ブランディッシュ
【ぶらんでぃっしゅ】
ジャンル
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アクションRPG
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対応機種
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PC-9801以降 FM-TOWNS
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メディア
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フロッピーディスク
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発売・開発元
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日本ファルコム
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発売日
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【PC98】1991年10月25日 リニューアル:1995年3月10日 【TOWNS】1991年12月1日
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定価
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9,800円
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配信
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【PC98/リニューアル】プロジェクトEGG/900円(全て税別) 2007年3月6日 Win10対応版:2018年10月25日
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判定
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良作
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ブランディッシュシリーズ 1(ダークレヴナント) - 2 THE PLANET BUSTER - 3 SPIRIT OF BALCAN - VT(4 眠れる神の塔)
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何もしなければ死ぬことはない。だが何も始まらない。
概要
日本ファルコムの発売したアクションRPGの一作で、初のフルマウスオペレーション対応作品。
前年に発売されたFTL Gamesの『ダンジョンマスター』を見降ろし視点に変更したようなゲームで、視点を回転するとマップの方が回転するのが最大の特徴。
95年に発売されたリニューアル版では『2』以降で採用された環境設定画面やオート移動、
マウスプレイ用の操作ガイド表示
(1の初期版でもガイド表示は表示可能だが、機能が若干落ちる)といったシステムが輸入され、遊びやすくなっている。
「ブランディッシュ(Brandish)」とは、英語で「(剣などを)振り回す」という意味。
ストーリー
偉大なるドラゴンに守られし小国ビトール。
街の中央には世の平穏を象徴するかのように巨大で荘厳な塔がそびえ立っていた。
はるか太古より存在する塔を囲むように街はつくられ、そこで暮らす人々は、どの顔も活気に満ちあふれていた。
ビトールを治めるビスタル王は、その野心により塔の頂上にいる偉大なるドラゴンが護る力の源の核心を手にしようと動き出した。
ドラゴンを倒し、王がそれに触れようとしたとき、ドラゴンは自身の命と引きかえに最後の力を解放してしまった。
制御を失った巨大な力はビスタル王を呪い、一夜にして塔とその周辺の街々を人々ごと地底の奥深く沈めてしまったのである。
それから時は1000年が過ぎた。
賞金稼ぎを生業とする流浪の剣士アレスは、バノウルドの街の近くにある大穴の側で彼を師匠の仇とつけ狙う魔法使いの少女ドーラと再会した。
ドーラの放った魔法により足場が崩れ、二人は大穴の底へと落下した……。
(説明書より抜粋)
特徴
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ダンジョン探索型のアクションRPG。広大な迷宮から脱出することが目的で、街などは存在しない。ゲームは基本的にリアルタイムで進行する。
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ダンジョン内には同じように落下した冒険者たちが店を開いており、買い物やアイテムの売却も可能。また、話を聞くことで情報を教えてもらえることもある。
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勿論トラップも落とし穴など大量に仕掛けられており、一筋縄ではいかない。
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どこでもセーブ可能だが、当然場合によっては詰む。詰み状態に陥った場合はステータス減少のペナルティと引き換えにワープできる救済が存在する。
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画面はよくある見降ろし視点。ただし、アレスは常に背中を向けているため向きを変えると画面の方が回転する。
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視点を変えることで見えなかったスイッチや石板などが見えるようになることも。敵も物陰に隠れていることがあるので、視点を変えることが非常に重要になってくる。
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また、特定の魔法以外の攻撃は全て正面にしか行えないので、側面や背後を取られない位置取りも重要。
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アレスの周囲9マスがオートマッピングされ、左下のマップ画面に表示される。発見した罠などを自分で書き加えることも可能。ゲームクリア時にはマップの踏破率も表示される。
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基本操作は全てマウスのみで可能。
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キーボードでも操作可能だが、複雑なキー操作が必要になるので、実質マウスとキーボード併用が望ましいと言える。
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基本操作
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移動はアレスの周囲をクリックするか、画面右下の移動アイコンで行える。
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上下左右をクリックした場合は平行移動、斜め上をクリックすると旋回、上の方をクリックすると前方に1マス分ジャンプが出来る。
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なお、カーソル位置に応じてマウスのアイコンが対応アクションのアイコンに変化する。
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戦闘はアレス自身をクリックして行う。
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前方に敵がいれば自動的に防御姿勢を取り、この状態でクリックすると攻撃を行う。
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通常時にクリックすると盾を構えて防御姿勢をとり、罠や遠距離攻撃による攻撃を防御できる。
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右クリックするとマウスのアイコンが変化する。
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通常の矢印アイコンの時は移動や攻撃、防御が可能。
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虫眼鏡アイコンの時は前方の床や壁を調査したり、アレス自身やモンスターをクリックすることでステータスを確認できる。
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手アイコンの時は宝箱を開けたり、アイテムを拾う、扉の開閉、スイッチの操作などが可能。
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アレスのレベルアップは熟練度システムを採用しており、それに対応した行動をとることで各ステータスに熟練度が溜まっていく。
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LEVELというステータスも存在し、敵を倒していくとレベルアップするが、向上するのはLIFEとMAGIC(MPにあたる)の最大値のみ。なお、MAGICは時間経過で自動回復する。
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力、賢さ、魔法防御がそれぞれレベルアップするが、防御力は装備依存となっている。
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アイテムは画面右上のアイテム欄をクリックして装備するものなどを決める。
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アイテムは15種類までしか持てないが、個数型のアイテムはまとめる事も可能。
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「異次元箱」というアイテムを手に入れれば所持枠が拡張される。ただし、異次元箱に入れた状態では装備したりは出来ない。
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武器には耐久値があるため、使っていくと壊れてしまう。「物体硬質化液」という薬で耐久力を回復できるが、基本は使い捨て。サーベルなど一部壊れない武器も存在する。
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武器の売値は耐久力に依存する。
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なお、武器をはずして素手状態になる事も可能。装備中の武器が壊れたら強制的に素手状態になる。
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魔法はアイテムの「スクロール(巻き物)」と「リング」の2つの使用方法がある。
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スクロールはMAGICを消費し、何度でも使える。その分、店売り品は高額。
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リングは使用回数制限があるが、MAGICを消費せず高威力。
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画面上部の「UTILITY」ボタンでユーティリティ画面に入り、オプション操作やアイテムの並べ替えができる。なお、この画面を表示している間は時間がストップする。
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ゲームのセーブ/ロードはここからいつでも行える。また、マウスの移動速度やゲーム速度の変更もできる。
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画面左上の「REST」ボタンで休息してHPを回復可能だが、この時は時間が止まらず、敵に攻撃を受けると大ダメージを受けてしまう。
評価点
良好なゲーム性
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見下ろし視点で3DダンジョンRPGをプレイするというコンセプトで、3Dゲームで言うビハインドビューに近いプレイ感覚を実現している。
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見下ろし視点ではあるものの、見渡せるのは5×5マスの狭い範囲のため3DダンジョンRPGの「先の見えない広大なマップを進み、多彩なトラップを潜り抜けていく」というゲーム性を引き継いでおり、マッピングしながらダンジョンを踏破していく楽しさは健在。
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オートマッピングではあるが、定番の落とし穴から、ワープ床が敷き詰められた階などが登場するので手動マッピングも重要になっている。
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ゲーム序盤の場面。扉には鍵がかかっているが部屋には何もない。 おや、壁に何かが…
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右を向くとレバーがあった。これで進める。 こういった発見が重要となる。
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全てのキャラクターの移動を1マスずつに制限するなどのルールを設けることでゲームバランスも整っている。
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システム上、すぐに背後を振り向けないため平行移動を活用し、移動する敵の側面から攻撃することで安全を確保するヒットアンドアウェイ戦法は基本。
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しかし敵側もこちらの攻撃をガードしたり、ガード不能のノックバック攻撃や、1マス離れた場所から近接攻撃を仕掛けるもの、魔法で遠距離かつ全方位攻撃するものなど多種多様な攻撃パターンを持っていて一筋縄ではいかず、歯ごたえ抜群。
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ボス戦などは非常に忙しい操作を強いられるが、オプションでゲームスピードを遅くできるので難易度は低くないが初心者にも優しめ。
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金を稼ぐ手段は宝箱から入手するか店で不要なアイテムを売る、あとは隠しカジノくらいしかない。持てるアイテムも限られているので、ショップの利用や持っていくアイテムの選択などの戦略性もゲームに面白さを加えている。
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クリア時にはプレイング結果も表示されるので、マップ完成率100%を目指したり脱出時間を縮めたり…といったやりこみも可能。
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裏モードとして、武器を一切装備できなくなる「武闘家モード」も用意されている。このモードではアレスの服装も道着姿になり、ランダムで発動するキック(クリティカル)が高威力など通常プレイとは一風変わったゲームになるのでクリア後にでも遊んでみると楽しめるだろう。
グラフィック
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特に16色で描かれたとは思えない各種ビジュアルシーンは語り草。この美しさは一見の価値あり。
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オープニングムービーでは戦闘するアレスとモンスターを影で描写することで、画面いっぱいに躍動するムービーを実現している。当時のPCゲームのムービーは描画速度確保のため画面サイズを小さくするのが当たり前だったので、手法と演出が噛み合った名シーンのひとつ。
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もちろんゲーム中のグラフィックも美麗。
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舞台となるダンジョンは複数のエリアで構成され、エリアが切り替わると背景とBGMもガラリと変化する。
魅力的なキャラクター
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主人公アレスは常に背中を向けているためか、ビジュアルシーンやパッケージのメインイラストでも顔がはっきり描かれておらず、セリフもないのでイースシリーズのアドル以上に謎めいた人物になっている。
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説明書に収録されている小説では賞金稼ぎであり賞金首でもある腕利きで脈絡のない人物とされており、ファルコムゲーの主人公の中ではダークヒーロー染みた要素が強い。
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ヒロインのドーラは金髪碧眼の美女で、ビキニアーマーとマント姿というデザインが強く印象に残り、容姿だけでも魅力的なキャラクターになっている。
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しかしその実体は、師匠の仇であるアレスを倒そうと放った攻撃魔法の暴発で穴に落ちたり、再会したと思ったら落とし穴に落ちたりと間抜けっぷりが強調されたドジっ子。
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ツンデレ要素も備えており、ストイックさの強い本作の貴重な癒しを担当してくれる。リニューアル版のパッケージイラストは末弥純氏が描いた彼女単独イラストになっており、本作を代表する人気キャラと言えよう。「3」ではプレイヤーキャラクターの一人として登場するが、最もメインストーリーとの絡みが大きいため、彼女こそ「3」の主役という見方もできる。
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余談だが、『VM JAPAN』などのゲスト出演作ではアレスを差し置いてドーラのみが参戦する事が多い。
音楽
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ファルコムらしくBGMも良曲揃い。
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ダンジョン探索がメインのため同じBGMが流れ続けることもあり、ループが長めで聞き飽きにくいような曲が多い。
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ショップやイベントでは専用曲も用意されている。特にボス戦で流れる曲は普段の大人しめの曲調から一転して激しい曲が多い。全てのボス戦で異なる曲が用意されており、戦いを盛り上げてくれる。
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なお、リニューアル版ではOPムービーで流れるBGMが別の曲に差し替えられている。差し替え理由は盗用の指摘があったためらしい。
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他にゲーム開始時に追加されたメニュー画面用に『ブランディッシュ2』からの曲も追加収録されている。
賛否両論点
「フルマウスオペレーション」
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当時はマウスだけで遊ぶアクションRPG自体が存在しなかったため、とにかく慣れを必要とした。
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特に移動操作はクリックする位置で変化するため、最初はなかなか思うように移動できない。
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一応キーボードのみでもプレイ可能。ユーティリティ画面以外は全て操作でき、一部キーボード操作の方が切り抜けやすい場面も存在する。
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慣れれば特に問題はなくなり、前述のようにキーボードと合わせる事で快適さも増す。
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後のMMORPGがフルマウスオペレーションを採用していたため、ある意味では時代を先取りしていたとも言える。
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リニューアル版では移動用の操作ガイドを表示できるようになったため、クリック位置がわかりやすくなっている。
マップの方が回転するシステム
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3DダンジョンRPGでは当たり前だが、見下ろし型の画面を採用している本作では戸惑いやすい要素で、やはり慣れが必要。
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これを活用した謎解きや隠されたスイッチ、石板なども存在するので、他のゲームとは一風変わっていて面白い要素ではある。フル3Dゲームが出るまでは非常にリアルな要素であった。
問題点
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敵のHPが回復せず、ボス戦から逃走できる事を利用し、休息しながら地道に削っていく戦法でクリアできてしまう。
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一種の救済と言えるが、リアルタイム性を重視したゲーム性とは噛み合っておらず、アクションを駆使する面白みが薄れてしまう。
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リニューアル版では休息時に敵のHPも回復するようになったため、この戦法は不可能になった。
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奥まで行って拾った鍵で入口近くの扉を開けるために戻るといった階も多いが、一歩ずつ歩いていくしかないので面倒さも目立つ。
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踏破済み地点なら自由に移動できるワープの魔法もあるが、非常に高価で普通にプレイすると購入できるのは終盤に入った頃。MAGICが最大の時しか使えないため、結局は徒歩で移動した方が早い事も。
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リニューアル版では指定地点まで自動的に移動するオート移動機能やダッシュが追加されたので、若干解消されている。
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ミニマップ画面に直接描きこむ方式のため、自力マッピングの際に描きこみにくい。
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扉などの通過しないと記録されないマップ、ワープだらけの階などの自力マッピング必須のエリアで顕著に問題になりやすい。リニューアル版でも未改善。
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改善されるのは『3』で専用画面が実装されるまで待たねばならなかった。
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ストーリーは薄い。
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時折ドーラやNPCが登場して会話したり、新エリアに行く際のモノローグ程度しか描写がなく、あとは延々とダンジョンを進むだけで淡泊さは否めない。
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敵全員にダメージを与える「クエイク」と、敵全員の動きを一定時間停止する「ストップ」という魔法があるが、死に魔法である。
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初期に登場する店でしか売られていないが非常に高く、消費MAGICも多く、その割に役に立たない。いわゆる「浪漫技」として使う気にもならない。
総評
当時のARPGではまず採用されなかったマウスのみでの操作という斬新さが目立つ作品。
だが、ゲームとしてはリアルタイム性と3DダンジョンRPGライクな要素を取り入れ、多彩な敵やトラップを攻略していくARPGらしい面白さを持つ完成度の高い良作である。
操作に慣れるまでは大変だが、慣れてしまえばすいすい遊べるようになるPCゲームらしいタイトルと言えるだろう。
移植・リメイク
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SFC ブランディッシュ(1994年6月17日発売、開発・発売元:光栄)
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PC版とは異なり、ミニマップやアイテムメニューが個別画面になり、アイテムメニュー以外は時間が停止するようになっている。
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ミニマップは、移動した場所が記録されるだけのオートマッピング機能のみになっている。
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SFC用コントローラーによる操作のみで、マウスには対応していない。
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カジノがサウンドテストルームに差し替えられており、金稼ぎはできない。
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PCE ブランディッシュ(1994年6月25日、開発・発売元:NECホームエレクトロニクス)
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SUPER CD-ROM2で発売。当時のPCE用ファルコムゲーではお馴染みのビジュアルシーンや銀河万丈氏によるナレーションは本作でも健在。曲もCD音源によるアレンジに変更されている。
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ミニマップがステータスと切り替え式になっているなどPC版の画面構成をアレンジしたものになっている。ボタン数が少ないながら操作性も良好。
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家庭用ハードでは唯一マウス操作にも対応しているが、マウスカーソルが表示されないためPC版とは操作性は別物。
余談
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現在はプロジェクトEGGで『2』『3』と共にリニューアル版が配信されている。
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『イース』のリメイク版でフルマウスオペレーションに対応するなど、後の作品でもマウス操作は採用されていった。
最終更新:2024年11月28日 23:17