注意:このページではPC版(良作)、PUK(良作)、PS2版(劣化ゲー)を全て扱っている。
VM JAPAN
【ぶいえむ じゃぱん】
ジャンル
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シミュレーションRPG
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対応機種
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Windows 95~XP
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発売・開発元
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日本ファルコム
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発売日
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2002年6月27日
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定価
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5,980円
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判定
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良作
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概要
ファルコムから出された『ヴァンテージマスター』シリーズの第3作目。
『ヴァンテージマスター』シリーズはヘックス(六角形)方式のシミュレーションRPG。プレイヤーは「マスター(プレイヤーの分身)」および召喚した精霊をユニットとして操作し、相手のマスターを倒すというもの。イメージとしては『大戦略』+『マスター オブ モンスターズ』に近い。
前2作の『ヴァンテージマスター』『ヴァンテージマスター2』がRPGでおなじみの中世ヨーロッパ風の世界を舞台にしていたのに対して、本作の舞台は日本によく似た架空の島国「和国」となっており、様々な用語が和風にアレンジされている。例えば、プレイヤーの分身は「マスター」→「幻魔使い」、召喚する精霊は「ネイティアル」→「幻魔」…といった具合である。
特徴
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シミュレーションRPGだが、クリティカルヒットや回避といった偶然の要素は一切排除されている。つまり、同じように行動すれば、必ずその結果は同じになる。
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そのため、SRPGと言ってもどちらかといえば、将棋やチェスのように彼我の能力を見極めて、緻密な采配をとる必要がある。
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マニュアルには攻撃側の幻魔が相手に与えるダメージ表もついており、猛者ともなると、これを完全に暗記しているとか……。
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ゲームの進め方は前述のように『大戦略』+『マスター オブ モンスターズ』に近い。
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戦闘開始時にはごく一部の例外を除いて、プレイヤーと相手の分身である幻魔使いしかいない。
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幻魔使いの特徴は大まかに分けて4つ。非力だが幻魔召喚に必要な術力(MP)が多いため幻魔の質と量で押し切る術力型、逆に攻防に優れる反面術力に乏しいため、自らも前線に出て戦う攻撃型、スピードや移動力で優位な地形を確保して相手を翻弄するスピード型、そしてバランス型である。
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幻魔使いのターンが回ってくるたびに「召喚」で幻魔を召喚し、ユニットとして操作する。
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幻魔召喚に必要な術力を供給するのが、マップ上に配置されている「魔晶石」。魔晶石を多く占拠すればするほど多くの術力を確保でき、その分、多くのユニットを召喚できるようになる。また、そこにいるユニットのHPは1ターンごとに回復し、防御効果も高いなど、『大戦略』の都市や『マスター オブ モンスターズ』の塔と役割が近い。
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幻魔使いは術も使用可能。これは『マスター オブ モンスターズ』の「大魔法」と同じようなもので、ダメージを与えるものや味方全ユニットのHPをわずかに回復させるものなどがある。また、一部の幻魔使いには専用の術を持っているものがいる。召喚や攻撃だけでなく、術でサポートするのもまた重要だったりする。
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ユニットターン制で、行動の種類ごとに次のターンが回ってくる間隔が異なる。一般に移動後の行動は次のターンが回ってくるまでの間隔が長いため、待機して出方をうかがうのも立派な戦略の一つである。
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勝利条件は相手を降伏させるか、相手の幻魔使いのHPを0にするかのいずれか。ジリジリと追いつめるか、一瞬のスキをついて相手幻魔使いを倒すのか。そのあたりもプレイヤーの判断次第である。
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幻魔には火・水・地・天の4つの属性がある。これらには火<水<地<天<火…という属性関係があり、順属性ならば大ダメージを与え、逆属性ならほとんどダメージを与えられない。対向属性は影響を受けない。
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大多数の幻魔は明るさに影響を受けないが、明るいと能力が上がり暗くなると下がる『昼型』、その逆となる『夜型』の特性を持つものもある。
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幻魔には経験値に相当する満足度というステータスがあり、これが増えていくとレベルアップする。弱い幻魔は満足度が上がりやすく、その上、ステータス上昇も良好なため、上手く使うと、低コストで最上級ユニットに渡り合えるようになる場合も。ただし、幻魔の成長はその面限り。次の面に行くとリセットされる。
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なお幻魔も幻魔使いもHPは10で固定。いくらレベルアップしてもそれは変化しない。
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前2作同様、向きの概念もある。後ろから攻撃すれば大ダメージを与えられ、真正面からだとダメージが軽減される。
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モードは物語に沿って進む「ストーリーモード」、後述するように上級者向けの「エキスパートモード」、ネットワーク対戦可能な「VSモード」が主なもの。
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加えて、「村祭り」というおまけ(ミニゲーム)も。こちらは簡易シューティングとリバーシ(オセロ)。一定のスコアをとると、イラストが解放されたり、隠し幻魔使いが使用可能になったりする。
評価点
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ソロプレイの強化。
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CPUも降伏するようになった(一部例外有)ので、圧倒的に戦況が有利になってからもダラダラと戦闘を続ける必要がなくなった。
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難易度もBEGINNERからHARDまでの4段階を選べる。BEGINNERなら適当にプレイしていても勝てるが、HARDだとかなり厳しい展開が待ち受けている。そのため、初心者から腕に覚えのある上級者まで楽しめる。
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HARDすらぬるいという猛者のためにエキスパートモードという難関マップだらけのシナリオもある。第一面から不利な位置に立たされ、その後も絶望的なまでに悲惨な地形、相手側だけ既に何体かユニットが召喚されている、相手幻魔使いのレベルが異様に高いなど、歯ごたえ満点のマップだらけである。なお、エキスパートモード自体は前2作でも導入されていたが、質・量ともに強化されている。
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間違った手を打った場合、一手戻す「待った」も導入されている。
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ユニットのバランス調整。
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本作では移動タイプが多様化したため、どんなマップでも一属性の幻魔の量産だけで事足りるような事態は起こりにくい。
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前2作では、移動タイプの関係で火のネイティアルが猛威を振るうことも多かった。これは天敵である水のネイティアルが陸上行動を大幅に制限されていたため。
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逆にほとんどのネイティアルの行動が制限される水辺では水のネイティアルが猛威を振るった。
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種類も前2作より増えた(各属性ごとに1種類ずつだが)。移動以外の能力面も調整が行われ、どの幻魔も使い道とシチュエーション次第で活躍できる。
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弱い=低コストの幻魔は、前2作では序盤かコストのやりくりの難しいマスターしか使い道がなかった。が、今作では有効な補助術を持っているなどの「一芸」を持っているものが多く、弱い=低コストの幻魔の立ち位置もより明確になっている。
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幻魔使いもちゃんとバランスが取れている。必ず長所と短所がはっきりとしているため、「最強の幻魔使い」は存在しない。ラスボスも対戦では使用できるが、しっかり「穴」があるため、そこをつけば案外弱い。
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あえて言えば、低難易度ほど攻撃型の強さが目立つ。が、高難易度になればなるほど術力の少なさが露呈する。一方、術力型は低難易度では強さを実感できないが、高難易度であればあるほど、その底力を発揮できる。とはいえ、いずれも幻魔使いの使い方次第。使い込めば使い込むほど様々な幻魔使いの特徴がわかり、面白くなってくる。
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ストーリー面の強化
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前2作ではほとんどストーリーらしいストーリーはなかった。しかし、本作のストーリーモードでは、それなりに物語も展開するようになった。
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対人専用マップの強化。
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今作でも対人戦専用マップが導入されている。本作での対人戦専用マップは完全に対等なものになっており、純粋に実力を争えるようになっている。
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幻魔使いのレベルを調整できるようになっており、ちゃんとハンデをつけることも可能。また、既存のマップも対戦に利用できるため、相手と自分の実力の差に応じた調整も簡単。
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グラフィックもきれい。
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特にマップの背景がよく書き込まれている。最初のステージで咲き乱れる桜の花や後半ステージの火山の遠景はとくに美しい。
問題点
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薄いストーリー
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評価点にも述べているが、あくまで前2作に比べれば、ストーリーが強化されているという程度で、他のファルコム作品に比べればストーリーは淡白で、内容も少々ありきたり。
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エキスパートモードも解説役の巫女が講談調にしゃべるだけ。
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ファルコム製のRPGといえば、ストーリーに期待する人が多いため、本作でこれに期待した人は思いきり肩透かしを食らうことになった。
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ストーリーモード・エキスパートモードで使えるキャラが少ない。
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幻魔使いは無印版で16人だが、ストーリーモードとエキスパートモードでは8人しか使えない。後の8人は対戦専用。この8人はストーリーでも核心部分に関わるものだったため、使えなくしているのも致し方ない。しかし、「それなら物語をしっかり作ればよかったのでは?」と指摘されることもある。また、ストーリーに関係のないエキスパートモードでも使用できないのは完全に謎仕様。残りの8人もバランスブレイカーというほど強いわけではない(むしろ癖が強く、キャラの特性を理解していないとかえって使いにくい)ので、別にエキスパートで使えるようにしてもよかったはずだが。
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ストーリーモードにチュートリアルがない。
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「プレイしながら覚えろ」ということなのだろうが、向きや属性の相性など、覚えることがそれなりにあるので、チュートリアルがほしかったという意見は少なくない。
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特に『ファイアーエムブレム』や『スーパーロボット大戦』型のシミュレーションRPGだと思ってプレイすると完全に面食らうため、導入を丁寧にする必要はあったと思われる。
総評
ゲーム内容が将棋やチェス的なボードゲームのようなものなので、爽快感を求めると完全に失望する。また、ユニットの成長も昔の『大戦略』のように1面限りのものなので、導入を丁寧にしなければならなかったこと、薄いストーリーも批判されがちである。
しかし、ゲームシステムそのものはシンプルであり、どんな苦境であっても、一手一手を丁寧に考えていけば必ず活路が見いだされる。また、ユニットの特徴を理解し、使い込んでいけばいくほど味が出てくる。『大戦略』などのシミュレーションゲーム好きならぜひ手に取ってほしい作品である。
VM JAPAN パワーアップキット ~富嶽幻遊記~
【ぶいえむ じゃぱん ぱわーあっぷきっと ふがくげんゆうき】
ジャンル
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シミュレーションRPG
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対応機種
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Windows 95~XP
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発売・開発元
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日本ファルコム
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発売日
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2002年9月27日
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判定
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良作
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概要(PUK)
『VM JAPAN』のパワーアップキット(PUK)。新しい幻魔使いと幻魔が登場したほか、新モード「トーナメントモード」も導入されている。
特徴(PUK)
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富士山をモデルにした「霊峰富嶽」を舞台にしたトーナメント戦「トーナメントモード」の導入。
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マップ構成は完全に対等。しかし、既に何体かの幻魔が召喚されており、マップ構成も一癖も二癖もあるものばかり(褒め言葉)。
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このモードではすべての幻魔使いが使用可能。条件を満たせばPUKオリジナルの隠しキャラも使用可能に。
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幻魔使いはさらに10人追加。オリジナルキャラだけでなく、『イース』のダルク・ファクトやリリアなどのゲストキャラも出場している。
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幻魔も各属性に1体ずつ追加。戦略の幅が広がっている。
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全てのマップが一新。「ストーリーモード」「エキスパートモード」も完全に新マップとなっている。さらに「エキスパートモード」では、相手もPUKに追加されたキャラがメインとなっており、さらに厳しい戦いを楽しめるようになっている。
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無印版の隠し要素はほとんどが解放されている。解放されていないのは簡易シューティングで一定スコアを獲得するとみられるイラストとリバーシで勝利したときの各キャラのマスコット人形のみ。
評価点(PUK)
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デフォルトで使用可能キャラ(幻魔使い)が増えた。
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フリーモードとトーナメントのみだが、PUK版追加キャラはもちろん、無印版の隠しキャラも最初から使える。
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ミニゲームをしなくてもいいので、本編に専念したい人にとっては特にありがたい点である。
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幻魔使いは多いが、全員個性がはっきりしているので、無印版以上に使用キャラの個性を理解して生かしていくことが求められる。
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幻魔の追加でさらにバランスが良い方向に調整された。
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追加されたのは各属性に一体ずつだが、これが全体のバランス調整に一役買っている。特に、水属性の追加幻魔・ジャコウダイは中堅どころでありながら(むしろ中堅ゆえに)、使い勝手が非常に良く、どんな幻魔使いでも重宝されている。
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新マップのおかげで、無印版をマスターした人も新しい挑戦が可能である。
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特に新モード「トーナメントモード」の舞台となる霊峰富岳のマップは、シンメトリーかつすでに数体の幻魔が召喚されており、通常とは異なる差配が求められる。そのため、もっとも易しいEasyでも、初見で雑なプレイをするとすぐに行き詰まる。ストーリーモードやエキスパートとは異なる戦略を立てなければならないのも、面白い点である。
問題点(PUK)
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無印の問題が全く解決されていない。
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「トーナメントモード」のストーリーはさらにあっさりしている。もうちょっとストーリーを(ry
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相変わらず「ストーリーモード」「エキスパートモード」では無印と同様、固定したキャラしか使えない。新しい幻魔使いも登場しているのに。
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無印版とPUK版のマップの切り替えができない。そのため、無印版のマップで新キャラを使用することができない。これはネットワーク対戦の都合上、致し方ないことなのかもしれないが、現在は全てPUKとセットであるため、切り替えできるようにしてもよかったのでは。
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これは本作だけの問題点ではないが、PUK単体では遊べない。もっとも、現在販売されているものはPUKとセットなので、あまり問題にはならないかもしれない。
総評(PUK)
新たな幻魔使いや幻魔が登場し、より面白くなっているのだが、無印の問題点が全く解決されていないのが極めて残念なところ。せめてエキスパートモードだけでも全キャラ使用可能になっていれば、文句なしの良作だったのだが。
しかし、対戦ツールとしてはさらにバランスがとれている。それに、問題点は解消されていないが、追加要素がゲーム本体の面白さを損なっているわけではないので、やはり『大戦略』などのシミュレーションゲーム好きにはぜひおすすめしたい作品である。
VM JAPAN(PS2移植版)
【ぶいえむ じゃぱん】
ジャンル
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シミュレーションRPG
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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アスミック・エース エンタテインメント
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開発元
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日本ファルコム
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発売日
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2005年2月3日
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定価
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7,140円
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判定
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劣化ゲー
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ポイント
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問題点が全く解決されていない UIが悪い なぜかPUK要素なし
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概要(PS2)
PC版の無印版にいくつかの追加要素を加えてPS2に移植したものだったのだが……。
特徴(PS2)
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新たなキャラクターが追加。こちらはストーリーモードでのみ敵として登場する。
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新マップも登場し、単に相手を倒すだけではないマップもある。
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一部にキャラクターボイスが追加されている。
問題点(PS2)
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PC版の問題点が解決されていない。
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新規開拓するなら、せめてチュートリアルは必要だったはずだが。
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絶望的に悪いユーザーインターフェイス。
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マップ選択はPC版ではワンクリックだったが、移植版では街道を通って、敵に遭遇するという形に。これでPC版とは違った展開での戦闘には……ならなかった。敵アイコンはただ同じマップのあたりをうろちょろするだけ。おそらく、新マップ導入の関係だろうが、はっきり言ってイライラする。
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情報が一画面で見ることができたPC版に比べて、色々とウインドウを開かないと肝心の情報が見られない。
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PC版に比べてユニットも小さくなっていて、見分けるまでには慣れも必要。
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PC版よりも処理が重くなっているのも謎(特にマップ選択)。
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画質が悪すぎる。
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単にグラフィックが粗いだけならまだいいのだが、そのせいで、ステータスの数字がつぶれている。特に0と6と8はよほど目がいいか、大きなテレビでないと判別不能(今の液晶テレビならなんとかわかる)。
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HPと術力の見難さが致命的。どちらもたった1見間違えるだけで采配ミスにつながるような要素。おかげで、このゲームの最も肝心な部分が台無しになってしまった。
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追加アイテムのしょぼさ。
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PS2版追加マップをクリアすると「裏○○」という、既存の幻魔のバージョン違いを使用できるのだが、これと既存の幻魔との違いは素早さが1高いだけ。確かに、素早さは行動順を決定する重要なステータスだが、1高くても困る。しかも使用条件がわかりにくい。最初からPUK追加幻魔を入れた方がよっぽどマシ。
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おまけに追加マップの難易度はかなり高い。エキスパートモードなみかそれ以上の難易度のところもあり、その労力に見合う性能とは言えない。戦闘回避も可能なことだけが救い。
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追加マップのキャラクターがストーリーに絡むことはない。確かにすでに出来上がったストーリーに絡ませるのは難しいとはいえ、扱いが軽すぎる。
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PUK要素は全くない。
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確かに無印版の移植なのだから当然なのかもしれないが、PUKが出て3年もたっているのになぜPUK込みで出さなかったのか(PC版は既にセット版が出ていた)。あるいはPUK要素を一部取り入れたものにしなかったのか。あえて邪推すると、好評だったときにPUK追加版を出すという分割商法をやるつもりだったのではという気さえする。
評価点(PS2)
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慣れれば追加マップも面白い。
慣れれば
の話だが。
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中古も新品も価格は滅茶苦茶安い。
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シミュレーションゲームではUI周りが非常に大切であることを教えてくれた。
総評(PS2)
なぜベタ移植にしなかったのか首をかしげたくなるような内容。確かにPC版が出てから3年もたってからの移植なのだから、追加要素を入れて新規開拓しようとしたのかもしれないが、UI周りなど、改善するべきところを先に改善すべきだったはず。シミュレーションゲームではUI周りが非常に大切であることを教えてくれる移植作品だった。PC版があれば買う価値はあまりない。
余談(PS2)
これに懲りたのか、『ヴァンテージマスター』がPSPに移植された時にはファルコム自身が移植・販売を行っている。
最終更新:2021年11月21日 23:20