ針地形が設置されていたり厳しいものとなっている。
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HP制で、回復アイテムもそれなりに配置されているが、HP切れよりも落下死の方が圧倒的に多いのであまり意味が無い。
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そして初見殺しの嫌らしい敵配置、トラップも少なくない。風船アクションに慣れた後も、魔窟と化したTDLは常にミッキーに牙を剥いている。
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宝箱がステージのあちこちに配置されているが、中に敵が潜んでいる事も多く、うかつに近付くのは命取りである。
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特に最終ステージは鬼のような難易度に加え、不気味なステージ、陰鬱なBGMと心を折る要素が目白押し。
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駄目押しとばかりにチェックポイントも少ない。各ステージは3エリア+ボスで構成され、チェックポイントはそれぞれのエリアの入り口となるが、後のステージほど1エリアが長く難しくなる為、やり直しは勿論チェックポイントへの到達も一苦労になる。
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唯一の救いは、ゲームオーバーになってもチェックポイントから再開できる事。ボスに負けてもすぐに再戦できる。寧ろ、それを前提とした難易度としか思えない。
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難易度設定は出来るが、NORMALですら本来のプレイヤー層である子供にはかなり厳しく、大人のゲーマーでも手を焼く難易度である。
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無理ゲーと言う程ではなく、挑戦し続ければいつかはクリアできるが、それまで何匹ものミッキーを奈落に落としてはゲームオーバー画面で何度も仲間達の視線を受ける事になるだろう。
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挙句、EASYではエンディングのエレクトリカルパレードがカットされるというスパルタぶり。パレードが見たければ根性見せろという事なのか。花火が見たければ更なる苦労を重ねる事に。
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ボスがピートのみ
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本作は全ステージでピートがボスを務めている為、それ以外のボスが一切登場しない。一応、中ボスはいるがごく僅かしかいない。
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ステージ毎に戦法を変えてくるとは言え、毎回同じボスしか出てこないのは変わり映えしないのも確か。
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子供向けゲームに深く突っ込むのも野暮かもしれないが、そもそもショーのメンバーを騙して遊びに連れ出したという設定なのに、毎回本人がミッキーの妨害に来ては撃退され、それでもメンバーを連れ回し続けるというのも結構ヘンな話である。
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パスワードのパターンが少なすぎる
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図形4種類を4つ並べるだけの256パターンしか存在せず、しかし面数は18ステージ×3難易度からなる54コースで、パスワードはその54コースに1つずつ存在するので5分の1以上が正解という事になる。その為、雑に並べるだけでも結構通ってしまう。適当にパスワードを入れた、或いは1つ間違えただけで面数を大幅スキップしてしまった…なんて事もありうる。
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例としてNORMAL1-3のパスワードの最初の図形を■→◆に間違えるだけで終盤のHARD5-2になってしまう。下手すると終盤のパスワードを探した方が普通に攻略するより早く終わってしまう事も。
総評
独特のアクションと独特の舞台を誇る、日本でしか語られないミッキーの冒険。
TDLのアトラクションを落とし込んだステージは『マジカルアドベンチャー』などとはまた違う本作独自の魅力を放っており、
さながらTDLで遊んでいるような楽しさを味わえる。
しかしその難易度は高く、実際のTDLに遊びに行くような気軽な感覚でクリアを目指すのはお勧めしない。
腕に覚えがあるか、何度やられても折れない自信の持ち主なら、このTDLのパスポートを手にすると良いだろう。
余談
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ミスをして復帰直前にポーズをかけると更に残機が1減ってしまうバグが存在する
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具体的にはミスをした際、画面がチェックポイントに復帰する前にスタートボタンを連打すると画面がフェードインする場面でポーズをかける事が可能なのだが、その際ミッキーがライフがゼロのダウンした状態のまま復帰してしまい、ポーズを解除するとそのまま1ミスとなってしまう。普通に遊んでいれば遭遇する事の無いバグではあるが。
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本作は「TDLの休園日にミッキー達がショーの練習をしている」という設定だが、当時は年に数回程度の休園があった。
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現在のTDLには規定の休園日は存在せず、災害などの特別な理由が無い限りは年中無休である。
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ピートが今回の事件を起こした動機は「ショーに出ているミッキー達が羨ましかったから」で、エンディングでは改心し、ミッキーの許しを得てエレクトリカルパレードに参加している。
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実際はピートがディズニーパークのショーやグリーティングに登場する機会は非常に長い間存在しなかった。
しかし長い時を経て2023年、北米ディズニーリゾートのグリーティングで念願の初登場。日本でも2024年の「ドナルドのクワッキー・ダックシティ」で出演し、積年の夢を遂に叶えることが出来た。
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余談だが、実際のエレクトリカルパレードには実写映画『ピートとドラゴン』のフロートが含まれる。今作のパレードに出演したピートがドラゴンのフロートに乗っているのはそれと掛けた洒落なのだろうか。
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本作エンディングでも見られるエレクトリカルパレードは本作発売の約半年後、「ディズニー・ファンティリュージョン!」に代わる形で終了した。
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その後、2001年に「東京ディズニーランド・エレクトリカルパレード・ドリームライツ」にリニューアルされる形で復活し、現在に至る。
無論、ピートは出ていない。
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各ステージクリア時には仲間と一人ずつ合流していくのだが、グーフィーとプルート以外は全員ドナルド、デイジー、スクルージと言ったダックファミリーである。
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しかしその中に何故かマイナーキャラで、ショーはおろかTDLのどこにもいない「グランマダック」が居たりする。チップとデールやドナルドの甥っ子達では駄目だったのか…。
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別会社作品だが翌年発売された『ドナルドダックの魔法のぼうし』にも「おばさん」として登場している辺り、スクルージとペアというイメージがあったのかもしれない。但し、グランマはスクルージの妻ではなく、その名の通りドナルドの祖母である。
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後年、2006年にオープンした「トゥーンタウン・ベビーセンター」の館内にイラストとして描かれる形で一応は登場を果たした。
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また、エンディングのエレクトリカルパレードには本作に登場した全員が出演するが、当時の実際のパレードではダックファミリー自体がそもそも出ていなかったりする。その為、本作のパレードはピートの件も加え、実物とは大きく異なった本作独自のパレードという事になる。
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彼等はピートに騙されて練習が休みだと思い込んでいた訳だが、グーフィーだけは騙される以前に練習があった事自体を本気で忘れていたという何とも彼らしいおとぼけぶりを見せてくれる。
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翌1995年、同じくトミーより本作のシステムを受け継いだ『東京ディズニーランド ミッキーのシンデレラ城ミステリーツアー』がゲームボーイで発売された。
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本作同様、風船アクションを駆使するゲームだが、タイトルの通り本作の最終ステージでもあったシンデレラ城ミステリーツアーのみを舞台としている。
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他にも同じくゲームボーイで『東京ディズニーランド ファンタジーツアー』というTDLを題材とした作品がトミーから発売されているが、こちらはゲストとしてTDLで遊ぶミニゲーム集となっている。
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ちなみに本作含むTDL作品三作の発売元であるトミーは、実際のTDLでもウエスタンリバー鉄道のスポンサーを務めていた。
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今作は国内のディズニーゲーでは初めてディズニーパークを題材にした作品としてリリースされた経緯があるが、海外ではNES『Adventures in the Magic Kingdom』で既にディズニーパークを題材にした作品がリリースされている。
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こちらはミッキーではなく、プレイヤーが名前を設定するオリジナルキャラの少年が主人公となっている。文字通りプレイヤー自身がマジックキングダムを巡って鍵を集め、シンデレラ城の門を開く事が目的となる。
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他にも、いくつかのアトラクションはミニゲーム化、実際にパークの敷地内を歩ける、など本作との相違点は多いが、カリブの海賊とホーンテッドマンションがライドに乗らない純粋なアクションステージになっている点は共通している。
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日本未発売だが開発はカプコンによるもので、音楽はかの下村陽子氏が担当していた。
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以降もディズニーパークを題材とした作品は登場しているが、大抵はプレイヤー自身がパークを体験する作品であり、ミッキーがディズニーパークを巡るという意味では本作は稀有な作品である。
最終更新:2024年09月21日 08:42