太鼓の達人DS タッチでドコドン!
【たいこのたつじんでぃーえす たっちでどこどん】
ジャンル
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和太鼓リズムゲーム
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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256MbitDSカード
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発売・開発元
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バンダイナムコゲームス
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発売日
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2007年7月26日
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定価
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5,040円
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プレイ人数
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1~4人
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セーブデータ
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3個(初期出荷版は致命的なバグあり)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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その他
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専用タッチペン「バチペン」2本付属
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判定
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良作
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ポイント
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任天堂ハード向け初作品 新ハード1作目故に曲数は少なめ マンネリを打破する多数の新要素 初期版は致命的なバグがあるが良対応に救われた
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太鼓の達人シリーズリンク
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概要
全世代に高い人気を誇る和太鼓リズムゲーム『太鼓の達人』。
長らく家庭用向け作品はPSプラットフォームで展開されてきたが、ついに任天堂機に進出を果たした一作。
アーケード版『太鼓の達人10』と同時発売となり、一部の新曲は同時収録となっている。
特徴・評価点
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ハード性能差が歴然としているため一部演出が簡略化はされているものの、当時のアーケード版『太鼓の達人10』の要素は不足なく移植されている。
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大前提として問題なく60fpsで動き、処理落ち等とも無縁で快適なレスポンスが確保されている。
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画質こそ粗いものの、どんちゃんのアニメーションなどはきっちり移植されている。
画面サイズに占めるどんちゃんのサイズが大きくなったため、10コンボごとの「○○コンボ!」の吹き出しが演奏レーンに被らなくなって見やすくなったという副次効果も。
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簡略化された演出は踊り子の数(5人→3人)、走るちびキャラの削除、1音符ごとのスコア表示の省略と行ったところ。
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一方、大音符を特判定で取った場合は判定部分に出現する花火が派手になる演出が追加。大音符が火花とともに飛んでいく演出が移植出来なかったための代替とみられるが、ACでも『12』以降で逆輸入されている。
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新音符として「でんでん音符」が登場。面と縁を交互に連打する。PSPシリーズのすず音符同様イモ音符の代替。
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本作ではセーブデータを圧迫せずに「ばいそく」「あべこべ」などのオプションを設定可能になった。
PS2時代からずっと抱えていた問題だったために大きな改善点である。
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DSと言うだけありタッチ操作に対応。
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専用のタッチペン「バチペン」が2本付属しており、本作の目玉として扱われていた。
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下画面がまるまる太鼓となっており、太鼓の面の部分を叩くと「ドン」、縁を叩くと「カッ」となる。
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面の中心(ドン)・外側の太鼓の側の部分(カッ)を叩くと大音符を特良・特可判定で取ることができる。家庭用で片手で大音符を取れるのは本作が初である(ボタン操作では従来通り両手同時押し)。
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操作性、レスポンスともに非常に良好。本作に「大打音」があればという声が上がるほどであった。
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ちなみにニンテンドーDSは仕様上2点以上の同時タッチを認識出来ない。
片手で大音符を取れるようになったのはこのようなハード仕様上の制約にも基づいていると見られるが、結果としてよりアーケードに近い操作感覚を実現出来ている。
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なお、ボタン操作の場合の特判定の猶予フレームはPS2/PSP時代と比べて大幅に狭まっている。特判定を取るのは難しくなったが、反面同時押し猶予時間に入力を吸われて続く音符でミスすることがほぼなくなったので一長一短。
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本作を含むDS作品では連打音符は下の文字レーン部分で「連タッチ」と表示され、連打数表示も「○○タッチ」という表記になっている。
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選曲について
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曲数は少なく、また新ハード1作目の定番として「夏祭り」などの人気曲が再録されているが、『ぽ~たぶる』のように再録比率が高すぎるということはなく、初収録・初移植となる曲もバランス良く配置されている。
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J-POP・アニメ・バラエティの15曲のうち、現時点の家庭用では本作でしか遊べない曲が7曲存在している。
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任天堂ハードに進出したことにより、満を持して「スーパーマリオブラザーズ」が移植されたのは特筆に値するだろう。AC同様踊り子もゲスト仕様である。
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AC版『12』・『Wii』以降はリニューアルされて新メドレーになったため、AC版『8~11』仕様の譜面が移植されているのは本作が唯一となっている。
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ナムコオリジナルの新曲はテーマ曲の「キミにタッチ!」、AC10と同時収録の「黒船来航」・「てんぢく2000」の3曲。
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本作初出のクラシックは評価が高く、「熊蜂の飛行」「幻想即興曲」は後にシリーズ10周年記念投票でランクインを果たしている。
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また、本作の再録曲は譜面変更が多い。具体的には「さくらんぼ」「もじぴったんメドレー」「天国と地獄」「GO MY WAY!!」に譜面分岐を追加する形で譜面変更が行われた。いずれも従来の譜面が普通譜面となっている。
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後者3曲はいずれも後のACに移植され現在に至るが、「さくらんぼ」のみ本作限定譜面となっている。
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譜面の難易度バランスも良く、35曲しかないにもかかわらずおに★4を除く全ての難易度に楽曲が揃っている。
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通信対戦対応
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DSワイヤレス通信による最大4人での通信対戦に対応。当然発売時点ではシリーズ最多である。
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自分へのパワーアップや妨害用のアイテム音符が出現して対戦要素を強めている。もちろん設定でアイテムをOFFにすることも可能で、勝利ルールも単純なスコア対決以外にも「最終コンボ数」「連打を含むタッチ数」など多彩。
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1カートリッジで対戦可能。複数カートリッジの場合はどんの着せ替えが画面に反映される。
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新モード「どんの部屋」
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和田どんを着せ替えるのが主な目的のモード。ゲームをプレイしていると届く手紙でどんの服や帽子が増えていき、自在に着せ替えることが出来る。中にはお題が提示されるものも……。
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着せ替えたどんちゃんはもちろん演奏ゲームの見ために反映される。
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服や帽子以外にも顔・胴・手足のカラーリングを変更可能。本作には登場しない和田かつカラーにしたり、昔懐かしの黄色カラーにしたり、これまでに見たことのないカラーにしてみたりと自由自在。
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着せ替えは後継作品の定番要素となり、家庭用はもちろん新筐体以降のアーケード版にも逆輸入されている。
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他にも上記の手紙を確認できる手紙ボックス、入手したクリア王冠の数に応じてもらえるトロフィーの表示、チュートリアル「初心者道場」もプレイできる。
トロフィーは30個、60個、100個、140個(コンプリート)入手するたびに追加され、ちょっとしたショートムービーが用意されている。
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「毎日うでだめし道場」
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1日1回、提示される楽曲をクリアすることで段位が変わる。従来のどんポイントに変わって登場した。
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「本番」は1日1回だが、「練習」は何度でも可能。また翌日のお題も練習できる。
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ノルマクリアで1段階、フルコンボで2段階昇格。ノルマクリア失敗時に極端にゲージが少ない場合は降格してしまう。
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下はかんたんコースから、上はおに★10まで非常に幅広い。
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今までのようなプレイ回数重視の解禁システムから、自分の腕前を上げることがダイレクトに求められるようになった。
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隠し曲の一部はこのうでだめし道場での解禁となっている(後述)。
賛否両論点
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曲数が35曲と少ない。
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『ぽ~たぶる』同様、新ハード1作目故かボリューム不足。ただ本作についてはハード性能や2007年当時のカードメディア故にPS2やPSPのディスクメディアと比較するのは酷という声もあった。
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ちなみに本作のROMは256Mbit(=32MB)。当時のディスクメディアと比較すれば極めて容量が少ないことがよくわかる。
音源もモノラル化されているなど、容量確保のための試行錯誤が垣間見える。
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細かいところでは、長年家庭用のチュートリアルで定番だった「音符のうた」もなくなってしまった。作品ごとの仕様変更があるたびに歌詞が新録されているなど地味に手が込んでいただけに惜しまれる。
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曲数以外の面でも、お約束だったオープニング・エンディングムービーやミニゲームなどはバッサリとオミットされており、新規の要素も全て演奏ゲームが前提の非常に割り切った作風になっている。
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音源使い回しの「太鼓乱舞」の存在
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楽曲「太鼓乱舞」は「炎の巻」「水の巻」「風の巻」の3曲が存在するのだが、ベースとなる楽曲は全て同じで譜面が異なるという仕様になっている。
6曲の隠し曲のうち3曲を占領しているのも問題点として上がりやすく、ボリューム不足をなんとか水増しで補ったと批判されやすい。
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ただ、譜面については終始ゴーゴータイムの炎の巻、縁中心の全体的に青い譜面の水の巻、でんでん音符や連打音符が多数配置されている風の巻と明確にテーマに沿った譜面であり、その点は評価された。
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また楽曲そのものについては純粋に和太鼓と銅鑼、かけ声だけで作られた曲であり、今までありそうでなかったテーマの和風曲として概ね好評であった。
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後に『太鼓の達人11』に開幕連打による譜面分岐曲として「太鼓乱舞 皆伝」の名で移植された。1曲にまとめられたこと自体は妥当と捉えられたが、本作の各譜面のギミックを再現しきれていない点は一部で残念に思う声も上がっていた。
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「毎日うでだめし道場」の仕様
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段位ごとにかんたん★1から順番に課題曲が組み込まれているため、「ふつう★7より簡単なむずかしい★1」「むずかしい★8より簡単なおに★1」のようにコースを跨ぐときに実質的な難易度が下がる。
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本作固有の問題と言うよりは、難易度設定がコース別である元々の太鼓の達人シリーズの仕様との兼ね合いの問題と言える。
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また、難易度が該当していれば未解禁の隠し曲も普通に課題曲に出現する。練習で何度でもプレイできるとはいえ、いきなり知らない曲が出てくるのは面食らう人も居ただろう。
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1日1回とはいうものの、日付変更への対策は行われていないのでやろうと思えば1日で大達人まで上がることが出来てしまう。
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一部の解禁要素の難易度が非常に高い。
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楽曲解禁のうち、「黒船来航」「太鼓乱舞 炎の巻」は毎日うでだめし道場の低段位、「幻想即興曲」は全難易度のクリアマーク数、「てんぢく2000」は日付進行のみなので解禁難易度は低い。
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しかし「太鼓乱舞 風の巻」は八段昇格(むずかしい★6相当)、「太鼓乱舞 水の巻」はなんと大達人昇格(おに★9相当)であり、誰でも解禁出来るラインか極めて怪しくなってくる。
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衣装解禁要素の1つである手紙「うなぎの挑戦状」にもかなり鬼畜なお題が混ざっている。特に鬼その8の「熊蜂の飛行」の速度さんばいでのノルマクリアはあまりにも有名。
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「熊蜂の飛行」(おに★9)は中盤以降は一度躓くと建て直しが難しい複雑な長複合が続く譜面となっており、事実上本作の最難関の一角に位置する難易度詐称譜面と認識されていた。
それだけに、これを3倍速度でクリアしろというのはやり過ぎであるとの声も多かった。
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実際、「熊蜂の飛行」おに譜面は後にAC版『11』に移植された際に★10に昇格している。
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過去の家庭用にあった全要素をまとめてアンロックする裏技が廃止されたことも解禁難易度の高さに拍車を掛けてしまっている。
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また、難易度が高いわけではないが、おにモードの解禁がむずかしい20曲クリア、一部のオプションの解禁が各難易度の30曲クリア……ととにかく物量的に多い。主要オプションは初期開放されているので困らないと言えば困らないのだが……。
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難易度基準が全体的に高い
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本作の発売前後に相当する家庭用『七代目』やAC版『9~10』はシリーズ全体の難易度のインフレが大きく進んだ時代に相当し、その渦中で発売された本作も全体的に難易度の水準が高くなっている。
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最も指摘されるのは上記の「熊蜂の飛行」だが、他にも本作で譜面分岐が追加された「天国と地獄」や「さくらんぼ」の達人譜面は明らかに難しめになっている。
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変わったところでは「決意の朝」「マタアイマショウ」といった極端な低BPMの代わりにやや複雑な譜面という特徴を持っている曲が軒並み降格している(共にAC版『9』で★6→本作で★5)。
低BPM曲に対する評価の違いが現れていると言える他、当時のACやPS2以前の家庭用で裏技扱いだった「ばいそく」が本作で正式に「演奏オプション」となったことが影響していると思われる。
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一方、初出以来長らくむずかしいがおにと同じ譜面だった「風雲!バチお先生」にようやくむずかしい譜面が追加されたなど配慮も目立ち、むずかしいコース以下に関しては水準を逸脱した譜面はほとんど存在しない。
問題点
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初回版に致命的なバグが存在する。
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本作は3つまでセーブデータを作成できるのだが、3つのセーブデータ全てでどんちゃんの着せ替えで「ふく」と「ぼうし」を付けるとゲームがフリーズし、リセットしても復帰できないというバグがある。
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極めて致命的であり、発売から1ヶ月も経たないうちに交換対応が開始された。また2007年9月以降の出荷版についても修正された状態で販売されており、いずれもパッケージ・ソフトに「アップデート版」と記載されており見分けが付くようになっている。
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速やかに交換対応が行われたため、現在中古市場に出回っている本作はほぼ全てがアップデート版である。
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配点が他作品と異なる。
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おにモードで言えば★10が120万点なのは変わらず、★9が115万点と高くなっている一方で、★8が100万点、★7が90万点……と他作品と全くスコア配点が異なっている。
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当時は既にAC8以降に本格導入された初項・公差式スコアシステムがプレイヤー間でも定着し、難易度ごとのスコアも十分浸透していた中での謎の変更であり、プレイヤーを大いに困惑させた。
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この配点は本作とDS2作目のみの仕様で3作目は従来の配点に戻った。
総評
本作で実装された新規要素の多くは後継作品の定番となり、家庭用はもちろんアーケードへの逆輸入も多く行われた。
ハード1作目故の少なめのボリュームが気になるところだが、それ以上にマンネリ化しつつあった家庭用作品に新たな風を吹き込んだ功績は非常に大きい。
着せ替え以外はほぼ演奏ゲームのみで構成されているという非常に割り切った作風だが、その演奏ゲーム部分の出来に関しては不備はない。
ROM容量やハード性能で劣る中、その劣化部分を挽回しようという気概が光る一作となった。
余談
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2008年4月に続編となる『めっちゃ! 太鼓の達人DS 7つの島の大冒険』が発売されている。
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収録曲は50曲まで増加。更に本作では存在しなかったストーリーモードが本格的に実装され、こちらも後の作品のスタンダードとして定着している。
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こちらは公式サイトで「冒険編」とされており、それに伴い本作は「入門編」に当たる作品であると公式サイトで定義づけられた。
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後にバンダイナムコ公式サイト内の「アソビモット」にて太鼓の達人開発者のインタビューが掲載されているが、本作についても触れられている(リンク)。
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当時のシリーズ総合プロデューサーであった中館賢氏曰く、「DS本体が発売された瞬間に、「これは太鼓だな」と思いました」とのこと。実際に開発された本作の優れた操作性を見ても、その予見は見事的中したと言えるだろう。
最終更新:2024年12月13日 21:41